デリ惣菜2号修正(柴田書店MOOK 2010年)

スーパースチーム

惣菜、デリの調理機器としてスチームコンベクションオーブンが普及している。オリジン弁当、おかずの華(吉野家)、若菜(西友)、等の惣菜店ではフライヤーと並んで必要不可欠な調理機器となっている。蒸しもの、焼きもの、煮物、炊飯、再加熱、下ごしらえ、等、万能の機械となっている。総菜工場でもカートごと入れられる大型のスチームコンベクションオーブンが使われている。
スチームコンベクションオーブンは万能の調理機器で便利であるが、青魚等の焼け色がつかない。バッチ式であり連続調理がしにくい、という若干の欠点がある。そこで、スチームコンベクションオーブンのコンビモードで使う過熱蒸気の特性をより強化してスチームコンベクションオーブンの欠点を補おうというスーパースチーム(過熱蒸気調理機器)が近年開発されて注目を浴びている。スーパースチームと何か見てみよう。

(1)スチーマー(蒸気調理機器)の原理と歴史
<蒸気の原理>
日本での食品の調理には煮る、焼く、揚げる、蒸すの4通りがある。その中で、蒸すという調理法は古くからあり、和菓子や、赤飯、芋等を蒸すのに使われていた。中華の点心を蒸すのも同じ方式であった。古くからある調理方法は鍋に湯を沸かしその上にセイロを置くという簡単な蒸し器が多かった。
通常の蒸気というのは95℃~100℃の温度で、気体と液体が混ざった状態の蒸気の事であり、1gの水に対し100Calの熱量を持っている。この蒸気中には気体の水より液体状の水の方が多く、これを湿った蒸気という。従来の蒸し器は乾燥蒸気と湿り気蒸気が混ざった状態にあるのである。これが悪いのではなく、従来の食品にはこの状態の方が食品の表面が乾かず柔らかく仕上がるのという利点があった。
1gの水を1℃上昇させるのに1calの熱量が必要である。しかし、100℃の1gの蒸気(湿った蒸気)を気体の蒸気にするのには539calの大きな熱量が必要になる。この蒸発潜熱が食品を急速に加熱するのである。そのため、通常の蒸気と分けて、100℃以上の蒸気の事をスーパースチーム(過熱蒸気、乾燥蒸気等とも呼ばれる)と呼ぶ。
密閉された庫内にスーパースチームを入れると気化した蒸気のみが存在し、空気は存在しなくなる。そこに100℃以下の食品を入れると、100℃の蒸気のもつカロリー100calの5.39倍の熱量を持ったスーパースチームが食品を取り巻き、その熱量を急速に伝える。通常の空気は断熱材だが、空気が存在しないので、熱の伝達の速度が速くなる。また、高温で加熱しても飽和蒸気であるので食品の水分の蒸発が少ない。しかも、酸素を含む空気がないので、味の劣化が少ないというメリットがある。
眼鏡をつけたまま風呂に入ると瞬間に眼鏡が曇るが、これが蒸気の熱伝導をよく表している。風呂場の蒸気は正確に言うと過熱蒸気ではなく、空気と蒸気の混合状態だ。空気は実は熱伝達が悪く、ダウンジャケットの羽毛が空気を多く含むために、断熱材となる。だから、風呂場の空気が熱を持っていても体に伝わる速度は遅い。しかし、蒸気が存在すると蒸気よりも温度の低い物体に付着し、熱を伝えるので温かく感じる。蒸気の特性は蒸気の温度より低い物体が存在すると、その表面に凝縮する。物体の表面に瞬時に付着し、持っているエネルギーを伝える。風呂場の温度は40度弱だが、外の寒い空気にさらされた眼鏡が風呂場に入ると、目で見て風呂場には蒸気が見えなくても、存在する蒸気が瞬時に蒸気温度よりも低い眼鏡について曇る。鏡も同じで、外気温にさらされた曇っていない鏡を風呂場に持ち込むとあっという間に曇る。しかし、風呂場の外の洗面台の曇り止めはヒーターで鏡を温め、蒸気温度よりも温度を高めにすることで、蒸気の付着を防いでいる。
スーパースチーム調理機はその原理を使って調理をする。庫内にヒーターを設け100℃以上に温度を保つ。通常は200℃以上に設定する。このヒーターの役割は庫内を100℃以上に保つことで、100℃以下の食材を庫内に入れて、過熱蒸気を噴射した時に、過熱蒸気が100℃以下の物体、つまり食材だけに集中して熱伝達をさせる。(この庫内のヒーターが無くて、庫内の温度が100℃以下の場合には、同量の過熱蒸気を投入しても食材だけでなく、庫内のステンレス金属に蒸気が付着し、食材に対する熱伝達の効率が下がる。)
この仕組みがスーパースチーム調理機の調理速度が速い一つの理由となっている。

<蒸気調理機の歴史>
米国では1963年にハンバーガーのM社が白身の魚フライのサンドイッチ発売にあたって、バンズを柔らかく蒸すのに初めて100℃の蒸気を発生するスチーマーを使った。バンズを蒸すのに60秒必要であった。初期のメーカーのスチーマーはトラブルが多く、後に別のメーカーA社のスチーマーに変えている。当時のM社エンジニア・トップはこのスチーマーの開発の後、蒸気による調理に興味を抱き、スクランブルエッグをスーパースチームで瞬時に作り上げる調理機試作等を行った。その後、鉄板と蒸気発生器を組み合わせたエッグ・クッカーなどを作り上げた。A社はM社向けのバンズ・スチーマーの開発後、その技術を応用して、パスタクッカーを作った。現在大手製粉メーカーが日本で販売している。
その後、M社は正確に蒸気コントロールできる食品保温庫のシステムを作り上げた。これは、ミートパティを焼きあげた状態で、精密にコントロールされた蒸気保管庫で保温し、顧客の注文後、そのミートパティを電子レンジで加熱して、素早く出そうというシステムであった。ただ、電子レンジで加熱するということで原材料の劣化の問題を抱え、次の新システムに進化させた。新システムは焼きあげたミートパティや揚げたフライ物を遠赤外線の湿度コントロール可能な保温庫で保温する。そして顧客の注文後にハンバーガーの場合はバンズを高速トースターで焼きあげ(従来は55秒かかったものを7秒に短縮)保温されたミートパティを挟んで素早く提供しようというものであった。
日本でこの新システムを開始する時に問題となったのは日本人に人気の高い魚フライサンドイッチをどのように早く調理するかという問題であった。米国の従来のスチーマーでは時間の短縮が難しかったからだ。米国では魚フライサンドイッチの売上が低いのであまり問題がないが、日本では大きな問題であった。そこで、スーパースチームに注目し、アイロンのメーカーに依頼しスーパースチームを発生するバンズスチーマーを開発させ、7秒という短時間で蒸し上げることを可能にした。これが、日本で初めてのスーパースチームによる調理機器開発であった。

(2)過熱蒸気による調理のメリット スチームコンベクションオーブン
<工場での加工>
筆者は日本マクドナルド社に勤務時代、米国製のスチーマーの性能の良さに感激し、手荷物で日本までもって帰って以来、スチーム機器の開発に関与していた。
1990年にフライドチキンの開発に当たって本格的にスチーム調理の研究を行った。フライドチキンでは圧力フライヤーを使うK社の調理法が最も優れており、その調理法を参考にフライドチキンの開発を行った。11種のスパイスも95%程度解明し、圧力フライヤーの温度カーブも算出できた。しかし、米国マクドナルド社のOKが出なかった。それは生の鳥を店舗で調理する衛生上の懸念であった。専業のK社は良いのだが、マクドナルドのようにアルバイトが色々な食材を調理している厨房では生の鳥がもっている、食中毒の恐れがある菌が他の食材を汚染するからだ。
そこで、工場に大型の圧力フライヤーを設置しフライドチキンを製造し、製造後瞬間冷凍し店舗で再加熱するという方法を開発した。K社の圧力フライヤーの仕組みは大変優れており、低温でありながら沸点を上げて調理することで、肉は柔らかく、しかも骨の部分にまでしっかり火が通るので血と同じ色の髄液が出てきて気持ち悪くなることがない。
しかし、工場の大型圧力フライヤーの問題点はバッチ処理で流れ作業ができないので、大量生産に向かない。大量の油の処理に困る。と言う問題を抱えた。そこで圧力フライヤーを使わないフライドチキンの調理を模索した。そして、見つかったのが、米国の大型蒸気調理機器メーカーであった。鳥をバッターと衣をつけて、軽くフライした後、コンベアーに乗せ蒸気で加熱調理するものであった。蒸気を使うことで、乾燥を防ぎ、まるで圧力フライヤーで揚げたのと同様に柔らかく仕上がる。
<店舗での加工>
次に店舗での再加熱方法を開発した。最初は、宅配ピザで使用するエアー・インピンジメント・オーブン(コンベアー式で上下から高速の熱風を吹き掛けて高速調理する)をテストしたが、ガス式を使用したため、庫内に充満した燃焼空気に含まれる一酸化炭素で鶏肉内部の黒くなった血が酸化還元し、血のように見えてしまうという問題にぶつかり、あきらめた。電子レンジとコンベクションのオーブンの組み合わせもテストしたが、鶏肉が固くなるという問題を抱えた。そこで、燃焼空気の入らないオーブンを全世界から探すことにした。
そこで出会ったのが、当時普及しだしたスチームコンベクションオーブン(以下SCOを省略)だった。
SCOは30年ほど前にドイツ・ラショナル社で考案されたもので、電気加熱タイプが最初に開発された。
SCOとは、COにスチームジェネレーター(以下、蒸気発生器と省略)を付け加えたオーブンであり、3つの機能がある。1つは、COとして、2つ目はスチーマーとして蒸す機能、3つ目は、COとスチームの組み合わせのコンビネーション(スーパースチーム)である。
SCOの最大のメリットはコンビネーションの状態でのスーパースチームを利用した調理である。冷凍食品を調理する時にこの機能の効果が高く、電子レンジよりも大量に冷凍食品を加熱出来るのである。また、高温の蒸気で加熱する為、調理食品が乾燥せず歩留がよい。COの場合歩留は75%位であるがSCOは95%位の歩留である。電子レンジで冷凍の状態から調理したり、再加熱する時に加熱しすぎると、食品が乾燥し固くなると言う欠点があるが、SCOは蒸気で加熱する為乾燥しにくくまた調理時間の許容範囲が広いというメリットを持っている。スチームを使用する為に、違ったものを同時に調理しても臭いが移り難く、調理中の煙の発生が少ない。
もうひとつSCOのメリットは過熱蒸気で調理する際には庫内には蒸気が100%の状態で、空気は存在しないということだ。空気が存在しないということは酸素がないことで、食品の酸化が少ないというメリットをもたらす。
工場で一度調理し、冷凍し、店舗で再加熱することは、食品を2度加熱することで、水分を失い固くなると同時に揚げ物などは油脂の酸化が進み味が悪くなるという問題を抱える。その2つの問題を過熱蒸気が解決してくれたのだった。
<SCOの問題点>
当時筆者が開発していたSCOはイタリア製のガス式のものであった。電気タイプの場合は電気容量が大きすぎて全店舗に入れられないためだった。このイタリア製は蒸気発生器の容量が高く冷凍食品の再加熱には最適だった。しかし、電装品やボディーの耐久力が弱く、米国製の2段式のSCOに切り替えた。
100台の発注の後に気がついたのはイタリア製よりも再加熱能力が低いということだった。ここで気がついたのはSCOの問題点だった。SCOの蒸気発生器はオーブンの加熱能力と同じ能力が備える。100℃以上のコンビネーションモード(過熱蒸気)では、主力がオーブンの加熱能力であり、蒸気は飽和状態を保てばよいので、スチームモードの1/4程度に抑えている。
これは開発されたヨーロッパではフランス料理などのように生の食材を最も美味しく調理できるように開発したため、高温の状態ではあまり蒸気を必要としていなかったからである。
ところが、冷凍食品を再加熱するには蒸気量が致命的に低すぎるのである。電気式の場合には電気容量が大きすぎるので、庫内のヒーターと蒸気発生のヒーターを交互に動かすようにしている。両方同時に稼働させることは電気容量の問題からできないのだ。
幸いにもガス式で開発していたので、あわてて、プログラムを書き換えて、庫内のヒーターと蒸気発生器のヒーターを同時稼働させることに成功し、その問題を乗り切った。
ここで知ったのはSCOの性能の良さと可能性だった。あらゆる食材のテストを行い、その性能の良さを知ったのだった。特に素晴らしいのは複雑な調理をボタン一つで行えるプログラム性能であった。
しかし、欠点も分かった。一般的なSCOのコンビネーションモードでの最高温度は300℃であるが、密閉性を保つために使用するパッキンや金属の劣化のために、250℃で調理するのが一般的である。
そのため、食材に焦げ目をつけるのがあまり得意ではない。ローストビーフのように大きな塊で時間をかける場合には最初に高温のCOモードで焦げをつけ、それからコンビモードで低温で加熱調理をする。しかし、魚、特にサバ、サンマ、等の青魚に焦げ目をつけるのは得意ではない。醤油やお酒等のアミノ酸を塗布して焼く工夫が必要だった。

(3)SCOの苦手な焼きものに強いスーパースチーム調理機器
SCOは蒸気発生器で発生した95~100℃の蒸気をオーブン庫内に入れ、オーブンの熱交換機で温度を上げてスーパースチームにする。SCOは基本的にコンベクションオーブンであり、ファンでスーパースチームを食品の横から吹き付ける。その速度を上げれば焦げがつきやすいのだが、あまり風速を上げると食品の形状により焼けムラができてしまう。図1を参照。これはコンベクションオーブンの基本的な欠点である。ピザの宅配で使う、エアーインピンジメントオーブンは食品の上下から高速の加熱空気を噴射し焦げ目をつける。焼きむらを防ぐためにコンベーアーで食品を動かす。そうするとピザの上下に綺麗な焦げ目がつくのだ。
スーパースチームは蒸気発生器で発生した100℃の蒸気(軽く加圧する場合には100℃以上)をさらに加熱器を通して最高400℃まで上げて、その蒸気を庫内でエアーインピンジメントオーブンのように食材の上下から高温の過熱蒸気を吹き掛けて調理を行う。庫内には補助として上下のヒーターを備えている。このヒーターは庫内を200度以上に保ち、過熱蒸気が冷たい金属に付着しないようにするのと、食品の焦げ目を補う役割を持っている。図2はスーパースチーム発生器の構造。図3がスーパースチーム調理機の構造。
さらに、SCOではスーパースチームの蒸気量や噴射時の温度を調整できないが、スーパースチーム調理機では蒸気量と噴射時の温度を調整でき、かつ、上下からの噴射するスーパースチームの温度と蒸気量の調整ができるので、最適の仕上がり状態を実現できる。
これにより、SCOでは焦げ目のつかない食材に綺麗に焦げ目が付くし、速度も速い。肉や魚だけでなく、トーストも外がパリッとして、中がふんわりと仕上がる。SCOの苦手な青魚、サバの塩焼きも図6~9のように綺麗に焦げ目がつく。図10のようにトーストも綺麗に焦げ目がつく。フレンチトーストを焼きあげると表面がパリと香り良く、中がふんわりと仕上がる。あるベーカリーチェーンがCKのフレンチトーストの調理に導入をしたくらいだ。
惣菜屋や工場での調理をして、弁当などのおかずとして冷めて提供する場合、固くなるのが欠点だ。しかし、スーパースチームで調理した塩サバの歩留まりは90%であり、冷めても柔らかいのだ。この歩留まりと食感の柔らかさが最大のメリットで、惣菜屋の店舗や工場で使うのに最適だろう。
水分の多い野菜をSCOで調理すると火は通るのだが、焼け焦げがつきにくい。しかし、スーパースチームで調理すると水分は保っているが表面に焼け焦げができる。
このスーパースチーム調理機器は店舗などでの調理にも良いのだが、最近は食品工場などでコンベアータイプのスーパースチーム調理機が導入されだしている。ハンバーグや蒲鉾、フレンチトースト、お菓子、等の調理に使われている。ハンバーグの場合歩留まりが大幅に向上し、食感も柔らかくなるメリットがある。
SCOは低温から高温まで色々な調理を出来る万能機であるが、スーパースチーマーはそのSCOの欠点を補う高速焼き機としてのメリットがあるし、特に工場で単品を大量に高速調理するのに最適だろう。図11

(4)スーパースチーム調理機器の応用
筆者は餃子を高速で焼き上げる餃子焼器を開発したことがある。一般的な餃子焼機は200℃~230℃に熱した鉄板に餃子を並べ、蓋を閉めスイッチを押すと水が鉄板に注入され、自動的に焼き上がるようになっている。しかし、水を注入するため鉄板の温度が大幅に下がり時間がかかるし、餃子のうまみが出てしまう欠点がある。そこで、水の代わりに100℃の蒸気を噴射して、餃子を焼き上げる機械を試作した。生餃子は水で調理すると5分かかったが、蒸気で調理すると3分で出来上がった。水を使っていないので、うまみが逃げず、ぷりぷりの餃子であった。欠点は耳の部分がカリッとするのであるが、好みは半々であった。
筆者がテストしたのは通常のSCOの蒸気発生器を使用したので、完全なスーパースチームでなかったが、もし、スーパースチームを使えばより高速にできたのではないかと思っている。
また、この鉄板とスーパースチームを組み合わせた場合、ハンバーガーステーキ、チキンステーキ、等は従来よりも高速でふっくらとする。マクドナルドなどのビーフ100%のハンバーガーパティを高速に焼くには上下の鉄板で挟んで焼き上げるクラムシェルと言う方法がある。しかし、日本のハンバーグのように牛と豚、野菜などを混ぜたハンバーグの場合、かたくなって美味しくないという問題がある。また、上下の鉄板で焼き上げるためにハンバーグの表面がまっ平らでないといけないという加工上の問題もある。
鉄板とスーパースチームを組み合わせた場合、日本のハンバーグをふっくらと焼き上げるには最適なのだ。
また、スーパスチームを通常の蒸気の代わりに使用すればより高速にスープを加熱できる。カップに冷蔵状態のスープを入れ、そこにノズルで高温のスーパースチームを噴射するとあっという間に熱々のスープが出来上がりだ。
その他、飲茶の調理機器としてドーナツチェーンで採用されている。スーパスチームを使った冷凍麺の解凍調理で、従来の蒸気加熱では60秒かかるのを10秒台に短縮した。
高速餃子焼き機のシステムとしては中華料理チェーンで採用されている。これらのチェーンの場合はそれぞれの食材に最適な蒸気量と温度に調整している。

(5)スチームジェネレーター(蒸気発生器)の注意
SCOを使った経験のある方はご存じだろうが、SCOの故障の大半はスチームジェネレーターの詰まりと、電装関係のトラブルだ。水にはカルシウム、マグネシウムなどの硬質分が含まれ、それが加熱され蒸気発生器にたまってしまうのだ。それを防ぐため軟水器を使うのだが、軟水器の設定や交換方法の指導をきちんとしないと蒸気発生器が使えなくなってしまう。工場などでは水の処理として、イオン交換樹脂を使い、時々塩で清掃するという方法を用いるが、小型のSCOは交換式のカートリッジをつかい、ユーザーが交換時期を忘れトラブルが起きるのだ。金属に関しては蒸気発生器内部で蒸気が発生する時にぼこぼこと泡がたつが、この泡が発生する際に音速に近い速度を発生し、金属を削る。水分中に塩素が存在すると音速と塩素分が腐食を加速させる。原子力発電所の冷却水用の配管の腐食と同じ高度な問題なのだ。そのため,SCOに使う金属は特殊な対腐食効果を持ったものを使用しなければならないが、日本の調理機器メーカーはそれらの知識が少ないので問題を引き起こしている。
上記の餃子焼き機のアイディアは大変良かったのだが、テストに使用したスチームコンベクション用の蒸気発生器の使用している金属が悪いためあっという間に亀裂が入り水漏れを起こすという問題を引き起こし、失敗に終わってしまった苦い経験がある。SCOやスーパースチーム調理機器を採用する場合には、スチームジェネレーターの構造とメインテナンスに注意を払うことを忘れないようにしなければならないという経験だった。

(5)スーパースチーム調理研究会のご案内
スーパースチーム調理機器はそれぞれの食材に合った最適の条件に設定するためにカスタムメイドが必要だし、スチームジェネレーターのメインテナンス等にかなりの研究が必要だ。
勉強を希望する方に筆者はスーパースチーム調理研究会を立ち上げて、無料セミナーを行っているので、ご興味のある方は筆者の発行している食のメールマガジンFood104(無料)をご購読いただきたい。

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商品名
図7は
QF-5200C

図8は
QFB-5980C

注。使用した図、機械の写真は(株)直本工業様にご提供いただいた。
食材の写真は王が撮影。

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