パンツェロッティ、聞いたことありますか? 簡単に言えば、揚げピッツァでしょうか。
ピッツァを半分に折ってトマトソースとモッツァレッラチーズを閉じ込めて油で揚げたスナックです。よく似た食べ物で日本ではピッツァ発祥の地とされるナポリのカルツォーネという言葉の方が知名度が高いでしょうか。イタリアの食文化にとってネーミングはとても重要で、側から見ると同じ物に思えるものでも当事者にとっては違うものであり、当然呼び名も違ってくるのです。この辺のこだわりがイタリア的であります。同じ材料を使っていても微妙な分量の違いとかで形の違いとか、どこで作られたかで、違う名前が付きます。
パンツィロッティに関しては、イタリアではプーリア発祥として認知されていますが、カルツォーネとどう違うのかと言われるとその説明は人それぞれです。一般的にはカルツォーネは油で揚げず、オーブンで焼くのが基本ですが、パンツェロッティをオーブンで焼くこともあります。その場合、プーリアではオーブンで焼いたパンツェロッティであり、カルツォーネではないのです。
今川焼きか回転焼きかという議論と同じようなものかも知れませんが、ただ同じものを違う呼び方をするということではないと思うのです。
パンツェロッティが油で揚げてあるのは、プーリアにはオリーヴオイルが豊富にあるからでしょうし、ピッツァ文化が発達してるナポリではカルツォーネ(靴下とかストッキングという意味、その形状からついた呼び名と思われる)はピッツァの変形版としてオーブン焼きのものを指すのだと思います。
ワタクシ個人的には、ピッツァを食べる時は上に乗せる具材のコンビネーションを考えるところから、その日の気分によって定番を選ぶか、店のオリジナルがあればそれにチャレンジしてみようかと悩むところが楽しみでもあります。パンツェロッティの定番は長いことモッツァレッラとトマトソースでしたが、最近は中身にヴァラエティーを持たせる店が多くなってきました。例えばプーリア特産のチーマディラーぺ(菜花に似たカブ科の野菜)やゴルゴンゾーラチーズとクルミなど。
これも観光ブームで客層が広がっていることと関係があるのかと思います。
今年の長かった夏の終わりにパンツェロッティパーティ(パンツェロッタータ)をするからと友人宅に呼ばれました。ストリートフードのイメージがあるパンツェロッティは、ピッツァのように専門店で買って食べるものと思いきや、プーリアではそれぞれ生地の分量や醗酵具合、揚げ油の種類などにこだわりのあるパンツェロティ自慢というかパンツェロッティ奉行とでも言いたくなるような人もたくさんいます。彼のレシピは油っぽくなくサクッと軽くて専門店のものよりも美味しいと友人達の間でも高評価です。中身は定番のトマトソースとモッツァレッラチーズのみ。秘伝のレシピもなかなか教えてくれないところも、頑固でプライドの高いプーリア人らしいところです。
美味しいパンツェロッティに釣られて、親戚や友人が集まりただ軽口や無駄話を情熱的にする風景がまたプーリア的な幸せです。