米国レストランピリ辛情報 「ドーナツが流行る背景」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2003年5月号 NO.439)

米国人にとってドーナツは朝食に必要不可欠の存在だ。早朝から働く米国人に取って、朝食は欠かせない存在だが、忙しい人の中にはコーヒーとドーナツで手軽に朝食を済ませる人も多い。ドーナツの適度な甘みが能を活性化をさせると信じているからだ。米国企業と取引をすると、早朝からの朝食ミーティングが多い。企業研修などでは授業を朝7時から始めることがある。そうすると食事ができないので、朝食を摂りながら会議をしたり、授業をする。

玉子とベーコンと言う米国的フルブレックファーストを摂りながら会議をすることは不可能だ。そこで、テーブルの上にドーナツやペイストリー、コーヒー、ジュース、ミルク、を並べセルフサービスで食べながら会議を進行する。効率を追求する米国企業に取ってドーナツは必要不可欠な食べ物なのだ。また、米国人の昼食は日本人と比べると質素で、通常の昼食時間は30分ほどで、ブルーワーカーであればサンドイッチとフレンチフライにコーラと言う食事だ。オフィスワーカーは時間に追われているから場合によっては昼食抜きだったり、コーヒーやコーラとドーナツかクッキーと言う簡単な物だ。

朝食としてのドーナツマーケットはにおいて、ダンキンドーナツ
http://www.dunkindonuts.com/(ちなみに、ミスタードーナツはすでにない)は
長年首位の座をしめていたが、その首位のダンキンドーナツの座を脅かす存在が誕生した。全米で人気沸騰中のドーナツチェーン「クリスピークリーム」だ。
http://www.krispykreme.com/

米国レストラン業界売り上げ順位45位、2002年の売上げ745億円、全米37州に277店舗を展開。売り上げ伸び率38%増と、スターバックスの同25%増をはるかに上回る勢い。米国でいまこれだけ伸びている企業はない。

創業者がフランス料理のシェフから、イーストドーナッツのレシピを買い、ノースカロライナ・ウインストンセーラムの小さな工場で1937年に創業した。工場の前の道路にホットフレッシュという看板を掲げて、「いま揚げたてですよ」と謳って販売をしたのが始まりだ。

それがいまブームになったのは以下の3つの理由だ。

①信頼できる商品
ファーストフード店舗の厨房は客からは全く見えず、手作り感がなく、どうやって作っているか分からず、美味しさを感じさせない。そこで、クリスピーは、「ドーナツシアター」と呼ぶ工場で、作っている様子をガラス張りにして見せて、出来立てのフレッシュ感をアピール、徹底的に鮮度と味と清潔感にこだわった。従来のドーナッツは冷めたものを売るのが当たり前だったが、できたてのアツアツのドーナツを売ることで大ブレークした。

②ドーナツへのこだわりと高い商品イメージ
ダンキンドーナツはドーナツ以外にもベーグルなども加えて売り上げを上げようとして、それがドーナツ店としてのイメージを薄くしているが、クリスピーはドーナツにこだわり、高級なドーナツとしてのイメージを植え付けた。
クリスピークリームは製造工程の合理化という面ではマクドナルドに見習ったが、商品イメージという意味ではスターバックスを見習っている。マクドナルドは大量のテレビコマーシャル放映やディスカウント戦略で売り上げを上げているが、スターバックスはテレビコマーシャルをせず、産地への援助やチャリティで商品イメージを高く保っている。

クリスピーはそれを見習い、テレビコマーシャルを一切行わず、チャリティに積極的に取り組んでいる。ドーナツを買う毎に寄付を自動的に行う仕組みだ。チャリティに積極的に取り組むのはキリスト教の信仰心の厚い、比較的裕福な人たちであり、その人達の信頼を勝ち取ったクリスピーのドーナツはダンキンドーナツよりも一段上の商品イメージを獲得することに成功したのだ。

ダンキンドーナツなどは空腹をみたす食品の位置づけだが、クリスピークリームはご馳走として認識されており、ビジネスマンが他社を訪問する際にお土産としてクリスピークリームを一箱(ダース)持参すると、オフィスの人たちが集まってきて大人気となっている。

③カンファタブルフード お袋の味
イラク戦争や不景気の影響から、人々は不安感にさいなまされるようになっている。そんなときには心が和む、ホットするような食品を食べたくなる。ドーナツというのは歴史のある家庭で作る簡単な料理だ。いわばお袋の味である。しかも、クリスピークリームのドーナツはダンキンドーナツなどの従来の堅いドーナツと異なり、「口にいれたらとろける」フワーッとしたドーナツは、不安を癒す最適の食品となって人気を呼んでいるのだ。

クリスピーの日本での展開をめぐっては、現在水面下で数社が交渉中。日本マクドナルド、他レストランチェーンなどが誘致に動いている。早ければ年内に上陸のニュースが聞かれそうだ。

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