安売りは勝ち組、負け組二極分化へ(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞2001年)


TOPインタビュー
安売り以外に外食の生き残る道はないのか
魅力ある朝食市場。外食需要掘り起こしに期待
緻密な経営戦略なくして勝ち組みにはなれない
――デフレの影響で低価格競争が激化していますが、そろそろ限界、という声も聞こえてきます。

王 今後、低価格戦略では経営的に成功する店、失速する店の二極分化が進むでしょう。 商品を安くするのは簡単ですが、安くして収益を上げ続けることは非常に難しいからです。安易な安売りは自分の首を絞めることになり、確固たる見通しがなければ企業の寿命を縮めるだけです。安売りで生き残るには相当の戦略と覚悟が要求されるのです。

――具体的に言うと?

王 低価格で利幅が少なくなる分をどこでカバーしていくか、かなり細かい計算と仕組み作りが必要です。例えば吉野家の場合、素人なら「特盛」を安くしようと考えるでしょう。それをあえて「並」を安くしたことで、「並」単品に客を集中させ、仕入れやオペレーションの無駄を徹底的に省いている。大量の調理ができるように調理器具のキャパを増やし、多数の食器を運べるよう食器を軽量化、レジ台数を増やすなど、時間あたりの客の回転数増を徹頭徹尾追求しています。

――緻密な経営戦略ですね。

王 オペレーションでいえば、人間の手は慣れればグラム単位の誤差がわかるようになる。しかし丼の重さがマチマチであれば、狂いは大きくなります。通常、丼の重さは統一しにくいのですが、そんなわずかな部分も改善し作り直すことで、ばく大な利益に結びつける発想です。

これが成功し、客の回転数が上げられれば、すべてが良い方向に向かいます。食材のムダがなくなり、いつも新鮮な食材が使え、ご飯も常時炊きたてになる。安くておいしければ、ますます集客率はアップする。

同じ牛丼でも「松屋」や「すきや」は定食の安さを打ち出しており、三社三様の安売り展開で成功していると思います。

――低価格競争以外に生き残る道はあるのでしょうか?

王 もちろんあります。これまで売上げのなかった部分で稼ぐというのが一つの方法です。日本の外食でぽっかり穴があいているのが朝食への取り組みです。

アメリカのファミリーレストランの場合、夜はお客がバーやエンターテインメント性のある店に流れるという事情もあり、朝食で売上げを作る努力をしています。その結果、朝食が売上げの三〇~四〇%を占めるようになっている。アメリカ以外の国でも、朝食は外食業界の大きな柱と位置づけています。日本でも朝食メニューを出すところはありますが、インパクトも売上げからいってもまだまだ弱い。

――日本は朝食を外食で済ますことに慣れていない事情もあります。

王 朝食は習慣として食べるものです。外で食べる習慣も忍耐強くキャンペーンをしていけば必ず定着していきます。事実、マクドナルドが二〇年以上前から朝食メニューに力を入れて、売上げの一五%ぐらいまでを占めてきています。

ファストフードで朝食を済ませることに抵抗がない世代も増え、共働き増加という土壌もあるのですから、朝食市場は今後大いに期待できるでしょう。

――朝食を定着させるには何が必要ですか?

王 メニューが朝昼晩同じではなく、朝食でしか食べられない独自メニューの開発・提案が必要です。

従来の海苔・卵・味噌汁的な朝定食というのも、ちょっと暗いですよね。アメリカのファミレスの朝食は七ドル(約八四〇円)ほどで決して安くはありません。でもビジネスマンたちはプレート料理やビュッフェスタイルの朝食を朝からたっぷり食べています。ビジネスミーティングを朝食の場で行う習慣もあり、その姿は非常にエネルギッシュで格好よくみえます。

日本に朝食を定着させるには、外食で朝食をとることがスタイリッシュであるというライフスタイル提案的な宣伝も必要でしょう。朝食に合うヘルシーな食材開発も急務です。

ハッシュドポテトいち押し

――どんなものがありますか?

王 アメリカの朝食の定番にハッシュドポテトがあります。フライドポテトは朝食べるには重すぎますが、これはノンフライ調理が可能で低カロリー、消化吸収もよいことで万人に好まれている食材です。調理する側にとっても手軽で扱いやすいうえに、作り置きがきき、卵など他の食材との相性がいいというメリットもあります。日本ではあまり普及していない食材を利用することも朝食メニュー開発には不可欠でしょう。

――今日はありがとうございました。

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