0908「海外情報 外食事情Overseas」イタリアプーリア地方の食文化 第2回目(日本厨房工業会 月刊厨房2009年8月号)

5月4日(月) 3日目  ワイナリー・二本の椰子、アグリツーリズモのランチ、南のバロック芸術の町、本場のピザ・レストラン

今日はプーリア州Pugliaにある5つの県のうち、南のサレント地方にあるレッチェ県Lecceの県都・レッチェLecceを目指す。レッチェはプーリアでは3番目に人口の多い町だ。途中、ワイナリーの視察(兼・試飲そして買い物)をする。

プーリア州Pugliaの説明 英語
http://en.wikipedia.org/wiki/Apulia

プーリアの地図
http://images.google.co.jp/imgres?imgurl=http://www.laterradipuglia.it/images/cartinastradaleBrindisi.gif&imgrefurl=http://www.laterradipuglia.it/ing/Pugliamap.htm&usg=__TXiY5pnod0SwlxQwcCYpaiMn2Hs=&h=573&w=742&sz=52&hl=ja&start=2&sig2=ReeeUMvrixU8TGxJZPickA&um=1&tbnid=Zn4b2MnrZa_Q4M:&tbnh=109&tbnw=141&prev=/images%3Fq%3DBrindisi%26hl%3Dja%26rlz%3D1T4GGLL_jaJP315JP315%26sa%3DX%26um%3D1&ei=SmAcSpvAGoKPkAXJpjQ

9時にホテルを出てイトリアの谷Valle d’Itriaへ降り、南下する。今日も快晴。からりと明るい青空の下、白壁が映える家々、緑濃いオリーブと咲き乱れるミモザや針えんじゅ(ニセアカシア)の木々、その他、黄色や赤、白など色鮮やかな花が咲き乱れる丘陵地帯をバスが走る。

Valle d’Itriaの説明 イタリア語
http://www.valleditria.info/dove.asp

1時間40分以上のドライブの後、10時45分にブリンディッジBrindisi県チェリーノ・サンマルコCellino San Marco にあるワイナリーに到着。地元のブドウ生産農家による協同組合が運営する「カンティナ・ドゥエ・パルメ Cantine Due Palme(二本椰子醸造所)」だ。組合員は1000人を超すそうだ。最近、近隣の小さな協同組合を吸収し、協同組合方式のワイナリーとしては最大の規模になった。年間500万本ほどの生産量で、80%が輸出。もちろん、日本にも入っていて、メルシャン(つまりキリン)と提携している。また、伊勢丹のイタリアフェアにも出品、好評を博しているそうだ。

ワイナリーのCantine Due Palme カンティナ・ドゥエ・パルメ 公式HP英語
http://www.cantineduepalme.it/Inglese/Duepalme-uk.htm

Cellino San Marco 公式HP イタリア語
http://www.csm.br.it/

Brindisi県の説明 英語
http://en.wikipedia.org/wiki/Brindisi

Brindisi県の画像
http://images.google.co.jp/images?sourceid=navclient&hl=ja&rlz=1T4GGLL_jaJP315JP315&q=Brindisi&um=1&ie=UTF-8&ei=AWAcSp-ZK5eNkAWzw4zkDA&sa=X&oi=image_result_group&resnum=4&ct=title

説明と試飲は営業担当の最高責任者(社長の奥様)が丁寧に付き添ってくれた。往年の映画俳優のソフィア・ローレンのようにグラマラスで背の高い美人だ。美味しいワインを飲むと美人になるのでだろうか?
ワイナリーは思っていたよりも近代的な施設だった。工場担当者にブドウの搬入からワイン製造、貯蔵、瓶詰工程、までの流れに沿って施設内を案内される。今の時期は生産時期ではないため、ブドウの入っていない空の綺麗な機器類を見て歩いた。オークの樽でじっくり熟成させるのかと思ったら、この地方のワインは早飲みが中心であまり寝かせて飲まないそうだ。そのため、熟成の樽は巨大なステンレス製だった。最初の発酵に使う回転式の発酵機械はワインのタイプ(高級か大衆的か)により3種類ほどに分かれている。
ちなみに、日本のように長細いイタリアのワインは北のワインが高級品で、南のワインはテーブルワインだと言われている。
ここで、イタリアワインの特徴を見てみよう。イタリアワインは紀元前800年前頃から作られており、約3000年近い歴史を誇っている。生産量はフランスと並んで多く、全生産量の80%がイタリア国内の消費、20%が輸出となっており、輸出量は世界一を誇っている。
イタリアではDOCG、DOC、IGT、VDTといった、法的なワインの格付けがあり、品種や栽培法、品種構成の比率、収穫量などから厳しく格付けされているので、良質なワインが多い。また、その品種も分かっているだけでも1,000種類以上あると言われる。
イタリアは南北に細長く、北部、中部、南部とワインの産地があり、それぞれの特徴を持っている。その中でもプーリア州は石灰岩層という土地から水質がよく、気候も良いので、ワインの生産量は多く、イタリア全体の70%のワインを生産する一大生産地となっている。プーリアのワインはどちらかとい言うと白に特徴があり、テーブルワインなどの気楽に飲むタイプが多い。北部のワインの方が高級なように思われるが、地元の人は気軽に飲めるプーリアのワインが本当に美味しいのだと胸をはる。実際、プーリア地方の新鮮な魚介類と一緒に飲むにはあっさりしたプーリアの白ワインがぴったりだった。また、微発泡性の白ワインは料理の脂っこさを消し去るし、プーリア地方の高温の気候にはぴったりのようだ。プーリアで飲まれる地元の白ワインは酸化防止剤などの添加剤を入れていない。そのため、日本ではワインを飲むと頭が痛くなるという同行者が、がぶがぶ飲んでも頭が痛くないと言って、ワインを毎食ボトル半分を飲んでいた。
イタリアワインの説明
http://www.asahibeer.co.jp/enjoy/wine/know/wine/c_04.html

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3

さて、管理棟ビルの地下に座席数500近い巨大な階段教室形式の会議室がある。映画館のように立派な施設で、組合員を集めて会議や講習会を開いたり、外部向けのワイン講習会などの目的で作られたようだ。早飲みのワインが中心だが、この会議室の奥のガラス越しに見える熟成庫には高級なワインをオークの樽にいれて熟成している。
ざっと小一時間の見学のあと、お目当ての試飲タイムとなった。試飲の会場で面白い機械を見た。ガソリンスタンドのポンプの形状をしている。どうするのかと思っていたら、地元の人が大きな容器を持って入ってきて、その機械から液体を容器に入れている。ワインの自動充填機なのだ。容器は4リットル(1ガロン)ほどの大きさで、地酒のようにできたてのワインを買うわけだ。値段は1リットル1ユーロ程度とリーズナブルで、水より安いと言われるのもよくわかる。
試飲では、最高級品はじめ3種類くらいの赤のボトルが次々に抜栓された。どのワインのラベルにも、二本の椰子の木がデザインされたマークが入っている。日本で買うとき、ラベルにこのマークが入っていればここのワイナリーのものだ。
試飲もちびちびではなく、ぐいぐいと飲ませてくれる。しかも何回も気前よく注いでくれる。赤だけでなく白も試飲。つい杯が重なる。もちろん大分暑くなっていたので、キリッと冷やされた白もいい具合だった。スプマンテもどうかなと聞いたら、即座に栓を開けてくれて試飲させてくれた。いい気持ちになりながら、最後は買い出しだ。通常料金ではなく、訪問価格で売ってくれた(例えば最高級の赤16ユーロのところ10ユーロ、スプマンテ5ユーロ)。
本場のコクのあるうまさに、思わず白2本、赤2本、スプマンテ1本、合計5本ほど買ってしまった。これで35ユーロだから、毎食水のようにワインを楽しめることができる。さて、5本もワインを買ったのは毎晩ホテルで飲むだろうと思ったからだが、考えが甘かった。その後、ホテルへ帰るのが毎晩11時ころと、一滴も飲む暇がなかったのだ。

13時5分、大満足の気持ちを残してワイナリーを出発、昼食場所のアグリツーリズモに向かった。50分ほど走って、お目当ての「ジャルディーノ・スコッジ Giardino Scozzi」というアグリツーリズモのお店に着いた。ホテルからワイナリーまでの道も、ワイナリーからこの店までの道も、途中途中に小さな町がある他は、ほとんどすべてがいわば田舎道。先ほど紹介したような光景や、オリーブ畑がどこまでも続く風景が車窓を流れていく。

13時50分、「ジャルディーノ・スコッジ」がそんな田舎道に突然現れる。「こんなところでレストランが……」と思ったが、アグリツーリズモだから立地に不思議はない。入口から建物まで100メートルほどの並木道の先に2階建てのプール付きの白亜の大邸宅(館)がある。どこのマッセリーアも歴史を感じさせる「荘園・邸宅」で、外から眺めても中に入っても本当に豊かな気持ちにさせてくれる。
上空から見た写真
http://wikimapia.org/#lat=40.3580031&lon=18.0575538&z=18&l=0&m=a&v=2

アグリツーリズモの説明
http://allabout.co.jp/travel/travelitaly/closeup/CU20050621A/
http://www.agriturismo.jp/
http://www.italia-net-travel.com/ass/HP/Aguriturismo/Aguriturismo_italia/agriturismo_italia.html
マッセリーアの説明
http://blog.tabista.jp/italia/2008/02/3_2.html

広々としたレストランスペースに案内され、昼食が始まる。ご存じの通りイタリア料理は、アペリティーヴォ(食前酒)→アンティパスト(前菜)→プリモピアット(主菜一皿目)→セコンドピアット(主菜二皿目)→コントルノ(サラダ等副菜)→ドルチェ(デザート)→カフェ→ディジェスティーヴォ(食後酒)の順に食事が進む。そのため、2時間も掛けて昼食が食べられることも珍しくない。

イタリア料理の説明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%96%99%E7%90%86

ここでも、食前酒も食中酒も食後酒も白、赤のワイン、グラッパとたっぷりだった。特に、地元の微炭酸の白ワインが脂っこさを消し去って美味しかった。そして前菜がなんと9種類! 生ハム、きのこのソティー、スライスズッキーニの焼き物、数種の野菜のソティー、スライス茄子の焼き物、エビとセロリの炒め物、パプリカのオリーブオイル煮、たこの煮物、揚げボール。次から次へと出てきます。もう、これだけでお腹が一杯だ。プリモピアットはパスタが二皿。ムール貝とオレキエッテリ(プーリア地方の名物、耳たぶ型パスタ)、平打ち麺のひよこ豆入り。メインが馬肉のトマトソース煮。そして、サラダとデザート。
食事はたっぷりのボリュームがあったのだが、ちょっと塩分が強すぎたのが残念だった。食後にコーヒーを飲もうと思ったら、通されたバーにグラッパがある。思わず、グラッパをもらって燦々と照りつける太陽を浴びながら庭で優雅に楽しんだ。
ランチを食べ始めたのが14時、食べた後グラッパを飲んで出発したのが16時。時間の流れがゆったりしている。

16時にレストランを出発し、レッチェに向かう。レッチェまでは30分ほどの道のりだ。走っていて気がついたのだが、イタリアの道路はかなり細くても、交差点がロータリーになっている。もちろん主要道路の場合はその上に信号がついているが、田舎道では信号がないところが多く、このロータリー方式は事故防止に大いに役立っていると感じた。”出会い頭”という事故が起きないわけだ。

15時30分、レッチェに入りった。レッチェは、町がバロック芸術で埋め尽くされているため「バロックのフィレンチェ」と称される町だ。ご承知のようにバロック芸術は16世紀にドイツで始まった宗教改革に対応して、イタリアで起こったカソリックの反宗教改革運動の中で誕生したものだ。禁欲的なプロテスタントに対し、複雑で華麗、装飾的な表現が特徴となる。レッチェの町(旧市街)は、装飾的な彫刻や彫像で飾られた建物であふれかえっている。

Lecce の説明 英語 と 日本語
http://en.wikipedia.org/wiki/Lecce
http://www.italia.gr.jp/citta/puglia/lecce.html
http://www010.upp.so-net.ne.jp/architurismo/architurismo/citta/lecce.htm

中でもその象徴であるサンタ・クローチェ教会の威容には圧倒される。正面のバラ窓のある周辺テラスは、細かい装飾やたくさんの人物像、空想の動物たちが所狭しと彫り込まれている。この教会も含めて、旧市街の建物は少しピンクがかった石でできている。これは「レッチェ石」と呼ばれる石灰石で、柔らかく細工がしやすく、年月がたつとピンクがかってくるのだそうだ。

Santa Croce教会 画像
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Santa_croce.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/Basilica_di_Santa_Croce_(Lecce)
Lecce, SANTA CROCE

またレッチェは、地理的にアドリア海の対岸にあるマケドニア、ギリシャなどビザンチン文化やトルコなどのイスラム文化などの東方世界の文化も色濃く残っている。プーリア地方そのものがそうした傾向にあるのだが、レッチェはその中でも特に目立つ。ギリシャ正教や、イスラムの影響を受けた造形の教会も併存している。いわば、古代ギリシャ、古代ローマ時代から文化、そして軍事の交差点ともぃうべきところだったようだ。そのため、旧市街の至る所に古代の遺跡が発掘されている。比較的に広い通路の街だが、驚いたのはこの街の地下にはローマ時代の建造物のコロシアム(円形競技場)があることだ。イタリアにはユネスコの世界遺産がたくさんあるが、ローマ時代からの遺跡があるとはすごい。石造りのために古い遺跡が残るのだろう。
街のところどころの石畳に大きなガラスがはめ込まれ、地下の遺跡が見られるようにしてある。試飲と昼食時のワインにしびれた頭には、時間、空間が現実のものではない異世界に入ったようで、めまいすら覚える。古い遺跡を大事に保存する姿勢も大したものだ。

ローマ時代のコロシアムの画像
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Lecce-anfiteatro.jpg

18時30分、すっかり異世界の雰囲気に染まってレッチェを出発。今夜のディナーの場所であるピッツェリアに向かう。ピッツェリアの場所は宿舎の町、マルチナ・フランカMartina Francaの隣町チステルニーノCisterinoにある。

Cisterino市
http://www.comune.cisternino.brindisi.it/comune/
http://en.comuni-italiani.it/074/005/

丘の上にあるチステルニーノの市街へ登る坂道途中の「イル・ジャルディーノ  Il Giardino」に20時半到着。周りは真っ暗だが、坂の途中のお店は明るくライトアップされており、ロマンチックな雰囲気だ。70~80席はある大きなリストランテ&ピッツェリアは、地元の人たちの夕食時間には小一時間ほど早く、店内はまだわれわれだけだった。
店内の奥に薪窯がある。そこでピザ職人が見事にピザを作り上げ、薪窯であっという間に焼き上げる。見に行ったら厨房に入れてくれて焼き上げる様子をじっくり見せてくれた。
さて、メインはピザでもやはり前菜はしっかり出る。ボイルエビとフェンネルの茎のオリーブオイル・バルサミコ和えと、他に2品。そしてメインのピザは、マルガリータから始まって4種類。そしてドルチェ。もちろん、ワインとビールで乾杯だ。
食事が終了したのは22時。22時20分頃店を出て奇麗な月夜の中をバスで宿舎に戻った。時差ボケと食べすぎで、帰りのバスでは全員爆睡だった。

<参考資料>
今回の視察旅行には、長年商業界飲食店経営、ファッション販売、などで編集長を務め、2009年4月より名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス学科教授を務めていられる石川秀憲先生にご同行をいただき、そのレポートを筆者の主宰するメーリングリストとメールマガジンに執筆いただいた。今回の原稿執筆においてはそのレポートを参考、引用させていただいている。http://www.nagoya-bunri.ac.jp/cgi-bin/teacher/index.cgi?gakka=

プーリア地方の情報に関しては、今回のツアーをコーディネートしていただいた、ジョヴァンニ・パンノフィーノさんと大橋美奈子さん 御夫妻のHP
http://www.da-puglia.com/
をご覧ください。

また、プーリア関係のブログは多いのですが中でも以下のブログは写真が豊富なので街の雰囲気をご覧ください。
http://www2s.biglobe.ne.jp/‾circus/italia/puglia/pugliaguide/pugliaguide1.html

続く

プーリア地方の情報に関しては、今回のツアーをコーディネートしていただいた、ジョヴァンニ・パンノフィーノさんと大橋美奈子さん 御夫妻のHP
http://www.da-puglia.com/ を御参考ください。

また、プーリア関係のブログは多いのだが中でも以下のブログは写真が豊富なので街の雰囲気をご覧いただきたい。
http://www2s.biglobe.ne.jp/‾circus/italia/puglia/pugliaguide/pugliaguide1.html
続く

<参考資料>
今回の視察旅行には、長年商業界飲食店経営、ファッション販売、などで編集長を務め、2009年4月より名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス学科教授を務めていられる石川秀憲先生にご同行をいただき、そのレポートを筆者の主宰するメーリングリストとメールマガジンに執筆いただいた。今回の原稿においてはそのレポートを参考にさせていただいている。http://www.nagoya-bunri.ac.jp/cgi-bin/teacher/index.cgi?gakka=

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