キッチンスタディー スチームコンベクションオーブン原理(柴田書店 月刊食堂1993年3月号)

キッチンの能力を高める最新機器の知識

キッチンスタディー第三回

スチームコンベクションオーブン

スチームコンベクションオーブン(以下SCOと省略)を説明する前に、その他のオーブンの種類と特性を見てみよう。
直接加熱型オーブン
<構造>
最も古くからあるタイプで、煉瓦や石などで窯をつくり薪を燃やし内部を暖めそこにパン生地などを入れて焼くタイプである。構造が簡単な為に家庭では薪の代わりに、電気ヒーターまたはガスバーナーで直接加熱するオーブンとして使われている。
<長所>
構造が簡単であり操作がしやすく安価である。
<短所>
内部の空気をかくはんしない為に、温度にムラが出るので目で見ながら位置を変え焼き加減をコントロールする必要がある。
電子レンジ
<構造>
マグネトロンより電磁波を出し食品内部の水の分子を振動させ、その際に発生する摩擦熱を利用し加熱するものである。
<長所>
食品の内部から温まる。比較的コンパクトであり、エネルギーが食品に集中するので小量の調理のスピードは早い。特に保温しておいた食品をちょっと加熱して出すのに優れている。
<短所>
マグネトロンの数や配置によって食品内部の温度ムラが出る。
家庭用の電子レンジはマグネトロンが1個しかついていないので円形の皿を回転させる。業務用はマグネトロンを2個つけるなどしているが、それでも食品の形状、温度、食塩の濃度の差により温度ムラが出る。

大量の食品の調理をすると時間がかかる。電子レンジは冷凍食品の解凍に適していると思われているが、それは大きな誤解である。マグネトロンから出された電磁波は水の分子にはよく吸収されるが、氷には浸透しにくいのである。その為解凍すると部分的なムラが出るので電磁波を断続的に出し、解けた水分のところからゆっくり加熱するようにしている。その為解凍にかなりの時間がかかるのである。

AとBとの組み合わせ
2つ組み合わせてもそれぞれの欠点は消える訳ではないので業務用ではあまり使われない。

強制対流式(コンベクションオーブン)
<構造>
直接加熱型のオーブンの欠点である温度ムラを改善する為に庫内に空気を循環させるフアンを取り付けたもの。電気とガスの両タイプがある。
<長所>
温度ムラが少ないので多量の食品を1度に調理するのに適している。また調理時間も短いので最も一般的に使われている。
<短所>
特に大きな短所はないが食品がドライに仕上がり歩留が悪い。温度伝達の悪い空気を熱の媒体に使用している為フライヤーやグリドルに比べ調理速度が遅い。
コンビネーションレンジ
<構造>
COにマイクロウエーブを組み合わせたものであり、ガス、電気の両方がある。
<長所>
COにより食品の外部から、マイクロウエーブにより内部から加熱し、調理時間を短縮するものである。
<短所>
オーブン庫内の壁に付着したグリースやカーボンにマイクロウエーブが吸収されるので庫内の汚れ具合により調理時間が異なる問題点がある。またマイクロウエーブを発生するマグネトロンの能力は使用時間により減少していくので、常時その能力に合わせて調理時間を調整する必要がある。また注意しないと調理が進みすぎるので使用方法が難しい。
エアーインピンジメントオーブン
<構造>
加熱したジェット空気を食品の上下から噴射することにより、熱境界層を吹き飛ばし、短時間に調理する。コンベアーを使用する事により焼きムラを防ぐ。電気とガスの両タイプがある。
<長所>
特にピザに向いており14インチでも5分で調理出来る。このオーブンが出来た為にドミノのようなピザの宅配のシステムが出来たのである。
<短所>
温風を吹き付けるタイプの為調理出来る食品の表面が乾きドライに仕上がるので、調理可能な品目が限定されるし、特別な加工が必要である。また同時に異なる商品を焼くには時間のコントロールが出来ない為、単品の大量調理に向いている機器といえる。
遠赤外線超高温オーブン
<構造>
遠赤外線式の電気ヒーターで500℃ ~1000℃ に加熱し高速で調理する。普通の電気ヒーターの高温加熱で焼くと内部は冷たいのに外部は焦げてしまうが、遠赤外線が食品の内部に浸透してバランス良く調理する。さらに調理する食品を事前に60℃ から70℃ に暖めて置きそれから高温で急速調理する方式を使う。ピザを焼くのにエアーインピンジメントオーブンだと5分かかるがこの方式だと1分で焼き上がる。
<長所>
ピザを高速で焼くのに適している。電気ヒーターなのでシンプルでコンパクトである。
<短所>
スチーム機能が付いていないので調理出来る食品が限定される。電気式のみでガス式はないので日本では電気容量が足りない。食品に特別の加工が要求される。
スチームコンベクションオーブン
SCOは16年ほど前にヨーロッパで考案されたもので、電気加熱タイプが最初に開発された。オーブンの調理時間を見てみると、COは直火オーブンに比べ1/2、スチーム調理機はCOの1/2、SCOは、更にスチーム調理機の1/2の短時間に調理出来る。つまりSCOは直火型のオーブンに比べ1/8の時間で調理出来るといわれている。従来SCOというと、低温スチーム機能を活用した、真空調理法の一種として理解されていたが本稿ではCOの状態に蒸気を付け加えた高速の調理法と、SCOの構造、特性について説明をしていく。

(SCOの原理)
SCOとは、COにスチームジェネレーター(以下、蒸気発生器と省略)を付け加えたオーブンであり、3つの機能がある。1つは、COとして、2つ目はスチーマーとして蒸す機能、3つ目は、COとスチームの組み合わせのコンビネーション(高温蒸気)である。
SCOの最大のメリットはコンビネーションの状態での高温蒸気を利用した調理である。ここで言う蒸気とは100℃ 以上に加熱された状態の蒸気である。水1ccを加熱し1℃ 温度を上昇させるのに必要な熱エネルギーは1calである。1ccの水を氷にするには80cal,1ccの水を蒸気にし蒸発させるには539cal必要である。つまり蒸気発生には最も熱エネルギーが必要なのである。そして100℃ 以上の状態の蒸気を乾燥蒸気と呼ぶ。

180℃ の温度の状態でコンビネーション加熱をしているオーブンの内部を見ても蒸気は見えないのである。乾燥蒸気は、庫内に100℃ 以下の調理食品が入った時そこに露結し水になる、その時蒸発潜熱の大きなエネルギーが食品に集中して伝わるので調理が早いのである。オーブン庫内のステンレス板は100℃ 以上に加熱されている為、蒸気は露結せずに食品のみに集中して熱が伝わるのである。特に冷凍食品を調理する時にこの機能の効果が高く、電子レンジよりも大量に冷凍食品を加熱出来るのである。また、高温の蒸気で加熱する為、調理食品が乾燥せず歩留がよい。

COの場合歩留は75%位であるがSCOは95%位の歩留である。電子レンジで冷凍の状態から調理したり、再加熱する時に加熱しすぎると、食品が乾燥し固くなると言う欠点があるが、SCOは蒸気で加熱する為乾燥しにくくまた調理時間の許容範囲が広いというメリットを持っている。

スチームを使用する為に、違ったものを同時に調理しても臭いが移り難く、調理中の煙の発生が少ない。普通のCOだと調理後の清掃が大変であるがSCOはアルカリの洗剤を散布しスチームで蒸した後、水スプレーで簡単に洗い流せるので作業が楽であるという事で、スチームを使わないでCOのみで使っているユーザーもいるくらいである。

(SCOの基本構造)
SCOは蒸気発生器と、オーブン庫内、コントロール装置で構成されている。
一般的に蒸気発生器は独立したタイプであり、そこで100℃ に加熱された蒸気を発生し、それをオーブン庫内に導入する。

100℃ の蒸気で蒸す場合は連続での加熱のみとなり、コントロールは時間のみとなる。真空調理などで使用する場合は、40℃ から95℃ の範囲で任意に温度を設定し蒸気発生器のON,OFFで温度をコントロールする。100℃ の蒸気と言ったが、機種により95~103℃ に加熱された蒸気になっている。

100℃以上の蒸気だと蒸す時間が早く且つ蒸気の回りが早いという利点がある。特に、中華饅頭などを蒸した時には表面のべたつきがなくきれいに蒸し上げる事が可能である。

コンベクション加熱の場合はファンにより庫内の空気が吸い込まれそれが熱交換パイプの間を通り加熱され、庫内の食品に吹きつけ加熱する。高温の蒸気とコンベクションでのコンビネーション加熱は、100℃ の温度に加熱された蒸気が、それ以上の温度のオーブン庫内に入り、熱交換パイプの間を通る事により加熱されることにより高温の乾燥蒸気となる。飽和蒸気量は温度が高くなるに従いやや減少していく。その為、機種によっては庫内の温度が上昇すると、蒸気発生量を減少させていくタイプがある。

一般的にスチームのみで加熱している時よりは、コンビネーションで加熱している時の発生蒸気量を減少させている機種が多い。これは、飽和蒸気量以上を投入しても庫内の排気筒から余分な蒸気が逃げていく無駄を防ぐ為でもある。ただし、これは室温や冷蔵状態の食品を調理する時に言える事であり冷凍状態の食品を直接加熱し調理する時には、大量のエネルギーが必要であり理論以上の蒸気が入った方が調理時間が短縮されるという事が近年発見されており、各冷凍食品メーカーで、電子レンジに変わる冷凍食品の大量調理機器として研究されている。

では、SCOの構造を細かく見てみよう。

1)電気式か、ガス式か
電気式の場合コントロールの容易さからメリットはあるが、店舗の電気容量が不足の場合トランスを変更する必要があり、オーブンより高くなる事がある。また、電気式の場合、電気容量の問題で、スチーマーと、オーブンの加熱を交互に行うようになっており、ガス式に比べ、蒸気発生量が少なく、冷凍食品の直接加熱調理には向いていない場合がある。日本の場合電気容量が不足し且つ電気代が高価なのでガス式の開発が望まれていた。
ガス式のSCOは近年に開発されたものであり、技術的な問題から製造メーカーの数は限られているが、電気事情を考えれば今後かなり普及していくものと思われ、数年後にはガス式が90%位のマーケットを占めていくと思われる。ガス式の場合、メーカーにより燃焼効率や、メンテナンス性が大きく異なる。まだ発売したばかりのメーカーが多いので、購入する場合には、信頼性をよくチェックされたい。
2)オーブン庫内の加熱方法
電気式の場合、ファンの周囲にシーズヒーターをコイル上に巻いており、そこを通る空気が加熱されるもので機種による差は少ない。
ガス式の場合はマフラー状パイプの熱交換器の中に燃焼した高温の排気ガスを通し、庫内を加熱する。一般的には、排気ガスはオーブン庫内に入らず外に吐き出される。
100℃ 以上の高温のスチームの状態は完全な気体であり、空気は含まれないのである。その状態の庫内に燃焼空気を入れる事は、断熱材の空気を入れる事であり、効率が落ちるのである。蒸気量を増加して加熱を速くする事は可能であるが熱効率が格段に悪くなる。
SCOは基本的に密閉の加熱状態であるので、蒸気を使用しないオーブンのモードでも食品の内部から出る蒸気で庫内が満たされ、乾燥しにくいというメリットがある。
オーブンの熱効率は30%~75%と機種により差がある。熱交換器のマフラー状パイプの表面積や長さが長い方が熱効率が高くなる。
熱交換器の問題点は、マフラー状パイプの材質と、オーブン庫内への取付方法により、ステンレス板に熱膨張による亀裂が入る事である。パイプが熱により膨張しても上下の壁に歪が出ない形状になっていなければならない。パイプがストレートに近く立ち上がっている場合には、バーナーへの着火が遅れると、オーブン上部より炎の上がる機種もあるので注意されたい。
なお、オーブンの温度はサーモスタットでコントロールされているが、それが壊れた時の為に、加熱防止器が取り付けられている。
SCOは基本的にはコンベクションオーブンであり、オーブンとして使用した時、サイクルの変動によるファンの回転速度の変化やラック位置による焼けムラは発生する。
一般的にファンは電気のサイクルにより回転数が変化する。富士川より西では60サイクル、東では50サイクルの為、ファンの回転数が変わり、庫内の風量が変動し調理品の焼けムラに大きく影響する。
焼けムラの対処としては、ファンモーターを変更する場合もあるが、ファンのサイズや、バッフルの形状の変更で対処する場合が多い。整流効果の高い形状のバッフルを採用している機種はその影響が少ないという特徴がある。
チェーンレストランで全国に店舗を持っている場合には両方のサイクルでのテストが必要である。ユーザーが庫内のラックのサイズを変更すると、形状の変化により風の流れが変わり、焼けムラが発生するのでしてはならない。
ラックの段数は、一般的には厚さが65mmのスチームパンを何枚入れられるかで見る。そのスチームパンの数と蒸気発生器の蒸気発生量のバランスは調理能力を考える上で重要である。また大事なのは焼けムラであり、上下、左右でのバラつきが大きくてはならない。アメリカでは一般的にホテルパン、ハーフサイズベーキングパンの両方を使用しているが、ヨーロッパの場合ホテルパン(GNパン)のみであるので購入の前にそれを確認する必要がある。

チェーンレストランで使用する場合、複数の食品を同時に調理する必要がある場合には、2段重ね出来るSCOが便利である。値段は高くなるが、1台が壊れた時でももう一台で調理出来るので、お客様に迷惑をかけないで済む。また最初の1台を購入した後でレイアウトの変更拡大をしないでもう1台を増設出来るメリットは大きい。

3)蒸気発生器の形状
SCOの性能を大きく左右するのが蒸気発生器の信頼性と、清掃のしやすさである。
一般的にオーブンは壊れる事の少ない機器であるが、SCOの場合この蒸気発生器のトラブルが大きな問題である。蒸気発生器内で水を加熱し蒸気を発生するわけだが、その蒸気の発生の課程で、水分中のカルシウムやマグネシウム等が濃縮され、底や熱交換パイプに沈澱固着し、熱交換の効率を落とすようになる。清掃をしないで置くと、蒸気の発生が少なくなり、センサーにも固着する事により温度コントロールも効かなくなり、交換の必要がでてくる。交換作業は大変でありコストも高い。
また、水分中には殺菌材としての塩素化合物が混入されており、それも濃縮される。塩素化合物成分の高い水が高い温度で加熱されていると、錆びないはずのステンレスも腐食するという問題が発生する。これを防ぐ為には、一定時間使用したら排水する必要があるので、排水出来るようになっているか?、特に自動的に排水されるようになっているか?は、重要な選定の基準である。機種によっては、手動排水であったりするが、人に頼るのは問題がある。
排水する事によって、塩素分の濃縮を防ぐ事は出来るが、カルシウム、マグネシウム等の固着は防ぐ事は出来ない。家庭のやかんは毎日水を捨てているが、1年も使うと、内部に白い硬質分が固着するのを見ても明かである。これを清掃するには、酸性の洗剤で定期的に洗う必要がある。その為には、洗剤を注ぎ込む口が開いている方がよい。特に地方で井戸水や湧水等の硬度の高い水を使用する場合は、かなり慎重に機種を選ぶべきである。メーカーによっては、洗剤の自動注入装置を備えたものがあり、今後の主流となると思われる。一般的には定期的に清掃すれば問題はないのであるが、余り定期的に清掃しない場合、清掃の回数を記録し、清掃が必要になると機械が教えてくれるようになっている機種があり、チェーンレストランなどの不特定の人が使用する場合には良い。
また最悪の場合内部のブラシ清掃が必要になるが、その作業用の穴が充分な大きさで開いていたほうが、修理代は安く上がる。
レストランや、ホテルなどで高原や山間の高度の高い地区で使用する時には、高度が高くなると、水の沸点が下がるので、蒸気発生器の温度を下げて使用しなければならないが、高度の自動調整機能がある方が便利である。水を沸かすのは時間がかかるので一般的には蒸気発生器は85ー95℃ の間で、温度を保つようになっているが、機種によってはその機能を持っていない場合がある。スチームのモードにセットしてスイッチをスタートし何分間で蒸気が排気孔からフルに出てくるかで、その性能がわかるのでチェックされたい。
また朝何分で室温の状態から蒸気が出るようになるかも重要なポイントである。これにより、蒸気発生器の状態が正常かどうかも判断出来る。安全装置として、水位が下がった時にバーナーを止め空炊きを防ぐようになっているか?、水位センサーが壊れた時バックアップの水位センサーがあるか?、それでも空炊きした時、空炊き防止用の温度センサーがついているか?、等は耐久力に影響する。

オーブン庫内に入ったスチームをいつも新鮮に保つ為に庫内の蒸気の流れをコントロールする必要がある。庫内の排水口から古い蒸気は押し流されて出ていくが、この排水口から出てくる蒸気に、水をスプレーし温度を下げ露結させる。そうすると水になりその部分の圧力が落ちさらに、古い蒸気が出てくる。この働きをクエンチングといい重要な機能になっている。
この機能により、庫内の蒸気は常に新鮮であり、食品の臭い移りが少なくなる。また、煙を多く発生させる食品を調理した時でも、煙を取り去る事が出来、焦げ臭くならない。オーブンのドアーを開けた時でも、煙が大量に出る事が防げる。この部分に、水のスプレーの代わりに、ウオーターバスを使用する機種もあるが、基本的に同じ働きである。サーモスタットにより必要な時に水を噴射する場合と、手動で作動させる場合があるが、自動の方が水を節約できよい。このサーモスタットにより更に蒸気の発生量をコントロールする機種もある。
なお、蒸気発生器は基本的に常圧で作動する物であり、もし圧力が発生した時にはそれを逃がす安全バルブがついていなければならない。またオーブン庫内の排気口が食品などで詰まり、庫内の圧力が高くなった時も安全バルブが必要である。
高温でオーブンを使用している時に、蒸気発生器の水位コントロールが壊れると、水が直接蒸気のパイプを伝わりオーブン庫内に入ってきて、高温の熱交換器に触れ急激に気化し内部の圧力が上昇し危険である。その為、蒸気の庫内への出口は熱交換器の部分より低い方が安全である。

電気の場合、1kwの電気は860kcalの熱量を発生し、一般的に熱効率は95%位であるので、機種による蒸気の発生量は電気容量が同じであれば簡単に計算出来る。ガスの場合注意しなければならないのは、熱効率がメーカーにより異なり(30~60%)同じ大きさのSCOであっても蒸気発生量に差があるので実測する必要がある。

4)ドアーガスケット、ラッチの形状 、ドアーの断熱性
SCOと、通常のCOが決定的に異なるのは、SCOは庫内の密閉性が高いという事である。その為ドアーのガスケットの密閉性が不十分だと蒸気が漏れ内部の温度ムラができ調理にばらつきが出る。特にガスケットが一体成形のものが望ましくその材質形状、交換のし易さは大事な選定のポイントである。特に外からみて、蒸気がシュウシュウいって漏れてそれを止められないような機種は問題外である。
ドアーラッチの耐久力も大きな問題であり、弱いと蒸気漏れの原因になる。ドアーラッチは丈夫であれば良い訳ではなく、横の熱膨張にたいしてフレキシブルでないとかえって、ラッチをゆるめる事になる。ドアーを軽く押しただけで閉まるタイプの方が作業性が良い。
またドアーの断熱性は厨房の作業環境に与える影響が強いので考慮にいれる要因でもある。基本的には慣れれば内部を見る必要もないので、ガラスドアーでない方が壊れにくく断熱性も良く安全性も高い。
また日本の厨房は狭いのでドアーが左右にどちらからでも開けるように店舗で交換出来るようになっているのが望ましい。ドアーを開けた時は安全の為、オーブンのヒーターやガス、ファンの回転が止まるようにする為に、ドアースイッチが設けられている。マグネット式のドアースイッチの方が機械式のドアースイッチより耐久力が高いので考慮されたい。
5)コントロールボードの性能
スチームモード、オーブンモード、コンビネーションモードなどを組み合わせてプログラム出来る機種が望まれる。また当初、マニュアルタイプを買っても後でボードのみを買えばステップアップ出来る機種の方が、長く使用する事が出来て購入してから後悔する事がない。
マイコンタイプのコントロールの場合、信頼性と同時に、後の拡張性を考える。そして、故障の自動診断装置やトラブルの表示がついている事も重要である。
庫内の温度コントロールの表示のついている機種の場合その温度の信頼性をチェックする事が必要である。ひどい機種になると±10℃ 以上の差がある時がある。
レストランの場合余り問題はないが、ファーストフードやファミリーレストランの場合オーブンが調理可能温度になっていたり蒸気発生器が蒸気をすぐ発生出来るように余熱が終了しているかどうか、表示された方が便利である。また設定した温度、モードにスタンバイ出来るようになっているかは、すばやく調理をする場合重要である。
SCOは3つの調理モードがあるがそれを組み合わせて調理する場合には、プログラムが組み合わせて自動に調理出来るようになっている機種は調理のマニュアル化が出来て良い。
オーブンに調理する食品の中心温度を計測し、設定の温度になったら終了する芯温センサーがついている機種があるが、便利な反面壊れ易く、小さな形状の食品に向いていない。
以上のようにSCOはまだ新しい調理機器であり、メーカーの機種による性能の差がかなりある。また、従来の厨房機器よりも便利な反面取り扱う人が、充分な知識を持って使用する事が必要であり、調理のみならずメインテナンスも注意しないと、機械の寿命が大きく異なる。次回にはメニューの開発方法と効果的な使用方法を紹介する。

著書 経営参考図書 一覧
TOP