クリスマスも間近に迫ってきました。コロナ禍が始まってクリスマスもイースターも集まることを禁じられていましたが、今年は3年ぶりに家族や友人たちと堂々とテーブルを囲むことができそうです。
昨日は友人がプーリアのクリスマスの郷土菓子、カルテッラーテ(Cartellate)作りをするので一緒にやらないか、と誘ってくれました。イタリアのクリスマスと言えばパネットーネが有名ですが、プーリアではこのカルテッラーテも欠かせません。パン屋さんやお菓子屋さんなどでも売っていますが、自家製のものを作って友人たちにプレゼントする人もいます。
クリスマスには家族が20名前後集まって食事するのが一般的なので全員分と予期せず挨拶に訪れたりする来客分も入れると結構な量を作ることになります。どこの家族にもお料理番長的な年長の女性がいるもので、その女性の指揮のもと数名の女性たちが集まって手作業をするというのがよくある状況です。
この日は友人のアンナと彼女の小姑ふたりと姪というメンバーでした。この家族のお料理番長はヴィータ叔母さん。使い込まれた道具類、各種調味料などが並んだキッチンを見るだけでお料理好きなことがわかります。
それぞれ一家の主婦である他の女性たちも一家言あって材料、作り方や道具について言いたい事を、家族ならではのストレートな物言いで言いながらも作業の手は止まりません。多分毎年同じような事を言いながらカルテッラータを作っているんだろうなと思います。言い方はきついようでも悪口にはなっていないのが、イタリアらしいところ。ニコニコ笑いながらでなくとも仲が良いことがわかってきます。
カルテッラーテは小麦粉、エクストラヴァージンオリーヴオイル、白ワインの入った生地を紙のように薄く伸ばしくるくると巻いてバラのような形に成形し油で揚げたもの。蜂蜜やブドウまたはイチジクを煮詰めたシロップをかけて食べます。
日常的に食べるタラッリというリング型のスナックと基本的には同じシンプルな材料ですが、クリスマスのお祝いにちなんで一手間かけて華やかな形になっていると思われます。油で揚げてあったり、蜂蜜や果物のシロップがかかっていることで満足感のある食べ応えのあるお菓子です。
私は薄く伸ばした生地をバラ型にまく作業を担当しました。「初めてなのに一番キレイにできてるわ、さすが日本人は手先が器用ね」と褒められました。「いや、一つ一つ形が違うところが面白いじゃない?」と答えた後で(そこで謙遜するところがまた日本人的かもね)と心の中でチラッと思いました。
イエス様の誕生日を祝うクリスマスはそれほど信心深くない人でも家族が揃うことに意味があると感じている人が多くイタリア人にとって大事な祭日です。それはその日だけのことではなくその準備から感じるものです。
感謝の気持ちや愛情をどう表現するか、何をもって伝えたいか。そんな事を心の隅に感じながら、結局美味しいものをみんなで食べる、ということに落ち着くのですが。
カルテラーテはまさに身近にあるものを工夫と愛情で美味しい料理を作り上げるクチーナ・ポヴェラ(貧者の台所)と呼ばれるイタリア郷土料理の伝統が生きている一品です。そしてやっぱり、ネットでレシピを検索しながら一人で作るものではなく、みんなで作ってみんなで食べるのが一番だなと実感しました。