これからの居酒屋(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年11月1日)

繁盛店のキーポイントを探る
多様化を進め潜在需要開拓
変化しつづけるコンセプトづくり
これまでの居酒屋は客層がサラリーマンか若者に二分され、業態もシンプルだった。それがいまお客がぜいたくになって需要に広がりがでてきた。

客単価5,000円以上の洋風と和風をミックスしたグレードの高い居酒屋が、これまでの居酒屋にない客層の掘り起こしに成功している。厨房に板前がいて、きちんとしたコース料理を食べさせる。接待需要や、今までフレンチやイタリアンなどの高級専門店に行っていた若者を取り込んだ。

ワタミフードは8月に「TGIフライデーズ」をオープンさせた。米国版居酒屋で、米国の内装と雰囲気を持ち込み、若者にアピールするのが狙いだ。和民は少し飽きがきているので、新しいコンセプトの居酒屋を開発するのが狙いだろう。

お酒を飲む場所では、デザインや雰囲気といった要素がお客の選択肢となりやすい。料理と同様に雰囲気もいろいろ楽しみたい、異体験をしてみたいというニーズが増えている。同じメニューでもデザインの違う店で食べたいというニーズがあるだろう。

居酒屋はこれから多様化が進む。いままでのような単一の業態で1000店という時代は終わりつつあるようだ。米国もまったく同じで、マルチコンセプトの方向に変化してきている。新しいニーズを捕まえなければ企業として利益をあげることが難しくなっている。

吉野家は、居酒屋が取り切れていない女性客に狙いを定めた「台所」のテスト展開を始めた。調理人はすべて女性という徹底ぶりで、野菜中心のメニューに力を入れている。

いままで自社で取り込めなかった女性や接待需要、また高級店に流れていた若者層を取り戻すことで、チェーンとして全体の売上を確保しようというやり方がこれから増えてくるだろう。反面、管理コストが高くなって大変だという課題も抱える。

最初からマルチコンセプトを標榜しているラムラや際コーポレーション、グローバルダイニングなどは、それで儲かるように考えてきた。大手ほどそれは難しいが、人材はあるのだからできないことはないだろう。新業態を売り出すことで企業の活性化にもつながる。 ただ個性のある店は飽きられるのも早く、旬はせいぜい3年~5年ぐらい。常に新しい業態をどんどん開発しなければならない。

その意味で評価できるのは、1件1件個性の違う店を出している際コーポレーション、ちゃんとフードなどだ。しかしそれも今の30店ぐらいの規模だからできること。100店規模ではどうなるか注目されることだろう。

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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