福岡のお土産

食の宝庫九州から

ひょんなことから、饅頭の話になりました。

現在、世の中で人気の饅頭の大半は火星人が包んでいるよね、と。

判る方は判る業界ネタなのですが、包む機械は同じでも、生地の塩梅とか、餡の種類とかで饅頭の個性は出るはずです。

仙台のお月様も、鹿児島のドンも、まあまあそっくりですね。他にも各地に同様のカスタードクリームを包んだ卵生地の焼き菓子があります。エージレスが開発されて以降、水分の多い、柔らかい饅頭が日持して流通するようになり。製造する機械が普及したことで、お土産の特徴が無くなって来た感があります。それでも貰うと美味しくいただきますけどね。

ここで比較するのに登場するのが「博多通りもん」という饅頭。

福岡のお土産として指名されることが多いです。またお持ちすると喜ばれます。生産が始まったのが1993年(平成5年)、比較的新しい菓子です。2019年にはもっとも売れている「最も売れている製菓あんこ饅頭ブランド」としてギネス認定されています。西洋和菓子と称していますが、ミルク風味の生地で”しろ餡”を包んでいます。餡には生クリームやバターを使っているようです。しっとりとした食感が人気です。

この「博多通りもん」の人気の原因は、福岡市周辺、福岡県の駅や空港でしか販売していないことだと思います。

通販サイトでも、他の商品は販売していますが「博多通りもん」だけは出品されていません。東京大阪の催事も本当に限定的にやっています。しまいに転売ヤーまで出る始末です。

地域限定、ここでしか買えない、これがお土産品の矜持の様に感じます。

もらって嬉しいじゃありませんか。

ひょんなことからの饅頭の話は、最初に「蹴洞」という饅頭の話から始まりました。

福岡市南部の八女市、平成の大合併で市域が拡大し、東部の山の中にある矢部村も八女市になりました。

その矢部村にある日向神ダムのダムサイトに世界最大のハート岩とされる名所があります。最近はロッククライマーに大人気になっているエリアなのですが、そこはハート岩が人気になる以前から「蹴洞岩」という神話の世界に話が飛ぶ名所がありました。日向高千穂から遊びに来た神様が乗った馬が蹴破った穴の空いた大岩があるのです。ちょっと不便なところにあるので、あまり名所になっていないのですけどね。

その岩を模して作られた饅頭が「蹴洞(けほぎ)」です。

作っているのは、八女市に本社がある「隆勝堂」、販売店が10店ほどあるローカルの菓子メーカーです。

和洋の菓子を取り揃えていて、福岡県南では知られた店なのです。

さてこの「蹴洞」作られたのは昭和20年代、こし餡に卵と生クリームを加えた卵黄餡を、バターとピーナツバターを使った生地で包むサクサクに焼いた饅頭です。てっぺんにクルミが乗って歯ごたえもあります。洋風の饅頭としては、歴史があります。

これね、美味しいのですよ。こちらはオンラインでも買えてしまうのが微妙ですが、ローカルメーカーの戦略としてはいたしかたないですかね。

もっと認知度が高まって欲しいものです。

八女といえば、八女茶が知られていますので、お茶請けに、洋風なので、コーヒー、紅茶にも合うのです。ためして欲しいなあ。

隆勝堂「蹴洞(けほぎ)」

上田 和久

上田 和久

スタジオワーク合同会社 代表。熊本県生まれ。厨房設備施工会社、電機メーカーで冷蔵設備の設計施工営業を担当後、食品メーカーへ転職し、品質保証の仕事を経て、2016年1月コンサルタントとして独立。安全安心な食品を提供することに日々、注力する企業に対して、HACCPに基づいた衛生管理の取り組みを支援している。 JHTCリードインストラクター

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