初めて見た時「一体これは何?!」と衝撃を受けたのは、我が家周辺ではズッキーネ・スピノーゼ(トゲありズッキーニ)と呼ばれている野菜です。
「トゲナス」「「トゲイモ」「トゲカボチャ」と呼ぶ人もいたりして、ゴツゴツした洋梨型のフォルム全体を鋭いトゲで覆われた実。秋から冬にかけて我が家でもご近所でもたくさん採れます。
wiki 先生にお伺いすると、なんと世界各地で色々な名前で呼ばれている植物だということが、判明しました。
原産地とされる中南米ではチャヨテ(chayote)という名前がもっとも一般的なようですが、チョチョ、チョコ、メルトン、クリストファーネ、仏手瓜、千成瓜、そして日本では大正時代に鹿児島県で初めて栽培されたことからハヤトウリと呼ばれています。
これだけ色々な呼び名があるということは世界各地で親しまれている野菜であるということですが、我が家の庭で収穫される実の外側にトゲがある種類は必ずしも一般的ではないようです。このトゲが素手で触ると痛いほど硬いので皮を剥くのに工夫が要るちょっと面倒くさい野菜だなと思っていましたが、一般的な品種のものは皮を剥かなくても食べられるとのこと。
我が家では種の自家採取をして栽培しているので、毎年トゲトゲの実しかなりませんが、一般的に栽培されているものは品種改良でトゲがないものになっているのでしょうか。それなら納得です。
ウリ科の植物であるので、トゲナス、トゲズッキーネ、トゲカボチャという呼び名はあながち間違いではないのですが、学名とか由来とか無視して視覚的もしくは味覚的な感性から勝手に呼び名をつけているところがイタリア的です。
プーリアやカラブリアの一部では方言でムシュク(ミックス、混ざったという意味)と呼ばれているところもあるそうです。イタリアにはトマトやジャガイモ同様に大航海時代に中南米から持ち込まれた野菜。
強い個性を持った味ではないので汎用性が高く、温暖な土地では手がかからずたくさん実をつけ葉や根なども食用になる上、保存がきくという優れた植物でありながら、他の国地域に比べると親しみ深いとは言えない野菜でもあります。
ズッキーニやトマトはイタリアで広く普及し原産地を凌ぐイメージがあるのとは対照的です。
日本でも他のアジアの国々と比べると一般的に知られていたり使われているとは言えない野菜の一つですよね。それがなぜなのか。興味深いところです。
食べ方はイモのように煮たり、焼いたり。生でサラダとしても食べられます。生だとシャキシャキした食感が焼くとねっとりとなります。
思いつきでこれを昆布出汁で煮てみると、冬瓜のような透明感のある美味しさになりました。期待を超える相性の良さに思わずニンマリしてしまいました。
以来我が家ではこの食べ方が定番となっています。
イモとウリとナスの中間のようなこの野菜、歴史の波に乗って世界各地へ渡りそれぞれの環境や文化に染まり様々なアイデンティティを与えられ…。なんだかしたたかに生きている感じが、ちょっと愛おしくなりました。