食に関して保守的なイタリア

南イタリア美食便り

食べ物が重要な役割を持っていたり効果的に使われていることは小説や映画などはたくさんありますね。

私もその食べ物が無性に食べたくなったり、知らない食べ物だと気になって調べてみたりということはよくあります。

最近ではネットフリックスの「舞妓さんちのまかないさん」に出てくる「なべっこだんこ」が気になってググってしまいました。この作品では特に食べ物が大事な役割を担っていますが、この「なべっこだんご」だけは聞いたこともない料理でした。どんな味の食べ物なのかで作品の印象も変わってくると思うので、種明かしをせずここでは青森の郷土料理とだけ申し上げておきます。

食に関して保守的なイタリアでは都会に行かないと外国料理店にはお目にかかれません。例外はチャイニーズとスシです。共に経営者は中国系の方々で顧客は地元のイタリア人です。ですから、地元民ウケの良いメニューや味付けになっています。本場の味を知る人にとっては目をつぶりたくなる場合がほとんどです。名前は同じでも違う食べ物として受け止めた方が良いです。

スーパーマーケットではアジア系を含めエスニック料理の調味用や食材を扱う店も品揃えもどんどん増えており若い世代ではチャイニーズやスシを家で作る人もいると思いますが、どんどん本場の味とはかけ離れていっている可能性もあります。作って食べる本人が美味しいと思えばそれはそれで良いとは思います。

プーリアの家庭で供されて驚いたのは「ロスビフ」です。ローストビーフのことだろうなと思ったのですが、出てきたのは中まで真っ白に火の通った仔牛のヒレ肉のローストにニンジン、セロリ、タマネギなどの香味野菜がマッシュされたソースがかかった料理でした。

ローストビーフといえば血の滴るぐらいのプライムリブの塊を思い浮かべてしまう私が悪かったのですが、もう25年も経つのにその時のがっかり感はよく覚えています。

それ以降何度もいろいろなお宅でロスビフをご馳走になりましたが、どれも同じような料理でした。プーリアでは肉はしっかり焼くもので脂がのった肉より赤身、成牛より仔牛が好まれます。

我が家で夫がロンドン仕込みのローストビーフを作る時は来客は端っこの火がよく通った部分がお好みでど真ん中のピンクの部分は私が喜んでいただきます。どなたもこれをロスビフと思って食べてはいないと思います。

食べ物に対する思い入れは本当に個人的で感情的なものでもありますね。パイナップルとカナディアンベーコンののったピッツァ ハワイ。私は許せるし、美味しいとも思うのですが、夫は酢豚のパイナップルは許せても「これは無いわぁ」と申しております。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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