フランチャイズシステムの継続収入
チェーン本部サポート 第2回(商業界 飲食店経営2002年)
フランチャイズシステムの繁栄を継続させるには収入の増大が不可欠だ。
フランチャイズチェーン本部の収益はフランチャイジーから加盟時に受け取る加盟金と、開業後の売上比率でいただくロイヤリティが主な物である。フランチャイズシステムを本部として運営する際に受け取るロイヤリティのパーセンテージは低ければ1%高くても8%ほどが一般的な金額だ。しかし、フランチャイズ本部を運営する経費を考えると、売上高の5~8%ほど経費がかかるのだ。つまりロイヤリティはフランチャイズ本部を運営する実費程度の収入であり、フランチャイズ本部に取っての本当の利益となるのは加盟金である。
フランチャイズ本部の立場を考えると、フランチャイジーの収益に関係なく、売上比率でロイヤリティを徴収でき、かつどんどん開店すれば加盟が入ってくる。それがフランチャイジーの店舗と競合するロケーションでもお構いなく、他のジーを開店させるという問題を発生させる理由だ。それでは一所懸命に働いているフランチャイジーは面白くないし、働きがいがないと言う物だ。
ザーとジーの双方の繁栄を継続するには両者の収入が増大しなくてはいけない。その仕組みを考えてみよう。まず、従来の継続的な収入を整理してみる。
<<従来の継続的な収入>>
<1>ロイヤリティ
売上に対し、一定の%のロイヤリティを徴収する。売上の額に関係ない固定金額と、売上額に一定の%を掛けた変動金額の二種類ある。一般的には売上に対する%の変動金額が多く、%は1%~9%と業種などにより異なる。国内のフランチャイザーは一般的にロイヤリティは1ー3%と低いのだが、外資系の場合は3ー9%と高額になる。フランチャイザーのノウハウにより異なるが、ロイヤリティの他に、商品供給などでの上乗せをするかどうかなども額面上の%が異なる原因となっている。外資系の場合一般的に高額なのは、日本のフランチャイザーが海外のフランチャイザーに対し支払うロイヤリティがあるためである。
フランチャイザー本部はトレーニングセンター、トレーニング教材を開発し、かつ指導者のスーパーバイザーの育成、購買、広告宣伝、人事等のサポート体制が必要になり、それらのコストは一般的に5~8%はかかる。そして利益を売上の3%と低めにみても、実質的に10%程度のロイヤリティが必要になる。 ロイヤリティの設定する場合、ロイヤリティを払うだけのノウハウの提供が継続的にあるかが重要だ。
<2>広告宣伝費、販売促進費
広告宣伝費とは、新聞雑誌、ラジオ、テレビ等の媒体を使用して、営業や商品の広告宣伝する費用や、野球球団の所有、サッカーチームなどのスポンサー、ミュージカル、コンサートの主催、後援費用等の総費用だ。この中には、パブリシティ、広告調査、消費者調査なども含む。
将来テレビコマーシャルを使用する際は、エリアでの展開を考えて行う必要がある。テレビでいうエリアというのは、地理的な意味でのエリアでなく、テレビエリアを考える。宣伝媒体としてのテレビコマーシャルは大変大事な戦略的な武器になる。東京地区でのテレビエリアは、殆ど首都圏をカバーしており、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、を全部カバーし、さらに、茨城、群馬、山梨の一部(東京に近いところで、人口が多い場所である)をカバーし、3、500万人以上の人口がある。関西テレビエリアとあわせると日本の総人口の50%ほどをカバーする。
販売促進費とは、売上を向上するために必要な店舗などでのPOPやチラシ、新聞折り込みチラシ、無料招待券、商品割引券、などをいい、フランチャイジーが独自に実施するものと、フランチャイザーが実施するものがある。金額は、固定金額と変動金額の両方があるが、一般的には変動金額が多く、売上に対し1%~6%位と業種により大きく異なる。
テレビコマーシャルをいれる場合、広告宣伝費と販売促進費で最低4~5%は必要で、テレビコマーシャルを入れない場合、1~2%位が妥当だ。この費用の使い道は、フランチャイジーに公開する必要があり、場合によっては実費清算も考えられる。フランチャイズチェーンを展開する場合の広告宣伝費の%を決定するには将来採用する広告宣伝戦略を定め%を設定しないと、後でテレビコマーシャルを放映する場合にフランチャイズ本部が負担をせざるを得なくなるの注意が必要だ。
<3>商品供給手数料
フランチャイジーが商品サービスを顧客に提供する際に必要になる、商品や、材料等の購入の際、フランチャイザーが一定の割合の金額を徴収することがある。この手数料は、その商品の開発や、発注のコンピューターシステムの維持管理費として徴収されている。総金額が、フランチャイジーが同品質の物を他より購入するより同等か安ければ公正取引法上も問題がない。国内のフランチャイザーは徴収しているが、外資系のフランチャイザーはとらない場合が多い。
ロイヤリティが1%と低いチェーンの場合は食品原価に商品供給手数料として5~8%近い額を乗せているからであると思われる。フランチャイジーとフランチャイザーの裁判で最も多いのは、この手数料であり、出来るのなら余り乗せない方が良い。公正取引委員会の規制も今後もっと厳しくなると思われる。米国ではつい最近もピザのリトルシーザースチェーンでジーと裁判になり和解をし、会社が食材コストの引き下げと広告宣伝費の内容公開をすることになった。
<4>金利、リース料、等の金融収入
フランチャイジーの中には経営態度や意欲はよいがお金を持っていない人がいる。それらのフランチャイジーに借り入れ保証をしたり、リースを斡旋したりする事が必要になり、その際に発生する金融収入はまた重要な収入源となり得る。
本来フランチャイジーは不動産を取得したり、内装や機械を所有するが、それも所有しないフランチャイジーがある。特に社員ヘのインセンティブとしてのフランチャイジーの展開を考えた場合これは重要な収益となる。
社員のフランチャイジー化を考えた時、社員に払うべき退職金を契約金に充当する事が出来るので、会社としてのキャシュフローに余裕がでるメリットも十分にある。
<5>トレーニング費用
フランチャイジーが店舗を開くときにはトレーニングは必要不可欠だが、最初のトレーニングではすべての事を教育しきる事は出来ない。そのため、一定の期間の後に、さらにトレーニングが必要になってくる。一般的にはこれらの集合トレーニングは有料となる。また、フランチャイジーが新しく社員を採用したときにもトレーニングを義務づけ実費を徴収する。
<<良いフランチャイズ本部として生き残るための収入>>
上記の従来の継続的な収入だけでは本部として十分な収益ではない。固定%のロイヤリティの収入だけではザーとジーの収入は不平等となる。ザーはジーの売上が幾ら上がっても固定比率のロイヤリティであるが、ジーは売上が上がれば上がるほど固定費分の利益が出るので、利益額は急上昇する(損益分岐点のグラフを考えて欲しい)。その売上上昇分の利益の分配をザーにも行える仕組みを作り上げることがフランチャイズチェーンシステムの繁栄の秘訣なのだ。
ではどう十分な利益を分配するかというと、店舗として繁盛させ、その場所の不動産価値を上げ、不動産収入を得ることだ。もし、フランチャイザーが不動産を自ら取得し、フランチャイジーに貸せば、売上が上がることにより不動産価値が上昇した分だけ、家賃収入を向上させることが出来る。そのためには、経営指導や新商品開発、広告宣伝販売促進を継続して実施し、店舗の価値を上げるという指導が不可欠となる。
次に、店舗の営業権の流通だ。店舗の売上が上がれば不動産価値が上昇するだけでなく、営業権(のれん代)の価値が上昇する。フランチャイジーも年齢を重ね、引退を考えるときや子供に相続させる時代が来る。その場合に営業権を他人に譲渡させられるようになっていれば、フランチャイジーは店舗運営で利益を上げるだけでなく、売却の際に購入金額よりも高く売却できれば、サラリーマンに取っての退職金のようになり、生活はより安定する。
<1>家賃
現在日本の一般的なフランチャイズチェーンのフランチャイジーは店舗を賃借するか、自分で所有する為、家賃は徴収していない例が多い。
短期のフランチャイズチェーンの展開を考えると、フランチャイジーが不動産投資し、フランチャイザーは固定投資をしないで多額の加盟金を得て、かつロイヤリティを継続的に徴収できる良いシステムと思われている。しかし、いったんフランチャイジーがノウハウを取得し、ロイヤリティを払わず自分でチェーン展開を考えたときには、不動産をコントロール出来ないと勝手に類似のフランチャイズチェーンを展開することが可能になってしまうという問題がある。
また、ロイヤリティ自体もそう多額の金額を徴収することは不可能であり、他の方法で収入を得る必要がでてくる。商品の供給や機器の販売の手数料を取る事は現時点では可能だが、今後米国と同様に公正取引委員会の規制が厳しくなる事が予想される。
フライチャイジーが使用する店舗の不動産を所有し、適正な不動産収入を確保する事により、上記の問題点を解決できるばかりか、不動産の有効活用になり、将来のキャピタルゲインも期待できる。この不動産の運用方法はフランチャイズチェーンの最大のノウハウであり、米国大手チェーンの中には全店舗の75%を実質的に所有する不動産会社となっている例もあり、それは同時に会社の株価を安定して維持させる大きな原動力となっている。
金額の設定は、一般的に8~15%位になり、売上に比例する。また、購入時の金額にその金利を付加し、現在価格が幾らになるかも加味し設定する方法もある。この価格設定においては不動産と金融の緻密な計算が必要となっている。
<2>営業権売却代
店舗の形態はフランチャイザーが自ら運営する直営店と、フランチャイジーの経営するフランチャイズ店、フランチャイザーとフランチャイジーの合弁会社が経営する特殊店舗等がある。
直営店を経営しそれをフランチャイジーに売却すると、営業権の譲渡にともない、収入が発生する。営業権という物はフランチャイザーに取ってコストはかかっていない物であり、当該の店舗の年商と利益が高ければ大きな金額で得る事が可能になる。この収入そのものが、フランチャイザーに取って大きなうち出の小槌になるのだ。
<3>店舗設備売却代
直営店舗を売却する際に上記の営業権と含めて売却する。その際に、古い店舗だと設備費は減価消却でかなり償却しているので、その差額が利益となりメリットが大きいのだ。この分が営業権、のれん代となるわけだ。米国フランチャイズチェーン社の株主に対する年次報告書を見てみるとこの操作による利益の出し方が最大のノウハウとなっていることが読みとれる。
以上の不動産の運用と営業権の売買が、ザーとジーの利益を適正に分配する最大のノウハウであり、フランチャイズチェーンの運営においてははそれらの財務的な詳細なノウハウの構築が大変重要になってくる。
お断り
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。