米国繁昌店シリーズ 第5回「ニューヨークの超繁昌店 米国一のステーキ屋 Peter Luger」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年11月15日)
Peter Luger
住所 Broadway Brooklyn. NY
電話 718-387-7400
ニューヨークというとNOBUのようにトレンディーなレストランが軒を並べているように思われるが、歴史のある古いステーキ屋も検討している。米国人にとってビーフステーキはいまだにご馳走であり、どこの町にも古い伝統的な美味しいステーキ屋がある。ま、日本人にとっての美味しい日本料理という位置付けだろう。米国で一番美味しいと銘打つステーキ屋はたくさんあるが、どのステーキ屋も一目置く米国人の憧れのステーキ屋がニューヨークにある。それがピータールーガーだ。正確に言うとマンハッタンから川を隔てたブルックリンにある。名前のごとく、ドイツ系のユダヤ人の経営する�1887年創業の今年で112年にもなる老舗だ。(多分米国でも最も古いステーキ屋の一つだろう)
ピータールーガーに訪問したことのある日本人はそう多くない。ブルックリンの工場や倉庫街の寂れた場所にあり、店の周囲は夜間は外を歩いたら間違いなく強盗に襲われるという怖い場所だからだ。筆者がホテルでフロントに行き方を尋ねたら、危ないから行かないほうが良いというし、タクシーに行ってくれといったら3台もいやだといわれ、チップをだいぶ弾んでやっと行ってもらったほどだ。帰りはタクシーがないので店で手配をしてもらったら、ヤンキーお兄さんが運転する白タクという怖い思いをした。(筆者はそんな怖い思いをしてもニューヨークに行くと必ず訪問するようにしている�麻薬のように魅力のある店だからだ。)
さて、そんな怖い思いをしてたどり着き、人気のない玄関をくぐるとそこは別天地。どこからきたのだろうかと思うくらい人が溢れている。ウエイティングバーは立錐の余地がないくらい一杯だ。それもカジュアルな服装の裕福な人たちばかりだ。この店は予約がないと入れない。最低でも一ヶ月前の予約でないと好きな時間に入れない。筆者は日本から予約を入れてから行くようにしている。
ウエイティングバーの壁面に、ZAGATやその他のグルメ雑誌による表彰状が隙間なく張られている。ウエイティングバーから一歩入ると100年前にタイムスリップしたかのような古い客席に案内される。古いドイツのビアホールの雰囲気の漂う、古びた木と白壁の内装だ。テーブルはなんと創業以来のものという古さだ(足はさすがに変えているそうだが)。テーブルクロスなって言うものはない。
さてメニューを見てみよう。普通のステーキ屋であれば、テンダーロイン(ひれ)ニューヨークカット(サーロイン)、リブアイ、Tボーン、ポーターハウス�など色々な部位があるが、ここの料理数はマクドナルドや吉野家もびっくりの単品だ。ポーターハウスしかない。焼き方も聞かない、聞くのは何人前かという量だけだ。その他に一応、LambChopsや魚も置いてあるが�ほとんどの客がステーキを注文する。
前菜はトマトとオニオンの厚切りにピータルーガーステーキソースをかけて食べる.オニオンの辛味とトマトの酸味が舌を刺激し、次に出てくるステーキの旨みをたっぷり味わうことができるからだ。さて、前菜を食べ終わるころには人数分のポーターハウスが一皿に大盛りに盛られてでてくる。熱々の皿に盛られたステーキは、焼いたときにでた肉汁をたっぷりかけられている。肉の旨みは肉の中の脂分にあるから�焼いているときに舌にたれる脂を受け取り、後で肉にかけるようにしている。そのために焼き方は上火焼きのグリラ-だ。
大きなポーターハウスは食べやすいように切れ目を入れてある。肉の表面はからっと焦げ目がつき�中は程よいピンク色。味付けは塩コショウだけのシンプルさ。ピータールーガー特製のステーキソースでも食べられるが、皿にたまっている肉汁につけて食べるのが流儀だ。他の調味料なんか要らない、肉の持っている味だけで食べさせる旨さだ。肉はUSDAのPRIMEという最高の品質だ。ウエイターに味の秘訣を聞くと最高の肉を客席の地下にある熟成庫で5週間ほどじっくりと味が出るまで熟成させる。そのためには客席と同じ大きさの面積の熟成庫を地下に設置しているという。最高の肉と自分たちで最適の熟成を行うという気の遠くなるような努力をしているのだ。しかも部位は一番美味しさの溢れるポーターハウスに絞り込むというこだわりようだ。このこだわりが112年も営業し、長年ZAGATで米国一のステーキ屋というタイトルを守りつづけている秘訣だろう。
付け合せは伝統のジャーマンポテトとホウレンソウクリーム煮だ。これだけけで、腹いっぱいになる。そして圧巻はデザートだ。お腹が一杯になったから、軽く食べられるフレッシュストロベリーを頼んだら、小さな蜜柑ほどもある巨大なイチゴと山盛りの生クリームがでてきたのにはびっくり仰天。大きいだけでなく米国のイチゴとは思えないほどの甘さだった。
112年も営業を継続している理由はステーキに対するこだわりだけではない、客席で接客にあたるウエイターのサービスも魅力の一つだ。場所柄、女性従業員は通いにくいのだろう、ほとんどが中年男性のウエイターなので最初は味気ないと思ったが、客に媚びないドイツ系の自信たっぷりの接客サービスが小気味が良い。肉の品質や店の歴史に対する質問にも歯切れの良い答えが返ってくる。そのスピーディーで的確なサービスも人気の一つだろう。
筆者が厨房を見せてくれといったら即座に衛生問題があるので厨房に入れないが、外から覗くのはかまわないよということで見学させてくれた、10台ほどの上火焼きブロイラーで焼いている厨房の光景は圧巻だった。
当店でしか食べられないという料理の魅力と、店舗の雰囲気、そして自信を持ったサービス、という飲食店繁盛の基本を忠実に守っているのが、競争の激しいニューヨークで100年以上も繁盛店として生き残る秘訣なのだろう。ニューヨークを訪問したらトレンディな店ばかり見ないで、多少の危険を犯してもぜひ訪問してみることをおすすめする。
メニューを見てみよう 注意メニューの価格は1999年11月現在の価格です。
メインディッシュ
ステーキ1人前 ・・・・・・・・・・・・ 29.99$
ステーキ2人前 ・・・・・・・・・・・・ 59.90$
ステーキ3人前 ・・・・・・・・・・・・ 89.55$
ステーキ4人前 ・・・・・・・・・・・・ 119.60$
ステーキサンドイッチ ・・・・・・・・・・・・ 18.95$
Lamb CHOPS ・・・・・・・・・・・・ 28.95$
その日の魚 ・・・・・・・・・・・・ 18.95$
前菜
ジャンボシュリンプカクテル(4本) ・・・・・・・・・・・・ 12.95$
ジャンボシュリンプカクテル(6本) ・・・・・・・・・・・・ 17.95$
スライストマト2人前 ・・・・・・・・・・・・ 6.95$
スライストマトとオニオン2人前 ・・・・・・・・・・・・ 8.50$
カナディアンベーコン ・・・・・・・・・・・・ 1.95$
ミックスサラダ ・・・・・・・・・・・・ 8.50$
野菜(ステーキと共に食べる)
フレンチフライポテト1人前 ・・・・・・・・・・・・ 4.25$
フレンチフライポテト2人前 ・・・・・・・・・・・・ 7.50$
ベイクドポテト ・・・・・・・・・・・・ 3.50$
ジャーマンポテト2人前 ・・・・・・・・・・・・ 8.50$
ホウレンソウクリーム煮2人前 ・・・・・・・・・・・・ 4.25$
デザート(たっぷりとしたホイップクリーム付き)
アップルパイ
チョコレートムース
季節のフルーツ
アイスクリーム
ホットファッジサンデー
チーズケーキ
フルーツタルト
ピーカンパイ
シャーベット