0905「海外情報 外食事情Overseas」料理オリンピックとその他の食(日本厨房工業会 月刊厨房2009年5月号)
1) 第22回世界料理オリンピック
今回の欧州厨房視察の主たる目的はドイツ・エアフルトにおける第22回世界料理オリンピックの日本選手団の応援だったので、その日本選手団の健闘ぶりと、その他をご報告する。
エアフルトはフランクフルトから300km弱の距離にある。「世界料理オリンピック(通称IKA)」とは、世界司厨士協会加盟(75カ国以上)により、4年に1度ドイツで開催される、100年の歴史を有する国際料理大会の最高峰で、各国独自の食文化を秘めた西洋料理の粋を極める世界最大の料理競技大会だ。今大会には、日本からも「ナショナルチーム」「ナショナルジュニアチーム(初参加)」「個人競技」の3部門に、料理人が参加した。同時に会場では厨房機器の展示会を併催していた。
日本チームを選抜し率いるのは社団法人全日本司厨士協会で、会長の宇都宮氏と特別コーチの三国清三氏たちが団員を率いての参加だった。初参加のナショナルジュニアチームは日本の有名ホテルなどから抜擢された23歳以下の若手で男女2名づつの4名。チーム名は日本人によって発見された旨味にちなんでUMAMIチームと名づけられた。まだ、経験の少ない若手なので、特訓は三國清三氏が行い、会場でも厳しい指導をしていた。高名な三國シェフの指導を直接受けられるということは、若手の調理人にとって夢のような経験だろう。
応援は1日だけだったが、当日はホットセクションのコンテストで、会場ではオープンキッチンで4名が調理する中を審査員が厳格な審査をおこない、参加者は有料でその料理を試食するという現実的なコンテストだった。当日は110名分の料理を作るので、戦場さながらだ。
会場の中心にはレストランの客席を設け、レストラン・オブ・ザ�ネイションと名づけられている。勿論、ワインもサービスされる。
日本チームのメイン料理は子羊のロティに温野菜添え、ソーステリヤキだ。鮮烈なグリーンのソースは最初アボガドかと思ったが、ピリッとしたワサビソースだ。そのワサビソースの下にはテリヤキソースがそっとかけられた複雑な味付けになっている。温野菜は椎茸と筍の包み焼きと、キャロット、アスパラガス。盛り付けも見事だし、味も大変良かった。その結果、日本チームはこのホットセクションで銀メダルを獲得し、その他の競技を実施後の総合順位で5位と大健闘した。
この料理オリンピックのカテゴリーはナショナルチーム、ジュニアチーム、リージョナルチーム(地方都市)、インディビジュアル(個人)、ケータリング、の他にミリタリーチームがある。面白いのはミリタリーチームだった。軍隊の食事のコンテストだ。会場は雰囲気を出すためにテントで設営され、使う調理機器は軍隊用の専用機器で、移動式の台車に乗ったまま調理を行う。ミリタリーチームの一部のシェフは上着は白いコック服だが、ズボンは迷彩色の戦闘服や編み上げの軍靴を着用している参加者もいる。
客席で試食をしている人も軍隊の人が多く、迷彩色の戦闘服を着てフルコースを食べている姿は大変面白かった。
軍隊食というと缶詰などの非常食を予想していたが、缶詰などは非常時の戦闘食であり、通常は普通の食事をしているそうだ。また、軍隊は階級制度がきちんとしており、将校と一般兵卒は食事の場所や内容が異なっている。今回の食事はどうも将校用の食事のようで、前菜、メイン、そして見事なデザートまでついているのには感心した。ただ、食材などは生から加工するのではなく、事前に加工してパックされたものを使用するなど、現実の戦場を想定した料理となっている。日本の自衛隊も参加して勉強してみては面白いのではないだろうか?
以下は参加者のMilitary Team of Great Britain 大英帝国陸軍のメニューだ。
前菜
Deep Fried Halloumi Cheese on Tomato & Aubergine Caviar with Onion Salad,
Olive & Gherkin Dressing.
主采
Cider Brined Pork Chop,Black Eye Bean & Chorizo Cassoulet,Saut?ed Brussel Sprouts,
Pomegranate & Pistachio Relish,Cider & Grain Mustard Reduction.
デザート
Cherry Chiboust & Baileys Custard,Poached Cherries on Chocolate Blini,Morello Coulis,
Baileys Cr?me Anglaise.
なお、コンテストの行われる会場を取り巻くように展示会場があり、コールドセクションの前菜やデザートなどの盛付を展示していた。また、ワインや食材の試食も出来るし、有料だがビールやホットドックも販売していた。ジュニアチームの食事の後ですが余り美味しそうだったので、まず、地ビールを購入しホットドックの列に並んだ。米国式のホットドックのパンは柔らかく味がないのだが、ドイツのホットドックはしっかりと焼き上げた固いパンに溢れるような大きさのホットドックを挟む。ホットドックを焼く機械はグリル周囲に縁をつけて、油を5mmほど引いて焼き上げる。そうすると丸い筒状のホットドックが綺麗に焼けるし、焼いた後の保温にも向いているようだ。たっぷりと粒マスタードを塗って食べるホットドックとビールはぴったりのマッチングだった。
また屋外でも、ホットドックのバーベキューのスタンドを設置して、ホットドックや肉類を焼いていた。これも大人気で行列が絶えなかった。
社団法人日本司厨士協会HP
http://www.ajca.jp/
展示会場のHP
http://www.messe-erfurt.de/uk/
世界司厨士協会HP
http://www.wacs2000.org
その他
http://www.vkc.com
2) ヴァイマールWeimar市
エアフルトErfurt市で開催された世界料理オリンピックのジュニアチーム応援の後は、20kmほど離れたヴァイマールWeimar市に行き宿泊した。ヴァイマール市は文化の匂いが漂っている落ち着いた町で、テューリンゲン州の一つの都市だ。人口は約6万4千人と本当に小さな町だ。まず、グランドホテル・ルシャシャーホフ(5つ星the Grand Hotel Russischer Hof)にチェックインをした。
ヴァイマールは旧東ドイツなので、ずいぶん町が老朽化していたのだが、それを旧西ドイツの援助で町を再興したのだ。このホテルも200年以上も経った建物を使っているので、設備とサービスの心配をしたが、実は今回の旅行で宿泊したホテルの中で最も良い施設とサービスだった。部屋はこじんまりしているが、綺麗にメインテナンスがされており、トイレやバスタブもぴかぴかに磨き上げられていた。また、デスクも重厚なマホガニーの古い家具で思わず持って帰りたくなったくらいだった。
朝食もブッフェだが、素晴らしくて感激した。ペイストリーやクロワッサンも新鮮だし、チーズやハム類、スモークサーモン、牛乳やヨーグルトも美味しかったのだ。感激したのは朝食ブッフェにスパークリングワインがあることだ。仕事がなければ思わず朝から宴会になるところだった。勿論スパークリングワインがあるのは飲兵衛のためではない。血圧が低めの女性の気付け薬としての役割なのだ。なかなか洒落ている朝食だ。
さてヴァイマール市はアイゼナハ大公国の時代には首都であり、バッハが宮廷音楽家を務めたり、ゲーテが宰相として仕えたことで有名だ。市中心部には、ゲーテの旧邸宅がほぼ原型のままで保存されている。ゲーテ旧邸宅から300mほどの場所にあるヴァイマール国民劇場は、ゲーテやシラーらが自作のオリジナル演劇作品を上演したとのことで、彼らの銅像が置かれていた。これらの建物は世界遺産に登録されている。国民劇場の正面向かい側には、広場をはさんで建築歴史上で有名なバウハウス博物館がある。
説明を聞きながら石畳の町を散策した。教会が多くあり、教会の前には広場とカフェ、ホテルなどがあり、寛げる雰囲気だ。途中、気に入ったフェでお茶をすることにした。私はエスプレッソのグラッパ入りを注文したが、隣の席に座っている女性2名が巨大なケーキを食べているのを見て、衝動的に追加注文してしまった。激甘の味を想像していたのだが、思いのほかさっぱりとして美味しかった。
さて、散歩の後はお腹が減ってしまい、本場ドイツのビアーホールで夕食をとることになった。地元の古いビアホール「Koestritzer Schwarzbierhaus Weimar」を訪問した。外観は典型的なドイツ風ビアホールだ。既に店内は満席だった。
さー、ドイツ料理とビールを楽しもうと注文していただいたのが以下の料理だ。
・THURINGER SAUSAGE,THURINGER GRILLED MARINATED PORK
(�������風������・�������風���した��������)
・TRANCHE OF IN KOESTRIZER DARK BEER MARINATED
ROAST BEEF,BEEF SAUERBRATEN,DIFFERENT SAUSAGES
(地����漬�������� ����の代表的な�����������)
(豚の血の������/����������/調理済み豚入り������)
(������� �������������と����������付)
・THURIGER APPLE RED CABBAGE,THURINGER BACON
SAUERKRAUT,THURINGER DUMPLING,THURINGER BACON POTATO
SALAD,COOKED POTATO
(�������地方の赤�����・������������入り���������
団子・��������・����������)
・FRESH REGIONAL SALAD
(野菜サラダ)
・PUMPKIN CREAM SOUP AS GOETHE TIME WITH CINAMON
(��������������� ����風味)
・VANILLA PARFAIT WITH HOT RASPBERRY & WHIPPED CREAM
(�������� ������������� 生����添え)
美味しかったのは、やはり、ソーセージとジャーマンポテトだった。ビールはピルスナーを最初に飲み、後は黒ビール。料理は素朴な味だが、ビールとぴったり合って、参加メンバー盛り上がっていた。女性従業員はちょっと愛想がないのだが、何せブロンド美人揃い、文句のないサービスだった。ヴァイマールにまた行きたくなってしまう。この街は数日ゆっくりと滞在するのがお勧めだ。
エアフルト市公式HP
http://www.erfurt.de/ef/en/
エアフルト市説明
http://en.wikipedia.org/wiki/Erfurt
ヴァイマール市公式HP
http://www.weimar.de/en/tourism/homepage/going-out/
ホテル公式HP
http://www.russischerhof.com/rhen/index.htm
ビアーホールの公式HP
http://www.koestritzer-schwarzbierhaus-weimar.de/
ビアホールの説明
http://homepage3.nifty.com/NLbeer/B_TOURISM/beerTOURISM02_D_12.html
3)ヴァルトブルクWartburg城
ヴァイマールWeimar市に宿泊し、のんびりとした街の雰囲気を堪能した後にフランクフルトに向かい、途中、ユネスコ世界遺産の古城のヴァルトブルクWartburg城を見学した。
ヴァルトブルクは11世紀にルードヴィッヒ・デア・シュプリンガー建てたと言われている歴史のあるお城だ。13世紀に伝説の歌合戦が行われたり、王女エリザベート(Elisabeth)(後の聖エリザベート)のパンをバラに変えた奇跡、16世紀の宗教改革を起こしたマルチン・ルターが迫害を受け、一時的にこの城に避難し聖書をドイツ語に翻訳したこと、等で有名だ。
旧東ドイツの街の小高い山に聳え立つお城で、街を通り抜けてバスで山をあがり、駐車場で小型の車に乗り換えて頂上まで上がる。すでに紅葉が始まっており、頂上からの360度の眺望は素晴らしかった。
実戦的な古城というイメージで訪問したのだが、11世紀から19世紀まで継続して築城が行われた居住用の実用的な城だ。外観からは小さなお城なだが、3層の城内部は広く、ドイツの歴史を勉強するにはぴったりだ。宗教改革を行ったマーティン�ルターの質素な居室がそのまま残されており、こんな環境下、1年弱でドイツ語に聖書を訳したのかと感心させられる。お城の写真に関しては公式HPで図面入りで詳細な写真入りの説明がある。
お城のある街は人口数万人の小さな街アイゼナハEisenachだが、バッハ博物館などの有名な施設がある。旧東ドイツの街で旧弊していたものを綺麗に整備したそうだ。お城見学の後に、街を散策し昼食をとることにした。どの街も中心には教会と市役所があり、その前には大きな広場が広がっている。その一角の古い石造りのレストランで食事をすることになった。
数百年たったと思われる石造りのワインセラーのようなお店だ。店内は薄暗く、照明がほのかにテーブルを照らしている。ロマンチックな雰囲気で、我々のような団体客にはもったいないお店だった。
勿論、ビールを注文。
店名 BRUNNENKELLER
料理は
・BROKKORI CREMESUPPE
(ブロッコリーのクリームスープ)
・THUERINGER MUTZENBRATEN, GEREICHT MIT BUNTEN
GEMUESE , PETERSILIENKARTOFFELN
(チューリゲン風ポークグリル、温野菜添え)
・BIRNENCREME , GARNIERT MIT SAHNE
(洋ナシのババロア 生クリーム添え)
ポークグリルは煮てあるように柔らかく、付け合せのたっぷりのポテトが美味しかった。サービスはそっけないのだが、雰囲気が良くてカップルの方にお勧めのお店だ。また、石畳の街の商店街には色々なレストランが点在しているし、ドイツ流のホットドックのスタンドが点在している。音楽の好きな人にはバッハ博物館があるので堪らないだろう。
お城の説明
http://www.wartburg-eisenach.de/frame_wn.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Wartburg_Castle
http://www.shejapan.com/whs/wartburg/wartburg.html
Eisenach市のサイト
http://www.eisenach.de/Das-Neueste.21+M52087573ab0.0.html
街の光景
http://www.germanplaces.com/germany/eisenach.html
レストラン
http://www.brunnenkeller-eisenach.de/
http://www.restaurant-kritik.de/68383/#map
4)フランクフルト Gutschaenke Neuhof in Dreieich での夕食
ランチの後はフランクフルト市内に向かい、中心街で1時間ほど自由時間の後、市内のMonopol Hotelホテルにチェックイン。
http://www.hotelmonopol-frankfurt.de/jp/
チェックイン後、フランクフルト市内から数キロメートル離れた、郊外の農園レストランに向かい夕食をとった。
Gutschaenke Neuhof in Dreieich という農家レストランだ。
フランクフルト市内からわずか数キロ離れた場所にある、森と畑に囲まれた大ノイホフエステートの木造の古い素朴な建物だ。到着したのは日暮れ時だが、建物周囲には照明もなく、店内から照明がもれてくる建物がロマンチックに浮かび上がっている。入り口からは調理場をガラス窓越しに眺めることが出来る。店内に入るとレセプションがあり、そこから客席に向うと、途中に赤々と火をおこした暖炉が温かみを演出している。その奥に広がっている客席はそれぞれ、乗馬ルーム、ブルールーム、フランクフルルーム、狩猟ルーム、ガーデンルーム、レッドホール、国際的に有名なバー 、等テーマがあり、快適な時間を過ごせるようになっている。狩猟ルームには旧式の猟銃などが飾られている。私たちは16名ほどなので、一番奥の広い部屋に通された。メニューは古いドイツ料理を中心としたクラッシックな味だ。 仔牛フィレのローストは目の前で切り分けてくれた。静かな雰囲気の中で食事をゆったりとして食べることが出来る風情のあるお店だった。
当日のメニューは
スープ
ESSENZ OF QUAIL
(うずらのスープ)
お魚料理
WARM RED BEET SALAD,LEMON YOGHURT,ROASTED PIKE PERCH
(赤いビーツ入りサラダ・川鱒のロースト、レモンヨーグルトソース、ザリガニ添え)
口直し
SORBET W/PROSECCO
(シャンパン シャーベット)
メインの肉料理
FILET OD SADDLE OF VEAL , PINK ROASTED ,RAGOUR OF
WILD MUSHROOM ,GLAZEDROOT VEGETABLE, TRUFFLED MASHED POTATO
(仔牛フィレのロースト、マッシュルーム、根野菜、マッシュポテト添え)
デザート
DESSERT VARIATION NEUHOF
(6種類ほどのデザート盛り合わせ)
だった。
レストランガイド ドイツ語
http://www.rma.de/eng-rmaweb/freizeit/restaurant/gutschaenke.htm
レストランガイド 英語
http://www.rma.de/eng-rmaweb/freizeit/restaurant/gutschaenke.htm
公式HP ドイツ語
コメント ドイツ語
http://www.schlemmer-atlas.de/details.php?id=boYKapRPLLS