原木シイタケ

南イタリア美食便り

梅雨の気配を感じる季節ですね。地中海沿岸地域と日本では湿度が高い時期が違います。

日本と逆で特にプーリアの夏はカラッとしていて、冬はジメッとしています。

季節の変わり目の今、プーリアと大分では気温も湿度も同じような数値です。異常気象の影響なのか、過ごしやすい春や秋の時期が短くなっている感じがするのも日本でもイタリアでも同様です。

湿度と言えば、キノコ。イタリアでは夏トリフやポルチーニの時期でもあります。これらは一般的には自生のものを採取します。プーリアの中央部、ヴァッレ・ディトリア地区には大きな森はないのですが、放牧地の藪の中や獣道の林には少量ながらトリフやポルチーニを見つけることができます。とは言え、湿度や気温など微妙な自然の条件が合うタイミングで、誰よりも先にその場へ到着しないとならないので、キノコ狩りが趣味の人々はお天気の様子を伺いながらソワソワする時期でもあります。

プーリア原産でエリンギの原種であるカルドンチェッリというキノコも人気があります。こちらは栽培可能なキノコです。このキノコは肉厚な食感がシイタケを思い出させますが、旨味の強さではシイタケに軍配が上がります。ここ数年海外での和食人気の波を受けてシイタケの認知度が上がっています。ダシ、ウマミと言った言葉が感度の高い料理人のみならず一般的なボキャボラリーに加えられて来ていると感じます。

佐伯の山間部、宇目地区にあるシイタケ生産者「かやの椎茸屋」茅野文三さんの作る原木シイタケは知る人ぞ知る高い評価を受けています。佐伯産の食材を使ったイタリア料理が地域おこし協力隊としての任務でもあるワタクシは是非お見知り置きいただきたいとお訪ねして来ました。

思わず深呼吸したくなる森の中、くぬぎの原木が端正に並んでいました。今はこの木片の中で静かに眠っているシイタケ菌たち。ニョキニョキとキノコとなって生まれてくるのは秋から冬。生の出荷は例年11月下旬から2月ごろまでとのことです。制御の効き難い露天で、栽培しにくいと言われる低温菌を上手く育てるにはお天気の様子を伺いながらの湿度や温度の微調整が欠かせないとのこと。最高級ドンコを育てるのは容易ではないそうです。ただ研究を重ね手をかけただけ、通年出回る一般的なシイタケとは旨味と食感、大きさ、形など全てにおいてはっきりと違いのわかる自信作が出荷できる喜びに増すものはないとおっしゃっていました。

「シイタケは、アシの部分が美味しいんですよ」というのも目から鱗でした。

旨味の濃い干しシイタケは40時間以上と長時間乾燥で作られます。ポルチーニの代わりに干しシイタケのリゾットを作ってみたいと思います。

茅野さんのシイタケは食べチョク、ポケマル、オイシックス、メルカリ、おんせん県おおいたオンラインショップなど主にネット通販で販売されています。

今年の冬は収穫をお手伝いさせていただき、炭火で焼いた生シイタケを天日塩と我が家のオリーヴオイルで食べるのが、楽しみです。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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