佐伯には本当に日本の原風景と言えるものがなんでもあるなと感じます。先日は佐伯市の本匠地域で行われた新茶まつりに行ってきました。佐伯のお茶のブランドとしては、本匠の因尾茶、と宇目地域の宇目茶があります。どちらも現在日本で生産されている緑茶の2%しかない珍しい釜炒り茶という製法で作られています。煎茶が茶葉を蒸すのに対して佐伯の緑茶は直火に鉄の窯で炒るのです。この製法の方が手間がかかりますが、味の深みと香ばしい香りが特徴の美味しいお茶に仕上がります。今では他ではほとんど行われていないこの製法ですが、量産されることなく伝統を守ってきたとも言えると思います。緑茶まつりでは昔ながらの道具を使って手で撹拌する様子を見学しました。釜炒りならではの立ち上がるお茶の良い香りを堪能しました。
宇目地域は、緑茶に加えて紅茶も作っています。紅茶と緑茶は同じ茶葉を発酵させるかさせないかという製法のちがいです。宇目は日本での紅茶製造発祥の地という歴史があるそうです。その辺の経緯はとても興味深いのですが、また別の機会にご紹介します。
外国人観光客が求める日本のイメージは人それぞれで一括りにはできないと思いますが、私がイタリアの小さな町での生活の経験から実感を持って言えること、一般的な認知度を考えてキーワードとなるいくつかの事柄のなかに緑茶があります。
エスプレッソ、カプチーノを代表とするコーヒー文化が根強いイタリアでもテ・ヴェルデは一般的な飲み物として認知度されています。ただ大手メーカーの作るペットボトル入りのものは緑茶とは名ばかりの香りのついた緑色の水という程度のもので、日本のそれとは比べものになりません。アメリカではmatcha(マッチャ)フレーバーが一般的になって久しいですが、ヨーロッパにおいてはまだそれほどでもないとも言えます。日本文化、和食文化、への関心度があがる中でお茶の文化の奥深さは今後浸透する余地がとてもあるのです。健康志向、自然食志向、日本文化、アジア文化、歴史、スローライフ、などなど色々なキーワードが浮かんできます。
佐伯産のお茶をお土産に夏はプーリアに戻って、南イタリアと九州の類似点と相違点の研究を続けたいと思います。また佐伯に戻る頃には今度は新米の時期です。