王利彰の新規開業 経営(広報誌 アサヒビール ご繁盛サポートネット)

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初めて飲食店を開業しよう、2号店を開業しよう、不振店舗を改装して新業態の飲食店を開業しようという方に、確実にステップを踏まえて成功する方法をご紹介いたします。講師は、コンサルタントの王 利彰 氏。ぜひ、しっかりとした開業の手順・注意点を学びとり、繁盛店を築きあげてください。


監修:王 利彰 氏
(コンサルタント会社 有限会社 清 晃 代表取締役社長)
1972年には日本ダンキンドーナツの設立に参加。1973年から日本マクドナルド社。本社・運営統括部長、海外運営部長、機器開発部長を兼任し、後に事業開発担当部長、機器開発部長を歴任。1992年に有限会社 清 晃を設立。コンサルティング実績・著書・講演実績多数。
その他、関西国際大学客員教授、立教大学観光学部兼任講師(元、大学院教授)、杏林大学外国語学部非常勤講師として、外食産業分野の教育に従事。


■新規開店までの流れとポイント

STEP1:事業計画・資金調達
STEP2:業種・業態・コンセプト設計
STEP3:物件選び
STEP4:店舗設計・施工
STEP5:メニューづくり
STEP6:接客・運営マニュアル
STEP7:開店準備

■コラム:店舗運営の基本的な知識

コラム01 飲食店の基本「QSC」を実践しよう
飲食店が繁盛するためには、QSCをバランスよく保ち続けることが重要ですQとはQuality(品質)、SはService(サービス)、CはCleanliness(衛生)を意味します。それぞれ具体的に何をすればいいのか、見ていきましょう。

コラム02 メニューは定期的に見直そう
お客様はいつも同じメニューだと飽きてしまい、競合店舗に流れてしまいます。毎月、メニューの売上げ状況を点検し、「ABC分析」によってメニューの善し悪しを判断します。さっそく、実践してみましょう。

コラム03 店舗の宣伝をしよう
売上を上げる「販売促進」の手法を考えてみましょう。売上を上げるためには、広告宣伝が必要なことはご存じですね。では、広告宣伝とは、いったい何をすればいいのでしょうか。具体的な効果の検証方法なども交えながら、学んでみましょう。

コラム04 経理の原則を知ろう
飲食店経営者は、経費管理の内訳や損益計算書、損益分岐点を理解しなければなりません。損益分岐点のシミュレーション用ファイルも用意しましたので、実際にファイルをさわりながら計算を試してみましょう。

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STEP 01 事業計画・資金調達 
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飲食店を開業するには、最低でも5年から10年ほどの準備期間が必要になります。事業計画・資金調達を行う期間です。飲食店で働いた経験があり、素晴らしい飲食店のコンセプトやアイデアを思いついて、いざ開業しようとする際もっとも苦労するのが資金の調達です。

日本の金融機関は、どんなに良いアイデアに対しても、資金を貸し出すには、(1)自己資金(2)担保(3)保証人を要求します。そこで、独立して飲食店を開業しようと思ったら、どのような業種・業態・コンセプトの飲食店を開業するか、大雑把な考えをまとめ、それに必要な資金を想定する必要があります。

■金融機関を決める

(1) 自己資金
開業にあたって金融機関などから資金を借り入れる際、いくら自己資金があるか、必ず聞かれます。まったく自己資金がなければ、担保があっても金融機関は信用してくれません。また、金融機関が貸し出してくれるのは自己資金の2倍までとなりますので、開業費用の1/3の現金を、毎月少しずつ貯金しなければならないのです。

まずは、貯金をする金融機関を選びましょう。自宅や開業を想定している地域の信用金庫など、地元密着型の金融機関がおすすめです。貯金を始める際、金融機関の担当者に飲食店の開業資金を積み立てすることを話し、将来的に貸し出しが可能か、またそのためにはどの位の資金を貯めればよいか、相談をしておきましょう。開業の際、アイデアを貸してくれるはずです。

(2) 担保
資金を貸し出してもらうには、多くの場合、担保が必要になります。可能な限り、担保に最適な不動産を取得しましょう。賃貸住宅に住んでいる方であれば、大きさや価格にかかわらず、一戸建てを購入することをおすすめします。住宅ローンでの支払いでも問題ありません。購入して10年ほどすれば信用がつき、借り入れの際の担保として価値がつきます。担保価値の面では、マンションよりも一戸建てのほうが有利です。

(3) 保証人
自己資金と担保に入れる不動産価値が借り入れ資金を上回る金額であっても、金融機関は保証人を立てることを要求します。これが難しいのです。
基本的には親か兄弟、子供、親戚など身近な方にお願いするのが間違いありません。普段から親戚の方と連絡を取り合い仲良くしておきましょう。知り合いは、普段親しくしていても保証人にはなりたがらないものです。会社に勤めているのであれば、その会社の仕事を熱心にして信用を得ておきましょう。会社の経営者や取引先の方などに信用されれば、保証人になってくれる場合があります。

■組合や国・地方公共団体の活用

(1)組合
 実家などが飲食店や小売店、サービス業を経営している場合は、環境衛生組合や同業組合に加盟しています。この組合を通して資金を借り入れる方法もあります。組合の良い点は、新規開業をしたり改装をしたりする際に、金融機関から良い条件で資金を借り入れることができることです。組合に開業資金を貸す条件や、必要な手続き、貸付の限度額、金利や保証人などの条件を聞いておくとよいでしょう。

(2)国・地方公共団体
国や地方公共団体が新規開業資金の貸付をする場合もあります。地元の都道府県、市区町村などに相談してみましょう。国や地方公共団体がもつ特別な貸出枠で、日本政策投資銀行(※)を紹介してくれる場合があります。
※国民金融公庫などを統合した金融機関。

同業組合や国・地方公共団体を通して借り入れする場合も、大抵は日本政策投資銀行から借り入れすることになりますが、借り入れ総額と金利が有利になります。

(3)そのほかの資金調達方法
自己資金や担保がなく、金融機関から借り入れできない場合は、リース会社や人材派遣会社、その他の投資会社などから店舗や保証金などを担保に融資を受けることができます。
もう一つの方法に、リース会社、人材派遣会社、投資会社などが所有する物件を借り、「運営受託」という所有権の発生しない形態で飲食業を開店する方法があります。
また、複数の個人投資家を集めて少額単位で資金調達をする方式もあります。ただし、これらの融資は金利が通常の金融機関よりも高い、返済期間が短い、解約条件が厳しいなどリスクがあります。

なるべく、公的な金融機関から、金利が低く、返済期間が長い借り入れをすることが大事です。金融機関からの借り入れは、書類の作成などの手続きに時間がかかります。いざ、最適な物件が見つかったときにすぐに借り入れられるよう、事前に金融機関と交渉をしておきましょう。

■金融機関を決めるだけでは、資金の借り入れはできない

以上が、資金調達の基本的な方法ですが、いよいよ飲食店を開業することになりお金の借り入れを始める際には、以下のSTEP2~4を終了し、施工業者から見積もりをもらっておく必要があります。

STEP 02 業種・業態・コンセプト設計
STEP 03 物件選び
STEP 04 店舗設計・施工

事業計画書と収支予測、資金返済計画書、物件説明書、店舗設計書、店舗施工見積書などを揃えないと金融機関は貸出しをしませんから、事前に準備しておきましょう。

借り入れできる資金は、店舗の取得費用(保証金、前払い家賃、礼金)、店舗内外装費等、見積もりが出ている費用だけです。

開店に必要な消耗備品類、準備費用(事前に従業員を雇いトレーニングする費用や、食材の購入費用)、開店後の運営費用などは、自分で準備しなければなりません。特に、開店後の運用費用は忘れがちです。開店後すぐに大繁盛するわけではなく、知名度が上がるまで1年ほど売上が予測を下回ることが多くあります。損益分岐点を下回る売上であれば、自己資金を投入しないとならず不足すればいわゆる「黒字倒産」になってしまいます。
余裕を持って資金計画を立てておくことが大切です。
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◎用語解説
 損益分岐点:
【参考】コラム:経理の原則を知ろう
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STEP 02 業種・業態・コンセプト設計
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どんな業種・業態でお店を開くのか、コンセプト設計をすることは開業準備として非常に大切です。
人気のある飲食店、流行っている料理、人気レストランのデザイン、人気の立地など、さまざまな情報を入手し、業種・業態・コンセプトを決定しましょう。

■業種・業態を決める

業種を選ぶ際は、洋食、和食、中華なのかとざっくりと選ぶだけではなく、その業種の将来性まで考えながら、細かく決めておくとよいでしょう。

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◎用語解説
 業種:販売するメニューによる飲食店の区分(例:日本料理店)
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例をあげてみましょう。
老齢化が進んでいる現代、食習慣も変わりつつあり、健康管理の必要性から和食回帰の傾向が見られます。この傾向に従って、業種に「和食」を選んだとしましょう。和食と一言で言っても幅が広く、天ぷらなのか、刺身を出すのか、料理によって「業種」は異なります。
天ぷらは、海外の養殖海老などを購入すればある程度、食材原価を安定させられます。しかし、年配の方にはカロリーが高く、栄養面では不向きといえます。
「健康志向・低カロリー」という視点を優先すると、刺身など魚料理の店になります。しかし、品質の安定した刺身を出すには、低価格の食材を安定的に入手できる可能性が低い点が難しいところです。
飲食店を経営するうえでは、売れるだけではなく、「利益」を出さなければなりません。このように、原材料などが将来も安定して供給されるかどうかまで見定めて、業種を決めることが重要です。
ここでは、和食の中でも、天ぷら店を開くことに仮定します。

■価格ゾーンを決める

次に、価格ゾーン(プライスゾーン)を決定します。不景気の現代ではリーズナブルな価格を打ち出すことが必要です。高級料理店を成立させるためには、10万人以上の商圏人口が必要とされますが、毎日食べられる価格であれば、3万人の商圏人口でも成り立ちます。

さらに、業態を決めます。天ぷらの中でも、数百円の天丼を売るファストフード的な店を出すのか、客単価を1万円に設定してカウンターの高級店を開くのかなど、「どのように売るのか」を指すのが業態です。

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◎用語解説
 価格ゾーン:一皿の価格や客単価などの商品価格帯
 客単価:客一人当たりの平均支払金額
 業態:販売する方法(営業手法)による飲食店の区分(例:ファストフード店)
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ほかの料理でも、こうした区分は同じです。例えば洋食には、フランス料理、イタリア料理、スペイン料理、日本の洋食などがあります。たとえば、イタリア料理をひとつとっても、北部と南部ではまったく料理が異なりますので、どの地方のイタリア料理かを決めます。これが「業種」です。

同じイタリア料理であっても、価格帯によって業態が異なります。客単価1万円以上か、それとも5,000円以下なのか、1,000円前後の低価格イタリアンなのか、軽食や飲み物を中心とした持ち帰りもあるファストフードタイプなのか、などを示すのが「業態」です。

こうした業種・業態・価格ゾーンの決定を通して、どのような食事を、どのような形で、どのような雰囲気でお客様に届けたいのかを決めるのが、「コンセプト設計」です。

■トレンドを把握する

業種・業態の決定にあたっては、飲食業界のトレンド動向を把握しておきべきでしょう。幅広く情報を集めましょう。
新聞や飲食系専門誌には、東京・大阪はもちろん、地方繁盛店の情報も出ていますので、それを参考にするとよいでしょう。また、商業・飲食店の店舗設計や建築関係の専門誌も、店舗を誰がどのようなコンセプトで設計したのか、どのような収支計算であったかを調べるのに役立つでしょう。

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◎情報収集に使えるもの
・新聞:「日本経済新聞」、「日経MJ(流通新聞)」など
・専門誌:『飲食店経営』、『週刊ホテルレストラン』、『月刊食堂』、『日経レストラン』、『近代食堂』、『外食レストラン新聞』など
・建築専門誌:『商店建築』、『あたらしい飲食店開業』
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余裕があれば買い集めても構いませんが、近所の図書館を活用できます。また、出版社のショールームを訪ねれば、自由に読めるバックナンバーが置いてあることがあります。また、雑誌編集者の方に話を聞いたり、出版社の主催するトレンドセミナーなどを受講するのもよいでしょう。

一方、食品関係の企業(食品メーカー、厨房機器メーカー)はショールームに外食関係の専門誌や、料理関係の文献、調理技術の本、などをおいているので利用しましょう。なかには、図書館を構えて文献をそろえている企業もあります。ぜひ調べてみましょう。

インターネットの情報も有効です。本サイト「ご繁盛サポートネット」のように、トレンディーな新規開店の情報に強いWEBサイトもありますので、ぜひ調べてみましょう。

飲食業で働いている方の場合、取引先の卸売業者の営業の方と仲良くなれば、繁盛店や食の最新のトレンドを教えてもらえることがあります。また、卸売業者で開催しているセミナーに参加するのもよいでしょう。

こうして情報を入手し、自分のやりたい業種・業態・コンセプトを決めたら、その業態に合った立地を調べ、その地区の同業の繁盛店を見学に行きましょう。繁盛店を徹底的に調査・研究するのです。

特に、店舗の立地、店舗面積、客席数、店舗内・外装などは注意深く研究しましょう。1店舗だけ見ても、その業種・業態に成功の可能性があるかは判断がつきません。価格帯や顧客層が似ている繁盛店を複数訪問することをおすすめします。

■直接、店舗を取材する

繁盛店を訪問すると言っても、眺めているだけでは情報として不十分です。遠慮せずにシェフや経営者に声をかけ、どんな工夫をしているか聞いてみましょう。初対面でも率直に「飲食業の開店を考えているので、勉強に来た」と言えば、レシピ、仕入先、厨房レイアウトなどノウハウを公開してくれる場合があるからです。
こうして収集した情報を元に、自分の考える業種・業態に可能性があるかどうかを判断します。もし、競合が多すぎるなど、先行きに不安があるのであれば、業種・業態を変更する可能性も検討しましょう。

■一般飲食店は、立地が命

店舗コンセプトの完成度やオーナーシェフの知名度によって例外がありますが、一般の飲食店は立地がものをいいます。開業したい業種・業態・コンセプトに適した立地を大雑把に決定したら、その立地にある店舗関係の不動産屋を訪問し、坪あたりの家賃や保証金を調べましょう。

 この段階で、自分の開業したい業種・業態・コンセプトに必要な立地と面積を大雑把に決めておき投資金額や資金繰りを計算しましょう。もし、自分の好きな業種であっても競合が多い、収支が合わない等の場合は断念し、業種・業態・コンセプトと立地を考え直すことをおすすめします。

 業種・業態・コンセプトを決めるのは経験の必要な仕事で、初めて飲食業を開店しようとする場合、荷が重いものです。自分のやりたい業種・業態・コンセプトが決まったら、目標になる店舗を決め、可能であればそのお店や同業種のお店で従業員として働いてみましょう。働くことによって経営ノウハウを身につけ、味やサービス、仕入先など開店に必要な知識を身につけながら開業資金をためられます。

■経験を積む、ノウハウを身につける

ほかの仕事をしながら勉強する方法もあります。最近では、飲食業コンサルタントや設計家、繁盛店の経営者、などの実務家が教える学校もできています。

筆者の知り合いにも、パンケーキハウスの開業を目指す未経験者が学校に通って開業した例があります。この方は、もともとパンケーキのレシピを研究していたため、コンセプトの作り方、販売促進のやり方、繁盛店の作り方、立地選定方法、品質の差別化などしっかりした戦略を学び、開店後あっという間に繁盛店になりました。
必ずしも実経験が必要なわけではありませんが、開業に至るまでのノウハウはいずれにしてもしっかり学んでおくことです。

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STEP 03 物件選び
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物件の立地は、飲食店にとって最も重要な要素です。店舗を借りて内装設備を整えるには膨大な費用がかかります。開店後売上が悪くても、店舗の移設には多額な費用がかかり、実質上不可能です。そのため、契約前に調査を行ってどのような立地にお店を出すか、慎重に考えましょう。

■物件の探し方

往々にして自分の知った立地に店を作ったり、場合によっては自宅を飲食店にしたりする場合があります。しかし、どんなに良い料理を出しても、「立地が悪ければ成功することは稀である」ことを覚えておきましょう。自分で決めた業種・業態・コンセプトに合った立地を、自宅からの近さにこだわらずに探さなくてはいけません。

では、どうやって良い立地の物件を見つければよいのでしょうか。まず、あらかじめ店舗を構える立地を決め、その立地に強い地元の不動産会社に足しげく通って不動産会社の担当者と仲良くなっておきましょう。卸売業者やビール会社などの営業担当者も多くの場合、不動産情報を持っていますので声をかけておきましょう。

また最近は、経済状況の悪化を受け、居抜き店舗や店舗M&Aを通じ、安価に物件を手に入れることができるようになっています。既存の不動産屋に加えて、それらの業者に問い合わせてみると良いでしょう。

既存店舗の設備、内装がどの位使えるかで投資コストが変わるので、店舗設計家とコミュニケーションを密にとり、相談しましょう。また、内装を変えるのに、大家の了承や契約条項の確認が必要になりますので、しっかり確認する必要があります。

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◎用語解説
居抜き:店内の造作や食器、消耗品など、すべてのものを前のお店から引き継ぎ、すぐに営業できる状態で店舗を買い取ることを言います。
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■立地の選定は、「通行量」を基準に。

立地の選ぶうえでもっとも重要なのは、店舗前の通行量(歩行者・通行車両)と通行客の質です。
新規店の場合は、店舗前の通行量のおよそ1%しか入店しないと言われています。何年か経営を継続し、料理やサービス、雰囲気の評判が高まり、固定客がしっかり定着しても、通行量の10%以上が入店することはほとんどありません。

街部であれば、歩行者の量、郊外型であれば車の通行量に左右されます。通行量が多くても、お店に入ってくれない人が多ければ意味がありません。
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◎ポイント
通行量が多い立地の物件を探しましょう。
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■例:住宅地を抱える私鉄沿線の駅の場合

例として、私鉄沿線の住宅地のある駅をみてみます。ここは、一日の合計としては通行人が多い駅です。しかし、早朝は通勤客が出勤するために通行量が多い一方、昼間から夕方までは閑散とし、夜になると朝出勤したサラリーマンが帰ってくるので通行量がふえています(下図)。
※グラフはイメージです。

通勤客は、家の周辺ではあまり飲食をしない傾向にあります。多くの場合、会社の近所の繁華街で飲食を済ませてしまうため、この駅で来客を予想しうる実質的な通行量は、全体の通行量から朝の通勤客の倍(行きと帰り)を差し引いた数となります。

さらに、繁華街を歩いてどのような人が飲食店に入るか観察してみましょう。サラリーマンのように早足で歩いている人が飲食店には入る確率が低く、のんびりと歩きながら周囲を見回している人のほうが、飲食店に入る確率が高くなります。つまり、ゆっくりと余裕を持って歩く人が多い場所が飲食店にはぴったりです。

車の場合も同じです。通行量が多くても、ライトバンやトラックなどの商用車が多い場合、飲食店に入ってくれない可能性が高くなります。幹線道路で商用車などの通行量が多く、スピードが速い場合も、店舗を見つけても通り過ぎてしまいます。適当な通行量で車の速度がゆっくりしているほうが入店率は高くなります。幹線道路の場合、中央分離帯があると通行量の半分しか潜在的な顧客として想定できませんので注意が必要です(下図)。

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◎ポイント
通行者・通行車両の「質」を見極めましょう。
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■商圏を調査する

次に「商圏」の調査をします。

繁華街でなくても、近くにお客様を誘引する施設があるかどうかが大事です。お客様を誘引する施設とは、ショッピングセンターやディスカウント店、百貨店などの大型小売店、映画館や劇場、市役所や県庁、大型病院などの遠距離から人がわざわざ集まる施設です。駅からそれらの施設までの途中に、開店したい立地があれば最適です。

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◎用語解説
商圏:お客様を集客できる範囲のことを指します。
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徒歩でも車でも、飲食店に行く距離は15分以内が目安となります。徒歩の場合、およそ半径1kmとなりますが、実際にはアメーバのように変形します。

家に届く宅配ピザ店のチラシには必ず、配達地域が印刷されています。これが参考になります。大きな幹線道路、川、鉄道など、地域を分断するものがあると15分以内に移動できる距離は短くなります。自分が検討している物件の場合、どのようなアメーバができあがるか、自ら地図を片手に歩いてみましょう。

区・市役所や商工会議所が、商圏調査や繁華街調査の資料を持っている場合があるのでそれも参考にしましょう。住宅地の場合、商圏内の住民数や所得をしっかりと把握しておくことが重要です。

地元の繁盛店に入って、経営者に商圏はどのようになっているか聞くのも良いでしょう。食品スーパーや酒類販売店などにも聞ければ、判断材料が増えます。

■問題がなければ、店舗設計へ

おおよその調査で問題がなければ、すぐに店舗設計家に連絡し、物件の詳細なチェックを始めましょう。
まず、電気、ガス、水道の容量をチェックします。物件を借りた後で十分な電気やガス、水道の量がないと余分な施設費がかかる、開店ができないといった問題が起こりえます。これについては、店舗設計とも関連してきますので、STEP4でも詳述します。

店舗の基本となる項目をチェックし、不動産に問題がなければ、家賃、保証金、礼金など具体的な契約交渉を開始します。
契約を締結する前に、金融機関と具体的な借入交渉を開始します。借り入れができなければ不動産契約に必要な資金を調達できないからです。
資金の借り入れが決定したら、不動産業者に物件を借り入れることを伝え、手付金を支払って物件を確保し、設計家に設計依頼を開始します。
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STEP 04 店舗設計・施工
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飲食店は料理も大事ですが、店舗デザインによる雰囲気も重要です。繁盛している飲食店は、豪華でなくてもどこかお洒落な雰囲気が漂っているものです。

■店舗設計家を探す

まず、自分がやりたい業種・業態・コンセプトに近い店舗デザインを、たくさん手がけている店舗設計家を探し、実際にできあがった店舗を徹底的に見学しましょう。店舗設計家は多くの場合、自社のWEBサイトに施行した店舗を載せています。また、雑誌『商店建築』などに紹介されている店舗でも構いません。気に行った店舗を訪問し、経営者やシェフなどに設計家の良し悪し、できあがった店舗の使い勝手を聞きます。

こうして、施工を依頼したい店舗設計家を決めます。
店舗設計家には、「どの地区にどのような飲食店を開業したいか」や、自己資金と投資可能額を率直に伝え、その店舗設計家が依頼を引き受けてくれるか相談をします。その際、店舗設計家が手掛けた店舗の実績を再度確認しましょう。

店舗設計家には、想定している業種・業態・コンセプトが、開店したい立地で成功する可能性があるか、相談しておくとよいでしょう。また、物件を決定してから設計が完了し、開業するまでどの位の期間が必要かも聞いておきます。

■物件のチェックリストをもらう

次に、店舗物件を契約する前に必要なチェックリストを作ってもらいましょう。既存の建物の場合、電気、水道、ガスの容量に制限があります。もちろん、契約容量を変更することはできますが、莫大な費用がかかったり、店舗所有者から許可が出なかったり、消防署の規制にかかる場合があるので、店舗を借りる前に慎重にチェックすることが必要です。


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◎ポイント
店舗の基本となる電気・水道・ガスは、はじめにチェックしましょう。
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設計家に自分の希望する店舗形態を説明し、過去に設計した類似の店舗を何件か紹介してもらい、見学に行きましょう。実際に目にすることで、自分の希望をより具体的にします。

最後に、概算費用を計算してもらい、自分の予算とあうかチェックします。予算がオーバーしてしまった場合は、率直に自分の予算を伝えなおし、交渉してみましょう。

■店舗設計家に、厨房・設備の希望を伝える

店舗の設計だけでなく、厨房・設備の設計を開始します。店舗設計家は、必ずしも厨房設計や設備設計に詳しいわけではありません。店舗設計家は店舗のデザイン面を中心に設計するために、「見た目は格好良いが使いにくい」というデメリットが出てくる場合もあります。そのため、自分の厨房や設備面の希望を、具体的に伝えておくことをおすすめします。

事前に厨房施工会社や厨房機器メーカーのショールームなどを訪問し、自分の希望を満たす厨房機器やレイアウトを探しておくとよいでしょう。具体的な調理機器やレイアウトの希望があれば、指定の厨房機器メーカーを使えるよう、最初から伝えておきましょう。ただし、自分の希望通りの製品を使う場合も、必ず設計家を通さなくてはいけませんので、注意が必要です。
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◎ポイント
・店舗設計家に任せきりにせず、厨房や設備について積極的に調べ、希望を話しておきましょう。
・デザイン性だけでなく、使い勝手も考慮しましょう。
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■厨房設計に「二度目」はない

店舗の内装は減価償却の期間も短く、改装も容易で安価です。しかし厨房は一度完成したら改装することはほとんど不可能です。費用が高いうえ、改装に開店と同じくらいの期間がかかります。その休業期間に既存の顧客を失ってしまうからです。

吸排気・空調の設備工事も同様で、あとから追加したり改善したりするのが困難です。厨房の温熱環境が悪いと、従業員が定着せず、客席にも悪い影響が出ます。厨房・設備の費用を削減しすぎると、あとから失敗につながる可能性がありますので、慎重に検討してください。

予算をオーバーしてしまった場合は、希望する調理機器を後で追加できるようにガスや電気、吸排気の容量、機器のスペースを確保しておきましょう。

■忘れがちな必要スペース

厨房設計の場合、調理器具の検討を忘れることはまれですが、食器・食材の保管場所、従業員の休憩室など、開店後に必要なスペースを忘れがちです。

例えば、ゴールデンウィークや年末年始などは売上を上げる絶好の機会ですが、問屋や食材メーカーは休暇に入ります。ある程度のスペースを確保しておかなければ、途中で食材が切れてしまいます。

食器については、洋食の場合は、食器類にそれほどスペースを必要としませんが、和食器には重ねにくいものが多く、季節を演出するために種類が必要になります。設計家が料理自体に詳しくない場合もありますので、こうした保管場所についての希望をよく伝えておきましょう。

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◎ポイント
保管場所や休憩室などのスペースを考慮に入れましょう。年間を通してスケジュールを想定してみることが大切です。
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■調理機器の注意もしっかりと

さらに、小さな調理機器や冷蔵庫、冷凍庫、製氷機などの容量が小さすぎる、必要な電源が不足するといった問題もよく起こります。こうした細かいことも慎重に検討し、設計家に伝えておきましょう。

中古の調理機器を使う場合は、価格、状態、保証と修理についてきちんと確認してください。新品の調理機器でも定価から大幅に値引くことが多いため、中古よりも新品の方が安い場合があります。よく調べておきましょう。

最後に、調理機器の安全管理確保を忘れないようにしてください。ガス調理機器を使う場合、ガス漏れ検知器をつけたり、地震やガス漏れの際、自動的に遮断する安全装置の取り付けをしましょう。

最近は電化厨房が増えてきました。オール電化にすると電気会社との契約で電気代の割引が得られることがメリットです。新築ビルで、ビル全体が電化の場合はメリットも大きいのですが、既存の建物で自分の店舗だけ電化する場合は、スペースやコストの問題でメリットがない場合もあります。慎重に検討をしてください。


■できあがったレイアウトを検討する

設計が終了したら、慎重にレイアウトを検討します。厨房のレイアウトは平面図だけだとわかりにくいため、立体図も作ってもらいましょう。作業台・棚などの高さや、客席から見た厨房の外観もチェックしてください。小規模の店舗にとってこの立体図の検討は大変重要になります。

(図)平面図
(図)立体図


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STEP 05 メニューづくり
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メニューは、経営者が練ったコンセプトを映し出すものですが、お客様は必ずしも経営者やシェフが「好きなもの」を食べたいわけではありません。入念に市場を調査した上で、メニューづくりを開始するべきでしょう。

■メニューづくりは、トレンドを把握してから

まず、開業を目指すお店と業種・業態・コンセプトが近い繁盛店の情報を、常にチェックしておきましょう。味や量、提供温度、盛りつけ、食器、栄養価、トレンドに沿っているか、全体のバランスがよいかなどが参考になります。

なかでもトレンドは、しっかり把握しておく必要があります。たとえば、世の中は「健康志向」になりつつあると言われますが、実際の顧客が本当に欲しているものは何か、より具体的に調べ、そのトレンドを元に顧客が日常的にどんな行動をしているかを見極めます。

トレンドを把握しつつ、開発したいメニューをいくつか絞り込み、試作します。材料、付け合わせ材料、盛りつけをする皿、盛りつけ方法、他の料理とのバランスも考えましょう。

自分(経営者)や調理人だけでなく、ターゲットとする顧客に近い年齢・性別の従業員や友人などに試食させ、評価をしてもらいながら決めていきましょう。おおよそのメニューが決まった時点で、ターゲット店舗を再訪し、自分のお店の料理と比較してみましょう。どちらのレベルが上か、冷静に判断する必要があります。
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◎ポイント
メニューは「好きなもの」だけでなく「売れるもの」も考慮に入れましょう。
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■メニュー開発の方法

メニュー開発の例を見てみましょう。

ある大阪の居酒屋(客単価:約4,000円)は、それ以上の価格帯の高級中華料理やフランス料理のメニューをうまく取り入れて成功しました。

まず、大阪の高級海鮮料理店のメニューを研究し、それをいかに低価格で提供できるか、原材料を工夫して人気メニューに仕立て上げました。また、有名なフランス料理店のシェフの書いた料理本を読んで、料理の盛り付けの美しさをまね、居酒屋料理をお洒落に盛り付ける工夫をしました。こうした努力の結果、日経レストランが開催している料理コンテスト「メニューグランプリ」にてグランプリに輝き、お洒落な居酒屋へと変身。繁盛店となったのです。


成功の最大のポイントは、原材料そのものの原価は、価格ゾーンにあわせて比較的安価に抑え、一方で料理を乗せる器、店舗の内装、雰囲気などは高級店にひけを取らないような工夫を凝らしたことです。

多業態を経営している、ある有名社長のメニュー開発方法を見てみましょう。この社長は書道が得意で、業態やメニューを考えるとき、まず店名を筆ですらすらと書き上げるといいます。その名前をじっくり見ながら、店舗の入口(人間の顔に当たる部分)を筆で書き、そのイメージをもとに料理のデザインを描きます。部下のデザイナーやコンセプトデザイナーはこの筆書きをもとに詳細を詰め、そのお店や業態にあったメニューをつくります。一見、特殊な開発方法にも見えますが、メニューは店名、業種・業態、内外装のイメージと合うようにつくるものです。


一般店だけでなく、居酒屋チェーンの経営者として成功している方のなかにも、既存の居酒屋フランチャイズに加盟して経営手法を学び、その後独立して自らのブランドを立ち上げた方が数多くいらっしゃいます。今では超有名チェーンとなった外食企業も、外部から学んで活用したのです。成功・繁盛している業態をじっくり観察し、参考にできる部分は遠慮なく取り入れさせてもらうことが大事なのです。

最近は、産地や生産者のはっきりしている食材や、地方の郷土料理に人気が出ています。地方はこぞって郷土料理を「B級グルメ」として取りあげ、観光の目玉としてアピールしています。その最たる例が、静岡県・富士宮市です。富士宮市は、地域で古くから食されていた焼きそばに注目し、改めて「富士宮焼きそば」と命名。地域の活性化に成功しました。さらに、富士宮周辺で養殖が盛んな鱒を使った料理も開発しています。一方、神奈川県・厚木市を中心とした地域では、「シロコロ・ホルモン」という内臓肉(もつ)を使った焼きトンが人気になっています。こうした地域独自の「B級グルメ」も、リーズナブルな価格帯の業態を考える場合には注目すべき料理です。B級グルメに関しては、各地方での大会を経て、全国大会として開催されるB級ご当地グルメの祭典「B―1グランプリ」がありますので、各地の料理をチェックをしてみましょう。
http://www.asahibeer.co.jp/area/b1/

このように、メニューをつくる上では、繁盛店で働いたり、フランチャイズに加盟したり、色々な情報を入手して、メニューの作成方法を学び、また繁盛店をめぐることで新しいメニューのアイデアにつなげることが大切です。自分が好きなものを追求するだけでなく、他店や企業、地方の観光活動から幅広く学ぶことも、メニューを作るうえでは重要だということです。

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◎用語解説
メニュー開発に自信がなければ、企業や飲食店に勤め、ノウハウを得ましょう。
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STEP 06 接客・運営マニュアル
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安定したサービスや料理を実現するためには、全従業員の接客や調理技術も安定していなければなりません。そのために必要なのがマニュアルです。

■マニュアルとは、あらゆる「手順」を形にしたもの

「つくったことがないから」、「しっかりしたマニュアルをつくるのは大変」と腰が引けがちですが、マニュアルとは実は紙に書いていなくても良いものです。一つひとつの調理手順や接客手順など、基準となる方法が決まっていればそれがマニュアルです。

筆者は以前、ある高級旅館の料理マニュアルの再構築を依頼されたことがあります。経営者は「マニュアルがなく、調理人の教育がうまくいかない」と話しましたが、調理場には出汁のとり方や料理レシピ、朝から夜までの作業手順が、壁や棚にメモ書きとして貼ってあるのです。
筆者がとった方法は、調理場に貼ってあるメモをすべてはぎ取り、各持ち場の調理人にそれをまとめさせる作業です。なかったはずのマニュアルは、調理場のメモ書きとして存在していたのです。このように、ひとつの資料としてまとまっていなくても、あらゆる手順が決まっており、実践されていれば、立派なマニュアルといえます。

■必要なマニュアルの種類を把握する

では、実際に必要なマニュアルとは、どんなものがあるのでしょうか。
マニュアルは大きく3つに分類され、そのなかに具体的なマニュアルがあります。

(1)作業を明確にするマニュアル
・調理マニュアル…料理の手順、レシピ
・サービスマニュアル…お客様への挨拶、注文のとり方、テーブルへのおき方、お会計の方法など
・店舗開店・閉店マニュアル
・清掃マニュアル…開店前・閉店後の清掃方法、洗剤の種類、使い方
・管理マニュアル…売上管理や受発注、人件費計算、棚卸しなどの方法

作業マニュアルは毎日行う仕事を明確に定めるものです。店舗の現場作業において、サービス、調理、清掃などを一つひとつの細かい作業に分解します。その細かい作業の手順や、使用機器、食材、完成基準、問題があった際の対処方法などを列記します。
 
管理マニュアルは人・物・金を管理するもので、より細分化すると、下記のようなものが含まれます。
 
<1>人材採用・教育・評価マニュアル
<2>防火・食品衛生・安全対策マニュアル
<3>書類管理・利益管理・マニュアル、
<4>販売促進・広告宣伝マニュアル
<5>厨房機器マニュアル
<6>機器メンテナンスマニュアル など

(2)生産性を向上させる作業手順書
(1)であげた作業マニュアルは、作業を一つひとつ明確に定め、あるべき姿を丁寧に述べるものです。しかし、実際の店舗においてはマニュアル通りに作業することはできません。一つひとつの作業を完全に終わってから次の作業にかかるのでは時間がかかりすぎてしまうからです。

店舗の現場では、生産性は高めるため、複数の作業を同時に行う必要があります。こうした連続的・同時並行的な作業を可能にするため、店舗の現実の作業をやりやすくするために、「作業の流れ」を述べたものが作業手順書です。

開店前の朝の準備から、営業中の暇な時間帯、忙しい時間帯、ピーク後の補充作業、閉店前の準備と清掃作業、レジの金銭勘定、現金日報や棚卸しなど、1日の流れに従って手順を業務別に述べます。これを作成することにより、日々の仕事がスムーズになって生産性が向上するのです。

(3)現在の状態を評価し、アルバイトの熟練度を確認するチェックリスト
「人」の管理を行うためのマニュアルです。アルバイトなどスタッフのトレーニング状況(作業手順の習熟度や上達度を計測し、改善が必要か、どんな改善を行うか、どんなトレーニングが必要か)を判断します。また、新人アルバイトが自ら利用する自己診断書としても使えます。

場合によっては、人をうまく動かすために、レイアウトの改善や調理機器の見直しが必要か、清掃状態は問題がないか、防火・衛生管理の問題はないかなど、問題点を見いだすためのチェックリストとしても使います。

経営者としては、アルバイトの評価に使用します。チェックリストの達成状況により公正な評価を行い、時給タイトルをアップすることで、スタッフのやる気を引き出すことができます。

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◎ポイント
マニュアルは、きめ細やかにあらゆる手順を述べたものです。お店の状況によって必要な作業や作業手順は変化しますので、定期的に見直ししましょう。
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https://snet.asahibeer.co.jp/magane/open/step/07/index.psp.html
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STEP 07 開店準備
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金融機関からお金を借り、店舗の不動産契約を締結したあとは、店舗設計を依頼し、店舗の開店に向けて内装業者に施工をさせます(STEP2~4)。通常、内装等の施工は、発注後1ヶ月半~2ヶ月かかりますので、その間に開店準備を行います。

■従業員の確保

一番重要なのは従業員を集めることです。開店が決まる前に他の飲食店で働いている優秀な従業員を探し、スカウトしておくと効率が良いでしょう。求人誌やネットで募集することも可能ですが、その人の能力や人柄がわかりませんので、採用してから苦労することがあります。

業種・業態・コンセプトを決めるときに色々な繁盛店を回りますが、その際に優秀な従業員にも注目し、仲良くなっておくとよいでしょう。また、同じ会社や店舗で働いていて、信頼のできる人がいれば「一緒に独立をしないか」と声をかけるのも良いでしょう。いずれにせよ、新しい店舗を立ち上げるときに、経営者であるあなたの人柄をよく理解している人がサポートしてくれると心強いものです。

アルバイトは求人誌に募集広告を出したり、ネット広告を出したりして募集します。店舗物件を借りたあとは、店頭にアルバイト募集の看板を掲げると費用がかからず、しかも効果が高くなります。

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◎ポイント
経営者の人柄や理念を理解している方を、従業員として探しましょう。
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■食材の手配

 人が集まったら、食材の手配です。食材は、食品メーカーごとに発注すると手間も費用もがかかります。卸売業者を探し、ある程度の食材や消耗品をまとめて仕入れるとよいでしょう。新規契約の際には、価格や支払い方法など細かいことを決めなければなりません。

 卸売業者から仕入れるのは、基本的に食品と消耗品です。肉・魚・野菜などは専門の卸売業者を探す必要があります。また、お酒も専門の卸売業者を探す必要があります。お酒の場合、使いたいビールの銘柄のメーカーに連絡をすれば、卸売業者や酒販店を推薦してくれます。

さらに、ビールメーカーはさまざまな繁盛店を把握しているので、開店に当たって店舗のコンセプトやメニューづくり、お酒のメニューづくりにアイデアを貸してくれることがあります。ぜひ、開店の前からコミュニケーションをとっておきましょう。
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◎ポイント
ビールメーカーや卸売業者に相談し、そのノウハウを活用しましょう。
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■開店直前の準備:忘れやすい項目

(1)資格の取得
飲食店開店にあたっては、消防署と保健所の許可が必要です。消防所の場合は「防火管理者」の資格を、保健所の場合は「衛生管理者」の資格が要求されますので、開店前に資格を取る講座を受講しましょう。

(2)売上など金銭の管理
取引先の金融機関を決め、売上金の管理や支払い方法を決めておきます。開店後の水道、電気、ガス代の支払いは、取引銀行の口座から引き落としができるよう手続きしておきます。そのほか、家賃や従業員・アルバイトの給与の支払い方法なども決めておきましょう。

(3)消耗品の準備
案外忘れがちなのが、細かい消耗品や、食器類の購入です。開店までに忘れずに用意するため、買い物リストを作って購入しておきましょう。

(4)従業員のトレーニング
さて、開店が近づいてきたら、アルバイトや従業員のトレーニングにかかります。まず、チームワークが大事ですから従業員の履歴書を良く把握し、コミュニケーションをとっておきましょう。経営者を含め、徐々に慣れていく必要があります。事前に用意したマニュアルに沿って、お客様にしっかり対応できる程度のレベルまで引き上げていくことが重要です。

(5)広告宣伝活動
売上を上げるための広告宣伝計画を策定しておきましょう。開店前には、レセプションの準備や招待客への案内状の手紙の発送などを行います。開店にあたりお世話になった方、これまでの社会経験で知りあった方など、積極的に顧客として呼び込むとよいでしょう。
これについては、別にコラム「店舗の宣伝をしよう」を掲載しますので、ぜひご参照ください


すべての準備をすませたら、後は開店日から必死に売上を上げるだけ!
開店の瞬間が「第一歩」。勝負はこれからです。頑張りましょう。


https://snet.asahibeer.co.jp/magane/open/column/01/index.psp.html
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コラム01 飲食店の基本「QSC」を実践しよう
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 飲食店が繁盛するためには、「QSC」をバランスよく保ち続けることが重要です�Qとは品質(Quality)、Sはサービス(Service)、Cは衛生(Cleanliness)を意味します。

<1> 「C」クレンリネス、清潔さ、衛生さ

Cとはクレンリネスの頭文字で、清潔さと衛生的であることを意味します。

多くの飲食店がQSCと言うので、「Q」(品質)が最も大切でその次がサービス、最後がクレンリネスであると錯覚しがちです。しかし、初めて飲食店を選ぶときには、試食をすることができませんので、Qはそのお店をリピートするかどうかを決める指標なのです。「S」(サービス)も店舗に入って注文するまでレベルがわかりません。

初めての飲食店を選ぶ基準は、店舗の外観や雰囲気しかないのです。家族でレストランを選ぶときは、多くの場合、女性が決定権を持っています。その基準の第一に挙げられるのが、クレンリネスです。初めての店舗は店舗の外観、店内の清潔さなどで選定します。店舗を選ぶ基準は「C→S→Q」の順番となるのです。

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◎ポイント
初めての飲食店を選ぶ基準は、まず「クレンリネス」。
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飲食店が成功するには、まずクレンリネスの基準を確立することが重要です。毎日クレンリネスのチェックを行い、清掃が行き届いているか確認しましょう。
クレンリネスの達成基準はごく簡単です。店舗の清潔さを新装開店したときと同じ状態で保っていればよいのです。そのためには、毎日の具体的な清掃作業をスケジュール化し、汚れをためないようにしましょう。

きちんとしたクレンリネスを実現するためには、店舗の構造も汚れにくい様に工夫をしなくてはなりません。天井は簡単に汚れをふき取れるような材質にし、床も清掃が簡単で水が溜まったりしないように完全にフラットにします。

クレンリネスの範囲は、従業員の身だしなみ、建物外装、店舗周辺、店舗内装、調理機器などにも及びます。幅が広く、ひとつでも欠ければ台無しになってしまいますので、常にお客様の目で確認していきましょう。

クレンリネスを保つシステム・マニュアルを確立するには、まず使用する洗剤、道具、清掃方法を明確にします。これらのノウハウは洗剤メーカーに聞くと良いでしょう。洗剤を選ぶ際、コストの安さだけでメーカーを選び勝ちですが考えを改めましょう。良い洗剤メーカーは、洗剤を売るのではなく、清掃システムそのものを顧客に教え、システム全体をうまく運用できるように提案してくれるものです。

<2>「S」サービス
 Sとはサービスの頭文字で、文字どおり、サービスを意味します。
飲食業におけるサービスにおいては、料理の提供時間が短いこと、つまりスピードが重視されます。次に、フレンドリーサービス、つまり笑顔が重視されます。

フランス料理や会席料理などの高級業態では、挨拶の仕方、おじぎの角度、テーブルサービスの手順など、儀礼的なサービスも重要になります。しかし、世の中全体のペースが早くなっているため、こうした儀礼的なことよりも、頼んだ料理が早く出てくるかどうか、担当のウエイトレスが笑顔で接客してくれるかどうかなど、より具体的なサービスが重要になってきているのです。

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◎ポイント
サービスの評価は、1に「料理提供時間の短さ」、2に「笑顔」。
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従業員のスマイルを出すポイントは、主に2つあります。

まず物理的に、従業員が楽しく働ける職場を作ることです。具体的には、コミュニケーションと公正な評価、トレーニング。さらに、お店の将来性や環境の良い職場、快適で清潔な休憩室(空調が良く効いていること等)が重視されます。

次に「スマイル」の訓練をしましょう。これはトレーニングでできるようになるものです。顔の筋肉をどうやって笑っているように見せるかなのです。

働くのが楽しい職場づくりに力を入れ、さらに顔の筋肉のトレーニングをする。あとは、自動的にスマイルがでます。楽しく食事をしたお客様から「美味しかったよ、ありがとう!」という一言をもらえれば、その笑顔は本物になるでしょう。

<3>「Q」品質
Qとはクオリティの頭文字で、品質管理を意味します。店舗における品質の管理とは、定められた料理の基準にあった調理を行うことです。

商品の品質を決定するのは、一定量の食材と調味料、調理手順や、調理温度、調理時間、サービス時の温度です。この品質を定量的に計測し、いつも同じ味が出るようにしなければなりません。同じ味を出すためには、調理を科学的に研究し、合理的な調理システムと調理マニュアルを作成し、それを元に徹底的にトレーニングする必要があります。

品質が保たれている状態とは、単に「味がよい」と言うことだけではありません。毎日食べても飽きない味で、いつでも安定した料理を出すことできることです。いわば、「味の再現性」が大事なのです。


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コラム02 メニューは定期的に見直そう
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 お客様はいつも同じメニューを見ていると飽きてしまい、競合店舗に流れてしまう可能性があります。メニューは定期的に見直しを行うことをお勧めします。

■「ABC分析」を行う

毎月、メニューの売上状況を点検し、「ABC分析」を行います。「ABC分析」とはは、提供しているメニューを、売上ごとに売れ筋、中間、死に筋の3つに分類すること。死に筋メニューを廃止して新しいメニューを付け加え、メニューの魅力を増して、固定客の来店頻度を高めようという手法です。
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◎用語解説
ABC分析:売上ごとにメニューを分類し、改廃の基準とする手法。
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■新メニュー開発の方法

新メニュー開発は慎重に行う必要があります。まず、顧客が何を求めているか、どんなメニューを求めているかを明確にしなければいけません。自店の競合店、参考店を普段から決め、定期的に食べに行っておきましょう。この手法を「定点調査法」と言い、マーケットの動向を目と舌で実際に評価するという手法です。重要なのは自店に応用できる参考店舗を決めることで、これを誤ると失敗します。

定点調査の対象にする店舗は、飲食店に限る必要はありません。今、最も食の動向を反映するのは、コンビニエンスストアですから、どんな食品をどんな形で販売しているか常に見ておきましょう。特に低価格メニューを売り物にしている飲食店の場合、価格を含んで注目する必要があります。
対象は、ジャンル別、価格別に選定しましょう。価格帯が違っても参考にならないわけではありません。高級業態の店舗で流行っている商品を、切り口をかえて販売することにより大成功する例も多いのです。

■「デパ地下」がトレンドの最先端

トレンドを把握するために、百貨店の食料品売場(いわゆる「デパ地下」)や食品スーパーの新製品に注目しましょう。特に百貨店の専門店は、顧客のトレンドに敏感ですので、新商品にはしっかり注目するべきです。食品スーパーは、どちらかというと調理済みの冷凍食品などの流行を見るのに役立ちます。どんな傾向の商品が出てきているか、その味付けはどうかを見ておきましょう。

商品開発において注意するべき点は、経営者やシェフの「思いこみ」です。たとえ調理のベテランであっても、シェフが作ったものが必ずしも売れるとは限りません。消費者はいつも食べている、食べ慣れたものを美味しいと感じるものですから、各料理ジャンルの一番売れている冷凍食品、缶詰、レトルト食品の味付けの動向も無視できないものです。

繁盛店の成功メニューも、必ずしも独創的なメニューではなく、自店より高級な繁盛店のメニューに工夫を凝らし、それよりも求めやすい価格ゾーンで提供している場合があります。こうした、周囲の状況をしっかり把握したうえで、イチオシできるメニューを開発しましょう。
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◎ポイント
メニュー開発は、独創性に頼らず、市場動向を踏まえて行う。
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新メニューをつくり、価格を決定し販売を開始した後で、顧客にその評価をしてもらいましょう。必要なら、味・盛りつけ・価格まで含めて見直します。販売後も売上動向をチェックし、もし伸び悩んだり、落ちてくるようであれば、顧客にその理由を尋ね、いつも最高の味を出すことができるように調整を行いましょう。

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コラム03 店舗の宣伝をしよう
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売上アップのための「販売促進」の手法を考えてみましょう。売上を上げるためには広告宣伝が必要なことはご存じですね。ここでは、広告宣伝とは、広告活動と販売促進を意味します。

■お客様は飲食店をどこで知る?

広告の目的は、お客様にお店の業種、業態、特徴、お店の場所を教えることです。広告と言うと雑誌やインターネットなどを使った、お金のかかる方法だと思いがちですが、実はお金をかけないでも効果満点の広告の手段があります。

広告の中には駅内の看板とか、道路沿いに置く野立看板も含まれますが、その中で一番効果があるのが「店舗の存在そのもの」なのです。新店舗開店の際にお客様に「店舗の開店をどうやって知ったのですか?」と尋ねると、平均して50%以上の方が「建設中の店舗を見て知った」と答えます。つまり、店舗そのものが大きな広告宣伝の媒体となるのです。

■「知られている」という思い込みを捨てる

長年飲食店を同じ場所で経営していると、町中の人が知っているのだと思ってしまいます。でも、一生の間一回も引っ越しをしない人はほとんどいません。就学、就職、転勤、転職、結婚など引っ越しの機会はどこにでもあります。皆さんの町にも常に新しい方が引っ越しをしており、その方は皆さんのお店を知りません。また、古くからいる町の人も全員が知っているとは限らないのです。

普段車で通る道を、歩いてみてください。そうすると、「ここにもこんなお店があるのか」と発見があるはずです。最近流行っている飲食店を見ていると思わず外観に見とれ、つい入ってしまいます。外観が目立って思わず入りたくなる店をビジュアル系店舗と言いますが、外観が第一である証拠ともいえます。

■自店の外観を振り返ってみる

では皆さんのお店について、看板の位置や、照明の明るさ、汚れ、などを客観的にじっくり見てみましょう。案外、店舗が目立たないことに気がつくでしょう。道路に面している場合は、数百メートル先からも目立つかどうか、四方から目立つかどうかを冷静な目でみてみましょう。

開店当時は目立った看板も、隣にお店ができれば目立たなくなります。看板を移動したり、のぼりを立てて目立たせたりと、工夫が必要です。これらの工夫は、売上を30%も左右するほど重要なのです。

コラム01でご紹介した「クレンリネス」はどうでしょう。お店の周囲にゴミが落ちていないか、看板・ガラス窓が磨き上げられているか、まだ確認を怠っていませんか?店内の床、壁なども新規開店の状態を保ち、お客様へ新鮮なイメージを保つ努力が必要です。

店舗がきれいであれば、料理はより美味しく感じられるものです。店舗の外観や清潔さが繁盛店への最初のポイントであることを、忘れないよう心がけましょう。「お店自体が最大の宣伝」なのです。

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◎ポイント
自店の外観が、最大の宣伝効果をもつ。
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■広告宣伝の手法

とはいえ、広告宣伝に頼らなければ、新規顧客を獲得できない場合もあります。ここでは、広告宣伝によって店を認識した顧客を、強引に店舗につれてくる手法を見てみましょう。

<1>新規顧客を獲得する方法

新規顧客を獲得するには広範囲にチラシを配布することが有効です。ただし、マンションや住宅街にチラシを配布する際は、なるべくクレームが出ないように心がけましょう。

店の前の通行人に同じチラシを配布するのは有効ですが、配布の際のマナーをしっかり守りましょう。まず、従業員がきちんとした身なりをし、笑顔で声を出して配布することが基本です。また、道路で配布する際には警察の道路使用許可を申請してから配布しなくていけないので注意しましょう。

チラシの配布は月に一回は行うと効果的です。一回で広範囲にまくことはできないので、地図上で地区を決め、毎日一定枚数のチラシを自分たちで宅配する方法をおすすめします。

<2>固定客化

チラシなどで新規顧客が来店したら、固定客になってもらうことを目標とします。
月に一回しか来ない客が、週に1回来てくれる固定客になれば、売上は相当上がります。そのために使用する販売促進ツールが、会員カードやポイントカードです。

◎会員カード/ポイントカード
会員カードにマスをもうけて一定の購入金額ごとにスタンプを押し、一定の数がたまったら、景品や、人気作品と交換するやり方です。

会員カードは単に固定客化するだけでなく、客単価を向上するメリットがあります。たとえば、一人当たりの客単価が5,000円である場合、スタンプあたりの購入金額を5,000円とし、同時に支払金額が1万円を超えた場合、15,000円分のスタンプを押すことにします。

この場合、レジ精算の際、お客様に「10,000円を超えるとポイントが増えてお得ですよ」ときちんと説明すると、次回から購入金額が向上する可能性があり、「おすすめ売り」がしやすくなるのです。

◎ポイントの交換
客単価が5,000円であれば、10回(5万円分)のポイントが貯まった時点で、料理や景品と交換しましょう。特典は売上の7%~15%位の割引になるようにするのが一般的です。割引率が高く感じられるかもしれませんが、一回きりで来なくなったり、紛失したりするので全体での割引率は案外低くなります。

会員カードはすぐに効果が出るわけではありませんが、固定客づくりには効果があります。ぜひ活用しましょう。

<3>費用の余りかからないマーケティング

費用をかけない広告宣伝の手法は、ほかにもあります。

◎お客様の連絡先を集める
まずは、お客様と名刺交換したり、アンケート調査をしたりし、お客様の連絡先リストを作る方法を試しましょう。また、月一回の抽選を行い、食事の招待券や景品が当たるようにし、レジに投書箱を置いて名刺を入れてもらう方法有効です。

お客様によっては、会社や家の住所を書くのを嫌がる方もいます。その場合はノートを用意して、氏名とメールアドレスを記入してもらいましょう。最近はEメールの普及率もあがり、人によってはメールアドレスをいくつか使い分けていますので、住所や電話番号よりも、気楽にメールアドレスを公表してくれる傾向にあります。

◎連絡先リストを活用する
連絡先リストの活用方法として、もっとも単純なものがダイレクトメールです。ただし、ハガキなどによるダイレクトメールは費用が高く手間もかかりますので、宴会シーズン以外はコストパフォーマンスがいいとは言えません。

そこでおすすめするのが、携帯電話向けのダイレクトメールです。携帯電話のEメールは、今や若年層だけでなく、多くの世代に共有して使われているものです。特に20~30才の女性は反応率が高く、低コストながら効果的な販売促進手段となります。自店のパソコンからEメールを配信すれば、ほんのわずかな費用でダイレクトメールを出せる、というわけです。

顧客の習慣の変化にも柔軟に対応し、新しい試みにもぜひ積極的にチャレンジしましょう。

<4>最新のネットマーケティング

最近の飲食店に欠かせない広告宣伝方法が、インターネットです。東京や大阪などの大都市では、大手検索サイトの「ぐるなび」や「食べログ」、「ホットペッパー」などが効果的です。ただし、こうした検索サイトに掲載するだけでは、顧客はつかめません。

魅力のあるお店作り、料理の工夫、コース料理の作成、素材の訴求、新メニューの告知など,毎日自店のWEBページを更新したり、新たなクーポンを掲載したりして、努力を続けないとお客様の目にはなかなか届かないのです。この点、通常の店舗運営と似ているところがあります。

最近は、「ツイッター」や「フェイスブック」などのソーシャル・メディアと呼ばれる交流型WEBサイトも、顧客獲得に役に立つようになっています。中でも、米国で生まれ、ここ2年間で急成長している「フラッシュマーケティング」(クーポン共同購入サイト)という手法には、注目の価値があります。

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◎用語解説
ソーシャル・メディア:
ブログ、SNS(mixiなど)、マイクロブログ(ツイッターtwitterなど」が代表例。インターネットを介した交流を目的とするWEBサービス全般を指す。
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共同購入サイトとは、簡単に言えば、飲食店や、宿泊施設、エステサロンなどの店舗が格安のクーポンを告知し、数量限定で販売するインターネット・サービスです。こうしたサイトでは、共同購入クーポンの発行会社が、一定の地域の店舗と交渉し、割引率と発行枚数を決め、会員に向けてメール配信します。


クーポンの購入希望者が一定数に達した時点で、クーポンの販売が確定し支払いが行われます。会員である消費者は、クーポンの販売を成立させるため、「ツイッター」をはじめとしたソーシャル・メディアに情報を流し、クーポンの知名度を上げます。クーポン発行会社は手数料を得て、クーポンを発行した店舗は集客に成功する、という仕組みです。

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(例)飲食店の場合:
¥4,000のディナーコースを割引率55%の¥1,800で提供。100名様以上の購入で成立など。
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こうしたサイトを通して発行するクーポンの割引率は、50~60%と大変高く、飲食店にとっては赤字となります。ただし、人手を使って大量に配布するクーポンと違い、情報を流すだけで何百人単位の人たちが短時間で購入してくれます。

特に、新規開店の際には知名度を一気に上げる手法として有効でしょう。「ツイッター」などを通して、クチコミとなる場合もありますし、一度来店していただければリピートしてくれる可能性もあります。既存のクーポン媒体に優るとも劣らない、確かな宣伝力があるからこそ、活用されるのです。

こうしたサイトの先駆けが、2008年11月に創業した米国シカゴのグルーポン社(Groupon)が始めたクーポン共同購入サイトで、現在は推定年商3.5億ドルにまで成長しています。手法が注目を集め、経済の有力誌『フォーブス誌』は同社を歴史上のネット企業で最も成長率が高いと評価しています。

このクーポン共同購入は、すでに日本でも導入され、2010年4月の時点で10社が参入、11月末の時点で100社以上が参入しています。9月には本家のグルーポン社が日本の同業他社を買収して進出したほか、「ぐるなび」や「食べログ」、リクルート社なども本格的に取り組んでいます。

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◎共同購入サイト大手
グルーポン http://www.groupon.jp/
ぐるなび×piku http://piku.gnavi.co.jp/
食べログチケット http://r.tabelog.com/ticket/
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ファストフードや低価格業態の企業が、顧客を集めるために自社で行っていたクーポン発行と異なり、こうした共同購入サイトでは、高単価の飲食店や個人店が手間をかけずに発行できるため、高単価店舗に価格破壊を起こす可能性もあります。今後の活用方法、動向に注目しましょう。


https://snet.asahibeer.co.jp/magane/open/column/04/index.psp.html
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コラム04 経理の原則を知ろう
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飲食店経営者は、経費管理の内訳や、損益計算書、損益分岐点など、経理の原則を理解しておかなければなりません。
損益分岐点のシミュレーション用ファイルを用意しましたので、さまざまな計算を試してみましょう。設定条件を入れ替えることにより色々な業態に対応するので試してみてください。
【→シミュレーション用ファイルはこちら】

■シミュレーション用ファイルについて
<1>設定条件
業態:居酒屋/立地:駅前/月間売上額:600万円/店舗面積:17坪として設定しました。

<2>原価率
合計原価率とは各アイテム(売上構成比×原価率)の合計に100を掛けた物です。

<3>元の損益計算書の内訳
1)人件費(パート・アルバイト)
パート・アルバイトの人件費は売上の比率で考えます。ここでは16%として考えます。

2)人件費、社員
社員数は1人。月額50万円に設定。
社員の仕事は多岐に渡り、店舗における接客はもちろん、発注や在庫管理、パート・アルバイトのトレーニング時間等の作業が多く、残業代も多く発生します。必要によって付け加えましょう。

3)広宣販促費
飲食店経営で最も大事なのは、広告宣伝と販売促進です。メニューや、運営方法、立地がいかに優れていても、広告宣伝を行わなければ、新規顧客を獲得できず、売上がじり貧になる可能性もあります。ここでは「変動費」として2%を計上しますが、場合によっては5%まで上げてもよいでしょう。

4)水道光熱費
調理に使用するグリル、フライヤー、ドリンクマシン、などの調理機器はガスを使用し、客席、厨房の照明、空調機器では電気を使用します。飲食店は調理や洗浄、清掃、トイレなどで多量の水を使用するのです。ここでは変動費として5%と考えましょう。

5)修理費
機械の修理、内外装の補修費を売り上げの1%計上しておきます。

6)消耗備品費
 1品10万円以下の什器備品などの購入として2%を計上します。

7)雑費
雑費上記に分類できない種々な経費であり、変動費として3%と計上しておきます。

8)家賃
 坪当たり17000円とします。

9)減価償却費
店舗建設コスト(内外装費)は、坪あたり80万円、厨房・設備のコストを500万円とします

10)金利
年利3%とし(保証金は賃の10ヶ月分)、総投資額に金利(パーセント)をかけます
 
<4>損益分岐点

「損益分岐点」の算出方法を理解しましょう。計算式としては下記のようになります。
損益分岐点=固定費÷(1-変動費/売上高)
詳しく説明していきましょう。

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◎用語解説
損益分岐点:
売上高と諸経費の金額がぴったり一致し、利益も損失も出ない売上高をいう。売上高が損益分岐点を超えると利益が出るが、下回ると損失が出る。損益分岐点売上高に達する売上をもっていないと赤字となり、飲食店の維持は難しくなる。
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まず、お店でかかる経費を、毎月売上に関係なく固定的に発生する「固定費」と、売上に比例して発生する「変動費」に分けます。
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◎用語解説
固定費:家賃、社員の人件費、設備や機器の減価償却費など、毎月決まってかかる費用。
変動費:パート・アルバイトの人件費、広告販促費、水道光熱費、食材原価など、毎月金額が変動する費用。
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次に、固定費と変動費の総比率を計算します。
売上高を100%(1.000)として、変動費の総比率を差し引くと、固定費率が出ます。
固定費の総額を固定比率で割ったものが「損益分岐点(損益分岐点売上高)」となります。

損益分岐点は、「売上高と費用が一致する額」つまり、収入と支出が一致する金額ですので、低ければ低いほど、売上が増えたときの利益高が増え、売上が少なくなっても赤字額が少なくて済みます。

単純な金額として、お店の経営状況を判断できるので、ぜひ細かい経費を足し上げて、正確な判断の基準として用いていきましょう。

<5>損益計算と損益分岐点の注意点

<4>で述べた計算は、各経費の計算を簡単に設定しているため、比較的単純に計算できますが、実際の店舗の損益分岐点を出すには、もう少し複雑な計算が必要です。
原価率の構成ひとつをとっても、メニュー別の細かい原価率、構成比を考えて、きめ細かく見ていく必要があります。また、新メニューの導入による客数や客単価の増減も損益に影響を与えますので注意深くシミュレーションする必要があります。

また、新メニューの導入にあたって新たな厨房機器が必要になると、減価償却費・金利・水道光熱費が上昇しますし、厨房機器が故障すれば修繕費も必要になります。一方で、手間のかかるメニューの比率を下げれば、人件費が減少します。こうして、アクションを起こすたびに経理上の条件も変わるのが、現実の店舗です。

上記の例を参考にしながら、色々な変動要素を織り込んで正確な損益を計算し、シミュレーションを行いましょう。

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