『インターネットの活用』(オータパブリケーションズ 週刊ホテレス1996年10月11日号)

インターネットは難しくない。テレビと電話が一緒になったものにすぎない。これからインターネットをどう活用するか簡単に説明するが、インタネットを説明した本を読むとよけい分からなくなる。そこで、今回のケータリングショーの会場でインタネットカフェを開き、実際にこの文章を見ながら、操作するようにしているので、会場で是非インターネットにチャレンジしてもらいたい。インターネットが如何に簡単かお見せする。ショーの主催者の日本能率協会と日本厨房工業会に設置してあるのでおためし下さい。(但し、その後インターネット中毒になっても保証の限りではありませんので悪しからず。)

時間がなくてケータリングショーに参加されなかった方は、町のインターネットカフェに行って試してみよう。お店の人にhttp://www.saykonet.or.jp/を見たいのだけれどと言えば、操作してくれるはずだ。そこから、今回ご紹介した各ホームページに簡単に行くことが出来る。また、筆者、王利彰のページには過去の執筆全文と、ブックマーク(筆者がよく見るホームページ)があるので参考にしていただきたい。

情報入手手段としてのインターネット
世界の新聞、雑誌から必要な情報を入手
朝起きたら、コーヒーを入れて、インターネットに繋ぐ、最初に見るのが、NTTの新聞社へのリンク集だ。ここでは、朝日、毎日、読売、日経などの各紙を見ることが出来る。もちろん、全文を掲載しているわけではないが、速報レベルの情報を見ることが出来る。最も情報発信が多いのは朝日新聞だ。

その他、海外の新聞も見ることが出来る。サンノゼマーキュリー新聞はインターネット上では5ドルを払えば全文を閲覧でき、見出しと簡単な解説(全体の20%の量)は無料で見ることが出来る。その他の新聞はウオールストリートジャーナル(最近有料になった)。USA Todayなど数多くの新聞を見ることが出来る。

外食産業情報
外食の分野では米国のNation’s Restaurant News等も無料で購読できる。米国のJFに当たるNRAのホームページに繋ぐと機関誌のダイジェストや、教育マテリアルなどの情報を見れる。

自分からホームページに繋がないと情報を入手できないのでは面倒だ。「新聞だったら毎日家まで配達してくれるのに、インターネットだと駅の売店まで買いに行かなければいけないと言う面倒がある」という不満に答えて最近新しい情報配信がでてきた。Pointcastという会社と、タイムワーナーが提携して開始した情報発信だ。

これはタイムワーナーのもっている雑誌、新聞、テレビなどのマスコミ情報を分野別に整理して、配信しようと言うものだ。ソフトは無料で配ってくれるし、情報も無料だ。費用は画面上に広告を載せまかなっている。テレビの民放のニュースと同じ仕組みだ。テレビや新聞と異なるのは、自分の興味のある項目を指定するとそれに併せて情報を送ってくれると言うものだ。内容はニュース、会社情報、業界別動向、天気、スポーツ、生活、インターネット検索、等だ。

ニュースは新聞などの一般的なものだ。業界情報では筆者は洋服業界、食材、飲料、病院、医薬、観光、小売り、レストラン、スーパーマーケット、等に分類して情報を送ってもらっている。会社情報では外食に絞り、マクドナルド、ジャックインザボックス、デニーズ、スターバックスなど25社の情報を入手できる。この機能を旨く使うと個人のニーズに合わせた新聞をカスタムメード出来るというもので、将来的に新聞に取って代わるものになるだろう。

企業財務情報
上場企業の財務までもっと突っ込んで見たいという場合には、SEC(米国証券取引委員会)のホームページにいくとで上場企業各社の有価証券報告書の全文を閲覧する事が出来る。もちろん無料だ。その他に株式情報各社が色々な情報を発信しているのでそれを見ることによりより詳細な情報を入手できる。インターネットで面白いのは有料の方が情報内容が良いとは限らない、無料の情報のほうが内容が濃いことが多いということだ。

海外レストラン情報
米国を時々訪問し、有名レストランを食べ歩きするのは筆者にとって大変重要なことだ。従来は旅行する前に本を読んだり、専門家の意見を聞く手間が必要だったが、今は一瞬の内に正確な情報を集められるようになった。シリコンバレー周辺のサンフランシスコのレストランガイドのベイエリアレストランガイドでは 地図入りでレストランを検索できるし、登録すると美味しいレストラン情報を送ってくれる。先日もサンフランシスコで1―2を争うレストランの情報を送ってくれ早速訪問した。この情報はサンフランシスコだけでなくシカゴなどの大都市もカバーしているし、最近日本版もスタートしている。

サンフランシスコクロニクル新聞でも外食店舗の紹介欄があり、権威のある外食評価欄で有名だ。

ニューヨークに旅をしたときには、事前に米国の有名なレストランガイドのZagatのホームページから、ニューヨークのトップステーキレストランのピータールーガーを検索して、電話で予約を入れることが出来た。

NRAのホームページでもDINE FINDと言うページを作り全米のNRAメンバーのリストの公開を開始した。ここでは米国の各レストラン評価の賞を取ったかどうかまで掲示しているので参考になるだろう。

参考になる外食産業のページ
以下の最近の面白い外食関連のホームページのアドレスを掲載するので参考にしていただきたい。

NRA http://www.restaurant.org/

Nation’s Restaurants News http://www.nrn.com/low/

マクドナルド http://www.mcdonalds.com/

KFC http://www.kentuckyfriedchicken.com/

ジャックインザボックス http://www.foodmaker.com/

シダックス http://www.shidax.com/

東京ガスフードサービスグループ http://www.tokyo-gas.co.jp/

小西酒造 http://www.konishi.co.jp/shirayuki/index.html

神奈川の酒造りの泉橋酒造 http://www.sphere.ad.jp/izmibasi/jpn/jpnhome.html

旅行に使う
インターネットを使えば、飛行機のスケジュールを確認して、そのまま予約を入れ、切符の支払いまで済ますことが出来る。ANAのホームページに繋ぐとスケジュールを確認し、無料電話でP2に電話して購入できる。

ホテルは新阪急、プリンスホテルなどはインターネットで予約すると20%割引になる。

日本のホテルだけでなく海外も同じだ。先日、シリコンバレーに行ったときには、マリオットのコートヤードというビジネスホテルに泊まった。マリオットのホームページに繋ぐと、マリオットチェーンの各種のホテルの情報がでて、住所、地図、電話、を見ることが出来る。そして部屋が空いているか確認してそのまま予約をすることが出来る。クレジットカードの番号を入れるのが嫌であれば(まだ、若干問題があるようだ。)電話をかけてそのまま予約を入れる。

マリオットのコートヤードは普通のモテルと異なり直営が多い。そのため、サービス、建物の大きさ、レイアウトが標準化されて、使いやすい。また、値段も80ドルから130ドルと比較的安価だし、郊外にあるので安全性が高いというメリットがある。(ただしレンタカーが必要になるが)米国全国にあるので使いやすい。そして、メンバーになると(25ドルと有料だがその分、クーポンでレストランで使える)市内電話が無料だというメリットと、10日間宿泊すると1泊無料の特典がある。

インターネットの活用例
インターネットがこんなに重要だと思われるようになったのは夏の大腸菌0157の事件以来だ。o157がこんな大規模な食中毒事件に発展したのは実は行政と、業界における情報の欠如が最大の原因だ。

日本では大腸菌0157の強烈な伝染力をまるで新型の細菌が特別にでたかのように思われているが、日本ではすでに1990年に埼玉県の白鷺幼稚園の事件で2名の園児の死亡事故があったわけで、最初の食中毒からすでに6年近く経過しているわけだ。今回の食中毒事件がこんなに大規模に発展したのは、この死亡事件を元に問題点と対策を明確にしなかった行政の責任だろう。今回の事件を色々な食材に原因があるといっているようだが、1万人に近い食中毒が発生するのは単なる食材ではあり得ず、かなりこの菌が存在する証拠ではないかと思われる。

この大腸菌o157による食中毒は日本だけではなく、米国でも発生していた。米国では1982年、ちょうど筆者が米国に駐在していたときに米国中央疾病予防センター(CDC)の発表で生焼けのハンバーガーの肉などを食べると発症するとの報告がでて、その翌日からハンバーガー店舗の売り上げが30%も低下するという経験をしたことがある。それ以来、レストランで食中毒に対する対策が行われるようになった。更にそれに追い打ちをかけたのが、3年半前のジャックインザボックスの食中毒事件で2名の死者を出してからだ。この事件も生焼けのハンバーガーを食べて大腸菌0157に感染してからである。

日米殆ど同時期に大腸菌0157による食中毒が発生しているわけだが、大きな違いは事件発生後の日米の対応の違いとインターネットによる情報の公開だ。

ジャックインザボックスの事件を重く見た、米国のFDA(日本の厚生省に当たる)とUSDA(米国農務省)、CDCは共同で基本的な対策に乗り出した。

まず、CDCは疫学的な調査を行い、どんな菌種がありそれがどんな症状を引き起こすのか、それに対する対策はどうするか、菌の検出はどうするのか等の基本的な研究を始めた。FDAはそれを元に過去の具体的な事件を分析し、その原因対策を明らかにした。一番大きな原因は牛の大腸中にいるという菌のために、食肉工場の衛生対策が必要だと言うことだ。そこでUSDAは食肉加工工場での衛生状態を向上させるためにHACCPの導入を決めた。米国のハンバーガーチェーンにミートパティを供給している、食肉工場を訪問したが、工場の説明の際にまずHACCPシステムの説明から入った。そして、工場内のあらゆる箇所にHACCPの説明が張り出してあるのに驚かされた。日本の食肉工場より遥かに衛生的になったのだ。

そして、ゴア副大統領の提案した情報ハイウエー計画に基づく、政府機関の情報公開のインターネット活用をフルに使い、最新の情報を公開し始めた。FDA、CDC、USDAのあらゆる情報を全文検索できるようになっている。

行政だけでなく、業界も対策に乗り出した。外食産業の団体である,NRA(NASIONAL RESTAURANT ASOCIAITION、日本で言うとJFにあたる)が具体的な対策に乗り出した。食中毒予防により具体的なHACCP衛生管理方法を導入した。 HACCPとはHazard Analysis Critical Control Point のことである。重要管理項目による事故防止品質管理システムというような翻訳になるであろう。

このシステムを元にNRA(全米レストラン協会)がSERVSAFE(Serving Safe Food Certification Coursebook & Exam)という衛生管理マニュアルを作り上げた。従業員はこの2日間コースを受講するわけだ。米国であ従来日本のような衛生責任者の制度がなかったがこの機会に民間が自主的にその講習内容と、テスト方法を定めたわけだ。日本の衛生講習会は受講すれば資格をもらえるが、米国のこのシステムは最後に厳格な試験があり、それにパスしないと合格しないようにしている。実際に米国のマクドナルド社などはこの教材を購入し、自社のトレーニングマネージャーをNRAのこのトレーナ講習会に参加させ、講習責任者の資格を取らせ、各地の従業員の教育に当たっている。

以上のように米国の行政と民間団体は密接な関係を持ちながら具体的な対策を立てて、その情報を広く公開していることがわかるだろう。

情報を配ってくれる例:CDCのニュース配信
CDCではMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)という疾病のニューズレターを配信している。日本からCDCのホームページにつなぎ、そこで登録するとニュースレターを無料で配信してくれる。また、過去の報告書も殆どすべてを検索できるので、何も人材交流をしなくてもすぐに情報の入手が出来るのだ。もちろん顔をつきあわせてのインフォーマルな情報交換も必要だが、現代の用に忙しい世の中、インターネットをフルに活用した情報入手の方が遥かに迅速だ。

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