米国レストランピリ辛情報 「日米の味の違いその2」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2001年10月号 NO.421)

日本に影響を与える米国の最新レストラントレンド
発酵食品
一番嗜好の違いが出るのが、発酵食品だ。日本は大豆などの発酵物が中心で、味噌、醤油、納豆がその典型だ。欧米は乳の発酵物が中心で、バター、チーズがその典型だ。味覚は子供の時代にな決定する。チーズなどは日本での随分食べるようになったが、いまだに本格的なチーズは好みが分かれる。

マクドナルドではハンバーガーの味は世界共通と言ってはいたが、チーズの香りの強さだけは変えざるを得なかった。日本進出当時はまだ日本人のチーズ消費量が少なく米国と同じ香りをだすと消費者が強い抵抗を示した。そこで、香りを米国の1/3にするという調整を行った。そして定期的に嗜好調査を行い、徐々に香りを強くしていった。しかし現在でもまだ米国の1/2くらいの強さの香りにしている。米国のハンバーガーと日本のハンバーガーでは、肉の飼料の違い、チーズの違いから微妙に味が異なる。筆者のように日本の味に慣れてしまうとそのあたりの味の違いがよくわからないが、筆者の子供は1歳半から3歳半の間米国で育ったためかその違いがわかり、米国のハンバーガーの方が美味しいと言う。

牛乳の味の違いも存在する。餌の違いの問題もあるが、殺菌方法が異なっている。米国の牛乳の殺菌は相変わらず低温殺菌が中心であるが、日本は早くから効率のよいUHT(高温殺菌)を取り入れている。UHTは高温で短時間に殺菌するためにバーンドフレーバーという焦臭の問題を抱えている。

温度
英語で日本語の猫舌という言葉はない。そのため全ての食事は温かい料理はあるが熱い料理はない。スープもテーブルにだした際にすぐに飲める温度になっている。ニューヨークや西海岸には日本のラーメンチェーンが10年以上も前から進出しているが、舌が火傷をしそうな熱さが猫舌の米国人には受けず成功していない。

めでたい食事 : 鯛とターキー
米国人に大人気の七面鳥は食べるとぱさぱさで美味しくないと感じられる。しかし、七面鳥はおめでたいときに食べる日本の鯛のような物である。米国に渡った清教徒が最初の秋の収穫祭で食べ物がなく困った際に、先住民のインディアンからの贈り物が野生の鳥がターキーで、それ以来収穫感謝祭のめでたいご馳走になったのだ。

また、ターキーの肉は鳥より脂分が少なく健康的であるという面からも人気がある。健康志向の米国では鳥も同様に脂分の少ないホワイトミート(ささみなどの胸肉)が人気があり、ダークミート(もも肉など)の脂分があるジューシーな身は安い。日本や東南アジアでは逆でホワイトミートは人気が無く、ダークミートの方が高い。ぱさぱさの焼き鳥などは人気がないのだ。米国で大人気のボストンマーケットなどのローティサリーチキンは回転式のローティサリーオーブンで丸鳥の脂をじっくり落としながらて焼くのだが、その肉のぱさぱさ感が日本では好まれず、普及しなかった。米国から日本に進出したエル・ポヨ・ロコやケニーロジャースは焼き鳥のような脂ぎった鶏肉を好む日本人には受け入れられなかった。

酒 : 禁酒法は未だ生きている
米国は清教徒によって作られた国で、その影響は未だ色濃く残っており、多くの人々は日曜日には礼拝にいく。日曜日は安息日であり神に祈りを捧げる神聖な安息日だ。教会から帰ったら家で安息する日であり、買い物や外食に行く日ではない。日本の外食産業で一番忙しい日は日曜日であり、郊外の外食店舗は平日の三倍の売上げを上げる場合も多い。しかし、米国の外食店にとって日曜日は週で一番暇な日であり、ショッピングセンターも平日は夜9時10時まで営業しているが、日曜日は5時や6時に閉店してしまう。

1920年代の米国は禁酒法が施行されアルカポネなどのギャングが横行した事で思い出される。しかし、米国の禁酒法は過去の遺物ではなく現代でも色濃く残っているのだ。米国ビール会社のトップはセントルイス市に本社を構えるアンハイザーブッシュ社(バドワイザーで有名)だ。筆者は夏の暑い日曜日にセントルイス市に到着したときがある。暑さにのどの渇いた筆者はホテルでビールを注文したらないという。品切れかと思ったら当州はドライステーツだと言う。日曜日は安息日で酒の販売は禁止なのだという。ビールの街セントルイスでも酒は飲んではいけないと言うのはカルチャーショックを感じさせられるのだ。

もてなし
お客を呼んで御馳走と言うときの考え方が異なる。お客をもてなすときに日本では主婦が台所に閉じこもり、品数の多い食事を一所懸命に作る。米国ではお客を楽しませる会話や楽しい雰囲気が最も御馳走であり、みんなで団らんできる食事が中心となり、ハンバーガー、タコス、バーベキューは立派な御馳走だ。そして食事を中心に皆で会話をじっくり楽しみむために、、夕食を最低2時間から3時間楽しんでいる。食事そのものでなく、もてなしと会話を楽しむのだ。

<最後に>

異なる文化、異なる生活によって生じる味覚の違いを理解した上で、海外の外食を導入するべきである。日本人とアメリカ人は味覚の基準が違う。それを理解せずにアメリカの料理はまずいと決めつけること、あるいはアメリカで人気の料理だから日本でもいけると判断することは早計にすぎるわけだ。

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