「湯治宿には温泉という自然の力がある」〈旅館大沼〉

立教大学生インタビュー

※宮城大学3年 加藤さんの記事です。

宮城県大崎市鳴子温泉に位置する「旅館大沼」、我が家のような現代湯治の宿です。住みたくなるほど落ち着く湯宿と「湯食同泉」を意識した胃に負担をかけない食事、そして120年間人々を癒し続けてきた8つの名湯が疲れた心と体を休めてくれます。

「それは温泉という大地からの自然の力があるからなのだ」

そう語ってくださったのが旅館大沼5代目湯守の大沼伸治さんです。

湯治とは身も心も疲れ切った農民などが湯治場に2週間ほど滞在して、病気を治したり体調を整えたりすることです。現代では2週間という長期滞在をすることが難しくなっているため、2泊3日から1週間ほど滞在し、精神的安定やリラックスのために訪れたりします。お湯は医者にも友達にも親のような存在にもなります。なぜなら、温泉は器が無限であるため、その人にとってどんな存在にもなりうるからです。

旅館大沼は昔から湯治場として愛されてきた宿です。大沼さんは『湯治とは「お湯」と「場」である』と仰っていました。観光地というのはただのポイントにすぎないですが、湯治場はお湯があってこそ周りに集まってきた人で自然とできるものなのだそうです。そんな温泉という「場」を使って元気になれる、そんなプラットホームだと大沼さんは捉えています。

多くの人が旅館大沼を訪れる最大の理由は大沼さん自身なのではないかと私は思います。それは、大沼さんのおもてなしをする際の心得が理由となっています。旅館大沼で湯治を行うお客様にはもちろん一人一人、自分の時間があります。そのため、なるべくその人の時間を大事にしてほしいという思いから、常に様子を見るように心がけているそうです。人間は一人一人違う人間でありますから、その人の様子をうかがい、必要以上に踏み込まず、必要なときは寄り添うという気遣いをしっかりとされているのです。時には、「自転車がありますがいかがですか」などと提案を持ちかけることでお客様の新しい入り口を作る役割も担っているそうです。その大沼さんの気遣いがあることで、お客様はより快適な状態で湯治を行うことができるのです。

湯治中になにをするかは自由で、100人いれば100通りの使い方があります。その中でも大沼さんの印象に残っている過ごし方をしていたお客様がいらしたそうです。そのお客様は湯治中に本を読んで過ごしていました。そこで区切りの良いところで本を閉じ、大沼さんにこう言ったそうです。「今日はここでおしまいとすることができてよかった」と。皆様は自分で本をここまでと終わらせることができていますか?多くの人が次の予定があったり電話が来たりと何かの用事があって仕方なくここで終わりとしている人が多いのではないでしょうか。旅館大沼では自分を休めるための宿であるため、自分のためだけに自分の時間を使うことができるのです。

そのお客様のように湯治を自分のために行うことができている人がいる一方で、湯治を全く知らない人や自分に関係ないと思う人、古臭いと感じる人がいるのが現状です。そのように感じている人にどのように湯治の良さを伝えるかが今後の課題になっているそうです。温泉と聞くと多くの人は観光というイメージを持ちがちですが、療養的なイメージを持ってほしいと大沼さんは仰っています。日本人は昔から温泉に元気をもらっています。そんな素晴らしい自然の力を持っている「お湯」の使い方や温泉の過ごし方を伝えていきたいと考えていらっしゃいます。それを伝えることができれば、後はお客様次第でお湯の可能性は勝手に広がっていくのだそうです。

現代の社会で頑張りすぎて疲れている心と体を癒すために、湯治はとても大切なことなのです。自分の内面としっかり向き合う時間を作り、心の拠り所として旅館大沼を訪れてみませんか?きっとあなたにとって生涯の定宿が見つかるはずです。【N】

庭園貸切露天風呂「母里の湯」
山荘「母里乃館」

<旅館大沼>

住所:宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯34

https://www.ohnuma.co.jp/

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