新しい衛生管理HACCP 第12回「殺菌する その2 殺菌剤」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞2000年1月3日)

「殺す=殺菌=次亜塩素酸ナトリウム溶液」
包丁、まな板、調理機器、テーブル、などの機器類は食缶洗浄機などで(鍋釜等の調理機器の専用の自動洗浄機、鍋釜に合わせて内部の高さが高い)洗浄し、高温でリンスすることにより殺菌ができますが、そのような自動洗浄機が無い場合には温度をかけて殺菌することができません。その場合には中性洗剤などで汚れを洗い流し、その後に殺菌をします。殺菌は一般的に次亜塩素酸ナトリウム溶液を水で希釈して使用します。

次亜塩素酸ナトリウム溶液はブリーチとも呼ばれ、染みなどを脱色する働きもあります。家庭用のブリーチは脱色と殺菌の両方に試用されるため、場合によっては中性洗剤の成分である界面活性剤をいれてある場合があります。業務用で試用する次亜塩素酸ナトリウム溶液は野菜などの食材を殺菌する場合もあるので、中性洗剤の成分である界面活性剤などを含んでいません。

次亜塩素酸ナトリウム溶液は厨房の殺菌剤として一般的に使用されていいます。殺菌剤として国が認めているのはクレゾールであり、法定伝染病に汚染された場所を本格的に消毒殺菌する際に試用されます。クレゾールは殺菌能力が強くてよいのですが、あの独特の匂いと色が一般の消毒に使用する際に嫌われます。そこで、クレゾールと同等の殺菌能力のある次亜塩素酸ナトリウム溶液が法定代用消毒剤として認定され、食品業界、外食産業、家庭などで広く試用されるようになっています。食中毒菌などのついた調理機器を次亜塩素酸ナトリウム溶液に漬けると、次亜塩素酸ナトリウム溶液が食中毒菌の細胞膜を破壊し、菌の活性化をなくします(殺す)。効果が高いのですが簡単に使用でき、且つ安価なので広く使用されています。

市販されている次亜塩素酸ナトリウム溶液は濃度が5~6%のものが多いようです。以前は12%などの濃い濃度のものがありましたが、PHが高く殺菌効果が急速に低下するので現在は使われていません。

使用する際にはそれを水で希釈し、塩素濃度が100-200PPMになるようにして使用します。濃度が6%のものでしたら、300倍の水で希釈して200PPM、600倍の水で希釈して100PPMとなります。試用する際には濃度をキチンと守って試用しなくてはなりません。あまり高い濃度の希釈倍率にすると手荒れなどを引き起こしますので、規定の濃度を守って使用しましょう。使用する際には容器についている使用説明書をよく読んでください。

次亜塩素酸ナトリウム溶液は水で希釈してバケツやシンクなどに貯めておくことがありますが、希釈してから2時間以上経過すると効力が低下します。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液は購入後時間が経過したり、高温で保管したり、容器のふたを開けっ放しにすると殺菌効果が低下するので、取り扱いには注意をしましょう。

食器や調理機器を殺菌する際には次亜塩素酸ナトリウム溶液を希釈した水槽によく洗った機器を浸漬し、殺菌します。この際に食器や調理機器を中性洗剤や弱アルカリ洗剤を使用して、汚れや油脂を良く落とし、洗剤成分を洗い流してから、希釈殺菌溶液に浸漬します。食器などに脂が付着していると希釈溶液の殺菌成分が細菌に届かず殺菌ができないからです。

希釈溶液に脂などの汚れが入ると殺菌能力が低下するので交換する必要があります。目で見てにごっていたら交換しましょう。浸漬して5-10分間浸漬しないと殺菌することはできませんので、十分な時間を取ります。タオルや布巾を殺菌する際には一回絞り上げ、再度浸漬して、隅々まで殺菌溶液が染み込むようにします。

調理台や冷蔵庫の棚、など浸漬できないものは、規定の倍率で希釈した殺菌溶液に浸したタオルやダスターなどでふきあげていきます。もちろん、その前に汚れを落とすことを忘れてはいけません。なお、次亜塩素酸ナトリウム溶液は腐食性が強いので、お店で使用するシンクはステンレスでもSUS304と言う耐腐食性の強いステンレスを使用します。安価なステンレスのSUS430を使用すると錆びたり、穴が開いたりしますので注意してください。特に濃い濃度の希釈溶液に浸漬するとステンレス以外の金属類を腐食しますし、タオルなどの繊維質もいたみますので、規定の時間以上の濃度や長時間の浸漬はしないようにしましょう。なお、殺菌液に浸漬後は流水でよく洗い流し、殺菌成分が残留しないようにします。

以上

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