ご意見番 業界ニュースを斬る「ファミレス積極出店」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年10月18日)

ファミレス積極出店
裏にチェーン再編の動き
格差広がればM&Aにも発展
すでに出店の場所取りは飽和状態といえるが、大手チェーンの新規出店の舞台裏には、中小チェーンのスクラップがあり、大手はその跡地を取って出店している。

ロードサイドを歩いていると、チェーンからチェーンへ看板が様変わりしているところが多いことに気づく。サイゼリヤの急成長のカギもそこにある。他店が閉店した跡地を低価格で契約し、しかも居抜きだから設備投資も抑えられて効率がよい。不採算店を44店リストラしたフォルクスの跡地にも、当然出店するところが出てくるだろう。

ファミリーレストラン積極出店の構図は、新規出店というよりは、チェーンの世代交代、再編といった構造の変化を表している。

撤退するチェーンには二通りある。ひとつは、企業として衰退した場合。もうひとつはロケーションが変化し業態に合わなくなった場合だ。繁華街が衰退したり、集客装置だったショッピングセンターが衰退したりといった例がある。

また、ロケーションを冷静に分析し、ターゲットのニーズにあるところに移動するチェーンもある。

先般、渋谷にオープンしたTGIフライデーは、もとは聘珍桜の跡地だった。聘珍桜は、井の頭線側にオープンしたホテル内に移動し、TGIは若者が集客できるその跡地に入ることができた�ロケーションの見直しによってこうした組み合わせの変化も起こる。

サイゼリヤはいま都心に出店攻勢をかけているが、サンデーサンの店の跡地を取っているケースが多い。サンデーサンは今、若者をターゲットにしたジョリーパスタに業態転換しようとしているが、既存店から転換できない場合は閉店となり、その跡地にサイゼリヤが入っている。

一企業トータルの店数は増えているように見えるが、実はその中での不振店は切り捨て、もうかる業態に出店を集中させるなどブランドのリストラが進んでいる。

たとえばすかいらーくグループでも、出店を伸ばしている業態と抑えている業態がある。自社の中でブランドの配置替えを積極的にやっている。

ロケーションのブランドのイメージによって出店戦略が変わってきている。自社内で業態転換できればするが、だめなときは他の企業に売ってしまうことも出てきているようだ。 今後はさらにM&A(企業の合併・買収)に発展してくるだろう。地方の企業を買い取って出店を進めるというような大胆な動きも予測される。

コンビニの世界ではもう始まっていることだ。いま金利が低いので持ちこたえている企業が、金利が上がって来た時に耐えられなくなり、一気に企業整理が進むだろう。いまも身売りの話はかなり出ているが、景気が悪すぎて買えるところがないため表面化しない。今後さらに格差が広がれば、買収の動きが出てくるだろう。

著書 経営参考図書 一覧
TOP