AV店の経営手法 第10回「チェーン店となるための仕組み作り」(エーブイデータ出版 AVデータ)

チェーン店となるための仕組み作り

フランチャイズチェーンを構築するために必要な経営ノウハウを考えてみよう。

『チェーン店の仕組みとQSC』
チェーン店が繁盛するためには、商品の質、サービス、清潔さ(QSC)をバランスよく保ち続けることが重要だ。
一般的には商品の品質(Q)ばかりが強調されるが、その他のサービスや清潔さと言うバランスが商売の成功を維持する上でもっと重要だ。

『成功するチェーン店の条件』
「お店のコンセプトが明確であること」
今、この不景気の中、チェーン店は経営のあり方で混乱しているはずだ。
どんなに経済状態が変わっても、チェーンビジネスの原理原則は変わらない。チェーンビジネスを成功するのはマス、つまり大衆を相手にしなければならない。バリュー(価値)のある商品を提供しなければならない。バリューとは単に低価格の事ではない、客が払った金額に対して、満足のいくQSCを提供できるかどうかなのだ。それには、客がバリューを感じるシステムをしっかり構築する必要がある。よそ見をしてはいけない。信念を持って、じっくりと貴方の店舗を熟成することが必要だ。

まず、どんなコンセプトの店舗かを決定する必要がある。セルビデオでもどのような品揃えをするのか、規模はどうするのか、法律的な規制に対応するにはどうすればよいのか、その業種の将来の延びはどうなのかを考える。

「人口の動向」
日本経済の急成長を支えた、人口構成比の最も高い、団塊の世代はそろそろ50代に突入しようとしている。出生率は低下の一途をたどり、幼稚園、小学校などの学校教育機関の淘汰も始まりつつある。そうすると従来のセルビデオを支えた独身男性などの人口が減少するという大きな問題を抱えることになる。今後どの年代の人口が増加するのかを見極め、その年代層に対応する商品開発を考える必要がある。
「家族構成の変化への対応」
若い世代の結婚年齢が年々高くなり、女性の未婚率の向上から、男性の結婚難が顕著になりつつある。段階の世代のおける離婚率も高くなり、単身世帯の数の増加が著しくなる。現在のセルビデオはどちらかというと男性中心として考えられている。しかし、女性にも潜在的なニーズがあるのだが店舗には入りにくいと言う抵抗があるようだ。現在のセルビデオの販売方法は店舗における販売が中心だが、店舗に来れないそうに対する人たちに対するインターネットなどを使用した販売手法や、場合によっては女性専門の店舗などの販売手法の検討が必要になるだろう。
「倫理観の変化」
ビデオの最大の課題は法的な規制だ。最近ではセルビデオに対する規制が強まりつつあるようだが、現在のようなインターネットによる倫理観における国境の撤廃の現状では映像倫理でも国際化基準が適用になり、よりオープンな法規制となるだろう。
ただし、日本のビデオに対する規制の基準が欧米とは異なり、体やセックスの露出に厳しく、幼児虐待や、アブノーマルなセックス、暴力的なセックスに甘過ぎるという、国際基準状の矛盾がある。これは欧米の価値判断の基準がキリスト教倫理にあり、日本の無宗教的な環境とは大幅に異なる。今後、国際的な基準が適用されるに従い、規制が緩やかになる面と厳しくなる面がありその動向に注意を払う必要がある。

いずれにせよ、変化を予測し、問題が発生する前に対策、対応を確立し、常に時代に適応できるような体制固めを常々考えるべきだろう。

「標準化」
標準化とは単に商品や提供方法だけではない。良い商品だけがあれば売れると思いがちだが、商売は商品だけではない。サービス、雰囲気、清潔さのバランスが重要だ。また、店舗の管理体制、会社の意志決定などの手法も確立していないと売り上げが上がっても利益が出ないと言うことを忘れてはいけない。
マネージメントの3つのトライアングルの標準化が必要になる。

「マネージメントサイクルの標準化」
PLAN(計画) DO(実行) SEE(評価)が経営に必要なマネージメントサイクルだ。
店舗を出すまえに、売り上げ予測に基づき総投資額を決定し出店する。もし売り上げが十分でなければその理由を分析検討する。まだ知名度が少ないのであれば、チラシを新聞に織り込むか、配布することを検討する。

勘に頼る手法でなく常に合理的な手法で店舗の問題点を分析し、実行し、評価する。このプロセスをしっかり確立することが店舗運営上の色々な問題点の解決のために必要だ。優秀な経営者であれば、頭の中でこれらの作業を実施しているはずだ。しかし、このプロセスを自分の頭の中だけでやっていては、いつまでも経営者は日常業務から離れることは出来ないし、自分の腹心の部下、つまり経営者の分身を作ることは出来ない。経営者がどのように問題点を発見し、計画を立て、実行し、それをどう評価しているか。思考方法のプロセスを明確に部下に教えられることがあなたの分身を育てる秘訣なのだ。

貴方の優秀な頭脳をオープンにしようではないか。決してワンマン経営者になってはいけない。死ぬまで忙しく働かなくてはいけないし、仕事しか趣味がないというのはあまりにも不幸ではないか。

「ビジネスの基本である良いQSCの実現」
「QSCの実現」
ここでの間違いやすいのは良い商品があれば(Q)店がはやるのだと勘違いすることだ。商売の成功にはバランスのとれたQSCの標準化が大事だ。最近はディスカウントであればサービスはなくても良いとか、店舗を掃除しなくても良いと思う店舗が多いようだ。それではお客様を満足させることはできない。単なる安かろう、悪かろうの低価格店舗だ。
「Q、品質」
Q(品質)とは単に製造者から見て品質がよいと言うことではなく、消費者が必要としているビデオを販売すると言うことだ。その為には、売れ筋情報の入手と店舗売り上げデーターの把握だ。 米国小売業の最大手のウオールマートの経営を見てみよう。ウオールマートはディスカウントストアーであると勘違いされている。ウオールマートを見てディスカウントストアーであると言って日本で真似をして失敗をしている人が多い。ウオールマートを正確に言い表すならば巨大なコンビニエンスストアーだ。
セブンイレブンは家庭から、学校や職場などへ通う際に必要な最低限度の商品を販売している。文房具であればノート、鉛筆、消しゴムなどのその日に必要な必需品をおいている。会社員であれば、急な冠婚葬祭のための祝儀、香典の封筒や、女性であれば伝線した際のためのストッキング、忙しいときの昼食、簡単なスナックを販売する。

ウオールマートは学校に通う子供のために、文房具だけでなく、鞄、通学用の洋服、計算機、パソコン、等、学校生活に必要な全てのものをおいている。会社員にとっては通勤に使う車のタイヤから車の消耗備品、レジャーを楽しむためのキャンプ用品から吊り道具、家の修理に使う工具から材木まで、会社から家庭生活を営むに必要な全ての道具がそろうようになっている。

販売商品数はセブンイレブンは3000品目、ウオールマートは数万品目と言う大きな差があるが、販売している商品は全て売れ筋を並べている。売れ筋とはその商品のジャンルで最も有名で売れているブランドと言うことだ。この売れ筋を把握するのに両社は共に巨大なPOSシステムを構築し、売れ筋を把握し、その売れ筋に基づいて品切れを起こさないようにしている。

セブンイレブンを代表とするコンビニエンスストアーは日本独自のものだ。セブンイレブンは米国のサウスランド社が作り上げたものでそれを日本のイトーヨーカ堂が地域ライセンシーとして運営し、年商1兆7000億円という巨大産業に成長させた。本家の米国のセブンイレブンは経営不振に陥り、日本のセブンイレブンが肩代わりした。親を子が買収したのだ。このセブンイレブンの成功の秘訣は、客が必要としているものを店舗に置くという当たり前の手法だった。ではそのデーターベースを使用した成功例を見てみよう。

セブンイレブンが急成長した一つの理由に弁当などの中食の販売がある。弁当などのファーストフードの売り上げは外食産業のナンバーワンのマクドナルドよりも遥かに巨大な売り上げを示している。その中食のマーケットサイズは7兆円と言われている。これは現在も増加しつつある。それは即ち、27兆円から30兆円といわれる外食市場、そして120兆円から150兆円といわれる小売業の市場のいずれかが蚕食されるということだ。

これまで中食を支えているのは若い人たちだといわれていた。ところが、すでに年配者も中食を買っている時代なのである。これはどういうことなのかというと、女性は55歳以上になると食事を家で作るのが嫌になるらしいのだ。というのはまず子供が育ってしまうからだ。基本的には母親は子供のために食事を作っているのだが、子供が育ってしまえば作る必要はなくなる。共稼ぎも増えているから、作らなくていいのならそれにこしたことはない。そして、その年代は年々下がっているともいわれている。

そして年配の人々は、コンビニエンスストアー(CVS)を利用しだしている。CVSのファーストフードで伸びているのは調理麺と生寿司だ。今までは、そば店や寿司店、あるいはテイクアウトの寿司チェーンという外食が担っていた世界だ。特に調理麺、中でも冷麺(加熱しないそばやうどん)は、ここ数年間で急速に伸びている。

調理麺を誰が食べているか見てみると、まずOLなどの女性、それに年配の人々である。CVSが蕎麦を売る上で障害となっていたのは欠品、つまり品切れを起こしていた点である。なぜそのようなことが起こるかというと、冷麺というのは気温が28℃を超えると急速に売れるからだ。 気温と食品の売れ行きには相関があり、ファーストフード(FFS)でも28℃を超えるとシェイクやアイスクリームの売れ行きは落ちて水物が売れるようになる。暑いならアイスクリームなどは売れるように思われるが、28℃を超えるとしつこくなってしまうから売れなくなるのだ。つまり、さっぱりしたものが食べたくなる境目が28℃だと推察できる。CVSでもそれは同様で、28℃までは弁当でいいが、それを超えると冷麺が出るようになる。

セブンイレブンの売上を支えているのは、膨大な情報量だといわれている。ロスがなく、しかも欠品を起こさない適正な発注が出来るのも、過去のデータをもとにしているからだ。ところが、冷麺のように、気温が28℃を超えると一気に売れるような商品は、これから夏に向かっていく時期は、過去のデータが当てにならなくなる。そこでセブンイレブンは天気予報のシステムを導入したのである。それも20km四方のエリアの温度カーブ、湿度カーブが6時間毎に更新されるという最新のウェザーニュースを見ながら発注できるというシステムだ。

その結果、セブンイレブンにおける冷麺の売り上げは急上昇し、そば全体の消費量が伸びている。しかし、従来の蕎麦店の売り上げは上がらず、そば店は減少している。つまり、CVSがそば店を呑み込んでいるのだ。

こうしたことからわかるのは、セブンイレブンに代表されるCVSは売れ筋のデーターベースを元に客が何を望んでいるか分析し、その商品の品切れを起こさないように仕入れを正確に行っているという事だ。

セルビデオも客の好みに合っている商品を取りそろえる事が重要であり、それを的確に把握し、売れ筋の商品を取りそろえると言う作業が必要不可欠だ。その為には、独自のPOSシステムやパソコンによる売れ筋管理を行い、科学的な仕入れと販売管理を確立することだろう。

「S、サービス」
S(サービス)はフレンドリーなサービスが出せればよい。従来の日本のサービスは茶の湯の作法、一期一会にこだわりすぎて(本質を忘れてと言った方が正しいが)ホテルのサービスのような形式にこだわった慇懃無礼なサービスが正しいのだと言う誤った観念にとらわれすぎている。豊富なサービスになれた今の消費者が本当に求めているのは真心のこもった従業員がニコニコとした笑顔でサービスをしてくれることだ。
従業員のスマイルを出すノウハウは2つある。まず物理的に従業員が楽しく働ける職場を作る。具体的には良いコミュニケーションと正しい評価、トレーニングと会社の将来性、環境の良い職場と快適で清潔な休憩室(空調が良く効いていること)だ。次にスマイルの訓練だ。スマイルはトレーニングできる。スマイルは顔の筋肉をどうやって笑っているように見せるかだ。働くのが楽しい職場で、顔の筋肉のトレーニングをすれば後は自動的にスマイルがでる。

「C、清潔さ」
Cとはクレンリネスの頭文字であり、清潔さをいう。多くのチェーン店はQSCと言うので、品質が最も大事でその次がサービス、最後がクレンリネスであると錯覚しやすい。しかし、初めて店を選ぶときに商品を買ってから選ぶことはできない。Q(品質)とは次にもう一度くるかどうかを決めるにすぎない要素だ。サービスも店舗に入って注文するまでレベルがわからない。最初に店を選ぶには店舗の外観や雰囲気しかないのだ。
まず、クレンリネスの基準を確立することだ。そして、毎日クレンリネスのチェックをし、清掃したかどうかをチェックする。クレンリネスの基準は簡単だ。店舗が新装開店したときと同じ状態であるということなのだ。そのために毎日具体的な清掃作業をスケジュール化し汚れを溜めないようにする。きちんとしたクレンリネスを実現するためには店舗の構造も汚れにくい様に工夫を凝さなくてはならない、つまり、店舗内装の標準化も必要になる。天井は簡単に汚れをふき取れるような材質にし、床も清掃が簡単で水が溜まったりしないように完全にフラットにする。クレンリネスの範囲は、従業員の身だしなみ、建物外装、店舗周辺、店舗内装、など幅広いので常に客の目で確認していく。

クレンリネスの基準、システム、マニュアルを確立するにはまず使用する洗剤、道具、清掃方法を確立する。これらのノウハウは洗剤メーカーに聞く。洗剤を選ぶ際にコストの最も安いメーカーを選び勝ちだがそれは間違いだ。良い洗剤メーカーは、洗剤を売るのではなく清掃システムそのものを顧客に教え、システム全体を旨く運用できる用に提案できなければならない。

「QSCを守るためのマニュアル」
作成する必要のあるマニュアルは
商品仕入れマニュアル
サービスマニュアル
店舗開店、閉店マニュアル
清掃マニュアル
人材採用、教育、評価マニュアル
防火、安全対策マニュアル
書類管理、利益管理、マニュアル、
販売促進、広告宣伝マニュアル
新店舗開店マニュアル
管理者、店長マニュアル
POS、パソコンの使用マニュアル
機器メインテナンスマニュアル等だ。
「マニュアルの作成方法」
まず作成しなければならないのは人事教育マニュアル、清掃マニュアル、サービスマニュアル、商品マニュアル、である。マニュアルの作成は以下のようにする。
作業を分解する。
一つ一つの作業をもっと合理的な作業方法がないか検討する。
時間を短くするには、効率をあげるには、無駄をなくすには、安全にするには等を検討する。
作業の数値化、理論付けをする
ストップウオッチ、計量器で言葉を数値に置き換え、どの店舗でも再現が可能にする。
在庫管理、発注管理をパソコンやPOSを導入して合理化できないか検討する。
見直した作業を店舗でテストする。
ベテランと新人で差がないかチェックする。もし、問題がなければ標準作業時間と、標準ロスを計測する。
作業の手順を文書化する。
今度は複数の店舗でテストし問題がないか確認する。
問題点を修正する。
分解した作業の写真をとる
文書と写真を組み合わせてマニュアルとする。
「写真の撮り方」
現在は良いカメラを安価に購入できるため、専門家でなくても、自分達で撮ることが可能である。正しい機種を選ぶことだけ気をつければ良い。
必要機材

35mmの一眼レフ。メーカーはどこでも良いが。絞り優先のモードが必要である。
また、ストロボの光量を自動コントロールできる機種であること。
レンズは50mmの標準マクロレンズ(マクロレンズとは接写が効き、絞るとシャープな写真を撮ることが可能である。)
ストロボはカメラと連動できるタイプが必要。接写用のストロボと通常のストロボの2種類必要だ。ストロボの場合には陰が出ないようなディフューザーが必要だ。
カメラを固定して食品をきれいに撮る接写用脚立。
照明。ストロボの代わりに専用のランプを使用しても良い。
フィルムはカラーのスライド用の感度の低いものを使用する。白黒のマニュアルの場合、白黒のフィルムの感度の低い粒子の細かいものを使用する。なお、フィルムとカメラのレンズの組み合わせにより発色が異なるのでいろいろテストすることが重要である。また、現像は町の現像屋ではなくプロの使用する現像所を使用すると発色がきれいである。
デジタル化
撮った写真をCDROMにいれてくれるサービスがあるのでそれを利用すると、マニュアルの作成が自分達で容易にできるようになるし、修正が容易だ。時間とコンピューターの知識があれば検討する価値がある。
最近では写真をデジタルデータにするスキャナーや高性能なデジタルカメラが安価になり、簡単に映像のデジタル化が可能になっている。
「管理の標準化」
人、物、金の管理手法の標準化だ。QSCのしっかりしたオペレーションで売り上げが上がっても、企業としての管理が必要だ。人がいなくては店舗は運営できないし、トレーニングをしないとQSCを保つことは出来ない。建物や内装の作りがしっかりしていて、かつ新装開店の状態を保っているという手入れが重要だ。
売り上げだけ上がっても、経費を管理しないと利益が出来ないし、資金繰りが旨く行かないと黒字倒産もあり得る。

人の標準化を例にすると、採用方法、何が最も効果的な採用方法か、アルバイトニュースか、新聞折り込みか、新人紹介制度か媒体別に一人幾らの経費がかかるのか、採用媒体別の定着率はどうなのか、面接の方法はどうするのか、面接チェックリストをどうするのか、トレーニングはどのようにするのか、誰が実施するのか、どのくらい時間をかけるか。など細かく標準化をしなければならない。標準化をして、文書化した物がマニュアルになるのだ。

以上の3つのトライアングルがチェーンビジネスの基本だ。常に物事をシンプルに整理して考えることが重要だ。そして、各問題点を三つのトライアングルのどの項目になるかに分類し、明確な対策を立てる習慣がチェーン展開への第一歩だ。

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