イタリアのカルニヴァーレ

南イタリア美食便り

カルニヴァーレのお菓子と言えば、サクサクっと口の中で溶けてしまう軽さが特徴のキアッケレと呼ばれる粉砂糖をふった軽い揚げ菓子です。

3月1日カルニヴァーレの最終日、朝起きると、キアッケレにふられた粉砂糖のように外はうっすら雪化粧をしていました。今シーズン初の積雪。ピークを迎えたアーモンドの花々もびっくりです。最初で最後の雪になるのでしょうか。この週末にかけて最高気温が10度を下回る寒い日が続く予定です。

昨日は久しぶりに親しい友人夫妻を招いてカルニヴァーレの会食を楽しみました。イタリアではコロナ禍の緊急事態宣言を3月末以降延長しないとドラギ首相が発表したこともあり行動制限解除が進んでいます。

カルニヴァーレの期間は1週間。その後復活祭までの40日間肉を食べてはいけないというのがカトリックなどキリスト教での教えで、元々カルニヴァーレとは「肉よ、さらば」という意味。今でもこの期間金曜日に限って肉を食べないとか、何か一つ好きなものを絶つなど教えにそった生活をしている敬虔な信徒の方々も少なからずいます。

英語ではカーニヴァル。お祭り騒ぎという意味に理解されることが多いと思いますが、イエス・キリストの復活に思いをはせ禁欲的な生活を送るように定められた40日間の前にはっちゃけようという通俗的なお祭りです。

リオのカーニバルやニューオリンズのマルティ・グラなども同じ起源。イタリアではヴェネツィアの仮面舞踏会が最も有名ですが、プーリアのプティニャーノという町もイタリア3大カーニヴァルの一つに数えられています。この町では地区ごとに巨大な山車を作ってその出来を競い合うというのがメインイベントです。イメージ的には青森のねぶた祭りのような感じです。山車はトラクターに牽引され、仮装した住民がその周りを踊りながら一晩中町中を練り歩きます。無礼講的な意味合いが強く、テーマは時事ネタ。政治批判など結構際どいものでもユーモアを込めて笑い飛ばす力強さ、したたかさがイタリア的と感じます。

残念ながらコロナ禍で今年も中止となりましたが、もしも開催されていたら今現在進行中のロシアとウクライナの緊迫状態も槍玉に上がっていたことでしょう。

イタリアの最南東に位置するプーリアで二番目に大きな都市ブリンディジの郊外には2000年までアメリカ空軍基地があり、1999年コソボ紛争の際にはNATO軍の戦闘機発着のためブリンディジ空港の民間使用が停止されました。

我が家から50km程の距離のところです。当時まだ日本に住んでいてプーリアと行き来する生活を始めたばかりだった私は、細長いアドリア海の向こう側、晴れた日には対岸の山々が見えるぐらいの距離で行われている戦争との距離感を身震いするほど近く感じたことをよく覚えています。私が日本から到着する同じ空港から戦闘機が飛んで行く。民族独立問題という火種についても全くピンとこないまま、国際結婚を選んだからにはヨーロッパの歴史に無関心ではいられないなという思いが生まれました。

ロシア、ウクライナ双方に多くいるキリスト教東方正教会信者も4月24日の今年の復活大祭を少しでも心安らかに迎えられることを願っています。

大橋 美奈子

大橋 美奈子

東京生まれ。演劇プロデューサーを志し、高校卒業後アメリカ留学。ニューヨーク大学芸術学部在学中は舞台、映画で俳優及びプロデューサーとして活躍。卒業後、メディア関係のリサーチ、コーディネイト会社を設立。現在はホスピタリティビジネスのコンサルタントである夫ジョヴァンニの故郷であるイタリア・プーリアから“外食とはエンターティメントである”という考えのもと“感動”を創る仕事を支えています。

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