米国繁昌店シリーズ 第2回「シカゴの超繁昌店 Bob Chin」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年8月16日)

BOB CHINN’S CRAB HOUSE
ホームページ http://bobchinns.com
住所
393 S. Milwaukee Ave. (bet. Dundee & Palatine Rds.)、 Wheeling、 IL、 60090-5081
電話 (847) 520-3633
経営者 Robert Kwok Chinn (1923年3月生)
マフィアの町のイメージが強いシカゴは、穀物や牛の集散地で栄え、美味しいレストランに恵まれた食い倒れの町だ。

シカゴには米国有数の飛行場であるオヘア空港がダウンタウンから30分の距離にある。米国の地図を見てみると五大湖の下に位置し、飛行機で1時間でトロント(カナダ)、ニューヨークと言う米国でも有数の立地を誇る。この交通の便の良さが穀物や牛肉の集散地となったわけだ。また、交通の要所であり、五大湖という海運の強みも生かして、近くにはデトロイトなどの車産業などの重工業地帯でもある。そのため、古くから仕事を容易に得ることが出きるシカゴには世界各国からの移民が多い。世界最大のハンバーガーチェーンであるマクドナルドの創業者のレイ・クロックはボヘミアからの移民を親に持ち、シカゴで育ったのは有名だ。今でもシカゴの郊外のオークブルックにはマクドナルドの本社がそびえ立っている。そのため、シカゴの町ではステーキは勿論、ヨーロッパ各国の本格的な民族料理を食べることができる。

最近はヨーロッパだけでなく、東南アジアからの移民も多くなっている。韓国や中国系の移民も多く、本格的な料理を楽しむことが出きる。シカゴの郊外にあるBob Chinも中国からの移民の2代目がが開いた超繁昌店だ。移民の人たちは自分たちの得意な民族料理店を開店するのが普通だが、このBobは違った。米国人やその他の移民の人たちも喜ぶ料理を出そうとしたのだ。シカゴでは牛肉を扱うレストランは山ほどあるが、なかなか新鮮なシーフードを出さないことに目を付けた。シカゴは海から遠くて牛肉の町というイメージが強いが、よく考えたら巨大なオヘア空港から網の目のように各地に空路を張り巡らせている。アラスカや太平洋、大西洋の新鮮な魚介類を入れることは容易なのだ。米国人はなかなか魚の鮮度を理解しないが、父親が経営していた新鮮な魚を使う中華料理店の経験から、BOBおじさんは魚の鮮度の見分けは得意だった。そこで、アラスカの新鮮なキングクラブ(タラバガニ)を空輸し、思いっきり格安に提供しようとした。創業は1982年だった。当初は170席でスタートして現在では650席という巨大な客席をもっている。年間の客数は100万人を越え、97年度のレストラン&インスティテュート誌の全米の個店売上高トップ100位の内で年商21ミリオンUSドルで全米4位の売上高を誇る超繁昌店だ。

成功の要因のその1
絶対にここでしか食べられないような新鮮でボリュームのある魚介類の料理だ。アラスカから空輸する生きたタラバガニや、ダンジネスクラブ、の量と新鮮さは他店では絶対に真似が出来ないのだ。
成功の要因その2
巨大なテーマパークのような活気のある店舗がポイントだ。650席をの巨大な客席と150台以上の駐車場も備える巨大な店舗だ。予約は取らないので平日の夕方5時に訪問したが、それでも20人の客が列を作っている。隣りのフレンチは超高級でスーツとネクタイをしていないと入れてくれないが、Bob Chinnは違う。ジーンズにポロシャツでもOKだ。スーツとネクタイをしてはゆでたての巨大な蟹に遠慮なく食いつけないからだ。金曜日の夜などは2時間待ちも当たり前の超繁昌店だ。行列の人が2時間待っても飽きないようにデズニーランドに学んで色々な工夫を凝らしている。先ず、建物の外に並び、やっと店内の30坪くらいの広いウエーティングスペースに入ると壁には、雑誌やzagatの評価などが所狭しと貼ってある。それを読んでいるだけで飽きないし、しばらくすると店内の活況が目に入ってくる。一カ所にいると時間が長く感じるので、店内で3カ所ほど移動させる。そして、最後は客席の真ん中で周囲の食欲あふれるテーブルを見ながら並んでいると腹ぺこになると言う仕掛けだ。そして、ディスニーがキャラクターであるのと同様にここの創業者Bobおじさんは店に立ち客ににこにこと話しかける。
成功の要因のその3
ロケーションも重要だ。隣にはLE FRANSAISというシカゴのトップフレンチレストランが店を構えるように比較的に裕福な米国人の多い地域だ。また、魚が中心だから、米国人だけでなくアジア系の移民が多い方がよいわけだ。この地区は、日本人や中国人、韓国人の移民や駐在員の多く住む地域にも近い。
早速試食をしよう
英語が分からなくても料理を頼むかはそんなに難しくない、広い客席を案内される間に他の客のテーブルを見て美味しそうな物を頼めばよいし、客席の途中には冷蔵ショーケースにその日にとれた新鮮な魚介類が並べてあり、水槽には生きたタラバガニが泳いでいる。
早速生きているタラバガニを茹でてもらったら4ポンド(約1.8kg)の物で52ドル、そして、西海岸のダンジネスクラブ、ブルークラブの爪、そして、クラムチャウダースープ、新鮮なアスパラガスを茹でた物、野菜炒め(さすが中華料理)、名物のガーリックロール、4名でこれだけ注文しビールを浴びるほど飲んで1人45ドルだった(税金、チップ込み)。

さて、タラバガニに夢中になってかぶりついて一息ついて、ウエイターのもっている巨大なステーキに目がいった。さすがシカゴ、シーフードだけでなく美味しいステーキもあるわけだ。どんな人がそれを食べるのかと注目していたら、なんと隣の70才になろうかという老婦人の前に置くではないか。2ポンド(900g)はあるポーターハウスだ。まさか全部平らげないだろうと見ていたら、何とぺろっと平らげたではないか。さすがアメリカ人のパワーはもの凄いと脱帽。

この店は全ての料理が新鮮で、アメリカのようにばかでかい、でも、こんな超繁昌店にしては威張ることがなく、カジュアルに接してくれる。馬鹿丁寧ではないが気楽なサービスも人気の一つだろう。

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