NEWSな外食2010「外食産業2009年の総評と2010年の展望」(商業界 飲食店経営2010年1月号)

2008年末のリーマンショックの影響をフルに受けた2009年は暗い話題の年であった。
2009年の暗い話題、明るい話題のトピックスを追いながら2010年がどのような展望を開けるか見てみよう。

1) リストラ すかいらーく 最後のお店がクローズ
『すかいらーくは2009年10月29日「すかいらーく」ブランドの最後の店舗である川口新郷店(埼玉県川口市)を閉店した。』
このニュースが2009年の最も残念でショッキングなニュースだ。すかいらーくは1970年に甲州街道の国立駅入り口にすかいらーく1号店を開店した。筆者は当時、レストラン西武(現、西洋フード・コンパスグループ)経営のダンキンドーナツ部門が同時期に開店した2号店、国立店の開業に携わり、仕事を終えた後深夜まで営業していたすかいらーくのお店で食事をしていた深い愛着のあるブランドだ。その後、一時小金井市に住み三鷹の井の頭通り沿いにあったすかいらーく本社前を通って新宿まで通勤をしていたことがある。当時、筆者はマクドナルドに転職をしており、環状8号線と井の頭通り角に開店したマクドナルド・ドライブスルー1号店で調理システムとドライブスルーシステムの研究開発をしていた。筆者は米国視察旅でドライブスルー展開の重要性に気が付き、ドライブスルー店舗の急展開を要望していたが対応が遅れ、その間に着々と人口増が進んでいた三多摩地区中心に店舗展開していたすかいらーくに、郊外型店舗の出店では大きく出遅れてしまった思い出がある。そんな愛着と思い出があるすかいらーくブランドが消え去ったのは大変さみしい思い出だ。
勿論、すかいらーくが企業として生き残るために、すかいらーくブランドをガスト、ジョナサン、バーミヤン、夢庵、や新コンセプトのブランドに展開するのはやむを得ないかもしれない。確かに家族構成が変わった現代では従来のようなファミリーレストランの役割は終わったのかもしれないが、長年親しんだブランドを捨ててもよいのかというマーケティング上の問題を考えされられる。また、業界大手のロイヤルやデニーズの既存店の大量閉鎖が発表され実行に移されている。
2005年にイトーヨーカ堂グループがセブン&アイ・ホールディングスを設立し、2006年にかけて傘下の企業の看板をすべてセブン&アイ・ホールディングスの看板に切り替えた。傘下の外食部門のデニーズはあの特徴的な六角形に黄色字に赤でDenny’sと書いた看板を四角な看板に切り替え、表示をセブン&アイ・ホールディングスにしてしまった。おかげで、多くの人はデニーズがセブン・イレブンに変わったと誤解して店舗の売上に影響を与えたようだ。後にその看板は四角いままではあるがデニーズの文字を大きくする対策を実施し、新店舗に関しては以前とまったく同じ六角形の看板に戻すとうブランドマーケティング上からは考えられないドタバタな作業を行っている。
では、米国ではどうであろうか?日本で外食産業が産声を上げた時に参考にした米国外食企業にIHOP(インターナショナル・ハウス・オブ・パンケーキ)という1958年創業のパンケーキが売り物のファミリー業態である。2007年にはカジュアルレストラン大手のアップルビーズを買収しダイン・エクイティという持ち株会社を設立したが、傘下のIHOP社の店名は変更していない。勿論、パンケーキの朝食営業中心のビジネスから、サンドイッチや肉料理などのメニューを拡大し、店舗のイメージや内外装を変更するなど現代にも通じるイメージ刷新を行っている。また、米国のファミリーレストランは比較的直営店舗展開が多いのだが、IHOPは創業当時からフランチャイズ展開をしており、現在のフランチャイズ比率は95%以上ある。直営店舗を多く抱えて苦労していたアップルビーズを買収した後は、活性化対策として直営店舗のフランチャイズ化を実施し収益構造の効率化に取り組んでいる。勿論、ファミリー構成人数の減少という問題を抱えているのは米国も同様であり、少人数の顧客に対応して、ファスト・カジュアル業態のIHOPカフェのテスト店を開くなど、イメージの刷新を行っている。その他の米国ファミリーレストランではデニーズ、ビッグボーイ、ココス、などはまだ健在で店名の変更などは行っていない。
このIHOPのケースを見てみると古いロゴを大事にする明確なブランドマーケティングを実施しているのが分かる。すかいらーくブランドでいえば39年間に投資した膨大なマーケティング費用(店舗の看板、テレビコマーシャル、パブリシティ、チラシ、などを含む)を零にするという、大変もったいない対応だと言えるだろう。
ファストフードの例を見てみよう。米国マクドナルド2000年代全般には店舗の内外装やイメージ、健康的でない商品、等のコンセプトやイメージの陳腐化が目立つようになった。2005年に創業50周年を迎えた時に、本社のあるシカゴの店舗を全面的に改装し、斬新な内外装、マックカフェの併設、ロゴマークの見直し、ユニフォーム、店内音楽、などの総合的な見直しを実施した。マクドナルドの場合、マクドナルドのロゴマークの変更はないように見えるが、定期的なマーケティングリサーチを実施し、数年に一回ロゴマークの字体や、色、看板の形や色合い、などを微妙に変化させ、陳腐化を防いでいる。KFCやバーガーキングも同様に看板やロゴマーク、店舗内外装などを微妙に変化させ、消費者に飽きられないようにしている。米国では倒産でもしない限り、ブランド名を廃止することは考えらないのだ。日本のファミリーレストランは生き残るために新業態の開発や場合によってはブランド名の変更も行いようだが、マーケティング上の慎重な対応が必要だといえるだろう。

2) 企業のM&A と売却
<リストラ>
デニーズ130店舗閉鎖
ロイヤル 60店舗閉鎖
WDIの直営の2割19店舗閉鎖
ベンチャーリンク2008年12月期89億円の赤字
牛丼吉野家グループの京樽赤字18億円
ピエトロ直営店舗9店舗閉鎖
北国商事(らーめん どさん子)MS&Consulting(覆面調査会社)売却
日本ハムが子会社にしていたスエヒロテストランシステムをあみやき亭に売却
モスフードサービスは「ステファングリル」をペッパーフードサービスに売却。
吉野家は買収したびっくりラーメンチェーンを閉鎖、京樽18億円の赤字、上海エキスプレスをJCコムサへ売却
すかいらーく介護事業からの撤退

<MBO>
給食のLEOCの実質的なMBO
スシロー 投資ファンドのユニゾン参加に入り、ファンドと合併上場廃止
チムニーのMBO
ワンダーテーブル、実質的親会社のヒューマックスグループによるTOB(MBOに近い)

<買収>
大庄 築地寿司岩を買収
ダイヤモンドダイニングのフードスコープの買収
際コーポレーション 康和産業の珍珍珍、サンフレックス永谷園の餉餉等4店買収
阪神酒販がアスラポートを買収

景気低迷の2009年にリストラを実施し、本業回復を目指している企業も多いが、同時に、業績拡大のチャンスだと不振企業の買収に乗り出す企業も多い。また、大胆なリストラを目指して、投資ファンドなどとMBOを実施する企業も増えてきた。
一番積極的な企業はゼンショーであり、牛丼では同業のなか卯の買収を皮切りに、ファミリーレストランのビッグボーイ、ココス、サンデーサン、華屋与兵衛、大和フーヅ株式会社などを続々と買収し、直近では老舗コーヒーチェーンのアートコーヒー35店舗を買収した。 同業でありライバルの吉野家はBSE問題で牛丼が売れなくなった苦い経験から多角化を推し進め、以前に買収していた京樽に続き、びっくりラーメン、はなまる、どん、牛繁ドリームシステムズ、などを続々と傘下に収めたが、京樽は経営不振で18億円の赤字決算になり、びっくりラーメン事業は不振のため廃止、ステーキのどんは夏に食中毒をだす、等の惨憺たる有様であり、早晩本業回復に取り組まざるを得ないだろう。
ゼンショーも傘下のファミリーレストラン業態の経営不振が足を引っ張っており、有利子負債の増加もあり、今後は事業の選択をせざるをえなくなるかも知れない。
この時期に財務力のある企業は他企業の買収を行いうのはこれからも出てくるだろうが、本業との相乗効果と新しい業態の経営を熟知した人材が必要になってくるだろう。

3)王将現象
「餃子の王将」を運営する王将フードサービスは2010年3月期で期初から8月まで、前年同月比10%を超える大幅な客数増加が続く好調ぶりだ。その勢いで出店数を計画比3割増やし今期32店展開と勢いが止まらない。
その他、日高屋、餃子の満州など中華業態が好調だ。しかし、この勢いを2009年09月21日の日経MJは「専門家によると、バーミヤンの客が王将や日高屋に移っているだけだとしている。すかいらーくグループの中華ファミレス、バーミヤンの店舗数は8月末時点で467店。2008年末から130店弱減った。推定で年130億円前後の売上高が失われている計算だ。この減収分が王将や「日高屋」を展開するハイデイ日高に流れているという見方だ。実際、王将の10年3月期の連結売上高は前期比14%増の627億円、ハイデイ日高の10年2月期は同15%増の230億円の見込み。2社の増収分を合計すると107億円になる。バーミヤンの減収分を王将などの増収分で相殺していると言えなくもない。」と指摘しており、冷静に考えると景気低迷の中全く新しいマーケットが誕生したのではなく、弱肉強食の時代だと言えるのであり、2010年もこの中華業態が強いとは言い切れないだろう。
ただ、同じ中華業態でもリンガーハットは数年不調を続けている。現在元気な王将や日高屋は、中華鍋を振って作る手作り感のある料理が人気であるが、以前中華鍋を使って調理をしていたリンガーハットは煮込み麺に変更するなど、中華鍋を廃止する試みをしているのが中華業態の繁盛に乗れない大きな理由だろう。繁盛する中華業態は、中華鍋を死守して、手作り感を持続させるメニュー開発が必要なのだ。

3) 280円均一価格の鳥貴族 の成功と均一価格居酒屋、居酒屋の値下げ
280円均一価格を売り物にする鳥貴族が急成長を遂げ、東京地区でも店舗展開に加速をつけている。低価格でいくら食べているかわかりやすいということで均一価格業態が増加している。居酒屋でも280円や300円の均一価格を売り物にする低価格業態に各社が参入をしており、2009年度の大きなトレンドだと言えるだろう。
ただし、単に小ポーションにして低価格を実現すると料理が安っぽく見えてしまう。仕入れの見直しや料理、人件費、投資額の見直しなどをしっかりして参入するべきだろう。居酒屋は空中階に容易に開店できるために、店舗数が増大しすぎ完全なオーバーストアーで今後とも競争の激化は否めない。その競合の厳しい中で業態の陳腐化が早く投資コストの回収を早くする必要があり、大手居酒屋チェーンは投資回収率を早くする試みを開始している。2010年も競争状態が続くので、撤退を余儀なくされるチェーンが出てくるかもしれない。

4) トリドールの丸亀製麺急成長と新規参入
500円以下で食べられる外食として、セルフうどん業態が元気だ。もともと焼鳥チェーン展開をしていたトリドールは鳥インフルエンザの影響でやむなく焼鳥業態からセルフうどんに展開し、当時のショッピングセンター新設ブームに乗り急成長した。現在は路面店の展開や都心での展開を始めている。
調査会社の富士経済によると、2008年の立ち食いそばやセルフ式うどん店の市場規模市場は07年比4%増の1680億円。09年も2・4%増の1720億円に成長するもようだ。店舗数は08年で7350店でハンバーガーチェーン(6295店)を上回るが、セルフ式うどん店に限ると大手チェーンの合計で約600店でだ。外食のうどん・そば市場は約1兆円あるとされる。
その、セルフうどんマーケットの急成長ぶりを見て、フジオフード、フレンドリー、三光マーケティングフーズ、セブン&アイ・フードシステムズはセルフうどんマーケットに参入を開始した。
景気低迷は2010年も継続するので、難しいノウハウをあまり必要としない低価格のセルフうどん業態に参入する企業は増えるだろうが、競合が激化すると早期の撤退を迫られる場合も出てくるだろう。

5) 食中毒・その他の事故
2008年は三笠フーズの事故米の偽装販売販売や外食企業の賞味期限改ざんなどが報道され、食に対するイメージは大きく低下していた。それに引き続いて、2009年夏には大手で230店舗を展開している「ペッパー・フード・サービス」や、吉野家傘下のステーキ店を200店弱展開している「どん」の2社は腸管出血性大腸菌o-157による大規模な食中毒が発生させた。「ペッパー・フード・サービス」は全国16店舗で35名の食中毒被害者がいる(2009年9月16日時点)。原因食材は、仕入先の食肉加工業者が加工したサイコロ状に成形した角切りステーキ肉がO-157に汚染されていたのが原因だ。加熱した鉄板の上で顧客に肉を焼き上げてもらうシステムだが、顧客が通常のステーキと勘違いして生焼けの状態で食べたことにより、肉内部に存在したo-157を殺菌することができずに食中毒が発生したのだと思われる。この事件は基本的に調理方法に無理があり根本的な見直しが必要だろう。
「どん」の事故の原因は同じくo-157に汚染された角切りステーキやステーキを使用したことで、8月末に関東を中心に展開する65店舗の内、約11店舗で食中毒を引き起こし、10名以上の患者を出してしまった。店舗の調理場で調理をしてから客に運ぶ仕組みであるが、17%の店舗での事故発生率であり、食材の加工方法、調理方法、または、調理機器に何かの問題があった可能性がある。
数年前に神奈川県を中心に30店舗ほど店舗展開をしていた老舗ハンバーグレストランチェーンが、生焼けのフットボール型のハンバーグを熱々の鉄板に乗せて顧客の目の前でカットし、真っ赤な肉の部分をひっくりかえし、顧客に焼き上げさせる調理方法により、o-157による食中毒を起こした有名な事件の教訓が生きていないようだ。
いくら細菌に汚染された肉でも、性能の良い加熱調理用のグリドルを使い、加熱調理をきちんと行い、メインテナンスをしっかり行い、調理トレーニングを厳しく行えば問題がないのであるが、景気低迷の中、何らかの手抜きがあったと言わざるをえない。
いくら景気低迷の中でも食中毒は起こさないきちんとした対応が必要だということだろう。
調理機器のメインテナンスという点ではファスト・フード大手のモスフードサービスは一酸化炭素中毒事故を2店舗で引き起こした。原因はフライヤー排気口に食材を落下させたために排気が十分にできず、不完全燃焼を起こし従業員が一酸化炭素中毒事故が発生した。事故後同社は本社が総額2000万円を負担して全店でCO検知機器やフライヤー排気口への落下物防止網を導入した。これは日ごろから調理機器のメインテナンスや性能確認をしていたり、一酸化炭素検知器を設置していれば簡単に防げた事故であり、各チェーンは日ごろから安全対策をおろそなにしてはならないという教訓だろう。この景気低迷時には費用削減をすることが多いが、安全対策を削減してはならないだろう。

6) コーヒー戦争
外食各社がコーヒー戦争に参入した。スターバックスなどのグルメコーヒーの台頭に対して、ミスタードーナツは価格を据え置いたまま、コーヒーを増量したり、品質を向上させている。また、都心対応のためにアンドナンドという新業態を造り、小型店などを開発して都心で働く人を対象のマーケット開発を行っている。マクドナルドも米国マクドナルドの開発したマックカフェの導入を開始したり、品質を向上させたコーヒーを訴求するために無料券の配布は時間限定のコーヒー無料提供などをしている。
この大手コーヒー企業やファストフードのコーヒー戦争への参入により老舗コーヒー企業のアートコーヒー経営のアートカフェ35店舗をゼンショーに売却した。アートカフェは東京地区でコーヒー焙煎業を営む老舗コーヒー企業で、UCC,キーコーヒーに次ぐ大手であったが、昨年にはコーヒー焙煎部門を三菱商事に売却し、今回は残ったカフェ部門も売却せざるを得なかった。大手チェーンの競争激化で街場の個人コーヒー店舗や喫茶店の廃業が続いた半面、原材料コーヒーの価格高騰などの難しい局面に売却を迫られたようで、昔からのファンとしては寂しい思いをさせられる。

7) 農業・安全・食の健康
<安全訴求のため国産の食材への切り替え>
リンガーハット国産野菜 値上げ
モスバーガー 国産の肉、野菜、ホタテ、などの採用
ピザハットは北海道の小麦粉
ロッテリアは北海道のポテト
シダックスはエスロジックで安全の追求
大戸屋山梨で野菜工場
テンコーポレーション
コロワイド
ロイヤルホスト
サイゼリア、ドトール・日本レストランホールディングスは水耕栽培
高級懐石料理の灘万 ジパングで国産野菜を使った懐石料理

<健康対策のために低カロリーメニューの開発>
すかいらーくの低カロリーメニュー開発
グリーンハウスのKiyo’sキッチン、女子栄養大との提携
エームサービスの食事履歴管理と体重記録の連動

中国製餃子への農薬混入問題以来、食材特に輸入食材に対する不信感が続いており、外食企業は国産の野菜や肉などに切り替えるようになっている。また、ワタミのように自社で農業に取り組み、自社で使う野菜を調達するようになった。この傾向は今後とも継続するだろうが、この不景気化で一番の課題はコスト上昇だ。リンガーハットは国産野菜に全面切り替えることにより、ちゃんぽんの販売価格を上げているが、この不景気では大変難しい戦略だろう。
国産食材への切り替えは来年も続くだろうが、単純に国産食材に切り替えるだけでなく、海外からの輸入食材への外食企業自らの管理関与を深めることも必要だろう。今後外食企業は国内マーケットの縮小から海外市場の活路を開くようになるわけだが、海外では海外での食材調達をしなければならず、今から海外の食材調達と品質管理を自ら行う必要があるのではないだろうか。
また給食業界や大手外食企業では国のメタボ対策に対応するために、顧客の健康管理に積極的に取り組み始めている。すかいらーくの低カロリーメニュー開発やグリーンハウスのKiyo’sキッチン、女子栄養大との提携、エームサービスの食事履歴管理と体重記録の連動などだ。この傾向は来年も引き続き続くだろう。

8)フランチャイズ化
マクドナルドは3割のフランチャイズ比率を5割に、将来は7割にする
KFC
フレッシュネスバーガーFCを強化
家族亭 得々製麺の新しいFC化
ペッパーランチ
ワンダーテーブルの鍋蔵をFC化し2012年までに30店舗
秀穂のとん太 業態転換でFC支援

外食各社は会社のリストラの一環として直営店舗のフランチャイズ化やフランチャイズ店舗の増加を行いだした。外食企業トップのマクドナルド社は米国においては約8割の店舗がフランチャイズ店舗であったが、日本は直営店に比重を置いた展開で数年前まで、フランチャイズ比率は2割程度であった。そのため、店長の勤続年数の増加とともに人件費が高止まりし、店長の担当店舗数増加などの負担により店長の残業問題が発生し、店長は管理職でないという司法判断が出てしまった。そのような直営店舗の負担や投資資金回収の問題から、米国と同様のフランチャイズ比率に近付けるために、直営店舗をまとめてフランチャイズ化しすでにフランチャイズ比率は5割程度に高まっているようだ。この傾向は他の企業にも波及し、元々フランチャイズ比率が高かったKFC社もさらなるFC化比率向上を始めるなど、外食各社はフランチャイズ化比率を高めていくだろう。
フランチャイズ化比率を高めるのはファミリーレストラン企業が真剣に取り組むべきテーマだ。冒頭に紹介したがIHOP社はアップルビーズを買収し、同社のフランチャイズ比率を高めて投資効率を上げていると述べたが、米国のファミリーレストランは日本と比べてフランチャイズ比率が高いのが特徴だ。日本のファミリーレストランが苦戦をしているのは、業態の陳腐化だけではなく、フランチャイズ比率の低さにも原因があるので、201年はその問題を解決する必要があるだろう。

9)低コスト
・チムニー 漁港から直接買い入れ
・一六堂 セリ参加権
・APカンパニーの自社での鳥飼育
・すかいらーく、牛肉直接買い付け、コスト抑え割安に提供、まずステーキ投入。
・共同購買
大阪王将のイートアンド、鶴橋風月のイデア、オムライスのポムの樹、壁の穴の4社が共同購買、
給食会社のシダックスや魚国総本社など給食大手六社が主導して共同購買事業を手がけるファンズエーピーは4‾5年後をメドに、取扱品目数を現在の二百強から約四百に倍増する。
力の源カンパニー、ワンダーテーブル、ゼットンの外食三社は、食材の共同仕入れを始めると発表した。設立した有限責任事業組合を拠点とし、食材の六割強の仕入れを共同で手掛け、独自の調達ルートの共有や大量発注でコスト削減を目指す。

この不景気下での対策にはコストダウンが必要不可欠であるが、食材の品質の向上とともにコストも低下させる必要がある。そのため、各社は市場からの直接買い入れやセリ参加権を得たり、自社による鳥の飼育や農場の経営、水耕栽培、に取り組んでいる。また、中小企業単独では購買力が弱いので大阪王将のイートアンド、鶴橋風月のイデア、オムライスのポムの樹、壁の穴の4社による共同購買、給食会社のシダックスや魚国総本社など給食大手六社が主導して共同購買事業を手がけるファンズエーピーの取扱品目数を現在の二百強から約四百への増加、力の源カンパニー、ワンダーテーブル、ゼットンの外食三社による食材の共同仕入れ開始。等でコストを大企業のように低下させる取り組みが開始された。
この景気低迷下、共同購買はより増加し、それを契機に企業合併などが起こる可能性が出てくるだろう。

10)立地の変化
ショッピングセンターの集客力が低下し、フードコートなどに積極的に進出していたファストフードなど外食企業の立地戦略が変化しはじめた。そこで、価下落で出店余地の広がった都心部や、病院・駅といった従来店舗展開をしていなかった施設内へ出店を開始している。ショッピングセンターのフードコートに展開していたホットランドはたこ焼きと酒類を提供する新店「築地銀だこ ハイボール酒場」を、ドトールコーヒーはフードコートの展開を注視し病院や駅構内に展開を始める、などの動きが出ている。
フードコートで急成長したトリドールの丸亀製麺は都心の路面店などに積極的に展開を開始している。
この立地の変化は今後とも継続するだろう。

来年の展望

1)海外出店

2009年は暗い話題が多かったが、外食大手だけでなく中小企業も、人口減少が続く日本のビジネスを補完するために海外への進出を積極的に開始している。

ざっと見たところ進出を開始したのは

・モスフードサービスの海外出店が相次いでいる。すでに海外店200店舗を達成し、海外店の売上高は10%を超えるまでになった。今期中に海外で207店舗の展開を目指す。
・ ダスキンのミスタードーナツ
台湾で同店を運営する流通大手の統一超商(台北市)との合弁会社を通じて、2013年度までに中国国内で約60店を新設。タイでドーナツ店「ミスタードーナツ」を展開するセントラル・レストラン・グループ(CRG)は、タイのドーナツ市場でのシェアが65%に達した。
・ サイゼリア
・ 味千ラーメン 中国上場、シンガポール上場
・ つぼ八 シンガポール進出
・ ワタミ 香港、シンセン、台湾、上海
・ モンテローザ
・ 三光マーケティングフーズ
・ 吉野家 伊藤忠と台湾の頂新と提携し中国展開の加速、インドネシア出店
・ アンデルセン デンマークに2店舗出店
・ 松屋フーズ 中国再進出
・ グローバルダイニングLAに権八2号店
・ ペッパーフードサービス
マックスバリューがジーとなって広東でFC展開
・ 大戸屋海外40店舗
・ セブン&アイフードシステム 中国に進出 3年後に30店舗を目指す
・ 家族亭
・ ホットランド タイ焼きの海外進出
・ ユニカフェ
・ ドリームダイニング(江村)
・ クラコーポレーションのLA再進出
・ カフェカンパニーのシンガポール進出
・ イタリアントマトの和風カフェ
・ WDIがニューヨークに炉端焼き
・ 三宝ラーメンが和風ラーメンをシンガポール、上海に進出

で、その他の企業も積極的な海外進出を目指している。また、国内農業振興のために日本外食企業の進出に伴い国内農産物の輸出を考えて、農水省の強力な支援で日本食レストラン推奨制度(JRO)がスターとして、現在の海外支援拠点8か所を20か所に増設する予定だ。また、ジェトロも日本企業の海外進出をサポートするなどの動きもあり、外食企業の海外進出特に、中国への進出が増加するだろう。
しかし、米国大手のマクドナルドやYUMブランド(KFC,ピザハット、タコベルの持ち株会社)は中国ですでにマクドナルドで1000店舗強、KFCで2700店舗を展開しており、中国の他にインドやロシアなどへの新興国BRISCへの進出を開始している。特にYUMブランドは粉と鳥という新興国にあうメニューの強みを生かして積極的な展開を見せている。
日本の企業は現在は積極的に進出しているが、ジョイフル中国撤退、すかいらーくタイから撤退(数年前には韓国から撤退している)などの問題も発生している。海外の状況を見てみると、ファミリーレストランやカジュアルレストランの業態は、メニューに対する好みの違いや、オペレーションが複雑等の原因により難しいのが現状のようだ。その点、どこの国でも通用する合理化したファスト・フード業態の方が成功率が高いようだ。日本企業もそのままの業態を持ち込むのではなく、業態、料理、オペレーションを見直す必要があるだろう。

2)店舗のコンセプトの見直しと新業態
リーマンショック後にもっとも大きな影響を受けた地元のアメリカ外食企業を見てみると、2008年全般まで高級な外食企業、カジュアルレストラン、高級ステーキハウスなどの高級業態が元気であった。しかし、現在はそれらの高級業態は息も絶え絶えの状況に置かれている。
金融街の集まるニューヨークで大人気のユニオンスクエアーカフェグループは高級レストランを経営しているが近年は新たな戦略を取り入れた。グルメハンバーガーのチェーンShake Shackを4店舗展開し始めて好調である。ニューヨークのミートパッカープレイスに建築家安藤忠雄設計のMorimotoを開店して大人気の森本氏が共同経営するMorimotoは空港に焼き鳥のファスト・カジュアルの店舗開店を予定している。高級レストランやカジュアルレストランはその傾向をみて、続々とグルメハンバーガーやカジュアルなメニューを取り入れ始めている。

景気の良かった時代に誕生したファスト・カジュアル業態を見てみると企業により差が出て生きている。全般的にファスト・フード業態よりも景気低迷の影響を受けているが、元気の良いファスト・カジュアル業態がある。その一つがパネラブレッドだ。元々はオーボンパンという焼き立てパンのサンドイッチチェーンであったが、スターバックスの都心進出に負け、殆どの店舗を売却し、パネラブレッドという新業態で再生を図った。従来の冷凍パンをやめ、品質の高い天然酵母の生地と、スターバックスに負けないデザインの大型店舗、きめの細かいサービスにより急成長を遂げ、現在もその伸びは止まらない。その他、味の点で評価の高いチポトリなどが元気いっぱいだ。
価格が高いカジュアルレストランは不振を極めているが、その中でオリーブガーデン、レッドロブスターを展開しているダーデン社はリーズナブルな価格帯でカジュアルな店舗サービスをすることで顧客の評価が高く、つい最近はフロリダに新社屋を建設するなど元気いっぱいだ。
ファスト・フード業界は2003年頃からの健康志向により苦戦を強いられていた。そこに登場したファスト・カジュアルという業態の伸びに対して、ファスト・フードは不健康な食事というイメージに悩まされることになった。ファスト・フード業界を特に浸食したのがグルメコーヒーのスターバックスでその斬新なイメージと高級感に多くのファスト・フードが劣勢に立たされた。そこで、2005年に創業50周年を迎えたマクドナルド社は、シカゴダウンタウンの店と、本社近くの店舗をまったく新しい内外装と、サラダメニュー、高級チキンバーガー、イメージソング、ユニフォームの刷新、などで新生マクドナルドを目指すようになった。また、スターバックスの台頭に対抗するために、BSEで苦しんだヨーロッパマーケットで誕生したマック・カフェを米国店舗に導入する計画を実行に移しだし、現在は断トツの営業成績だ。
ハンバーガー業界第2位のバーガーキングは長年の親会社変更による不振から回復するべく、再上場を果たしマクドナルドなどの低価格路線に対抗して、低価格メニューの販売を計画したり、空港などでの小型店のワッパーバーの開発に余念がない。
カールスジュニアとハーディーズのグループはマクドナルドの低価格路線とは別に大型のグルメハンバーガーを発売し、セクシーコマーシャルを放映して若者に話題を呼んでいる。KFC,ピザハット、タコベル、ロングジョンシルバー、などを傘下に収めるYUMブランドはKFCにおいては健康的なメニューを遡及するべく、フライドチキンの他にグリルチキンを発売した。ピザハットはピザの他にパスタを強化し、タコベルは魅力的な飲料を付け加えた。
その他、ファスト・フード業界は景気低迷による顧客の低価格志向に対応している企業はおおむね好調であり、業界最大手のマクドナルドの株価は高止まりしたままである。

日本ではファストフードの新業態開発が止まっているが、地方の外食企業の中には全国展開を目指して、ファミリーレストラン業態からファストフード業態への脱皮を計画している企業がある。フランチャイズによる全国展開や世界市場に進出するためには、2010年にはファストフード業態やファストフード業態に取り組まなくてはいけないだろう。

2)環境対策
改正省エネ法が2010年4月発効するが、すかいらーく、デニーズ、マクドナルド、アレフなど外食企業の3割しか対応していないのが現状だ。今後、外食企業は省エネ、ゴミにリサイクル、神奈川県の禁煙条例、などの環境問題に真剣に取り組まないと企業イメージの悪化という問題を抱えるだろう。

3)人材教育と人事
2009年は社長交代が多かった。ワタミ、サイゼリア、スターバックス、テンコーポレーション、ハブ、ハイディ日高、京樽などだ。後継社長は内部からの昇格だけでなく、環境の変化に対応できるように外部の人材登用も増えている。
2010年にはまだ社長の交代も予測され、外食企業の世代交代が一気に進み、大きな変化を見せる可能性がある。

また、不景気に対応するべく、ハブの企業内大学、KFCの海外研修、西洋フード・コンパスグループの海外短期派遣、ヴィアホールディングスの再生プロジェクトによる教育、などが行われだしている。また、大学においても外食を取り扱う学科もできているし、大学の教育講座で外食講座を開設する動きも出ている。不景気な時期にこそ従業員教育を充実させ、景気回復時の急回復に備えるべきだろう。

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