米国レストランピリ辛情報 「米国外食産業韓国進出 その2」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2006年5月号 NO.476)

米国外食産業韓国進出 その2
韓国ファミリーレストランのジャンルを見てみると1位がアウトバック・ステーキハウス、2位がTGIフライデー、3位がベニガンと上位3社は米国系カジュアル・レストランが占拠している。日本からはココスが韓国の展開権を元に地元企業と提携して早くから展開していたが、提携相手の倒産によりすでに撤退をした。すかいらーくは技術提携で13店舗展開しているが、早く進出した割には店舗数がすくない。表ではVIP’sの企業のなかに含まれている。米国のファミリーレストランのデニーズも既に撤退をしている。
どうも韓国ではデニーズやすかいらーくなどの日本的なファミリーレストラン形態は成功していないようだ。そこで、今回は業界3位のベニガンとすかいらーくを比較してみた。
ファミリーレストランのジャンルに米国のカジュアルレストランが入っているのはおかしく思われるだろうが、韓国の食形態が米国や日本とは大きく異なっていることを理解しないといけない。米国のファミリーレストランは酒類販売許可を取っていないので、アルコールを置いていない。カジュアルレストランは酒類販売許可(リカーライセンス)をとっているのでアルコールの販売が可能で、その比率が日本の居酒屋ほどではないが、結構高いのが特徴だ。そのため、米国ではアルコールを置いていないファミリーレストランとアルコール販売をするカジュアルレストランのカテゴリーは異なっている。
ところが韓国では食生活がちょっと異なり、食事をするときにはあまりお酒を飲まずに、食後にお酒を提供するバーなどに行く。昔の日本のスタイルだ。そのためカジュアルレストランでのお酒の販売比率は低く、ファミリーレストランとカジュアルレストランの区別がほとんどないのだ。ならば何故日本的なファミリーレストランが流行らないかと言うとそれは格好の良さと食生活の違いだ。
アウトバック、TGIフライデー、ベニガンの米国カジュアルレストランは店内内装が格好よいだけでなく、駐車場のサービスはバレットパーキングを採用している。ソウルの江南の店舗でもピロティ形式の店舗にして、駐車場を備えている。車で店舗に乗りつけた客はそのまま車を乗り捨てると駐車場の係員が丁寧に駐車してくれる。その格好よさがよいのだ。
次に食の嗜好性の違いがある。韓国人の焼肉好きは皆さんご存知と思うがが、肉に対する嗜好性が大変高い。韓国は牛肉よりも豚肉を好み、その豚肉でも骨付きのリブが大好きで、米国のトニーローマのようなベイビーバックリブに人気がある。アウトバックや
TGIフライデー、ベニガンなどはベイビーバックリブを提供しているので、それが韓国人の嗜好にぴったり適合したのだ。
今回はアウトバック、ベニガン、すかいらーくのランチの価格とサービスを比較してみた。アウトバックとベニガンのランチのメニューは良く似ている。メイン料理一つにサラダまたはスープ、ソフトドリンク、パン、のセットで1200円から1800円の幅だ。顧客は女性客も多く、肉料理をパクパク食べているのが印象的だ。また、韓国では食べきれない料理を提供するのがご馳走だ。そのため料理のボリュームは米国サイズでたっぷりだ。
ベニガンズを利用して印象に残ったのはサービスレベルの高さだ。従業員は笑みを絶やさないし、注文を受けるときには膝をついて客の目線で注文を受ける。これはTGIもアウトバックも同様だ。
次は江南にある古いすかいらーくでランチメニューを試食。韓国すかいらーくは韓国の財閥のCJ社と日本の技術提携で、現在13店舗韓国に展開しているにすぎない。この店舗は駐車場を備えているが、上位3社のようなバレット�パーキングなどのきめの細かいサービスは行っていないし、駐車場も汚れている。
店舗に入るミニマムの内装デザインの寂れたがらんとした空間が広がっていた。従業員にも笑顔が見えない。着席しメニューを見るとランチにはリブなどの人気メニューはない。日本のようなハンバーグステーキやとんかつなどのセットメニューだ。料理はハンバーグとパスタグラタンのランチセット、サラダかスープ、パンのセットが選べて700円ほどと、価格は上位3社の1/2程度とリーズナブルだ。ハンバーグセットをスープセットの組み合わせで注文し、その他、チーズピザととんかつ、サラダを頼んだ。
マッシュルームのポタージュスープやハンバーグのガーリックソースは、威勢の良かった頃のすかいらーくの味で懐かしさを感じさせられた。
しかし、昼時をやや過ぎていたせいもあるのだろうが、客席には空席も目立ち、お客様も食事をするよりもドリンクとデザートで会話を楽しんでいる人が多かった。
韓国のファミリーレストラン業態の上位3社の繁盛振りを見ると不振の日本ファミリーレストランに何が必要なのかヒントになるのではないだろうか?

米国から進出したファミリーレストランの売上規模ランキングは表のようになる。
ブランド名 会社名 売上(億ウォン)2003 2004 2005年末推定
Outbacksteak (株)AUSSIECHUNG 920 1,600 2,300
T.G.I.F (株)Food Star 800 1,000 1,200
Bennigan’s (株)ライズオン 760 826 1,000
VIPs (株)CJフードヴィル 550 710 1,200
Marche (株)Amoje 400 300 300
Sizzler (株)バロンズインタナショナル 140 180 207
TonyRoma’s (株)Sun@food 142 180 203
Kahunavill (株)SavoyF&B 34.3 38 53
計 3,746.3 4,834 6,463

ベニガン
http://www.bennigans.com/Korea.htm
韓国すかいらーく
http://www.skylark.co.kr/
すかいらーく合弁相手のCJ社レストラングループ
http://www.cjp.co.kr/cjpe/a_cj_1.html
http://foodville.cj.net/

資料提供をしていただいた、立教大学経営大学院博士課程後期在籍の李美花氏の執筆した2005年度立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士卒論(調査研究)「韓国における多国籍外食企業の進出と戦略に関する調査」は100Pを超える詳細な韓国外食マーケットの市場規模と、10社を超える進出企業のインタビューを通じて成功と失敗の要因を述べている。

以上

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