米国レストランピリ辛情報 「ファースト・カジュアルその3」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2003年10月号 NO.444)

アメリカ外食の新潮流Fast-Casualの動向 その3
ブランドロイヤリティの最も高い パネラブレッド

米国人の健康志向に沿った形でメニューを組み立てて、業態を変換して大成功したパネラブレッド(Panera Bread)と言うチェーンがある。本社はミズリー州、リッチモンドハイツにあり、直営店を132店とFC346店を現在32州にわたり展開している。
パネラブレッドは元々はフレンチサンドイッチショップカフェを経営している、Au Bon Pain Co., Inc.(オー・ボン・パン)として1981年3月にボストンで設立された。
http://www.aubonpain.com/
http://www.nrn.com/sitesearch/search.cfm
その後、東海岸を中心にチェーン展開をしていった、Au Bon Painの店舗は、店内でパンを焼き上げ、そのパンで新鮮なサンドイッチを作るという物で、サブウエイなどのサンドイッチよりより高級なイメージで80年から90年にかけて急成長を遂げた。サンドイッチだけでなく、欧風の濃いブレンドのコーヒーを特別開発のコーヒーマシンで抽出し、提供するグルメコーヒーとしても人気を呼んだ。そのコーヒーマシンに注目したスターバックスは同社の主力のコーヒーマシンとして採用するようになった程だ。
急成長する勢いで、1993年の12月に同社はSaint Louis Bread Co.(セントルイスブレッド) と言うセントルイス市にサンドイッチカフェを直営19,フランチャイズ1店舗を経営する会社を買い取った。このお店はサンフランシスコ名物のサワードー(酸っぱい独特の香りのするパン)を売り物にした。その後、パンやベーグル、ビスケット、等だけでなく、客の好みで組み立てるサンドイッチや、健康的なイメージのサラダ、サワードーをくりぬいて入れたスープ等を加えるようになった。1998年、当時の社長のRon Shaich氏は、Saint Louis Bread Co.と言うチェーン名をPanera Bread.に変更した。
そして、大規模な製パン工場を設立し、チェーン展開へ加速を付け、かつ、原材料費を削減しようと目論んだ。しかし、その大規模な製パン工場の投資額は多額で、大きな負担となってしまった。また、同時期にニューヨークなどの大都市に展開をしていた、Au Bon Painのサンドイッチショップはスターバックスなどの競合相手の進出により売上に大きなダメージをうけ、前年対比売上が低下し、同社の資金繰りを圧迫し始めた。
やむなく、1999年5月にAu Bon Pain Co.は母胎であったAu Bon Pain bakery-cafe business 部門を売却し、会社の名前をPanera Bread Company.に変更し、Panera Breadと Saint Louis Breadと言うブランドに専念しだした。
結果的にイメージの古くなったAu Bon Pain Co.のサンドイッチ業態から、より高所得者層にアッピールする、健康的なイメージの焼きたてパンとスープ、サラダに商品を転換することで、ファーストカジュアルのジャンルの中で大人気となったわけだ。
ファーストカジュアルが注目されているのは規模が小さいのにも関わらず、顧客のブランドに対するロイヤリティが高く、それが企業イメージをあげ、売上の対前年伸びが大変高いと言うことだ。
TNS Intersearch社が作成した米国人1000名に行ったアンケート式の消費者調査。http://www.tns-i.com/ Fast Food Consumer Commitment Study によると、ハンバーガーのジャンルの売上で、1位はマクドナルド、2位はバーガーキングだ。2002年はマクドナルドとバーガーキングは合計で$909.4 millionドルを広告宣伝で使用し、その結果マクドナルドには4%、バーガーキングには6%の人がブランドロイヤルティを感じている。2大チェーンよりも売上の遙かに低い、サブウエイとウエンディーズは合計で $498.7 millionドルを広告宣伝に使用したが、サブウエイには12%、ウエンディーズには10%の人がブランドロイヤルティを持っており、遙かに効率が高いといえる。
さらに、10人の内3人の消費者はどのファーストフードのブランドにもロイヤリティを感じてない。ファーストフードに行く顧客の内、5人に1人はたった一つのブランドにロイヤルティを感じているだけだ。地域限定のチェーンとしてはPanera Bread, In-n-Out(西海岸中心のハンバーガーチェーンで、日本のモスバーガーのように人気が高い), Chipotle(マクドナルド傘下のメキシコ料理チェーンです。味は一番美味しい) 、Chick-fil-A(南部、アトランタ周辺のチキンサンドイッチチェーンで、大変高く評価されています)、に対して消費者はもっとも高いブランドロイヤルティを持っている、と言う調査結果が出ている。その結果、パネラブレッド社の直近、8月のデーターでは第2四半期の売上は対前年26%アップで、利益は47%と大変好調なのが、その消費者ブランド調査の結果を裏書きしているといえるだろう。

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