AV店の経営手法 第6回「アルバイトの教育ニーズ」(エーブイデータ出版 AVデータ)

アルバイトの教育ニーズ

過去5回に渡って硬い話をしてきた。こんなにやることが多いのかと嫌になるだろう。しかし、今まで述べてきたことを全てやる必要はない。皆さんが必要だと感じた箇所から実践すれば良いのだ。必要もないことをやるのは無駄だからだ。しかし、自分で部下の社員やアルバイトにたいするトレーニングが必要かどうか,自己診断ができなくてはならない。

トレーニング自己診断チェックリスト
トレーニングは店舗での効率や生産性を向上していくために非常に役に立つだけでなく、従業員がよりよい仕事、チームとしてより効率的な仕事をする事ができ、店舗のQ.S.C.(品質、サービス、クレンリネス)の維持、向上に役に立つ。

トレーニングは正しい仕事をするための技術や知識に欠けている人やグループに常に必要だ。即ち、トレーニングは従業員がなすべき事と今やっていることの間に差が生じたときに必要になる。

仕事上での問題点は従業員の悪い態度、汚い店内、まずいスケジュールの立て方、その他の種々の原因による。しかし、それは仕事の上で最適のやり方を知らないからだ。多くの場合、トレーニングは従業員の仕事の基本、基準を守っているかどうかで判断する。

この自己診断チェックリストは、仕事の効率をよくするためのトレーニングプログラムを確立するためのものだ。トレーニングを成功させるためにもこれを時々に読んでみることだ。

[チェックリストの使用方法]
このチェックリストはトレーニングを効果的に行うために、ステップに従って順を追って進んで行く。

チェックリストの内容を完全に熟知する。一ページづつ熟読し、そしてそれぞれのステップで何を求められているか十分理解する。
経営者と責任者の間でミーティングを設ける。
ミーティングでは次のようにしなければならない。
店で存在する問題点を明確にするように各種のチェックを行う。
管理上の帳票チェックの数値記録を見て、気がついた問題点を明確にし文章化する。また、チェックリストにもっと効率の良い他のチェック方法があれば  それをを記入する。
問題点を3つ選び出す。現実の仕事と要求される仕事の違いを明確にする。
それぞれの3つの問題点について自問自答する。
3つの問題点を見返し、再評価してそれらの中の優先順位を決定する。また、その1つについて:
) 論じ、次の質問に答えなさい。
) そして最適なトレーニング方法を選ぶ。
) 次に進み目標を作り検討する。それは、経営者と責任者の二人ともが満足できるものでなければならない。
他の2つの問題点について上記ステップを繰り返す。
その次のステップを読んで誰がそれぞれの管理上の項目について責任を持つかを決定し、チェックリストを完成し、ミーティングを終了する。
責任者はトレーニングのための準備をしなければならない。最初に自分がトレーニングを行うのか、店舗の他のものをそれに当てるかを決める 。
経営者と責任者でトレーニングの方法について合意して行動を起こす。トレーニングは、優先度の高いものから始める。(ミーティングで同意された3つ  の問題点のうち )
トレーニング1週間後に責任者は、自己診断チェックリストの最後の質問に答えなければならない。そしてトレーニングの成果について経営者と話し合 う。
トレーニング後30日目に問題点を再検討し、再び最後の質問に答える。そして経営者とその結果について話す。
経営者はトレーニング過程における結果を従業員と話し合うことによってより良いトレーニング方法を開発することが可能になる。

早急に、その過程についてアルバイトと話さなければならない。それによって彼らも店舗運営を効率よくしていくトレーニング方法を学ぶことが出来る。
[問題点をいかに明確にするか?]
問題点を解決するためのトレーニングをする前に、まず問題点を把握しなければならない。そして現状に問題があることを発見できる能力を身につけるように自己トレーニングをしなければならない。

[表1:問題点の明確化]は、問題点となりうるいくつかの兆しだ。これらの兆しが店舗に現実に存在し、トレーニングが必要か否かをチェックし問題点を明確にする。

[表1:問題点の明確化]
. Yes No
アルバイトの離職率が高い  . .
商品の陳腐化が早い(どの商品か?) . .
欠勤が多い(誰が?) . .
従業員のモラルが低い . .
商品の万引きが多い(どの商品か?) . .
商品の好みに偏りがある(どの商品か?) . .
顧客のクレームが多い(何についてか?) . .
遅刻が多い(誰がどのくらいの頻度で? ) . .
商品の発注の出し方が悪い . .
店舗内が清潔でない  . .
店舗外が汚い  . .
アルバイトの服装、態度がだらしない . .
開店、閉店作業のやり方がまずい . .
アルバイトの配置がまずい . .
現金差が続いている . .
仕事の手順が守られていない . .
アルバイトのスケジューリングがまずい . .
[表2:管理上の帳票チェックによる問題点の明確化]
次の種々の管理上の帳票をチェックすることによって、しばしば問題点を見いだすことが出来る。

営業日報
損益計算書
現金日報
商品管理週報
週報
[表3:問題点を収集し明確にする]
一度問題点を見いだしたなら、次にその問題点についてより多くの情報と事実を集める。ここに通常行わなければならないステップは以下の通りだ。

問題点について出来るだけ多くの事実を集める。
問題点の概要を書き出す。
次に何をしなければならないかを書く。(即ちどのようにしなければならないかを明確にする。これが仕事上の基準になる。)
現在どんな状況か事実をそのまま書く。(この時、きちんとした観察が必要だ。)
現実の状況とマニュアルに記述されたあるべき姿との違いは何かを書く。
これらの違いは真剣に考慮する必要があるか?これらは重要か?その違いは金銭に関係するか? これらは他の問題の原因になるか?
[優先順位を決める]
種々の兆しを探し始めると、いくつかの問題点に気がつくだろう。その為上記のステップは大変重要だ。いくつかの問題点は、他のものより深刻で問題がより大きいだろう。あなたは最も深刻な金銭に影響する問題を最初に扱わなければならない。そして、次の優先順位のものへと移行する。

[表4:トレーニングは本当に役に立つか?]
今までにいくつかの問題点を明示し、どちらが最も重要か理解できただろう。トレーニングはしばしばこれらの問題点を解決するのに役立つが、全て解決できるわけではない。トレーニングが役に立つか、下記の簡単なテストを行い確かめる必要がある。

もし従業員がいい仕事をすることを望んでいる場合、それを達成することが出来るか? (彼らはすでに十分な技術と知識を持っているか?)

いいえ、出来ません
この答えの意味は、従業員が必要な知識と技術を身につけていないと言うことになる。この場合トレーニングは絶対に役に立ち、トレーニングはされなければならない。
はい、出来ます
この答えは、従業員がすでにいかに仕事をするか知っているのにも関わらず、何かの理由によりなされていないということを示す。トレーニングは役に立つだろうが、あまり期待は出来ない。店舗の状況、環境をぐるりと見回してなぜ従業員が正しい仕事をしたがらないかを探さなければならない。店舗の従業員が正しい仕事をしたがらない問題を解決し、それからトレーニングをしなければならない。
確かでない
この場合、従業員に疑問をもたせるようにしなければならない。そして何らかの技術か知識が不足していると考えトレーニングをする。
[表5:トレーニングの必要性の分析]
それぞれの問題点には、数多くの原因が考えられ、それらの全てをこのチェックリストにリストアップするのは困難だ。しかし、トレーニングを進めていくために答えが必要となるだろう。ここに履行上の問題点の原因と考えられるものをいくつか示す。これらは、質問形式になっている。もし、これらのどれかに”いいえ”の答えが出る場合、トレーニングを進めていく段階でこのページの下段に薦められている解決法を試みなければならない。

分析 はい いいえ
1. 仕事の基準が実在しているか? . .
2. 従業員が基準を理解しているか? . .
3. 従業員はよい仕事に対してほめられているか? . .
4. 彼らの仕事が満足できるものでない時、注意されるか? . .
5. 従業員は、いかにしてチームとして仕事をするか知っているか? . .
6. 店舗の設備は、正常に作動しているか? . .
7. 仕事がきつすぎないか?(基準が高すぎないか?) . .
8. 資材類は十分あるか? . .
解決法
仕事の基準を設ける。
基準を伝えて説明する。
従業員がよい仕事をしたときは、ほめているか。
不満な点は個人的に伝え、基準を改めて強調する。
総体的なグループの仕事について伝達する。
設備をチェックし、清掃、調整をして必要なら修理する。
仕事を単純化するか、より仕事の出来る人間に廻す。
在庫をチェックする。必要に応じてスケジュールを訂正する。
[表6:どの程度のトレーニングが必要か?]
トレーニングが必要であるという事を知ると同様に、どの程度必要であるかという状態を把握する必要がある。そのために次の質問に答えて見よう。

1. この従業員は最近働き始めたばかりか?
____ はい (相当量のトレーニングが必要)
____ いいえ 次の質問に進みなさい
2. この従業員は過去にその仕事をしたことがあるか?
____ はい (訓練が必要なだけであろう)
____ いいえ(さらにトレーニングが必要とされる)
3. この従業員は将来においても同じ仕事をしていくのか?
____ はい (相当量の突っ込んだトレーニングをしなさい)
____ いいえ(限定されたトレーニングだけでたぶん十分であろう)
4. もし従業員が過去にその仕事をしたことがあり、その時点においては問題のない仕事をしていたか?
____ はい (いくらかの訓練が必要とされるだけであろう)
____ いいえ(十分なトレーニングをしなさい)
[表7:トレーニングの計画]
トレーニングをする前には、周到な計画が必要だ。もちろんトレーニングは状況に合っていなければならないが、ここに示すものはトレーニングを始める前に考えなければならないいくつかの質問であり、必ず答えを得ておく必要がある。

誰をトレーニングするのか?
トレーニングにどれだけの時間数を使えるか?
どこでトレーニングするか?
誰がトレーニングをするのか?
どのようなトレーニング教材を使用するか?
早急にトレーニングしなければならないか?
手助けできる専門家がいるか?
仕事について全てを知っている熟練者が周りにいるか? 彼は、トレーニングを観察できるか?
我々がトレーニング方法を選択する前に、他に知っておく必要なものがあるか?
[表8:トレーニング方法の選択]
)トレーニング方法を選択する場合、以下のことに留意する。
トレーニング上の問題点の種類
トレーニングされなければならない人数
教える仕事の難しさ
教える仕事の重要性
トレーニングに使用できる時間
)トレーニング方法の種類とその特徴
講義方式を使用する場合は(Lecture)
同じ仕事を複数の人間に教えることが出来る。
仕事が簡単に学べる。
細かい実践を必要としない。
トレーニングを短い時間で興味深くできる。
参考になる仕事の背景を教える。
実践方式を使用する場合は(Demonstration)
言うだけではなく正しいオペレーションを見せる。
完全なオペレーションを休むことなく見せなければならない。
多くのことを一度に教えなければならない。
コーチング方式を使用する場合は(Coaching)
一人の従業員をトレーニングする。
動機を与える。
チームワークを養成できる。
あなたの気持ちを示す時間が十分ある。
複雑で詳しいオペレーションを教える。
従業員の上達を評価したい。
訓練方式を使用する場合は(Practice)
技術を錬磨する必要がある。
従業員が訓練不足から鈍くなっている。
仕事をする上でのタイミングが重要である。(例:複数の人間が共同作業をする場合 )
仕事上のまずい習慣をなくしたい。
手先の器用さが重要である。
さてトレーニングの必要性を理解し、使用するトレーニング方法を選択した。次のステップは、トレーニングが問題を解決するのにどの程度効果的であるかを調べるための,事前の目標設定が必要である。良いトレーニング目標は、良い仕事のための基準と殆ど同じだ。丁度仕事の基準を決める場合と同様に目標を決める際には、次の3つの主要なことを知らなければならない。

何を従業員にさせたいか。
仕事がなされる特別な状態、条件を定める。
仕事上どの程度の許容範囲まで認めるか。
良い目標は可能な限り明確でなければならない。そして従業員をトレーニングする前に何が目標であるかを知らせる必要がある。そうすれば彼らは、何をして欲しいか何を目標として近づけばよいか、わかるはずである。 下の余白に最優先の問題点を解決していくトレーニングのための目標を書きなさい。

目標を二重チェックしてから、次の質問に答えなさい。

. はい いいえ
1. それは、従業員が何をしなければならないかを示しているか。 . .
2. 明確であるか。(数、量などについて) . .
3. それは、何か特別な状態、条件を含んでいるか。 . .
4. それは、どの程度の許容範囲まで良いか示しているか。 (最低の基準のレベルを設けてあるか) . .
[表9:トレーニング効果の測定]
ここで最後のステップを踏まなければならない。それはトレーニング段階でのそれぞれのステップを誰が責任を持って一日一日の仕事の中でやっていくかを決めなければならないということである。

下記は、トレーニングに関係する色々なリストであり職務を示してある。それぞれの項目においてどの職務の人間が責任があるかを番号を入れなさい。

1.経営者  2.責任者  3.社員  4.ベテランのアルバイト
・ 従業員トレーニングの必要性を決定する。 .
・ トレーニングスケジュールを決める .
・ トレーニングの進行状況の記録を書いていく。 .
・ トレーニングのための資料を準備する。 .
・ 視聴覚教材の使用方法をシステム化する。 .
・ 訓練者を選びトレーニングする。 .
・ トレーニング成果を測定し評価する。 .
・ トレーニングをフォローアップする。 .
・ 従業員のトレーニングのやり方を向上していく。 .
・ それぞれのスケジュールについて計画をたてる。 .
・ 講義する。 .
・ 従業員のトレーニングルームを確保する。 .
・ 管理監督する。 .
・ 指導を徹底する。 .
・ 問題点を定義づける。(明確にする) .
・ コーチをする .
・ 仕事上従業員に助言を与える。 .
・ 仕事の基準を設ける。 .
もちろん、空白に番号を入れられた職務の人間が自動的にこれらの事項について責任を持つかは、さだかでない。これらについて討議されるべきで、厳密に誰がトレーニング過程のそれぞれの段階でトレーニングをしていくかよりも、ここに関係するみんなが全て彼の役割が何であり、何をしなければならないかを意識しているほうが大事である。我々の全てが完全なチームとして一緒に働き、トレーニングが完了した時、我々のトレーニング過程が我々の店舗での仕事を向上するのに効果があり、役に立つと言うことを改めて認識するであろう。

[表10:トレーニング後の自己評価]
従業員は仕事を正確に行っているか。
彼らの仕事は十分早いか。
目標は達成できたか。
従業員の仕事は、トレーニング後良くなったか。
従業員は目標の許容範囲以内で仕事をしているか。
トレーニング前より問題点が少なくなったか。
従業員は容易に学べたか。
高品質のものが作られているか。
良い仕事上の習慣を持続してもっているか。
従業員は、どのような仕事が要求されているか知っているか。
もし、トレーニング後、これらの全ての質問に”はい”の答えが言えたらおめでとう!あなたのトレーニングは100%成功だった。

そしてもしいくつかの質問に、”いいえ”の答えをしたのなら再度見直すべきだろう。たぶん必要なのは、後少しの訓練だからだ。

おめでとう! あなたは基本的なトレーニングのサイ従業員を終了した。我々は、あなたが問題を指摘し、トレーニングの必要性を認め、トレーニングの方法を選択し、目標を定め、トレーニングの有効性をテストするために測定できるようにしてきたことにこのワークブックが役立ったことを望んでいる。これらの段階を将来もフォローして効率を良くするためのトレーニングを持続することを期待する。

上記の自己診断チェックリストは何をして良いかわからなくなるときの貴方の羅針盤の役割となるはずだ。是非活用していただきたい。合理的な問題分析と解決のアプローチは論理的な問題解決方法を学ぶのに役に立つだつことを保証する。

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