ご意見番 業界ニュースを斬る「モスバーガーの新機軸・スターバックスはもう「ダサい?」」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年5月17日)

モスバーガーの新機軸
店舗数の拡大が急務
まず時代からズレた三等立地の見直しを
モスバーガー(以下モス)の問題は店舗数が少ないことだ。マクドナルドはそこら中にあるが、モスは都心を見ても全然ない。18歳以上の人に聞くと、ほとんどがモスを好きと言う。しかし店舗が少ないためせっかくのユーザーを逃している。今は出店に注力すべきではないか。投下資本を落とすとか小型化するなどの方法で採算性が合えばもっと出せる。
1500店ではまだ限界ではない。不振店といわれるのは店が活性化していないからだ。モスはいまだにチェーン展開当初の店が同じ場所にある。マクドナルド(以下マック)は銀座の1号店はじめ出店当初の店は既に同じ場所にはなく、時代やお客に会わせてロケーションを変えている。

また、モスといえば”二等地戦略”が有名だが、今はそれが三等地、四等地になっている。商圏の変化に合わせて店を移していくという戦略がモスには見えない。マックは組織的に毎年動かしている。モスはFCだから動きにくいだろうが、積極的にやれば勝機はある。

モスは日本人嗜好の商品を開発し成功した。日本のFFで商品力が一番強いのはモスだろう。それで売り上げが伸びないのは、店舗数が少ないか、お客がいる場所に店がないかということだ。 私の思うモスの欠点は、メニュー増加とツーオーダーにともなう提供時間の長さだ。立地によってはスピードの方が要求される。モスの商品力をもって5分以内に提供できればマクドナルドに充分勝てると思う。

モスもマックも調理方式は基本的には変わらないので、時間短縮は可能。ただ従来の手作り感を維持しながらスピーディーにすることは難しい。機械、食材、オペレーション、レイアウトを多少変えていくことが必要だろう。

高級路線のほかに、駅周辺の店の大型化やスピード化も今回の戦略に入っている。ターミナルの周辺に100店舗ぐらい出店できれば、かなり大きい成果が期待できる。

既存店を転換することはFCオーナーにとってはしんどい。しかし新規出店は本部のリスクが大きく、今後は既存店リニューアルを地道に模索することが課題となろう。

これはFCゆえのハンデ。しかしモスはオーナーが前線に立っているケースが多い。モスの強みであるこのオーナーパワーの生かし方がカギとなろう。

業態開発は商品開発に結びつく。商品開発の一環として高級バーガーの業態開発をやるなら否定はしない。モスが業態をいろいろ試そうとしているのは、フレッシュネスバーガーを意識してのこともあるだろう。高級バーガーはマーケットが限られが、都心や外国人の多いところならニーズはあると思う。

本誌限定ここだけの業態ネタ
スターバックスはもう「ダサイ」
若いファン層遠のく
希少価値くずれた米国
いま日本で勢いに乗っている「スターバックスコーヒー」が、本国の米国で行き詰まっている。米国は競争の国だから伸びるのも早いが腐れるのも早い。スターバックスは成功して2000店ほどになっているが、いま若者たちが「ダサい」と言いはじめた。
スターバックスは若い層にファンが多い。「マックでコーヒー飲むのは格好悪いが、スターバックスなら格好いい」とされ、あの格好良さに希少価値があった。そのブランドイメージを守るため、テレビコマーシャルなど広告を打たない。コマーシャルをやると希少価値が色あせて陳腐化するからだ。

代わりに機内食やホテルで販売するなどしてブランドイメージを高めている。また第三国にコーヒーを寄付し、産業育成に貢献するなどパブリシティ活動に成功している。

ところが2000店突破と同時にブランドのメッキがはがれ始めた。この打開策が米国で焦点となっている。

待たれる多角化
ではどうすればいいのか。2000店規模になるとお客のマインドコントロールが必要になってくる。広告宣伝はある一定の規模に達したら絶対に必要で、それには商品戦略もあるが、会社のイメージを構築する意味でも重要だ。スターバックスがそれに乗り出すか否か。
後者の場合、ブランドの多角化にいくだろう。その路線で「サーカディア」というコーヒーショップを2年前から展開している。またガソリンスタンドでバーガーキングと共同出店するなど模索している。日本のスターバックスは温かいサンドイッチのテストを始めた。アメリカでもテストが始まっている。

日本のスターバックスはまだ100店に満たないが、500店舗突破時ぐらいで米国と同じ壁にあたるだろう。それはドトールに並んだ時。ドトールはフードを充実させた結果、フードの臭いがコーヒーの香りを消してイメージを落とした。それを突いてスターバックスが出てきた。今度はスターバックスが突かれる番だ。

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