「アメリカから続々日本進出する外食チェーンの実力度」(商業界 飲食店経営2006年9月号)

(1)アメリカの外食チェーンが、日本市場が有望だと考える理由

アメリカの外食チェーンが日本に進出した歴史

米国外食産業日本進出のブームは1969年外資自由化の翌年70年大阪万博から75年の間だ。その間には、ダスキンと米国ミスタードーナツの提携。東食の英国ウインピーインターナショナルとの合弁。三菱商事とケンタッキーフライドチキン社合弁、レストラン西武(現西洋フードシステム)の米国ダンキンドーナツと提携。藤田商店と米国マクドナルド合弁、丸紅とデイリークイーンの提携、三菱商事とシェーキーズの提携。朝日麦酒と住友商事合弁で日本ピザハット社説立、イトーヨーカ堂は米国デニーズ社とセブンイレブン社との間で連続で技術提携、㈱不二屋は米国バスキンロビンズ社との提携でビー・アール・ジャパン㈱(現B-Rサーティワンアイスクリーム㈱)設立する。これらの先行企業の多くは成功を収めたため、その後10年ほど後発組の参入が相次ぐ。

1976年から1986年にかけて、兼松江商とハーディーズ、長崎屋とアイホップ社ダイエーとビッグボーイ、ダスキンとロングジョンシルバー、日世と米国スエンセンズ、ダイエーとビクトリアステーション、東天紅とヨーロッパのモーベンピック、レストラン西武とチャーチス、ダイエーとウェンディーズ、ニチイとアービーズ、ジャスコとゼネラルミルズ社(レッドロブスター)サントリーと米国ハーゲンダッツ社、ワイ・ヒガ・コーポレションとドミノ・ピザ提携、サトとホワイトキャッスルの提携、キリンビールとフランスのセボール社の提携、フレンドリーとカールスジュニアの提携、日本ペプシコ・フード・サービス設立とタコベルの展開、三井物産とエルポヨロコの提携、日本たばこ産業とポチュロの提携、ロイヤルとシズラーの提携、ロイヤルと米国マリオットと住友商事の3社でロイヤルマリオットアンドエスシー設立、西武商事とバーガーキングの提携(後に日本たばこ産業と提携)など、後発の参入が続くが殆どが失敗に終わる。

日本がバブルに踊りだす84年頃より、日本企業は米国逆上陸を企てたり、メ リットのない提携解消を開始する。すかいらーくの米国レッド・ロビン・インターナショナル社への資本参加、デニーズジャパンの米国デニーズ社との提携解消とセブンイレブンとの提携の解消(後に買収)と商標権の買取、ダスキンのミスタードーナツとの提携解消と商標権の買取、ロイヤルのハワイのペンタグラム社とブレッドブラザーズ社買収(バーガーキングなどの店舗展開と食材加工)、ココスの韓国進出、モスフードサービスのハワイとLAへの進出、リンガーハットのカリフォルニア・サンノゼ進出、京樽の米国アソシエイツ・インダストリーズ社買収、など、積極的な投資を行ったが、バブルが崩壊し米国進出は殆どが失敗に終わった。バブル後は低迷する日本経済のため海外からの進出は殆ど見られない状態が続いていた。

(2)最近、再びアメリカの外食チェーンが日本に進出する事例が増えている。

進出する側、進出させる側(日本のパートナー)それぞれの思惑

しかし、2004年頃よりの日本経済の景気立ち直りから、第3次の欧米外食産業との提携ブームが巻き起こっている。第1次の米国外食産業との提携は日本に米国外食産業の優れた店舗展開技術を導入しようと言う学びの姿勢であった。第2次の米国外食産業との提携は先行する企業の繁盛振りを見て漁夫の利を得ようというものであるといえるだろう。しかし万博から36年経過し日本外食産業は成長し店舗展開の技術面では米国に学ぶものは殆どなくなったと言える。現在の日本の外食産業が直面する課題はファスト・フードやファミリー・レストランの大手が不振だと言うことだ。バブルが弾けてからのデフレ経済化において大手外食チェーンは徹底した低価格戦略で生き残りを掛けてきたが、経済の回復と供にその荒れ果てたオペレーションとダサくなった内外装、陳腐な料理に目の肥えた消費者は満足しなくなったのだ。そこで大手は他企業へのM&Aを行ったり、コンセプト会社やデザイン会社に新業態開発の依頼をして、消費者に満足される新業態の開発に躍起になっている。その新業態開発の一つの手段として海外外食企業との提携を考えるようになったのだ。第一次第二次の海外外食企業との提携は先進の店舗展開技術を学ぶためであり、資本力のある商社や小売業が提携を行ったが、第三次の米国外食産業との提携の主役は大手外食チェーンである。多くの大手外食チェーンは20年以上の店舗展開の経験があるので、チェーン展開システムを学ぶ必要はないが、斬新な店舗デザインやメニューを求めているのだ。

(3)日本進出を狙う(控える)チェーンの特徴

フォーマットの特徴、客単価の特徴、これらをベースとした展開力。

米国は日本よりいち早く景気が回復し、マクドナルドなどの大手外食企業は低価格路線から高品質高単価路線に切り替え成功している。米国チェーンの最近の動向はファスト・カジュアルと言う健康と高品質を全面に出した業態だ。この業態の売上げ規模は外食売上の2%を占めているにすぎないが、外食全体の売上伸び率が4.5%に対して15~20%と高い。そして、平均年収が75000ドルと米国平均の倍の高収入を持つ18~34才の働き盛りが多く、外食トレンドに大きな影響を与えている。  お酒の比率が高いカジュアル・レストランと言う業態で育った人たちが一人で食事をする場合でもファスト・フードのような貧弱な内装と料理、雰囲気では満足できないわけだ。また、所得層の高い人たちは学歴も高く、体の健康に気を使っている。現在の米国ではファスト・フードの料理は肥満の原因であるし、トランス脂肪酸を含む油脂を使用していたり、ポテトなどの炭水化物を高温の油脂で上げると発がん性のアクリル�アミドを発生させるなど、健康に良くないと言う認識が一般的になり、過激な消費者団体が大手ファスト・フードに訴訟を起こし、多額の賠償金を支払わせている。また、数年前よりアトキンス・ダイエットと言う、肉と野菜を中心の料理が米国人好みのダイエットとして人気が出てきている。

そこで、ファスト・カジュアル各社は、

<1>注文後生の材料から丁寧に調理する
<2>缶詰などの保存食料品を使わず、すべて生の素材
<3>ファーストフードのように冷凍食材は使わず、生の食材から調理する
<4>動物性油脂を使わないので、健康的です。
<5>うまみ調味料などのごまかしを使わず、自然のうまみを組み合わせておいしい味を実現します。(米国ではうまみ調味料を摂取すると赤面や、動悸が高くなったり、発汗する、等のアレルギー症状を訴える人がおり、うまみ調味料をいやがる傾向がある。) 等を売り物にして大人気となった。
メニューと店舗コンセプトはファスト・フードよりも、大人にターゲットを合わせたメニューであり、客単価は6ドルから9ドルの間である。そして、よりアップスケールな内外装デザインを採用している。サービスはセミセルフサービスで、注文してお金を払ってから客席につき、料理は後から運ばれる。人々はより良い品質や鮮度の高い料理を求めており、注文後調理をしてくれるなら多少の時間は待つ。料理は、ベーカリーカフェ、ハンバーガー、スープサラダ、イタリアン、アジアン、メキシカン、ベーカリー、HMRまでも含んでいる。もう一つの特徴は大人をターゲットにしているので、ビール・ワインなどの軽いアルコールを置いていると言うことだ。 ファスト�カジュアルの創始者は1982にレストランコンセプト作りの天才 Phil Romanoが開業した、Fuddruckersだと言われている。Phil Romanoは経営から離れたが、現在もチェーン展開を継続しており200店舗以上の店舗展開をしている。 このファスト�カジュアルの外食チェーンは斬新な内外装と高品質な料理を売り物にしており、日本外食企業が導入をするべく虎視眈々と狙っている。 モスバーガーは2年ほど前に匠レタスと言う大型の焼き上げた肉をレタスで包んだお洒落なハンバーガーを売り出して大ヒットしたが、これは米国のファスト・カジュアルのハンバーガーチェーンのメニューにヒントを得たと思われるように提携だけでなく、商品開発のヒントとして米国視察が増えている。

また、ファスト�カジュアルなどのチェーン企業だけでなく、米国の有名レストランとの提携が増えている。 元々はKFCのフランチャイジーであったWDI社はカプリチョーザのコンセプトの展開権を元にチェーン展開を行って成功した経験から、最近は海外の有名レストランとの提携を多く手がけている。トニー�ローマ、スパゴ、ハードロックカフェ、に続きババ・ガンプ・シュリンプ、イル・ムリーノ、の高級店に引き続き、西海岸で大人気のカリフォルニア�ピザ�キッチンと提携し、さらに高級店との提携を計画している。高級店の場合そのコンセプトの開発には膨大な努力が必要だが、提携することによりよりたやすく高級な店舗を展開することが可能で、東京に開店する高層オフィスビルなどでの出店に加速をつけるようだ。 ベリーニ�カフェやモーパラなどのチェーン展開をしている中堅外食企業のワンダーテーブルは西海岸の有名ローストビーフ専門店のロウリーズ�プライムリブとの提携後数年経過したが、ニューヨークの大人気レストラングループのユニオン・スクエアー・ホスピタリティ・グループと提携し、お洒落なレストランを展開することを発表した。

給食大手のシダックスは5月1日、米高級レストランチェーンのレストランホスピタリティLLC(ニューヨーク州)を6月に買収すると発表した。高級店の運営ノウハウを吸収し、日本国内で高級レストランチェーンの出店を検討する。買収額は約23億円で、別途約51億円の増資も引き受ける。レストランホスピタリティは持ち株会社で、傘下の企業がニューヨーク、ロサンゼルスなど米都市部に客単価1万円程度の高級店を50店展開する。シダックスは大衆飲食店やカラオケ店の展開は得意だが高級業態の経験は不足している。その不得意な高級業態を展開するべく同社を買収したものと思われる。  その他、外食チェーンが急成長をしている韓国との日本外食企業との提携が増えている。日本のペッパーランチは韓国大手のノルブと提携をし、大手焼肉チェーンを展開する企業も大手フライドチキン宅配チェーンのBBQと提携の交渉をしている。日本企業にとって韓国外食企業のチェーン展開のノウハウは不要だが、本格的な韓国料理業態を韓流ブームに乗って急速に展開しようという考え方だろう。  このようにチェーン展開の可能なファスト�カジュアルのコンセプトだけでなく、高級業態の展開や個性的な味を目指した提携が増えていくものと思われる。

(4)既に進出していたり、これから進出を企てている外食チェーンとその特徴。

①クリスピークリーム

米国人にとってドーナツは朝食に必要不可欠の存在だ。早朝から働く米国人に取って、朝食は欠かせない存在だが、忙しい人の中にはコーヒーとドーナツで手軽に朝食を済ませる人も多い。ドーナツの適度な甘みが能を活性化をさせると信じているからだ。米国では早朝からの朝食ミーティングが多く朝7時から始めることがある。玉子とベーコンと言う米国的フルブレックファーストを摂りながら会議をすることは不可能だ。そこで、テーブルの上にドーナツやペイストリー、コーヒー、ジュース、ミルク、を並べセルフサービスで食べながら会議を進行する。効率を追求する米国企業に取ってドーナツは必要不可欠な食べ物なのだ。また、米国人の昼食は日本人と比べると質素で、通常の昼食時間は30分ほどで、ブルーワーカーであればサンドイッチとフレンチフライにコーラと言う食事だ。オフィスワーカーは時間に追われているから場合によっては昼食抜きだったり、コーヒーやコーラとドーナツかクッキーと言う簡単な物だ。

朝食としてのドーナツマーケットはにおいて、ダンキンドーナツ(ちなみに、ミスタードーナツはすでにない)は長年首位の座をしめていたが、その首位のダンキンドーナツの座を脅かす存在が誕生した。全米で人気沸騰中のドーナツチェーン「クリスピークリーム」だ。http://www.krispykreme.com/ 創業者がフランス料理のシェフから、イーストドーナッツのレシピを買い、ノースカロライナ・ウインストンセーラムの小さな工場で1937年に創業した。工場の前の道路にホットフレッシュという看板を掲げて、「いま揚げたてですよ」と謳って販売をしたのが始まりだ。

それがいまブームになったのは以下の3つの理由だ

<1>信頼できる商品
ファーストフード店舗の厨房は客からは全く見えず、手作り感がなく、どうやって作っているか分からず、美味しさを感じさせない。そこで、クリスピーは、「ドーナツシアター」と呼ぶ工場で、作っている様子をガラス張りにして見せて、出来立てのフレッシュ感をアピール、徹底的に鮮度と味と清潔感にこだわった。従来のドーナッツは冷めたものを売るのが当たり前だったが、できたてのアツアツのドーナツを売ることで大ブレークした。

<2>ドーナツへのこだわりと高い商品イメージ
ダンキンドーナツはドーナツ以外にもベーグルなども加えて売り上げを上げようとして、それがドーナツ店としてのイメージを薄くしているが、クリスピーはドーナツにこだわり、高級なドーナツとしてのイメージを植え付けた。 クリスピークリームは製造工程の合理化という面ではマクドナルドに見習ったが、商品イメージという意味ではスターバックスを見習っている。マクドナルドは大量のテレビコマーシャル放映やディスカウント戦略で売り上げを上げているが、スターバックスはテレビコマーシャルをせず、産地への援助やチャリティで商品イメージを高く保っている。クリスピーはそれを見習い、テレビコマーシャルを一切行わず、チャリティに積極的に取り組んでいる。ドーナツを買う毎に寄付を自動的に行う仕組みだ。チャリティに積極的に取り組むのはキリスト教の信仰心の厚い、比較的裕福な人たちであり、その人達の信頼を勝ち取ったクリスピーのドーナツはダンキンドーナツよりも一段上の商品イメージを獲得することに成功したのだ。  ダンキンドーナツなどは空腹をみたす食品の位置づけだが、クリスピークリームはご馳走として認識されており、ビジネスマンが他社を訪問する際にお土産としてクリスピークリームを一箱(ダース)持参すると、オフィスの人たちが集まってきて大人気となっている。

<3>カンファタブルフード お袋の味
イラク戦争や不景気の影響から、人々は不安感にさいなまされるようになっていた。そんなときには心が和む、ホットするような食品を食べたくなる。ドーナツというのは歴史のある家庭で作る簡単な料理だ。いわばお袋の味である。しかも、クリスピークリームのドーナツはダンキンドーナツなどの従来の堅いドーナツと異なり、「口にいれたらとろける」フワーッとしたドーナツは、不安を癒す最適の食品となって人気を呼んでいるのだ。 クリスピークリームのドーナツシアター(工場)を見てみよう。午前10時にショッピングモールの入り口にある独立店のドーナツシアターを訪問した。工場の中には40席ほどのイートインスペースとドライブスルー機能を備えている。驚いたのは他のファーストフードががらがらの時間に続々と客が訪問し、1ダース入りのドーナツを2~3ケースと大量に買い求めていくことだった。しかもドライブルーは常に車が5台ほど並んでいるという大盛況だ。その理由は

<4>ガラス張りのキッチンで信頼できる商品を作る
ファスト・フード店舗の厨房は客からは全く見えず、手作り感がなく、どうやって作っているか分からず、美味しさを感じさせない。そこで、クリスピーは、「ドーナツシアター」と呼ぶ工場で、作っている様子をガラス張りにして見せて、出来立てのフレッシュ感をアピール、徹底的に鮮度と味と清潔感にこだわっている。従来の冷めたドーナッツと違いアツアツのドーナツを売ることで大ブレークした。  工場は清潔でゴミ一つ落ちていない。ドーナツをこねる工程から、品質チェック、発酵、揚げる、グレージング(ハニーディップをかける)、冷却工程、全てをガラス張りで公開している。ガラス張りの部分には高い段をつけて、幼稚園くらいの小さな子供でも見学できるようにしている。  毎日、幼稚園や小学校の見学を受け入れており、30分ほどの見学の後は、帽子とパンフレット、揚げたてのドーナツとソフトドリンクが無料で振る舞われます。小さな子供だからお母さんもついてくるが、お母さん達にもドーナツをくれる。子供もお母さんもニコニコだ。

<5>品質の差別化 ドーナツへのこだわりと高い商品イメージ
ダンキンドーナツはドーナツ以外にもベーグルなども加えて売り上げを上げようとして、それがドーナツ店としてのイメージを薄くしているが、クリスピーはドーナツにこだわり、高級なドーナツとしてのイメージを植え付けた。  シアタータイプの大型店ではドーナツの製造能力は4万個から8万個あり、通常のダンキンドーナツ店舗の10~20倍以上の能力を誇る。  クリスピークリームは機械で加工するので、かなり柔らかい生地でも加工が可能であり、揚げた後に口の中に入れるとまるで溶けるような柔らかさとなる。ドーナツの種類はイースト菌発酵のドーナツとベーキングパウダーで膨らませるタイプのケーキとチョコレートケーキ、そして、玉子の黄身の力で膨らませるフレンチクルーラーという4つの生地に分かれる。  クリスピークリームはその4種類を製造しているのだが、イースト生地の味がフレンチクルーラーのようにクリーミーで柔らかい。しかも熱々の状態で食べても大丈夫だ。これには驚かされた。そして、シアターを訪問すると必ず試食の熱々のハニーディップを丸ごと1個食べさせてくれる。その気前の良さに思わず1ダースを買い求めてしまう。普通はドーナツを縦にして箱に入れるが、クリスピークリームはドーナツの形を崩さないようにケーキのように上向きに並べて、彩りを楽しめるようにしている。  米国では手土産の習慣はあまりないが、その中でも別格なのはクリスピークリームだ。1ダースのドーナツをお客様のオフィスや部下の女性スタッフにお土産に持っていくと大歓迎され、仕事がはかどるという。そこで、男性のお客様も朝から、まるで高級なケーキのように1~2ダースを買い求めに来るわけだ。

2006年6月26日号NRN誌TOP 100 CHAINSによると2004年の売上げ順位41位に対して、2005年度米国レストラン業界売上順位51位と順位を落としているが売上げは880ミリオンドル。店舗数は334店舗だ。これは米国で人気のダイエット、アトキンス・ダイエットの影響と、同社の経営トップの財務などの不手際による株価の急低下が原因だ。しかし、2年ほど前にロッテグループが提携して韓国で開店したクリスピークリームの店舗は大人気で、その勢いを買って、日本ではロッテグループがリヴァンプと組んで店舗展開を行う予定で、2006年秋には新宿に大型店を開店の予定だ。

②クイズノスサンドイッチ

米国人にとってサンドイッチはお握りやお弁当のような日常食だ。米国人の朝は日本よりも2時間ほど早い。家で朝食を取る時間がないので、朝食をコーヒーショップやファスト、フードでたっぷりと食べる。昼の休憩は30分ほどしかないのが通常であり、持参したサンドイッチとポテトチップ、コーラというのが一般的な昼食だ。朝が早いので昼飯も外食となるのだが、30分では外に出かけられない。そこで、会社への通勤途中にサンドイッチショップでサンドイッチを買い求める。サンドイッチと言っても四角い食パンのサンドイッチではなく、サブウエイのようなサブマリンサンドイッチ(コッペパンのような形状のパンを言う)を買い求める。時間が経ってから食べるので、野菜とソーセージやハムなどを挟んだ冷たいサンドイッチだ。この習慣を利用して急成長を遂げたのがサブウエイだ。サブウエイのサンドイッチは労働者向けの低価格が売り物であったが、健康志向のファスト・カジュアルの影響をうけ、労働者向けだけでなく、高級な食材を使った、サンドイッチのチェーンが発生した。それが、クイズノスだ。5年ほど前にその成功ぶりを見た日本人駐在員が日本でチェーン展開を開始した。ファスト・カジュアルのブームを先取りしたなかなか先見性のある判断だった。一号店は山手線有楽町駅前に開店し、大繁盛だった。契約をしたのは米国チェーンが800店の頃であり、3年で10店舗を展開したが、その時点で何と8億円の負債を抱えてしまった。

その原因は
1)絶対に儲からない仕組み
<1>出店契約の縛り
契約は3年以内に10店舗を開店するという無理な内容だった。あまりに短期間の出店は売上が予測を下回り、平均売上が250~300万円と言う悲惨な状態だった。 サンドイッチなどのパン食は米を主食とする日本人にとって必要不可欠な食事ではない。最初のうちは売上が低いので、口コミやパブリシティなどでじっくり店舗展開をしないといけない。もし、短期間で展開するにはファースト・フードのように莫大な費用を使ってテレビコマーシャルを打たなければいけない。つまり、当初に無理な出店計画を契約に入れてはいけないと言うことだ。 無理に展開をして、販売促進などの売上促進策のバックアップがなかったために出店5年目にして既存店の売り上げが低下するという悲惨な状況となってしまった。

<2>利益構造
サンドイッチのパンを供給するパン工場が必要だ。日本の場合さて、パン工場は寡占化しており、販売店よりもパン工場の方が強い立場にあり、パンの仕入れコストは大変高い。使用する具材のコストを考えると肉などのタンパク質よりも野菜が高いのだ。米国は農業国であり、南米まで含めると年間を通じて豊富な野菜を安価に供給できるが、島国の日本の場合コストが高くなる。その結果食材原価が40%、人件費35%と、常識的な数値を15%越えていた。 もう一つの問題は契約金が2億8000万円と高価であったこと。サンドイッチェーン展開であれば、契約金は1億円程度である。そして、ロイヤルティの7%は、米国には約3%を支払い、日本の会社は3%をとる。残りの1%は日本人創業者の米国法人が受け取るという仕組みだ。このロイヤルティの高さが致命的だった。 ちなみに日本マクドナルド社の米国へのロイヤルティは創業後30年間、たったの1%だった。それが日本マクドナルド社の財務基盤を盤石にし、外食産業ナンバーワンの位置に着けた理由だ。

<3>不動産の失敗
5年で破綻させた最大の原因は不動産に対する知識のなさだ。1号店は好立地であったが、残りの店舗はことごとく失敗した。その契約内容を見て驚いたのだが、不動産の知識が欠如していることだ。通常の不動産契約は、賃貸借契約であり、期限を定めて借りる。通常は坪当たり、2~3万円の家賃とその10ヶ月分の保証金を積む。借手としては保証金を積むのであるから、契約期間内は退去の必要がない。もう一つの契約は期限を定めない業務委託契約だ。これは百貨店などのショーケースを借りた販売契約で、期限を定めない契約であり、オーナーはいつでも退去を要求できる。その代わり、保証金は不要であり、家賃は売上歩合となる。  ところが、外部の不動産担当者は業務委託契約でありながら、保証金と固定家賃の契約にしてしまった。しかもある2店舗は50mも離れていない場所であった。こんなひどい出店のやり方ではあっという間に赤字は累積する。 5年後には既に8億円以上の累積赤字となってしまい、日本からの撤退を余儀なくさせられてしまった。 日本では失敗したクイズノスだが、先に述べたようにこれは日本側の経営手腕の不足である。本国のチェーンはまだまだ、急成長しており、2006年6月26日号NRN誌TOP 100 CHAINSによると2004年の売上げ順位36位に対して、2005年度米国レストラン業界売上順位34位と順調だ。売上げは1529ミリオンドル。店舗数は日本での最初の提携時の800店舗から4200店舗に急成長している。それに注目したドミノ�ピザを展開するワイ・ヒガ・コーポレーションが2004年頃より提携交渉を行い、2006年秋に銀座に1号店を改定する予定だ。

③パネラブレッド

米国人の健康志向に沿った形でメニューを組み立てて、業態を変換して大成功したのがパネラブレッドだ。本社はミズリー州、リッチモンドハイツにある。 パネラブレッドは元々はフレンチサンドイッチショップカフェを経営しているオー・ボン・パンとして1981年3月にボストンで設立された。
http://www.aubonpain.com/
その後、東海岸を中心にチェーン展開をしていった店舗は、店内でパンを焼き上げ、そのパンで新鮮なサンドイッチを作るという物で、サブウエイなどのサンドイッチよりより高級なイメージで80年から90年にかけて急成長を遂げた。サンドイッチだけでなく、欧風の濃いブレンドのコーヒーを特別開発のコーヒーマシンで抽出し、提供するグルメコーヒーとしても人気を呼んだ。そのコーヒーマシンに注目したスターバックスは同社の主力のコーヒーマシンとして採用するようになった程だ。 急成長する勢いで、1993年の12月に同社はSaint Louis Bread Co.(セントルイスブレッド) と言うセントルイス市にサンドイッチカフェを直営19,フランチャイズ1店舗を経営する会社を買い取った。このお店はサンフランシスコ名物のサワードー(酸っぱい独特の香りのするパン)を売り物にした。その後、パンやベーグル、ビスケット、等だけでなく、客の好みで組み立てるサンドイッチや、健康的なイメージのサラダ、サワードーをくりぬいて入れたスープ等を加えるようになった。1998年、当時の社長のロン・シャイチRon Shaich氏は、セントルイスブレッド社Saint Louis Bread Co.と言うチェーン名をパネラブレッド社Panera Bread.に変更した。 そして、大規模な製パン工場を設立し、チェーン展開へ加速を付け、かつ、原材料費を削減しようと目論んだ。しかし、その大規模な製パン工場の投資額は多額で、大きな負担となってしまった。また、同時期にニューヨークなどの大都市に展開をしていた、オー・ボン・パンAu Bon Painのサンドイッチショップはスターバックスなどの競合相手の進出により売上に大きなダメージをうけ、前年対比売上が低下し、同社の資金繰りを圧迫し始めた。 やむなく、1999年5月にオー・ボン・パンAu Bon Pain Co.は母胎であったAu Bon Pain bakery-cafe business 部門を売却し、会社の名前をパネラブレッド社Panera Bread Company.に変更し、Panera Breadと Saint Louis Breadと言うブランドに専念しだした。

結果的にイメージの古くなったオー・ボン・パンAu Bon Pain Co.のサンドイッチ業態から、より高所得者層にアッピールする、健康的なイメージの焼きたてパンとスープ、サラダに商品を転換することで、ファスト・カジュアルのジャンルの中で大人気となったわけだ。  ファ・ストカジュアルが注目されているのは規模が小さいのにも関わらず、顧客のブランドに対するロイヤリティが高く、それが企業イメージをあげ、売上の対前年伸びが大変高いと言うことだ。 TNS Intersearch社が作成した米国人1000名に行ったアンケート式の消費者調査。
http://www.tns-i.com/ Fast Food
Consumer Commitment Study によると、ハンバーガーのジャンルの売上で、1位はマクドナルド、2位はバーガーキングだ。2002年はマクドナルドとバーガーキングは合計で$909.4 millionドルを広告宣伝で使用し、その結果マクドナルドには4%、バーガーキングには6%の人がブランドロイヤルティを感じている。2大チェーンよりも売上の遙かに低い、サブウエイとウエンディーズは合計で $498.7 millionドルを広告宣伝に使用したが、サブウエイには12%、ウエンディーズには10%の人がブランドロイヤルティを持っており、遙かに効率が高いといえる。 さらに、10人の内3人の消費者はどのファーストフードのブランドにもロイヤリティを感じてない。ファーストフードに行く顧客の内、5人に1人はたった一つのブランドにロイヤルティを感じているだけだ。地域限定のチェーンとしてはパネラブレッドPanera Bread,イン・アンド・アウト In-n-Out(西海岸中心のハンバーガーチェーンで、日本のモスバーガーのように人気が高い), チポトリChipotle(マクドナルド傘下のメキシコ料理チェーンです。味は一番美味しい) 、チック・フィラChick-fil-A(南部、アトランタ周辺のチキンサンドイッチチェーンで、大変高く評価されています)、に対して消費者はもっとも高いブランドロイヤルティを持っている、と言う調査結果が出ている。

2006年6月26日号NRN誌TOP 100 CHAINSによると2004年の売上げ順位 位39に対して、2005年度米国レストラン業界売上順位35位と順調だ。売上げは 1508ミリオンドル。店舗数は831店舗だ。  パネラブレッドの急成長振りと店舗の斬新なデザインとメニューに惚れ込んだ日本の外食チェーンは数多く、複数の日本企業が同社と交渉を重ねているが、一度経営破たんしかけた同社は大変慎重で、日本のマーケットと提携先の分析を行っているが、来年には日本に進出するものと思われる。

④コーナーベーカリー

シカゴのレタス・エンターテイン・ユウ社が1920年代のニューヨークのイタリアンをイメージに開発した大型イタリアンのマジアーノはお店のコンセプトの素晴らしさと料理のボリュームで大食漢の米国人に大人気のレストランとなった。このマジアーノ内にベーカリーショップをおき、手づくり感を出す演出もレストランの人気につながった。シカゴに開店した1号店は角店であったことにちなみ、コーナーベーカリーと命名した。そのベーカリーショップが本業のマジアーノを凌ぐ人気に注目したレタス社は、シカゴでダウンタウンやオフィス街、ショッピングモールに独立した店舗としてコーナーベーカリーを展開した。コンセプトは焼きってパンを武器に、朝食、ランチ、ディナー、パンの持ち帰り、と4毛作を狙ったものだ。主力商品は焼き立てパンと注文してから造り上げる高級サンドイッチが売り物で、そのお洒落な内外装、新鮮な焼き立てパンは大人気となり、その後ショッピングモールから出店要請が相次ぐようになった。 この人気コンセプトにダラスに本社を構えるカジュアルレストランチェーン最大手のブリンカー�インターナショナル社が注目し、その全国展開権をレタス社から購入し、全国のショッピングモールで展開を開始している。主にショッピングモールに展開しているが、サンドイッチや料理を提供するために客単価が高く、一時は平均年商が1億5000万円を売るお店となった。ただし、大型のベーカリー機器が必要であり、設備投資が高く広い店舗面積が必要であった。また、パンを作る職人のトレーニングと人件費の負担が高いという問題もかかえた。また、このベーカリーショップとサンドイッチと言うコンセプトはクイズノスやパネラブレッドと言う強敵の多いジャンルであり、ファスト�カジュアル業態に不慣れなブリンカーインターナショナル社にとって重荷になりつつある。業界では将来ブリンカー社は売却をするものと見ている。

2006年7月15日号R&I誌TOP 400 Restaurantsによると2004年の売上げ順位153位に対して、2005年度米国レストラン業界売上順位156位と不調だ。売上げは184ミリオンドルだ。レタス社はミスタードーナツを展開するダスキンのためにイタリアンのツチバヌーチ他などのコンセプト開発を行っており、日本のマーケットや企業を知っており、日本での展開も視野に入れているものと思われる。

⑤ディーン&デルーカよりも凄い超繁盛の中食業態

ニューヨークには高級レストランも多いのだが、忙しいビジネス外をかかえるマンハッタンではデリ(お総菜)の人気が高い。レストランでゆっくり食べる時間がないので、高級レストラン以上の味付けのお総菜を揃えた高級デリが軒を連ねている。その最高峰のデリ ディーンアンドデルーカが日本の伊藤忠とすかいらーく経営陣の一人、横川紀夫氏と提携して日本に進出した。
http://www.deandeluca.com/
ニューヨークのデリの多くは移住したイタリヤ人やユダヤ人が開業し、品質の高さから高く評価されており、日本の中食ブームに乗ってさらに新業態が日本進出を狙っている。 マンハッタンを訪問する日本人にディーン・アンド・デルーカ以上に人気のあるのが、ニューヨークの57丁目にあるマンジアMangiaという高級な中食の店だ。フレッシュサラダやグリル料理、薪釜で焼き上げるピザ等、注文してから調理する複数の屋台を並べており、忙しい人には出来上がった惣菜や温かいスープ、肉料理を用意している。客は自分の好きな料理をさらに盛りつけ、レジで清算し店内で食べるか持ち帰りをする。入り口にはベーカリーとグルメコーヒースタンドがあり、そこで簡単な朝食をとることができる。店内の内装は大変お洒落で大人気の中食店舗だ。
http://www.mangiatogo.com/
マンジアは、マンハッタンに集中出店し、現在では最新のウオールストリートの店舗を含んで4店舗ある。4店舗しかないと思われるが、ウオールストリートの店舗は単独で年商8億円を売り上げると言われる規模だ。その秘密はケータリングだ。マンジアの売上げの65%はケータリングで、朝食から昼食、ディナーまでケータリングをしている。マンハッタンは企業が多く事務所を構えるだけでなく、高層マンションもあり、事務所向け、住宅向けのケータリングの需要が多い。マンハッタンにはケータリングをする企業が多いのだが、その中でマンジアはきちんとした身なりの従業員が高品質な料理を、お洒落なパッケージに入れて配達するので人気がある。 マンジアは中食業態だけでなく、2005年にはビレッジにイタリアンレストランを開業した。その名前はガスト(Gusto Ristorante Bar Americano)だ。レストランが軒を連ねている中にたたずむお洒落なイタリアンだ。 比較的に早い時間に訪問し、早速料理を注文した。女性シェフのジョディ・ウリリアムズJody Williamsが作るモダンイタリヤ家庭料理が売り物で。ワインを注文したら突き出しに真っ赤なラディッシュが出てくるのはお洒落だ。 あっさりした味付けとフレンドリーなサービスが人気で、お洒落な女性客が多いのがマンジアの経営するイタリアンらしさだ。隣に座った3名の女性グループの注文にびっくり。着席すると白ワインとデザートを注文している。軽くデザートだけ食べて帰るのかと思って見ていたら、次の料理がパスタだ。どうもデザートを軽い前菜代わりにしているようで驚かされた。帰る頃には満席で、特に格好の良いバーは満員電車のように人が群がっていた。 中食やケイタリングビジネスだけでなくお洒落なレストランを運営できるマンジアのビジネスは高層ビルの開店ラッシュの東京にぴったりだと、日本側のパートナーを探している。

*この他、日本進出が噂される動向

(1)カーバース Culvers
カーバース・フローズンカスタード&バターバーガー
シカゴは牛肉の集散地である関係で、Mortons などの有名なステーキ屋が軒を連ねているが、地場にホットドックやハンバーガーなどのチェーン店が多いのが特徴だ。ホットドックではポチュロという有名なチェーンがあり、日本ではJTが提携してシカゴドックの名称で店舗展開をしたことがある。
http://www.portillos.com/
そのシカゴに地元で人気のハンバーガー・チェーンがある。その名をCulvers カーバース・フローズンカスタード&バターバーガーという。 発祥の地がウイスコンシン州と言う、シカゴのあるイリノイ州の北隣の州だ。白とブルーの清潔な店舗はドライブスルーを備えている。通常のファスト・フードのように数台のレジスターを置いたカウンターがあり、そこで注文をすると、注文後にハンバーガーの調理を始める。 カウンターの中心にはアイスクリームメーカーを設置し、手作りのアイスクリームを作っている。これが売り物のフローズンカスタードだ。独立した部屋を作って製造をしていないので日本では保健所の規制でちょっと難しい仕組みだろう。

カーバースはファスト・フードではなく、ファスト・カジュアルのジャンルになる。それは新鮮な原材料と、注文後焼き上げる仕組みで、モスバーガーのように15分ほど待たないといけないからだ。清潔に保たれた店舗で待っていると焼きたてのハンバーガーを持ってきてくれる。 早速、試食だ。Butter Burger Cheese シングル2.09ドルを注文した。バターバーガーの由来はバンズを焼く前にバターをつけてこんがりと焼き上げるからで、バターのこんがりとした香りが最高だ。トースターはマクドナルドと同じタイプの低速仕様を使っている。マクドナルドなどのファスト・フードと異なりミートはフローズンでなくフレッシュで、両面にしっかりとシアー(焼け焦げ)をつけている。肉の味は濃厚で美味しいが、多分クラムシェルグリル(両面グリドル)で圧着して焼くのだろう、肉がつぶれて肉汁がほとんどないのが残念だった。 もう2つ試食することにした。Philly Ribeye Steak とSourdough Meltだ。 サンフランシスコ名物のサワードー(すっぱいパン)を使ったサワードー・メルトのパンはかりっと焼き上げられ、香りが良く大変美味しかった。サンドイッチメニューの豊富さはサンドイッチを中心にしたファミリーレストランと言った雰囲気だ。 デザートはもちろんストロベリーサンデーを試食。手作りのフローズンカスタードクリームはこくのある味でアイスクリーム好きにはたまらないだろう。 店内は清潔で綺麗に保たれているし、大勢いる従業員も親切なサービス振りだ。たいしたものだと同社のHPを拝見したら、創業者はシカゴに本社のあるマクドナルドのOBだった。

創業は比較的新しく、1984年7月18日、ウイスコンシン州のSauk市に1号店を開店だ。創業者はクレイグ・カーバー氏Craig Culverと奥さんのリーLeaさん、そして、お父さんのジョージGeorgeさんとお母さんのルースRuthさん夫妻だ。売り物はバターバーガーとフローズンカスタード、そして素晴らしいサービス。現在までにウイスコンシン州からテキサス州までの15の州に290店舗を開店。直営店は5店舗、残りの285店舗はフランチャイズ店だ。 クレイグとルース夫妻はクレイグさんを含む3名の子供に恵まれた。そして、何件かのサパークラブを経営しており、その影響で、クレイグさんはファスト・フードに興味を持つようになったのだ。 クレイグさんは大学に進み、夏休みにはお父さんのお店を手伝っていた。その時に将来の伴侶となるリーさんに出会った。1973年に大学を卒業しハンバーガーのマクドナルド社に就職し、4年間勤務し、その間にファスト・フードビジネスのノウハウを学んだのが,後に自らハンバーガービジネスを創業するきっかけだった。 カーバー家は何件かのレストランを経営していたのだが、大きな転機は所有していた元A&W(ハンバーガーとルートビアーのチェーン)店舗を改造したことだ。改造をする際に、彼らは新鮮な食材をフレンドリーなサービスと一緒に提供しようと思いたった。売り物はフローズンカスタードFrozen CustardとバターバーガーButter Burgersにすることにした。 1号店開店後,カーバースはその鮮度の高い品質で高い評判を呼び、フランチャイズの加盟希望者が続出した。そこで、フランチャイジーには夫婦で毎日仕事に就ける人を条件に加盟させることにし、希望者には店舗で実際に働く16週間のトレーニングプログラムを義務付けた。

そして、開店後はカーバーズ本社横に設置されたサポートセンターを通じて継続的な指導を受ける。 年間を通して衛生管理や経営管理システム、業界動向などのコースを受講できるようになっている。 西海岸にはインア&アウトと言う有名なハンバーガーチェーンがあり、生野菜やフレッシュな野菜やフレンチフライ、出来立てのシンプルで健康的なハンバーガーが売り物である。それに比べ、カーバースは健康志向とはちょっと異なるリッチなハンバーガーやサンドイッチ、フローズンカスタードを売り物にしている。ファスト・フードのような画一的な味とは異なる濃厚な味は食べると病み付きになることを保証する。シカゴの豊富な農産物と、マクドナルドと言う人材供給会社の生み出したすばらしいローカルなハンバーガーチェーンだ。

2006年6月26日号NRN誌TOP 100 CHAINSによると2004年の売上げ順位 99位に対して、2005年度米国レストラン業界売上順位92位と順調だ。売上げは480ミリオンドル。店舗数は312店舗だ。  まだ日本進出計画はないが、米国ハンバーガーのトップ人気のイン�アンド�アウトIN&OUTハンバーガーよりも日本人に会う味であり、日本に誘致したいハンバーガーチェーンの筆頭に上げられるだろう。
http://www.culvers.com/

(2)ビバリーヒルズの名物蟹料理店 クラステーシャン Crustacean

サンフランシスコに1971年から美味しいフレンチ・ベトナミーズの蟹料理店クラステーシャンCrustaceanがある。筆者の友人がビバリーヒルズで不動産屋を経営しており、彼が美味しいから絶対に訪問しなければいけないと、数年前にビバリーヒルズのお店に初めて連れて行かれ、大変気に入ってサンフランシスコのお店にも立て続けに訪問した。先日その友人の紹介で日本を訪問した、クラステーシャンCEOのエリザベスElizabeth Anと妹のキャサリンCatherine Anさんと話す機会があり、その歴史と今後の方針をうかがった。 クラステーシャンは彼女たちのお母さんが創業した。ベトナムの政府高官の家庭に生まれた彼女たちの母親のエレン・アン Helene Anさんは、裕福な環境に恵まれていた。政府高官のお父さんは訪問者をもてなすために、ベトナム料理、中華料理、フランス料理の3名のシェフをかかえて日夜顧客を接待していた。その料理の世界を見ていたヘレナさんは知らず知らずに料理のレシピーや調理のコツ、大勢の顧客をもてなす技を身につけていった。  その後、空軍将校と結婚して3人の娘に恵まれ幸せな生活を送っていたが、1975年のベトナム戦争末期のサイゴン陥落に伴い、着の身着のままで米国サンフランシスコに亡命することになった。サンフランシスコでは4年前の1971年にご主人のお母さんのダイアナDiana Anさんが20席の店名が昇り竜Thanh Longという小さなベトナム料理店を営んでいた。やがて、他の家族が頼ってきたときに生活の糧としてこのレストランがフルに活躍することになった。

蟹料理で有名なシカゴのボブ�チンは大繁盛店だが、リーズナブルで気楽なお店でジーンズにTシャツで訪問できる。しかし、このアン・ファミリーのお店はフレンチ・レストランの優雅な雰囲気で美味しいベトナム・フレンチのフュージョン料理を食べさせることでグルメ評論家に高く評価されるようになった。有名な料理はガーリックヌードルとロースティッド・ガーリック�クラブだ。ダンジネス・クラブは美味しいのだけれど、米国人にとっては蟹独特の香りが気になる。そこで、複数のスパイスとオイルをダンジネス・クラブにまぶして、丁寧に焼き上げることで、蟹独特の臭みを消し去ることに成功し、人気レストランとなった。そして1991年にサンフランシスコによりお洒落で大型のクラステーシャンを開店し、一気に人気店舗になり、米国人はもとよりサンフランシスコを訪問する日本人にも人気を呼ぶようになった。そして、1996年にはビバリーヒルズにより大型でお洒落なクラステーシャンCrustaceanを開店し、同地の映画スターや有名人が熱狂的なファンとなり、現在では3店舗で年商20億円近くを生み出すようになった。  人気の秘密を分析するとシークレット・キッチンによる神秘性の演出だろう。お店にはメインキッチンのほかにシークレット�キッチンを設けた。シークレット・キッチンに出入りできるのはアン・ファミリーだけであり、そこでは人気メニューのガーリックヌードルとロースティッド・ガーリック�クラブなどの独特の料理を作り上げる。このキッチンにより味の秘密は守れるし、料理そのものの神秘性が増し、1回は食べてみようと評判を呼ぶのだ。  もう一つの人気の秘密はライフスタイルだ。3代目は5名の娘たちという女系家族で、ビバリーヒルズ店を陣頭指揮している現社長のエリザベスさんは美貌デザイナーでもある。そのアン・ファミリーのフレンチ�ベトナミーズの優雅なライフスタイルと、その亡命から超繁盛店を女性たちで作り上げたというたくましい、ライフスタイルが米国人の共感を呼んでいるのだ。最近ワシントンのスミソニアン博物館でベトナム移民から苦労して大繁盛店舗を作り上げたということでアンファミリーが展示されるようになったほどだ。

まだ、数店舗のレストランであるが、エリザベスさんの構想はレストラン�ブランドはクラステーシャンにして、アンというブランドはライフスタイルを訴求することを考えている。現在はアン・ファミリーがデザインした箸を中心とする食器類を販売しているが、これから、スパイス、ドレッシングなどの食材のほかに、家具や洋服のジャンルまで幅を広げる予定だ。そのために外部コンサルタントを雇い、徹底したブランド・マネージメントを開始したのだ。  今回日本を訪問したのは、クラステーシャンの顧客には海外からの顧客が多いがその中でも日本人がダントツだということだ。顧客リストを聞くとびっくり、日本の大手製造業のトップクラスが名を連ねている。料理だけでなく、そのビジネス構想が素晴らしいお店だ。
http://www.anfamily.com
現在、日本の中堅レストランチェーンが提携を交渉しており、遅くとも来年には開店する見込みだ。

その他、有望なファスト・カジュアルチェーン
Chipotle メキシカン
http://www.chipotle.com/ Cosi,
ベーカリーカフェ
http://www.xandocosi.com/
Quizno’s,サンドイッチ
http://www.Quiznos.com
Fuddruckers, ハンバーガー
http://www.fuddruckers.com/
Corner Bakery ベーカリーカフェ
http://www.cornerbakery.com/
Boston Market, HMR、いわゆるお総菜
http://www.boston-market.com/
Panda Express. 中華
http://www.pandaexpress.com/
Pei Wei 中華

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Rubio’s Baja Grill  メキシカン,

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Panera Bread, ベーカリーカフェ
http://www.panerabread.com/
Souper Salad, スープとサラダ
http://www.soupersalad.com/
Baja Fresh メキシカン
http://www.bajafresh.com/
Montana Mills Bread Co ベーカリーカフェ
http://www.montanamills.com/

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