ご意見番 業界ニュースを斬る「岐路に立つ「マクドナルド」」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞2000年5月1日)

岐路に立つ「マクドナルド」
米はメードフォーユーへ
日本での強敵は”コンビニ”

マクドナルド(以下マック)のシステムは、できてから45年と古いが基本的なレイアウトは今も変わっていない。しかし、その間マーケットは変化し、欠点がいろいろと出てきた。 マックの最大の特徴はセルフサービスというシステムを確立したこと。厨房に投資し、アルバイトでも大量に生産できる合理的なシステムをフォードの真似をして作った。この革命的な生産性というのは、あらかじめ注文数を予測して商品を皿にのせず、ラップに包んで置いておくことで、ただ置くと冷めるので保温器に入れ、ホールディングタイムを設けた。時間がきたら廃棄する。このシステムは非常にユニークだった。

だが米国のお客は、国民食ともいえるハンバーガーのことはよく熟知している。自分流のものを食べたいという要望が出てきたが、ピクルスやマスタードを抜きにして欲しいというような好みに合ったオーダーメイドにマックは対応できない。

バーガーキングなどの競合店が何をしたかというと、この弱点をついてきた。マックのやり方は順番通り具財を組み立て、できたものを紙に包んで保温する。 一方、バーガーキングは焼いたパンや肉をそれぞれ保温し、それを客の好みに応じて組み立てて出すということを、客を待たせずに可能にした。後発のチェーンはそれで伸びてきたという経緯がある。

マックは10年ほど前にステージング(パーツアッセンブリー)方式を取り入れ、バーガーキングのように肉やパンをそれぞれ焼いておく方式に切り替えた。 ただそれは、お客の注文に応じておいしいものを作ろうということではなく、人件費の抑制や作業の合理性のために取り組んだものだった。 最近米国では、バーガーキングやウエンディーズのほかに、「インアンドアウト」などが注文生産することで、日本のモスバーガーのように人気を集めた。それでも米国のマックも3年前からお客の注文に応じて作るシステム、「メードフォーユー」に変えようという方針になった。

今までと違うのは、最後の仕上げに電子レンジを使うのをやめたこと。高速(10秒)でパンを焼く高速トースターを開発し、注文を受けてから1分以内にアツアツを提供できるようにした。

米国は相当に競争が厳しくなって、これをやらざるを得なかったが、日本ではまだ独走状態。日本のお客はおとなしいので、あれこれと注文をつけることも少ない�もちろんやれば競合店にとって、つけ入るすきはなくなるが、米国ほど対投資効果があるかどうかは疑問だ。ロスが減るとか長期的に品質が上がるというメリットはあると思うが、売上げ増には結びつかないだろう。

マックも安売りが利かなくなってきた。トータルの売上げ、利益は新規出店があるので伸びているが、昨年、既存店は10%ぐらい売上げを落としている。

日本の場合、マックの競合相手はむしろコンビニ。宅配をやる戦略のほうが売上げは伸びるだろう。

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