外食マニュアル2

レストランチェック

 私がレストラン西武、ダンキンドーナツ、マクドナルドと外食産業で働いていたのは、個人外食店では経営ノウハウを得られないからでした。各企業では経営ノウハウを学ぼうと、店舗運営のマニュアルを学び、実践し、ノウハウを身に着けようとしました。そのため、ダンキンドーナツとマクドナルドのマニュアルを隅から隅まで読みこなし、記憶して、実行していったのです。私がダンキンドーナツから、マクドナルドに転職したのは、ダンキンドーナツのような技術提携では本当の米国外食チェーンの経営ノウハウは学べず、マクドナルドのような合弁会社に入るべきだと思ったからです。

 しかし、当時のマクドナルドは、創業メンバーが外食現場の経験もなく、米国マクドナルドでの経験もなく、自己流のガリ版刷りのようなマニュアルでした。私はアシスタントマネージャー1年、店長1年、合計店舗経験2年で、スーパーバイザーに昇進しました。そして初めて米国の店舗見学と、本場のハンバーガー大学の店長コースを受けたのです。そこで分かったのが日本は米国のマニュアルを勝手に変えて簡略に使っていたことや、外観だけそっくりだが、性能が驚くほど低い調理機器と、原始的な清掃作業でした。

 大学を出た後に家業の手伝いを始めましたがノウハウを学ぼうと地元に本社のあった、西武百貨店子会社のレストラン西武の門をたたきました。しかし、レストラン経営は学べないと、レストラン西武が設立したばかりの子会社日本ダンキンドーナツ社に押しかけ転属しました。レストラン西武は業界大手のバーガーキング社と提携交渉していましたが米国側が乗り気でなくダンキンドーナツになったのです。

 皆さんはドーナツというとミスタードーナツやクリスピードーナツしか知らないと思いますが、本家米国にはダンキンドーナツとクリスピードーナツ、ウインチェル、ホートンズしかありません。ミスタードーナツはダンキンドーナツ傘下に入ってしまいました。

 日本ではダンキンドーナツは不調で、セゾンが助けた優良チェーンの吉野家の傘下に入りましたが、吉野家の目には原始的なオペレーションで見込みないと見放され日本からは消え去りました。しかしいまだにダンキンドーナツは米国で元気です。その大きな理由がフランチャイズ個人経営に向いたマニュアルです。今回はそれをご紹介しましょう。

 前回ファミリーマートが参考にしたダンキンドーナツ・マニュアルの「多店舗経営者の手引き」をご紹介しましたが今回は残りのマニュアルの目次のみご紹介しましょう。私はマニュアル、特に02.セールスハンドブック、03.販売促進、04.品質管理、05.お客様満足指導書、06.ドーナツマンハンドブック、07.フィニッシュハンドブック、08.清掃ハンドブックを熟読し経営不振であった田無店を立て直ししました。

 以下は全マニュアルの目次です。

01.人事マニュアル

02.セールスハンドブック

03.販売促進

04.品質管理

05.お客様満足指導書

06.ドーナツマンハンドブック

07.フィニッシュハンドブック

08.清掃ハンドブック

09.トレーニングハンドブック

10.利益計画

11.店舗パターン

12.店舗パターンB

13.新店舗開設

14.多店舗経営者

15.フランチャイズオーナー募集要綱

16.フランチャイズ契約書

17.防火・食品衛生ハンドブック

マニュアル目次

01.人事マニュアル

目次

  緒論

  第一章  組織

  第二章  人間関係

  第三章  募集

  第四章  選考

  第五章  教育・訓練

  第六章  職務規程

  第七章  女子売子訓練の為のマネージャーの手引き

  第八章  ドーナツマンの目標

02.セールスハンドブック

目次

1.はじめに

2.ダンキンドーナツについて

3.セールスの職務規定

4.店舗の規則

5.作業配分

6.作業割当(スケジュール表)例

7.セールス

    (イ)職務内容

    (ロ)セールスの心構え

    (ハ)セールスの言葉

    (ニ)商品知識

         (A)ドーナツ

         (B)コーヒー

8.早番、遅番の仕事、各責任者の仕事

9.レジスターの取扱

03.販売促進

目次

1.この販売促進マニュアルを十分活用してください

2.DDJの基本理念について

3.販売促進活動の指針

3-1 統一イメージを強く出す

3-2 フランチャイジーハフランチャイザーの指示・承認を得て販売促進活動

3-3 販売促進活動の主たる分担があります

3-4 地域特性のカルテを十分に活用してください

3-4-1 あなたの商圏タイプはどれ

3-4-2 あなたが行う情報収拾と分析のために

4.販売促進活動は目的別(パターン別)に計画・実施されます。

  あなたの目的をつかみましょう

5.販売促進の手段は有機的につながっています

6.目的別(パターン別)にみた具体的な販売促進活動

6-1 開店時の販売促進活動

 6-1-1 売る前に顧客の立場でみよう

 6-1-2 開店をダイレクトに知らせる方法

        パーテイ、招待、記念品の進呈

 6-1-3 開店を知らせる広告活動

       新聞広告、テレビ・ラジオ広告、交通広告、屋外広告、

       ダイレクトメール、チラシ広告、映画のスライド、

       アドバルーン

6-2 経常的な継続の販売促進活動

 6-2-1 12クラブカード

 6-2-2 季節にあった販促活動

              ファンシードーナツセール、月別のセールステーマ

6-3 再注目のための販売促進活動

 6-3-1 フリークーポン

6-4 開発のための販売促進活動

 6-4-1 タイムサービス、モーニングサービス、日曜サービス

  6-4-2 団体への売り込み

7.PR活動について

     特にパブリシテイ活動について

8.効果の測定について

9.経営自己診断

  9-1 正しい記帳システム

  9-2 損益分起点の出し方

  9-3 経営効率の見方

10.あなたの意欲が成功への鍵

   あなた自身を売り込むための35のテクニック

11.発想、作業管理の技術のテクニック

04.品質管理

目次

序文

イーストレインズドーナツフォーミュラーと製造行程

ケーキドーナツフォーミュラーと製造行程

フレンチクルーラーフォーミュラー製造行程

チョコレートドーナツフォーミュラー製造行程

フィリング類、砂糖、トッピング手順

砂糖とトッピング

ハニーデップフォーミュラーと製造行程

グレーズ

フォンダンアイシング

ショートニングハンドリング行程

ブルーフィング行程

ジュース

コーヒーフォーミュラーと製造行程

トラブル処理方法

イーストドーナツ

品質管理について

05.お客様満足指導書

Ⅰ.店舗の仕事の進歩状況、戦略の効果はどの程度か。戦略上の変更は何を考えているか。

  営業上の要点

a)品質と新鮮さ

b)マーチャンダイジング(多品種)

c)店舗の維持と清潔さ

d)店舗の性格

e)管理

f)食品

06.ドーナツマンハンドブック

目次

1.初めに

2.ダンキンドーナツについて

3.品質管理について

4.店舗の規則

5.ドーナツマンの職務規定

6.ドーナツマン作業スケジュール

7.必要記入書式について

①   作業割当表

②             生産日報

③             フィニッシュチェックリスト

④             時間帯別売上/客数表

⑤             商品発注表

⑥             原材料棚卸表

07.フィニッシュハンドブック

ドーナツのフィニッシュは、ドーナツの出来を左右する一番大切な事ですから十分注意してフィニッシュをして下さい。また油の吸いすぎ、形の悪い物、小さいドーナツ、大きいドーナツ等があったらマネージャー、あるいはドーナツマンに連絡して、お店に出すかどうかをすぐ聞いて下さい。フィニッシュをし終わったらすぐその場を片づけ常に清潔に保つように。特にフィニッシュルーム、エリアはお客様に見えるところですから十分注意して清潔に行って下さい。フィニッシュを行う場合バスケットをきれいにしグラシン紙を常に取り変える様にして下さい。フィニッシュをしながら出来たドーナツをバスケットトレーの上側にきれいにならべるようにすると手際よいでしょう。クリーム、ジェリ、シュガー類は、常に気を配り絶やさないようにしましょう。もし無い場合はマネージャー、ドーナツマンにすぐ告げ補充しておきましょう。

◆ケーキドーナツ

○ホワイトココナツ、バタークランチ、トーストココナツ

○シュガーリング、パウダーリング、シナモンリング、シュガークルーラー

◆イーストドーナツ

○フロスト類

○ジェリーフィリングス類

○クリームフィリングス類

○ロック、シナモンロール

○ハニーデイップ

08.清掃ハンドブック

 お店の清掃は大変重要な仕事です。十分に気を配って丁寧に行って下さい。ダンキンドーナツの店の内部を機能的に別けると、まず原材料をストックしておく倉庫、ドーナツを作るキッチン(厨房)、フィニッシュするフィニッシュルーム、あるいはフィニッシュエリア、店内のカウンター、バックバー、持ち帰りのセールスエリア、その他に付随する事務所内、トイレがあります。掃除はまず上の奥の方から順々に下へと向かって行い、最後に床をやって終わりになるという方法がよいでしょう。分担を決め、行う場所、物を決め又、日時も決めておくと能率的でしょう。

1.倉庫(ストックルーム)

2.厨房(キッチン)

2-1 ミキサー

2-2 カッティングベンチ

2-3 プルーファー

2-4 スクリーンラックワゴン、スメリーン台

2-5 フライヤー

2-6 ハニーディプラック

2-7 シンク

2-8 冷蔵庫

2-9 ガス台

2-10 壁

2-11 床

2-12 その他(スケール、温度計、ドレーンブロック、ハンドル)

3.フィニッシュエリア

  3-1  フィニッシュテーブル

  3-2  フイラーベース

  3-3  ホッパー

 3-4  ハンドポンプ

 3-5 クリーム容器

 3-6 クリームバッグ

 3-7 フィニッシュラック

 3-1 フィニッシュテーブル

 3-2 フイラーベース

 3-3 ホッパー

 3-4 ハンドポンプ

 3-5 クリーム容器

 3-6 クリームバック

 3-7 フィニッシュラック

 3.    カウンター、バックバー

 4-1 カウンターとその周辺

  4-2  バックバー

  4-2-1  アイスメーカー

  4-2-2  棚

 4-2-3  冷蔵庫

 4-2-4 ディシュウッシャー

5.セールスエリア

  5-1  ドーナツケース、ファンシーケース

  5-2  フロア

  5-3  トイレ、手洗い所

  5-4  壁、メニューボード

09.トレーニングハンドブック

目次

日本ダンキンドーナツトレーニングセンターの方針

 トレーニングスケジュール表

日本ダンキンドーナツの基本方針

品質管理上必要資料

一般の心得

自分の仕事

仕事に取り組む態度

勤務の心がけ(機会損失)

服務の心得

上司があなたにもとめるもの

就業規則

食品衛生法

食品衛生七則

仕事の心得

飲食業サービス基本十訓

七つの言葉

苦情処理十訓

ダンキンドーナツ時代

マクドナルド店舗での2年間。

続く

王利彰(おう・としあき)

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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