FFS市場に風穴を開けるフレッシュネスバーガーの実力度(柴田書店 月刊食堂1999年2月号)

FFS市場に風穴を開けるフレッシュネスバーガーの実力度

日本の外食市場で、現在もっとも寡占化が進んでいる業界といえば、これはもうハンバーガー業界をおいて他にない。マクドナルドの店舗数は3000店に迫ろうとしているし、これに続くモスバーガーとは店舗数で2倍近い差がついた。他のハンバーガーFFSといえば、これはもう言わずもがなである。
そして今のところ、マクドナルドとその他のチェーンとの差は広がりこそすれ縮まる要素は見あたらない。圧倒的なスケールメリットを背景にしたマクドナルドの快進撃はチェーンの御利益というものを示して余りあるものだ。

しかし同時にマクドナルドの独走によって、今のハンバーガー業界はおもしろみに欠けるものになっていることもまた事実である。マクドナルドがハンバーガーの市場を地ならししてくれている中で、そのマクドナルドとはまた違った価値を打ち出すことで、戦える素地は十分あるはずなのに、それに向けた意欲的な取り組みが少ないのは残念なことである。

商品設計における非凡さ

そうした数少ない成功事例のひとつが、フレッシュネスバーガーであろう。現在の店舗数が60店。マクドナルドに比べればものの数ではないという見方もあろうが、このチェーンが店数を伸ばしたのがここ数年のことである、という事実には注目すべきである。それはマクドナルドが低価格戦略とサテライト店開発によって、飛躍的に店数を伸ばした時期と一致する。つまり、マクドナルドとは明らかに違った価値を、このチェーンが実現していることを示しているからである。
それが端的に表れているのが、まず商品の部分であろう。フレッシュネスバーガーの強さとしてよく言われるのが「商品の手づくり性」ということである。確かにその通りであるが、筆者としてはそのベースにある商品設計の部分においても非凡なものを感じている。

とりわけバンズについては、研究を重ねたあとが十分に見られる。もともとアメリカにおけるハンバーガーでは、バンズというのはそれほど力を入れてこなかった部分である。それはハンバーガーはパティや野菜などの具材を味わうもので、バンズは手が汚れないようにつまむためのものに過ぎない、という考え方があったためだ。だから日本でもマクドナルドに追随する他のハンバーガーFFSはバンズについての研究は怠ってきた。

バンズにおいて独自性を打ち出すことで成功したのがモスバーガーだが、フレッシュネスバーガーはそれをさらに掘り下げたという印象がある。栗カボチャを練り込んだバンズは、ネギミソバーガーといった具材の特徴と合わせて、商品面での大きな差別化要素になっている。 また、品揃えについても別表のメニュー表のように、よく絞り込まれている。今のハンバーガーチェーンでは、もっとも少ないアイテム数で勝負できているのではないか。他のチェーンが手を替え品を替え新商品を打ち出しているのと比べると、個々の商品に強い自信を持っていることがわかる。

最近、久々の新商品としてチーズバーガーを投入しているが、これも非常によくできた商品だ。とくにチーズを数種類合わせることで、独自性の高いものに仕上げている。いたずらに品目数を拡大するのではなく、自信のある商品を効果的に投入していく、という姿勢を貫いている店は高く評価すべきであろう。

オペレーション力も向上

もっとも、筆者はフレッシュネスバーガーが誕生した当初からウォッチしているが、当時はこのチェーンがこれだけの店数になるとは正直言って思っていなかった。もともと商品の品質、オリジナリティについては非常に高いものを持っている。しかし一方において、余りにもオペレーション能力が低すぎる、端的に言えば提供時間が遅すぎるという問題があったからである。
それが現在の店舗を見ると、オペレーション能力が非常に高くなっている。最近になって立地も広がっており、これまでの二等、三等立地かだけでなく、いわゆるFFS的な立地への進出も進んでいるが、そこでもオペレーションの大きなもたつきは見られなかった。

今回、東京・芝大門の地下鉄の駅を出てすぐのところに出店した店舗に、ランチタイムに行ってみた。ピークの時間帯にハンバーガーをレギュラーサイズ、スモールサイズ合わせて4品、スープ、ポテトフライ、グリルチキンのサイド3品、ドリンク2品を注文したが、すべて8分以内に出揃った。商品の温度はすべて適温に保たれている。

この店は1階がオーダーカウンター、2階が客席というつくりになっており、イートインのお客には商品が出来上がり次第従業員が客席まで届けるという仕組みだ。いわゆるハイタッチなサービスであり、従業員の作業負荷も多いが、そうした中でこの提供時間を保っているところには感心させられる。

これまでのフレッシュネスバーガーは、提供時間の遅さゆえにチャンスロスが多くなり、せっかくの商品力を生かし切れていない印象があった。それが改善されてきていることは、立地の多様性という点から見ても、これからのチェーン化に向けた好材料となろう。

そしてもうひとつ、フレッシュネスバーガーの強みは、その店舗から受けるイメージの部分である。木目を基調にした店づくりはFCを主力にするがゆえのローコスト化をめざした結果でもあるが、それが店舗に温かみを生み出すことにつながっている。とくに、ファサードの部分におけるイメージづくりのうまさは他の追随を許さないものだ。

前出の芝大門の店の近くには、マクドナルド、ウェンディーズ、モスバーガーがあるが、いずれもフレッシュネスバーガーと比べると店づくりは非常に「無機的」な印象だ。フレッシュネスバーガーと同様の手づくり性を売り物にするモスバーガーでも同様である。こうした中で「チェーンでありながら、チェーンの顔をしていない」のがフレッシュネスバーガーなのである。

これだけチェーン全盛の時代になってくると、逆にそれとは違った画一的なイメージを感じさせない店のつくりは大きな差別化要素になってくる。それが実現できているところにも、フレッシュネスバーガーの強さがあるといえる。

店舗での表現力が課題に

同時に、これから多店化の過程でフレッシュネスバーガーが独自の位置を保ち続けられるかどうかの鍵もその部分にあろう。現在の店づくりは、他のハンバーガーチェーンと比べて強い個性を持っているが、それでも展開当初の店と比べると客席の配置、店内の装飾などの点で、ややパターン化されてきているところがある。これから立地が広がってくる中で、いかに個性的な店づくり、各店で異なる表現方法を持ち続けられるかが勝負どころだ。
また現在の店舗の問題点として、その材質ゆえに非常に汚れが目立ちやすいつくりになっていることが挙げられる。きちんとしたメンテナンス体制をつくるという、チェーンとしての原則は、ベースの部分でしっかりと踏まえる必要がある。

商品づくりにおいてもそうだ。現在、一部の店舗ではパティのホールディング用に、マクドナルドでも採用しているステージングシステムの導入実験を進めているようだが、こうした機器類をどう活用するか。商品の高い手づくり性と均質性を保つ商品製造システムをどう両立させていくかが、これからの展開に向けた課題となってくるだろう。

絞り込まれた商品構成と個々の品質の高さ。フレッシュネスバーガーのフォーマットとしての潜在力は、十分に高いものを持っている。来年4月までには100店体制を構築する計画だというが、その段階ではチェーンとしての総合力が問われる。チェーンのスタンダードと、各店舗での個性ある表現方法をどう両立できるか、この部分にフレッシュネスバーガーの将来がかかっているといえるだろう。

フレッシュネスバーガーのメニュー

ハンバーガー・ホットドッグ
フレッシュネスバーガー R270円 S170円
ベーコンオムレツバーガー R270円 S170円
サルサバーガー R270円 S170円
メンチバーガー R260円 S160円
テリヤキバーガー R260円 S160円
ネギミソバーガー R250円 S150円
テリヤキチキンバーガー R280円
チーズバーガー R300円
ホットドッグ 290円
チーズドッグ 340円
サイドメニュー
手作りケーキ 160円
オーガニックサラダ 240円
コールスローサラダ 220円
フライドポテト 150円
グリルドチキン 210円
ベジタブルスープ 200円
ゴマアイスクリーム 230円
カシスシャーベット 230円
ドリンクメニュー
しぼりたてジュース 250円
O.L.G.ミックスジュース 280円
フレッシュレモネード ホット250円 アイス250円
コーヒー ホット200円 アイス230円
カフェラテ ホット230円 アイス250円
カプチーノ ホット230円 アイス250円
ハーブティー ホット180円 アイス220円
ペプシコーラ R180円 L220円
セブンアップ R180円 L220円
ハイネケン生ビール 300円

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