イタリアの教育事情

南イタリア美食便り

今年の夏は、3ヶ月間85歳の両親を連れてプーリアで過ごしています。家族のイベントが大小色々とあって、そこに一緒に参加できるぐらい2人とも元気なので、有難いと思っています。

私にとってはすでに普通になってしまっているプーリアの色々な”ふつう”も高齢の両親にとっては驚くことが多いようで、その反応から改めて日本とイタリアの考え方や”常識”の違いを感じることも多いのです。

2024年我が家の家族イベントに関連して驚いたイタリアと日本の違い【その1】

高校の卒業試験の方式:娘が高校の卒業試験の真っ最中です。卒業試験のことをイタリアでMaturia’ (マツゥリタ=成熟)と言います。(公立の学校は全国共通の試験方式、内容となります。まず筆記試験が2回。全12科目の中から文系1科目と理系1科目が選ばれます。今年はイタリア語と数学になりました。

1日目、イタリア語朝9時開始で最長6時間かけて行われます。3時間経過した時点で提出してもよい決まりです。スマホは試験前に回収、イタリア語の辞書は持参してよろしい。試験時間中、自分で用意した軽食を試験会場内で食べても良くトイレに行くこともできます。形式としては3種類のテーマから一つ選んで文章読解、分析、持論の展開をエッセイとして執筆する。長さは自由。驚いたのは試験時間の長さです。1科目に6時間!!数学の試験も試験時間は同様。マークシート形式はなし。解を求める公式など覚えていなかったらおしまい、という厳しいもの。

そして2科目の筆記試験の後、6名6教科の教師からなる卒業試験委員会(3名は自分の通っている学校、3名は周辺の他の高校の教師)の前で1人最長50分の口頭試験が行われます。初めに試験官が選んだ1枚の写真を見てその写真から得たアイデアを6教科それぞれに関連づけて発表するというもの。加えて自分の高校生活の中で何を学んだかということも教科ごとに述べよ、その後にさらに質疑応答というもの。1人の生徒に6名の試験官が揃って各50分ずつ審査するという時間のかけようには驚きです。

さらにその試験は一般公開しているので、他の生徒や家族なども同席することができるのです。評価には主観的な要素も含まれるだろうと想像しますが、高校卒業という(義務教育は16歳までなので、高校2年終了時に自主退学しても良い、イタリアの成人年齢は18歳)儀式が社会人としてのパスポートを手にいれることであることを強く感じさせます。

ちなみに採点方法は100点満点で40点は高校5年間の成績の集積、筆記テストが各20点ずつ、口頭テストが20点。筆記テストの合計が35点以上だとボーナス点がつくので100点満点プラスが最高点となります。もう一つ驚いたのが、この手の込んだ卒業試験の合否以外の採点内容は大学入試には反映されないということ。大学入試はまた別の仕組みがあるのですが、日本の内申書的なものは評価されないというのです。それに学校行事として卒業式というものがありません。たくさん日本の卒業式にまつわる歌や諸々を考えるとちょっと寂しくないか?とも思うのですが、試験が始まる前、すべての授業が終わった時には生徒たちは自主的にイベントを企画したりはしているようです。

文化の違いと一言で片付けられないほど根本的な哲学や社会的な観念の違いがあるように思います。この辺のイタリアの教育事情については教育学、大学教育の歴史、行政の関わりなどの専門家にじっくりお話を伺ってみたいところです。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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