ご意見番 業界ニュースを斬る「ワタミISO14001取得」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年9月20日)

ワタミISO14001取得
CO2排出量390t削減 ”ISO14001″も取得
一部上場へ強力な武器
ISO14001の取得が日本で活発になった理由は、国レベルの環境対策の一環で、官公庁や中央公共団体と取引のある民間業者が14001の取得を取材条件とされたことにある。外食産業の場合はまだそこまで要求されておらず、費用対効果がなかなか見えないため、HASSPや品質管理のISO9000が先行し、14001への取り組みは遅れている。
そのすきまを突いて、ワタミが一番手に名乗りを上げた。実際に格好良いし、コスト削減にもなる。イメージアップを図りながら、利益という実も取るという戦略だ。

また、ワタミは店頭公開から二部上場まできて、次は一部上場を狙っている。その間、従業員を引っぱるための中間の目的として、ISOを捉えたのではないかと思う。普通は二部上場までいくと気が抜けて、一部になかなか上がれないという例が多い。渡辺社長の目標管理、社員の士気を高める手腕は見事だろう。

ISOを取得することはそれほど大変ではない。やる気とお金があればできる。ただ問題は、その後の監査でシステムを維持していることが認められないと、認証を取り消されることがある。マニュアルの概念とそれを忠実に守ることを要求される。

マクドナルドなどは、もともとISOと全く同じ考えで標準化してきた。だからISOを取ろうと思えば簡単に取れるだろう。

日本の居酒屋やファミリーレストランのマニュアルは、ファーストフードから見ればそれほど複雑なものではない。だから店舗が100店ぐらいで限界になってしまう。ファーストフードが何万店と展開できるのは詳細なマニュアルがあるからだ。

ワタミが14001をうまくやれればマニュアル化という概念を取り込める。一部上場に向けて強力な武器になるだろう。

ISOは会社の規模が大きいほどコストがかかる。セントラルキッチンを擁し業種業態の多いすかいらーくがこれをやろうと思ったら、膨大なマニュアルとコストがかかる。ワタミはまだ単一業態で100店舗ぐらいだ。今のうちに標準化すれば後が楽だろう。

ただコスト削減はすぐに効果が出るものではない。最初に投資と労力がかかる。従業員教育を徹底できるかというモラルアップの方が大変だ。会社としてマニュアル化を進め従業員にそれを公表するとなると、社内の空気がオープンになっていない会社は体制としてできない。またトップ自らの実践力と強力なリーダーシップが必要だ。

このワタミの取り組みを投資家は好意的に見ているだろう。渡辺社長は会社の情報を公開して株価を高める情報操作がうまい。従業員はやる気を出すし、株主も安心して投資してくれる。

一部上場を狙うほかにも将来的な提携や合併を視野に入れた場合、業界のリーダーシップを握るため技術的にトップをいっていることが重要になってくる。いくつもの目的を持って布石を打っているのだろう。

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