weekly Food104 Magazine 2024年9月25日号

メルマガバックナンバー

このマガジンは王利彰の率いるフードサービスコンサルタント会社

有限会社清晃(せいこう)が提供しています。

https://www.food104.com/発行人の王利彰は、

その他に2011年4月より2015年3月まで関西国際大学教授に就任し、

新しく発足した人間科学部経営学科のフードビジネスを担当していました。

2004年4月から2009年まで立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の教授を務め、

F&Bマーケティング、サービス・マーケティングなどを教えていました。

立教大学観光学部、杏林大学外国語学部応用コミュニケーション学科観光文化コース、

韓国のSejong大学大学院フランチャイズ学科、女子栄養大学・短期大学、会津大学・短期大学等でも非常勤講師の経験があります。

2012年9月に脳梗塞で倒れ、重い嚥下障害を患っており、その顛末と嚥下対策は「月刊厨房」で1年間記事を連載しました。

フードコンサルタント王利彰は長年「メーリングリストfspro」で業界関係者と双方向のコミュニケーションをしてきました。現在は、Facebookのオンラインサロンへ移行。

FSPROメーリングリスト(外食産業情報“無料”オンラインサロン)

(https://www.facebook.com/groups/280530300281763)

外食産業でご活躍の皆さまはもちろん、卒業された方々の経験や知識も共有していただける場になるよう、皆様からの投稿をお待ちしています。

● 世界・日本各地の食情報

● 読者からのご意見・要望・質問・情報 コーナー

● 食ビジネスニュースリリース

● 日本外食ニュースと米国外食ニュース

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● 世界・日本各地の食情報

1)食の宝庫九州から上田さんです

【カシミールカレーはどこから来たのか】

カシミールカレーと聞いて思い浮かぶのは、どんなカレーですか。

黒くて、辛くて、サラサラでスパイシー、特に辛さが際立つイメージでしょうか。

では、どちらのお店で食べましたか?

1.上野御徒町のデリー

2.ロイヤルホスト

3.COCO壱番屋

4.その他スパイスカレーの専門店

実は、どの店でも食べることができます。

元祖と言えるのは上野のデリー、64年前だそうです。デリーは銀座店をはじめ各地に支店を出していますし、のれん分けの店舗も全国にあります。スパイスカレーの店でカシミールとして出されているのはデリーが発祥といえそうです。セブンイレブンのスペシャルカレーとしてコラボしたカレーや、おにぎりを出しているので、カレーマニアならずともデリーのカシミールカレーの認知度は高くなっています。

ロイヤルホストは、1983年のカレーフェアから黒くて辛いサラサラのカシミールカレーを提供しています。このフェアを前にデリーにカレーを学びたいと来社され、色々とアドバイスをしていた後、突然フェアにカシミールカレーが登場したのだそう。

カシミール地方はインド北部、ヒマラヤに近いエリアなので、果物も豊富で、カレーにも使われたりしているので、デリー風の辛いカレーは食べられていないのです。ではなぜカシミールカレーが辛くなったのか、これはデリーの初代社長が店舗のメニューを南インド地方のカレーと間違えたからだと。つまり辛くて黒いカレーにカシミールと名付けるのはコピーですよと言っているようなものですよね。

2020年からはカシミールビーフカレーとして黒いけど辛くない、むしろ甘目のカレーにリニューアルしています。

そして、日本で一番のカレーチェーンである、COCO壱番屋が「カシミールチキンカレー」を9月からの期間限定で発売しています。いよいよカシミールカレーは普通名詞化したのでしょうか。まさかデリー由来の名前だと知らなかった?

実食しましたが、タンドリーチキンという唐揚げの乗った、黒くてスパイシーなカレーでした。微妙に甘い感じがしますが、かなり寄せているなあというのが印象でした。


デリーの田中社長もブログに書いていますが、カシミールは都市の名前でもあり商標化できなかったようです。

ここに来て本家争いをしても仕方が無い気はしますね。せめてスパイスカレーのパイオニアへのリスペクトが在って良かったのではないでしょうか。

さて本家、発明品などで九州の話をすると、「辛子明太子」でしょうか、ふくや創業者の川原さんが韓国のたらこのキムチをベースに作ったもの、製造法をどんどん教えたので、現在では150社を超えるメーカーが全国で作っています。

また、洋菓子の「ダックワーズ」これは、浄水通りに店を構える「16区」の三嶋シェフがフランス時代にアーモンド生地を焼いた最中の様な焼き菓子として発想したもの、今では世界中の菓子店で商品化されています。

デリーのカシミールカレーも、同様に普通名詞化していくのでしょうか。すでになっていますかね。

デリー社長ブログ

https://www.delhi.co.jp/bossblog/27115

ロイヤル カシミールビーフカレー

https://www.royalhost.jp/menu/grand/pasta/post_559.html

CoCo壱番屋 カシミールチキンカレー

https://www.ichibanya.co.jp/menu/detail.html?id=1763

【プロフィール】

上田和久

kazz@studiowork.jp

スタジオワーク合同会社 代表

1959年熊本県生まれ、京都、福岡で暮らし、都城の単身生活を終え福岡に戻っています。

国際HACCP同盟認定リードインストラクター、JHTC認定リードインストラクター

上田和久 facebookは

https://www.facebook.com/kazz.ueda

経歴と仕事分野     

 厨房設備施工会社、電機メーカーで冷蔵設備の設計施工営業を担当後、食品メーカーへ転職し、品質保証の仕事を経て、2016年コンサルタントとして独立。

 主に、HACCPの認証取得が目的ではない、あるいは安全安心な食品を提供することを目的にした企業に対して、HACCPに基づいた衛生管理の取り組みを支援している。

 具体的には、食品工場に対し、これまでの計画施工から現場運営まで経験を生かした新築・増改築についての助言を行う他、製造現場に対して、クレーム対応、異物混入の原因の究明と対策、再発防止の仕組み作りの提案を行っている。

 食品工場の抱える問題やこれからますます厳しくなる要求への対応、それらを一緒に解決していくことを使命とし、精力的に活動している。

2)南イタリアプーリア便り イトリアの谷の食卓から 第388回

プーリアに戻って早々、日本からお料理教室の先生とその生徒さんたちが我が家においでくださいました。プーリアでしか体験できないような手作りの素材を家庭で作るワークショップをコーディネイトさせていただきました。

講師は我が家のお隣に住むジョヴァンナさん。彼女はマッセリアと呼ばれるプーリアの伝統的な農園の管理人の家に生まれ育ち、農作業からチーズやパスタなど農産物の加工品作りを幼い頃からおばあさんやお母さんの手伝いをしながら覚えた方です。現在65歳、20歳の頃に結婚して夫と一緒にドイツへ移住、ジェラート屋さんを経営して約30年ほどドイツ暮らしでした。ドイツで生まれた子供が小学校へ上がる年齢になるとイタリアの教育を受けさせるためプーリアの親戚の元へ預けてドイツで働き続けそれなりの財をなしました。若い頃にプーリアの自分が生まれ育った家の近くに土地を買い、家を建てて15年ほど前に夫婦揃ってドイツからUターンして来来ました。今は近くのアグリツーリズモで料理や食育のデモンストレーションをしたり、複数のドイツ人オーナーの貸別荘の管理を仕事としています。

彼女の経歴や生き様はここ50年ほどのプーリアの農業と観光業、農民文化の変遷とプーリア人の郷土愛や家族愛の強さを象徴的に表しているようにも思えます。プーリア魂というようなものを感じずにはいられません。

日本から来たお料理教室の先生と生徒さん達には、オレキエッテパスタとモッツァレッラチーズの作り方を体験していただきました。オレキエッテというのはイタリア語で「小さな耳」という意味のショートパスタ、細長い紐状にした生地を小さく切り片方の端を指で抑えながらナイフで引き伸ばし親指に引っ掛けてくるりと回して窪みを作ります。プーリア郷土料理の代名詞でもあるパスタです。目をつぶっていてもできそうな彼女の手捌きの良さはまさに名人芸。オレキエッテだけでなく彼女の手にかかると小麦粉と水だけでのパスタ生地が成形の仕方で様々な形に変わっていくマジックを目の前にして生徒さん達は目を丸くしていました。見るのとやるのでは大違いで簡単そうに見える作業も一筋縄では行きませんが、皆さん200gの小麦粉の生地を撚り終わる頃には少しコツを掴んで来られた様でした。

モッツァレッラチーズ作りも大量に作るチーズ屋さんではなく家庭のキッチンで目の前で牛乳が姿を変えていく様を見ることはとても貴重な経験です。実際そのプロセスがいかに手間のかかる作業であり、牛の生乳の状態やその日の天気などなど作る人の経験と五感を駆使してのみ出来上がる一つの作品であることを感じていただけたかと思います。また、最近日本でも知名度が上がっているブッラータというチーズが元々余ったモッツァレッラを新たな商品として作り上げたプーリア人の知恵であることもお伝えすると、さらに驚かれておられました。

実はジョヴァンナさんには日本のプーリア料理を愛する料理人たちも多くを学んでいます。受け継いでいきたいのは食べ物作りへの愛情の深さです。

大橋美奈子 Facebook

https://www.facebook.com/minako.ohashi

メール・アドレス

minako@da-puglia.com

大橋美奈子さん経歴

 演劇の勉強で欧米に留学し、欧米の料理に馴染みました。主人のジョバンニ・パンフィーノはスイスの有名ホテル学校を卒業後、レストランビジネスに入り、 高級ホテルやイタリア高級レストランのビーチェのヨーロッパの店舗で働いた後、 東京椿山荘に開業した超高級ホテルのフォーシーズンの高級イタリアンとして開業したビーチェの指導責任者としての勤務経験がある外食のプロです。

 そのジョバンニ・パンフィーノと、日本で知り合い結婚し長女を授かり育てていたのですが、数年前に子供の教育と生活環境を考え、主人の故郷であるイタリア・プーリアに本格的に移住したのです。母が料理学校を主催している関係で食に興味を持ち、自ら自家農園で野菜を育て、自家製のオリーブオイルで体に優しい料理を楽しんでいます。現在はプーリアで生活をしながら、イタリアの情報発信をし、コンサルティング、輸出入ビジネスを行っております。

 また、時々イタリアの食ツアーを開催しています。これから私が惚れ込んだイタリア・プーリア地方の自然を堪能する食情報をお届けします。

 ブーツの形をしたイタリア半島のちょうどとがったヒールの辺りがプーリア州です。私たちが日本とプーリアの架け橋になろうとダプーリアという会社を起したのは15年前です。その頃と比べ、日本でも随分認知度が高まったプーリアですが、この数年主に欧米人のヴァカンス先として大変注目を浴びています。

https://www.facebook.com/1438029856464276/photos/a.1438031556464106.1073741828.1438029856464276/1523683344565593/?type=1&theater

 プーリア州の中心部にあるイトリアの谷(谷というより盆地という方がふさわしい)にあるこの地に東京から移り住んで6年、兼業農家的生活も板に着いて来ました。プーリアといえばイタリアの食料庫といわれる程の一大農産地でオリーヴオイル、ワイン用のブドウをはじめ多くの野菜や果物がイタリア1番の生産量を誇ります。

 また、この地特有の地元でしか食べられない産物も沢山あります。プーリア料理の身上は新鮮な食材をシンプルに食す事。この地で生産されるチーズやワインもその料理と切っても切れない関係にあります。そんなプーリアの我が家の毎日の食卓に上る食べ物、飲み物たちをご紹介させていただきます。

 我が家では7対3の割合ぐらいで一般的に言うところのイタリア料理(プーリアの郷土料理)と日本食、その他(私が個人的に好きなアメリカン及びアジアンテイストな創作料理)を食べています。

有限会社ダプーリア

http://www.da-puglia.com/

大橋美奈子プロフィール

http://www.da-puglia.com/archives/000047.html

プーリア州の説明

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%AA%E3%83%A3%E5%B7%9E

ダプーリア

大橋美奈子

3)FBプロデューサー日記 329回目

東京グランメゾン、アジアNO.1の美食体験

SEZANNE (セザン)は、東京駅のフォーシーズンズホテル丸の内 東京の7階にあります。

まず最初に案内された窓際の席からは、東京駅を発着する新幹線や山手線がよく見え、ハーブティを飲みながら、ワクワクする気持ちが高まります。

The Best Restaurant in Asia 2024(アジア地区内で最も優れたレストラン)」で今年3月に1位を獲得したセザンへ、誘われて初めて訪問しました。

名乗らずにこっそり伺うはずだったのですが、フランス料理業界の方とご一緒したので、サーヴィスの方がしっかりとこちらの立場を見抜きました。フランス料理の基本ですが、料理だけではなく、本当にサーヴィススタッフが素晴らしいです。客をよく見てます。

こちらの身分がバレてしまったので、思いがけず、特別なメニューとなってしまったコース料理は、香港で長く活躍されていたダニエルシェフらしい中華の要素がフォアグラに隠されていたり。まさかの魚料理は「鰻の蒲焼」。ガラス越しに見える厨房で、うちわをパタパタと仰いでいると思ったのですが、鰻を焼いていました。

松茸、銀杏、米、味噌の使い方が素晴らしく、野菜については魔術師のようでした。いくらときゅうりはお寿司からのアイデアだそうですが、盛り付けの美しさと洋風の味にも合い、食材の新しい魅力を発見することができました。

日本食材の持ち味を大切にしながら、ダニエルシェフらしいフランス料理にアレンジしているフルコースは、お見事です。

お客様のほとんどがアジア系外国人でした。香港からダニエルの料理を食べに、わざわざ日本にいらしているのだと思います。

正直、決して安くはありませんが、アジアNO.1の料理を東京駅近くで食べられる価値としては、むしろ安いと思いました。

水を入れてあるグラスがずっしり重くて、どちらのですか?とお聞きしたら、全てバカラで揃えています。とさらりと言われて、そうですよねと苦笑。

小さな前菜を食べながら、最初に渡される紙に書かれているのは、こちらの内容です。

生産者との繋がりを大事にされていて、その想いをしっかりと感じるお料理ばかりでした。

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セザンはたくさんのご縁があり誕生したレストランです。

このご縁を大切に皆さんとセザンを育てていきたいと思います。

お料理を通して私たちの情念や思いをお届けします。

セザンにて特別なご体験をお楽しみください。

ご協力いただいている皆さま

ボルディエ(ブルターニュ・フランス)

キャビアリ(パリ・フランス)

オリヴィエ・コラン(セザン・フランス)

バーナードアントニー(フランス)

オリヴィエ・クリュッグ(ランス・フランス)

トラッフル ヒル(オーストラリア)

農業の未来研究所(北海道遠軽)

松野さん(北海道白糠)

マルユウ海楽(北海道 厚岸海域)

河田さん(秋田)

有明山農場(長野)

株式会社丸 梅澤さん(東京 豊洲)

ジェットファーム(北海道)

清田さん(東京 大田区)

渋谷チーズスタンド(東京)

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外国人シェフのレストランですが、驚くほど日本らしさを感じます。

【店名】SEZANNE (セザン)

【住所】〒100-6277 東京都千代田区丸の内1丁目11−1

【電話】03-5222-5810

【営業時間】

ランチ 水土曜日 12:00-13:30 (最終入店)

ディナー 水日曜日 18:00-20:00 (最終入店)

【ホームページ】

https://www.fourseasons.com/jp/tokyo/dining/restaurants/sezanne

MENU DU JOUR(平日のランチコース)

22,000 (27,830)

MENU SEZANNE(通常コース)

40,000 (50,600)

【プロフィール】

石川史子 Ishikawa Fumiko (旧姓 戸田)

株式会社FOOD FIELD CREATIVE

facebook  https://www.facebook.com/ffcnippon/

HPとblog  http://ffcnippon.com/

 東京都生まれ。立教女学院中学・高校を経て立教大学理学部化学科を卒業後、東京ガスに入社。2010年、業務用厨房ショールーム「厨BO!SHIODOME」開業を担当、王先生と最適厨房研究会などでご一緒させていただきました。

お客様へのプレゼンや、HCJなどの展示会では、有名なシェフの方にご出演いただき、厨房設計を支援できる私はフランス料理界のシェフにかわいがられるようになりました。

 フードビジネスプロデューサーとして独立して8年、おかげさまで活動の幅を広げています。リケジョとしての能力を活かし、厨房機器メーカー、フランス料理界、東京都や北海道、福島県などの生産者支援や、オーガニック農業の推進、観光、料理、厨房業界のPRに幅広く取り組んでいます。

さらに、農林水産省 令和5年度農山漁村振興交付金(農山漁村発イ令和ノベーション対策)受託事業、北海道びえい農泊 DX推進協議会の事務局長になりました。丘のまちびえいから、美味しいものの情報をお届けします。

王先生のFSPROでニュースクリップを担当するインターン生、募集中です!

びえい農泊 DX推進協議会 事務局長

東京都農林水産振興財団 チャレンジ農業支援センター販路開拓ナビゲータ

福島県楢葉町6次産業化アドバイザー

MLA豪州食肉家畜生産者事業団 ラム肉PR大使「ラムバサダー」

全日本司厨士協会 埼玉県本部 広報企画部長

全日本司厨士協会 東京地方本部 協賛会員

フランス料理文化センター アミティエグルマンド 会員

ホテル&ホスピタリテイビジネス衛生管理実践研究会 監事

立教学院諸生徒礼拝堂ハンドベルクワイア OBOG会会長

立教大学観光クラブ理事、校友会企画委員

調理技術教育学会 会員

一般社団法人 日本商環境デザイン協会 正会員

深沢アート研究所 マネージャー

東京お米サロン

4)飯田真弓さんより50回目の記事です

【韓国のグルメ体験4】

「チムタク1」

着陸前、窓から見える真冬のソウルの街はグレーで、小雪がちらついています。ソウルは北海道とほぼ同じ緯度、冬はとても寒いのです。ホテルに着いてエントランスを入るまでのほんの数分で、顔や手がかじかみます。

ディナーは身体が温まるものにしましょう、という事で意見が一致、辛い鍋かしらと思っていると、例の韓国通の先輩がとっておきのお店に行こうと言います。30分後、コートとマフラー、手袋で防寒をして出発です。

坂の多いソウルの街、宿泊している江南エリアのホテルから徒歩で坂を下って行きます。坂の下から吹き付ける風と小雪が冷たく、空腹も合間って、まるで雪山で遭難したような気分になります。顔は鼻水だらけです。

5分ほど進み、横道に入ると、突然景色が変わります。江南の繁華街です。メインの大通りから一本奥にある通りは様々な飲食店が並び、派手なネオンが連なっています。どのお店も自慢の料理の写真を軒下に置き、通行客にアピールをしています。日本では見たことのないメニューに、興味を惹かれます。一方で、はぐれて迷子になってはまずいと、先輩達に一生懸命着いて行きます。

通りを半分くらい進んだところで、シンプルな店構えの小さなレストランに入ります。店内には4人掛けテーブルが8卓ほど置かれていますが、ほぼ満席です。しかも地元のお客様ばかりのようです。席の準備を待つ間、テーブルを覗くと、皆同じメニューを食べているようです。真ん中に巨大なお皿を置いて、そこから料理を取り分けて無心に何かを食べています。

テーブルに案内され、ハングルで書かれたメニューを見ると2行しかありません。「チムタク大」「チムタク小」。つまり、「チムタク」なる料理1種を提供する専門店なのです。4人だったので、「チムタク大」を注文し、サイドに小さく書かれたご飯を注文。セルフサービスで取る冷蔵ショーケースからビールを持ってきて、サービスで出された水キムチ(トンチミ)をあてに飲んで待ちます。

10分ほどで、直径40センチはある白い巨大な丸皿が運ばれて来ました。迫力満点な演出です。醤油ベースの甘辛い香りがします。ぶつ切りにした骨付きの鶏肉、ジャガイモ、玉ねぎ、にんじん、ネギなどの野菜と、韓国春雨(タンミョン)が茶色く煮込まれ、まるですき焼きか肉じゃがのようです。こんなにたくさんの量を食べられるのかしら、などという心配は無用、4人のCAは一心不乱に骨付き肉にかぶりつきます。柔らかく煮あがった鶏肉、中まで味がしみ込んだ野菜、もちもちとした食感の春雨、そして口直しの水キムチを交互に口に運びます。甘辛いだけでなく、唐辛子が利いて辛い料理ですが、知らないうちに全部食べつくしてしまう、不思議な美味しさです。お皿の上に鶏の骨を積み上げ、〆に水キムチの汁をご飯に絡めていただきます。

醤油と砂糖で甘辛く馴染みのある味わい、癖になる刺激的な辛さ、あまりの美味しさに、「このお店は日本でも、はやるはず」と確信したのを覚えています。すっかりその味に魅了され、その後のソウルステイでは、先輩とのディナーをパスし、このチムタクの店に一人で通うこととなります。しかし、まさかあの大皿をレストランでひとりで食べるわけにはいきません。韓国では、おひとり様で食事をする習慣がないのでなおさらです。そこで、思いついたのがテイクアウトです。ホテルをそっと出てソウルの坂を下り、テイクアウトでこのチムタクをオーダーし、ホテルに持ち帰り、独り占めして楽しむという裏技です。KFCのバーレルを入れる、バケツのような大きさのテイクアウト容器に入れられたチムタクを胸に抱えて、そのできたての温度を感じながらホテルへの坂を上るのですが、この時の高揚感はいまだ忘れられません。

実はこの「チムタク」ですが、21世紀の幕が明けてまだ間もないころ、突然ソウルの街を席巻したという歴史があります。日本にも何店舗か開店しました。私の予感が的中したということです。しかし、 あれから時は流れ、ソウルの街のチムタクブームはひと段落しています。淘汰され、本物の専門店だけが残りました。私が通っていたレストランは、今でもカンナムの繁華街で営業し、相変わらず繁盛しています。ソウルにいくたび必ず顔を出すのですが、何も言わずとも、あの大きなバーレルサイズのテイクアウトを作ってくれます。家族経営の店なので、レジはおばあちゃんです。待っている間、冷たいコーン茶を出してくれます。片言の韓国語しか話せませんが、心のふれあう温かい時間です。そこにあり続けること、そして通い続けられることがいかに尊いか、飲食店とお客様の関係性の原点に返るレストランです。

次回もこのチムタクの話題を続けます。

【飯田真弓プロフィール】

東京で生まれ、10歳より千葉で育ちました。

35年にわたり、国内外の大手外食チェーンをはじめとするグローバルな食産業と、ホスピタリティサービスの代名詞である航空会社に勤務してまいりました。この経験を活かし、現在、成長を目指す企業様にさまざまなアドバイスをさせていただいております。専門分野は、お客様および従業員様を主役にしたブランディングを起点とする企業戦略の策定と結果につなげる実践です。さらに、マーケティングとイノベーションを掛け合わせた商品開発と、何より欠かせないグローバルレベルの品質管理と食の安全は得意分野です。これらを一気通貫させ、企業様の規模に合わせたバリューチェーンのデザインと創出、そしてチェーンのグローバル化やフランチャイズ化の手法など多岐にわたり、お役立ちの引き出しを多く備えております。これらの分野はどちらかというと企業様の成長過程においてなかなか手の届かない、後回しになりやすい領域です。どのように企業運営に組み込んで行くのかについても企業様の状態に応じてアドバイスができます。少し固いお話になりましたが、次の経歴をご覧いただくと、王先生がおっしゃるところの「面白い」を感じていただけるかと思います。

【経歴】

「世界中の美味しいものを食べ歩きたい!」

幼い頃から、よく言えば食への探求心が強く、本当のところただの喰意地のはった究極の食いしん坊で、さまざまな専門料理を「食べる、作る」経験を積んでまいりました。10歳の頃には近所のお母さんたちに公民館で料理を教えるほどの特異な子供でした。そしてそんな喰意地の夢を叶えるために最初に選んだ職業はなんと航空会社の客室乗務員、CA。JALに入社し、目的の食はもちろん、最高峰のホスピタリティとチームワーク、徹底したマニュアルオペレーションと教育システム、ブランドエンゲージメントを習得することができました。国内および国際線パーサーまでを経験できたのはありがたいことです。

思いのほか真面目にフライトする一方で、ついたあだ名は「空飛ぶ胃袋」。お給料のほとんどとフライト以外の余暇はすべて食べることに費やしていました。当時はバブルのさ中でしたので、高価な食事をご馳走になる機会もありましたが、とにかく自腹でピンからキリまで胃袋と時間の許すかぎり食べ歩きました。国内のみならず、CAの特権を活かし、「飛んで行ける全ての地」においてさまざまなジャンル、規模のレストラン、ストリートフード、市場や小売店などを訪れることに多くの時間を費やし、食体験を深めていきました。帰国するスーツケースの中はいつもスーパーで買った食材でいっぱい、検疫で時間がかかるので先輩たちにはとても気を遣いました。同期が蝶よ花よと扱われ、いわゆる玉の輿に乗っていく中、「エンゲル係子」のあだ名もつき、とても対照的な20代を過ごしました。

その後、当時経験する機会の少なかったインド料理と文化をどうしても学びたいと、一念発起、なんとインドの財閥系商社に転職し、2年間を30年前のニューデリーで過ごしました。30年前のインドは想像を絶する世界、生活の近代化のレベルで言えば、若い女性が住むにはかなり厳しい環境でした。そのような中、インドだけでなく、周辺国チベットなどまで足を運び、食を経験しました。追ってこのお話もお伝えしたいと思います。

帰国後、創業者との縁あって日本発祥、海外にもモスバーガーを展開するモスフードサービスに入社しました。「世の中にないものを作る」をモットーに、当時圧倒的なプロダクトアウト力を備えると有名でしたこの会社の商品開発部門の黄金期に加わることができたのです。世界中での食体験を発揮するに最高の環境をいただきました。また、多様な新規事業のメニュー開発、商品企画、海外事業など幅広い経験を積むことができました。このお話も興味深いかと思います。

一方でプロダクトアウトとは真逆の世界、ブランディングとマーケティング戦略を軸に経営戦略を策定、実践を学ぶ環境に身を置き、スキルを身に着けました。その結果、一度は自身のブランドを立ち上げ、経営を行うことが必要と考えて独立。オーナーシェフとして東京都中央区に、無名のところから飲食店を開業しました。2年近くほとんど休みも取らず毎日オープンキッチンに立ち、生のお客様と対峙することで多くの事を学びました。努力が実り、短期間で複数店に展開しました。何より嬉しかったのが、後輩シェフ達を育てることができたことです。同時に専門誌への執筆や企業様へのブランド立ち上げ、業態、メニュー開発などコンサルタントとしての事業も開始いたしました。

このコンサルティング事業をきっかけに、米国大手ハンバーガーチェーンのWendy‘s、世界最大店舗数のサンドイッチチェーンSubwayの国内展開のみならず、アジア地域においてのR&Dイノベーション、調達物流サプライチェーン、品質管理と食の安全を統括する機会をいただきました。世界に展開する米国2大チェーンの本社と働くことで世界の最先端を知ることができました。また、食材だけでなく、包装資材や衣類、消耗備品などのべ2000以上の工場を視察、監査した実績がありますので世界中のあらゆる工場や生産現場、圃場を熟知しています。

さらに、Subwayにおいては店舗、現場を主役とするための営業、オペレーションの統括も任され、約10年にわたる負のスパイラルからの脱出、V字回復を2年間で成し遂げました。グローバルレベルのチェーンビジネス、FCビジネス、その手法とさまざまなパターンを横断的に熟知するに至りました。

現在は飯田真弓事務所を開設し、バリューチェーンの専門家として、サプライチェーンの上位概念であるバリューチェーンおよび各機能の評価、課題解決、戦略策定や実行など、外食のみならず、さまざまな企業様の成長を目指して寄り添い、お役立ちをさせていただいております。

趣味は筋トレとゴルフ。どちらも変態レベルでストイックに攻め、体脂肪率10%未満を常にキープ。ゴルフは2年で90切り。「健やかにしなやかに歳を重ねるコツ」や、「食べても太らない身体作りのヒント」もお伝えできると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

飯田真弓

飯田真弓事務所 代表/ フードサイエンティスト/バリューチェーン構築プロフェッショナル

miida@craft-wine.com

https://www.facebook.com/iida.mayumi

(一般社団法人)全日本食学会会員

http://aj-fa.com/

(公益社団法人)日本ヘルスケア協会会員

https://jahi.jp

ライザップBODY MAKEアンバサダー

【特記】

・品質管理、食の安全分野における専門性/GFSIの主要認証、BRCG(旧BRC)ASIAアドバイザリーボード(HACCP,ISOなど食の安全、管理領域含む)

https://www.brcgs.com

・フードサイエンスおよび官能評価技術/英国グローバルリソースであるLEATHERHEAD FRにて取得

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● 読者からのご意見・要望・質問・情報 コーナー

 読者の皆様のご意見・要望・質問・情報・欄を作成しました。皆様のご意見・要望をぜひお送りください。匿名で掲載させていただきますので忌憚のないご意見をお聞かせください。また皆様が見聞き体験した外食・食材情報もお知らせください。

 このFOOD104を支えてくださっている組織にFSPROと言う食の世界の専門家の方が500名ほどいらっしゃいます。皆様のご質問・疑問に答えられるようになっておりますので、ご遠慮なくご質問などをお寄せください。ちょっと時間はかかりますが回答させていただきます。

              △▼△▼△▼△▼△▼△

● 食ビジネスニュースリリース ————————————■□

9月19日-9月25日

■ローソン 竹増社長/DXで店舗オペレーションを2030年度30%削減へ

流通ニュース

■ミスタードーナツ/アトレ信濃町にテイクアウト専門の無人店舗オープン

流通ニュース

■三菱食品/イートアンドと米国に飲食店運営の合弁会社設立

流通ニュース

■ゼンショー/成長投資資金として総額100億円を劣後特約付ローンで調達

流通ニュース

■リンガーハット/カンボジアに初の路面店を9/19オープン

流通ニュース

■マクドナルド/8月は、ハワイキャンペーンなどで既存店売上高5.3%増

流通ニュース

■串カツ田中/8月は新規集客施策で、既存店売上4.3%増

流通ニュース

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● 日本外食ニュースと米国外食ニュース

<日本外食ニュース>

柏原光太郎(カッシー)さん発行の飲食業界ニュースまとめのリンクです。

 柏原さんは、文芸春秋の編集者として活躍され、2023年3月末で定年退職。1967年から続くグルメガイド『東京いい店うまい店』(私が愛用していた信頼のおけるグルメ本です)の編集長を務め、自身もグルメとして知られる有名な方です。

2018年1月に「日本ガストロノミー協会」を設立し会長に就任しています。

食べログフォロワー数5万人。

https://tabelog.com/rvwr/kotarokashiwabara

飲食業界ニュースまとめ #1638 2024/9/19

https://note.com/kassie/n/neb341a2cbe5e

飲食業界ニュースまとめ #1639 2024/9/20

https://note.com/kassie/n/n12d047f4b48d

飲食業界ニュースまとめ #1640 2024/9/21

https://note.com/kassie/n/nac596af6ca3e

飲食業界ニュースまとめ #1641 2024/9/22

https://note.com/kassie/n/n42fca9cf8383

飲食業界ニュースまとめ #1642 2024/9/23

https://note.com/kassie/n/nc12b2e25bdcc

飲食業界ニュースまとめ #1643 2024/9/24

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実務的な仕事だけでなく、外食産業を基礎から学びたい、家業の飲食業を企業にしたい、家業の飲食業を継承したい、外食産業に将来就職したい、

将来独立して飲食業を経営したい、将来外食企業の経営者になりたい、

と思っている方にお勧めするのは、

関西国際大学人間科学部経営学科

http://www.kuins.ac.jp/old_faculty/management.html

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

https://business-school.rikkyo.ac.jp

立教大学ホスピタリティ・マネジメント講座(毎年9月~12月、30回、受講料5万円)

http://www.rikkyo.ne.jp/grp/kanken/

大学で外食を含む観光分野をきちんと学びたいという方は

立教大学観光学部

杏林大学外国語学部観光交流文化学科

等で学ぶことをお勧めします。

https://www.rikkyo.ac.jp/undergraduate/tourism

http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/foreign/

王利彰の長年蓄積した調理機器開発のノウハウは最適厨房研究会

http://saitekiken.jp/saitekichubo/

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