FSPROのメンバーで、元大学教授、編集者、ミステリ研究家、飲食、旅行、宿泊ジャーナリストとしてご活躍されていた、松坂健先生が、2021年10月8日にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りするとともに、私自身の想い出を振り返って先生を偲びたいと思います。
松坂先生は、昭和24年(1949年)浅草生まれ、慶応大学の法学部、文学部と2つの学科を卒業し、柴田書店に入社、月刊食堂副編集長、月刊ホテル旅館編集長を歴任。2000年から、西武文理大学、長崎国際大学、跡見学園女子大学などで観光学、宿泊業論、外食産業論などで教鞭を執られていました。実践に即した指導内容でゼミはいつも人気だったそうです。
柴田書店当時の取材先である、ホテル・旅館の経営者、オーナーにも人気で、特に女将さん達のネットワークでは大人気でした。
毎年年賀状を1800通出しておられたので、それだけの人脈をお持ちだったという証明になると思います。
ミステリ関係では、また別の深さをお持ちで、ご自宅の書庫には、内外のミステリ関係の書物が4万冊ほどあり、その魔窟にも圧倒されました。
僕の個人的な接点は、松坂先生が長崎国際大学に赴任されてから、ことあるごとにオフ会を開催しておりました。
看板の無いレストランシリーズに凝っていて、「ふくろうの森」「春馬」などを開拓。映画もお好きでしたから、「イムリ」では映画に特化したオフ会を開催、黒澤明研究の大家が経営している佐賀市の「松川屋」などに行きました。他にもハウステンボス集合や、ホテルオークラ福岡集合など、FSPRO九州ではしょっちゅうオフ会を開催していました。
オフ会で最高だったのは2004年、シドニーのテツヤズでディナーを食べるオフ会でした。シドニー在住のジーン中園さんのガイドで7日間ディープなツアーでした。
2004年には東京に戻られていましたので、その後は、お互いに近くに行けばミニオフ会という感じでした。
2019年には、セミナー講師をお願いすることがあり、その関連で小さな旅をしました。
大阪では、先生のリクエストで司馬遼太郎記念館、朝来市の志村喬記念館、市川町の橋本忍記念館を訪問。
山形では、スイデンテラスに泊まり、アルケッチャーノで食事。廻ったのは、鶴岡市の藤沢周平記念館。そして川西町立図書館にある、井上ひさし蔵書を集めた遅筆堂文庫。実は、ここに松坂先生の「ペーパーバックス読書学(深野有;名義)」が蔵書されているということで探しに行きました。実は川西町の本館には無く、製菓メーカーのシベールの山形工場内の図書室に蔵書されていました。そこも廻り無事に発見し記念写真を撮りました、とても誇らしく嬉しそうでした。
そして、最後にご一緒したのが、くまもと文学・歴史館で開催された横溝正史展の見学でした。在熊であった作家・翻訳家の乾信一郎との書簡が見つかったことで開催されていたものです。ミステリに関しての興味の深さは並々ならないなと実感した次第です。
2019年にすい臓がんを患われましたが、奇跡的に早期発見、早期手術が叶い、治療リハビリを続けられ症状が安定して来たので、思い切っての旅行でした。
ミステリだけに限らず、知への興味、探究心は衰えることなく、折々にお聞きした言葉の深さは本当に心に沁みています。ずっと旅を続けておられた先生と少しでもご一緒できたことはこれからも自慢できることだなと思っています。
先生の著書である「ホスピタリティ進化論」は日々アップデートされ、先生の生き方そのものがホスピタリティにあふれるものだったと実感します。心よりご冥福をお祈りしたいと思います。