宅配ピザのシステム(柴田書店 月刊食堂1995年2月号)

宅配ビジネスを支える仕組みとノウハウ

デリバリーピザのシステム

<出店する際の基準と商圏の設定について>
トップセールスのピザチェーンの1,200万/月平均を筆頭に、個人営業の店舗においては300万/月とかなりの差があるが、ピザ一枚当りの単価は2000円~2200円とあまり差がない。10インチピザの売上げが全体の70%~80%,14ピザが20%~30%の割合を占めている。
業界の平均的な700万/月の売上の店舗を例にとり、店舗運営を考えてみよう。 店舗の営業時間を午前10時~午後10時の12時間とすると、昼間の注文ピークと夕方の注文ピークの2回のピークタイムがあり、その時間に1日の売上げの約8割(もちろん店舗立地により変化する)を販売する,繁忙時間帯は,昼間の11時30分~1時30分、夕方5時~8時の合計5時間になる。

繁忙時間帯以外は仕込みをし、不要なアルバイトの人数を減らし、人件費をこまめに管理する。さもないと、人件費比率が高く、売上が上がっても、利益が出ない。

月額700万とすると、1月30日で1日の売上は234,000円。ピザ一枚当りの単価 2,000円として約117枚を1日に焼く必要がある。5時間のピークには117枚×0.8=93枚のピザを焼く事になる。土、日、祭日の売上げを平日の2.5倍で計算すると、平日売上げ156,000円。土日祭日は390,000円になる。390,000÷2,000=195枚/1日,ピーク時156枚の計算が成り立つ。これを時間に直すと1時間30枚であるが、繁忙時間の中にも更に忙しい時間があり、倍の1時間60枚のピザ焼成能力が必要になってくる。それに合わせた能力のオーブンが必要である。また、1台のオーブンであると、故障したときの対応が出来ないので、2段重ねにすると余裕も出来、安全である。

<商圏の決め方>
商圏の選定基準は,所帯数以外に,競合店舗数,可処分所得額を加味して検討する。 現在、都内の住宅地域で2キロ圏内の所帯数を出してみると、平均8万世帯、密集地域では10万世帯位になる。これが、郊外に出てゆくと、6万世帯、4万世帯と同じ2キロ圏内でも所帯数に大きな違いが出てくる。但し、都内の住宅密集地域には、競合各社が既に出店しており、5~6店舗が狭い地域でしのぎを削っているのも珍しくない。郊外であれば、特に配達圏の小さな所ならば、競合店舗の出店がなく競争も比較的ゆるやかである。
郊外で配達圏を少し拡大し、所帯数を稼ぐか、都内の密集地に出店し、競合他社と凌ぎを削るか。営業の基本政策により変わる。どのチェーンも配達圏内の所帯数を6万~8万で営業計画を立てている。

<店舗選定基準 >
店舗の売上げの100%をデリバリーで考えるため,一般のフードサービスの店舗選定 基準とは異なる。店舗の大きさは,厨房,事務所含め,20坪位がベストだ。10坪でも店舗は出来るが,事務所,ストックスペースを別に,考える必要がある。
場所は,まず配達の便を考える。国道沿いは,反対方向への配達の場合ロスがでるので さけたほうがよい。しかし交差点の角地は,検討の余地がある。あまり,交通量,人通りの多くない,片側1車線の道路が出発,帰着とも安全で容易である。当然商店街の真ん中の店舗では,人通りが多すぎよくなく,また夕方の買い物通り等で交通規制を行うのが普通でデリバリー店舗には向いていない。また,店舗入り口が,道路より下がり,入り口にバイクを並べることが可能な店舗が望ましく,駐車場を前面に持ってる店舗はなお良い。

以上の条件を満たす店舗が無い場合,30坪~40坪の店舗を取得し,半分をバイクの 基地に摘要する。

<配達圏の決め方。>
一般的に,店舗を中心に,半径約2キロ圏内が,その店舗の商圏と考えられている。こ れは,配達に要する時間を,最大10分で考えているからである。
デリバリー要員は1時間3件,売上げ6,500円以上を稼がなければならない。こうすると人件費を14%以下にできる。配達に30分かかると,1時間に2,200円しか販売できず、人件費は40%と高騰する。1台のバイクの稼動が,5回/時間あれば,かなり生産性が向上する。配達圏は2キロ以内と言われる理由は、バイクで10分で走れる最長距離が2km位であったところから決められた。実際に、店舗の場所から予測の営業時間帯にバイクを走らせ、配達圏を決める。店舗の立地により、同じ10分でも2km走れない場合も有りうるからである。配達圏は決して円形ではなく、配達圏の設定は利益率を大きく左右する事に注意しなければならない。

<デリバリーピザ店舗のオペレーション>
<1>店長の販売管理
電話で注文を受ける
オーダー要員は手慣れてくると、1分ら1分30秒での応対が可能である。これにより 電話の必要台数が決められる
ピザを焼く
お客様へ配達し、代金を決済する
店舗へ入金する
配達,及び集金に関しては、3輪バイクでの配達が最も効率がよい。一部冬場の積雪、 凍結が考えられる地域では、軽4輪を使用する。配達用バイクの台数は、月間700万 円の売上で、一般的に8~12台のバイクを用意しておく。
配達遅延による割引は、売上金の入金時報告に報告させる。オーダーを受けた時間、 焼き上りの時間から、実際にお客様へ配達するのに要する時間を積算し、30分のギ ャランティーで割り引いたことが妥当かどうかの判断を行う。
売上金の管理を行う。
集金に関しては、一定の釣り銭、金種を用意し、ドライバーに管理させる。領収書の用 意も行う。入金は配達伝票ごとに、売上げ金管理を行う。店舗終了後は、受注伝票、ピ ザの製造ラインへの伝票、宅配の配達伝票の照合を行う。
<2>店長の製造管理
ピザの仕込み
デリバリー店舗の中心は,カッティングテーブルの位置であり、店長がそこで、全体を 見ながら指示を出す。
ピザの出来具合、トッピングの種類、量、 焼き具合をチェックする。
配達の順番を指示する。
宅配ピザの店舗のレイアウト図1を元にその必要機器を見てみよう。
<宅配ピザショップの必要機器>
店舗内でのサービスがないため,内装に投資する必要がなく。安価な店舗が作りやすい。ほとんどキッチンだけだ。但し,デリバリーピザ店舗はその営業形態上,通常の店舗と異なり,電話(通常より多い),配達用バイク、車、自転車が必要である。尚,レジスターなどは,店舗内に小麦粉が舞い散るため,隙間から機器内部へ進入した小麦粉が,リレー回路等に付着すると,誤作動を起こすことがよくある。小麦粉などが内部へ進入しないよう十分に防塵措置を講じた機器を選定する必要がある。
以下に,売り上げ700万/月の店舗を例にとり,一般的なピザドゥーの仕込み,トッピングの仕込みを前提に,各機器を選定してみよう。なお、ドウの仕込みを店舗でやる場合を想定して機器を設定した。

オーブン 売上予算により大きさ,台数を検討する。ピザ用オーブンは各種あるが,コンベアタイプのオーブンが一般的だ。調理時間が早く入れた順番にピザが出てくるため,間違いが少なく、時間と温度管理ができ,焼けむらがなくオペレーションが簡単でアルバイトでの調理が安定して行える。6~7分間で焼き上がる。
デッキ式のオーブンは非常においしいピザが焼けるが,庫内でピザのローテーションを行い,焼きむらをなくさなければならず,うまく焼くために技術が要求されので、ピザの専門店で使用される。

コンベアタイプのオーブンは,現在輸入機器2メーカー国産1メーカーの3メーカーがもっともポピュラーである。

リンカーン社インピンジャー2型の2段積み
フジマックのピザ用ジェットオーブン小型の2段積み
ミドルビーマーシャルの小型2段積み
ミキサー
ピザのドゥーは一般的なパン生地より固いため,ミキサーのモーターは余裕があるように50Lまたは,60Lミキサーを使用する。これより下のクラスになると,モーターの力が弱すぎ,モーターが焼き切れる可能性がある。

メーカーは,愛工舎、関東ミキサー、SKミキサー、ホバートなどが,一般的である。

冷蔵庫と冷蔵ショーケース
原材料のストックのほかに,ピザドゥーの冷蔵発酵,ストック用に必要。大きさは,売上予算,問屋の配送体制により変わる。冷蔵庫での保管貯蔵するものは、ピザドゥー(発酵:ストック用)、チーズ(冷凍配送からの解凍:ストック用)、野菜(ストック用)である。一番場所を取るのが,ピザドゥーがもっとも場所をとるので十分な余裕を見る。一般的には、1.5坪のカートインタイプの冷蔵庫が望ましい。冷蔵ショーケースはプレミアムの飲料を冷却するのに使用する。

冷凍庫
ピザのトッピング材料のストック用。これも売上予算,配送体制による。売れ筋メニューによりトッピング材料の使用量が変わってくる。デリバリーピザ店舗にオーダーすることに慣れた人達が多い地区、特に欧米外国人の居住が多い地区では,オーダー枚数は多くなるが,プレーン+トッピング指定が多くなり1枚単価は下がる。不慣れな地区では90%以上がセットメニューになり、1枚単価は上がる。セットメニューでは,満遍なくトッピング材料を組み合わせ,トッピング材料消費の偏りをなくす工夫が可能である。 一般的には2枚扉の業務用リーチインタイプ冷凍庫が使用される。

トッピングテーブル
トッピング材料を効率よくピザにトッピングするため必要で、時間当りのピザの製造数量によりサイズが異なる。テーブルの形状で,かなり作業性が左右される。W1850×D900×H800/1250mmこの間口であれば,少し窮屈だがピーク時には,3人が同時にトッピング作業に並ぶことが出来る。トッピング材料用のホテルパンの数も十分であり,トッピング材料のあまり使用しないものは,下に収納し使用時に取り出すようにする。トッピングテーブルで,ピザソースを塗る場合は,更にソースの分を計算に入れ,W2,100mmになる。

ストック用棚 小麦粉、缶詰類、缶飲料、ペットボトル飲料、ピザのケース等を保管する。
小麦粉の数量は,通常,1袋25kgで計算する,条件により10kgで計算出来ることもある。ソース,トッピングの使用量は,先の一日のピザの販売数量から,割り出し計算する。飲料のストックは,缶飲料のケースは2ダース入り,ペットボトルは1ダース入り,販売政策として,1本サービスで付けるなら,ピザの販売数と同じ数量が,一日の消費量になり,必要ストック量は判断できる。ピザのケースは,箱状に組み立ててストックする,当日使用分と,開いたままでストックする分を計算する。

ワークテーブル
ピザの仕込み,トッピング材料の仕込み,開店中はピザドゥーの伸ばし,整形に使用す る。
ローリングテーブル(ピザの整形用)
ローリングテーブルは,ピザを整形するとき,かなり力がかかるテーブルである,テー ブル面がたわんで,ボコボコ音が出ないよう,補強をしっかりとすること。間口は,2 人が作業出来るよう,1500mmが適当である。

トッピングテーブルで,ピザソースを塗らない場合は,ローリングテーブルを広く取り ,そこでソースを塗る。300mm又は,500mm広げること。

カッティングテーブル(オーブンから出てきたピザのカット用)
カッティングテーブル,カッティングテーブルの位置は,デリバリー店舗の中心位置で あり,通常店長マネージャーがその位置へ入り,全体を見ながら指示を出す。 このテーブルに併設して,配達待ちの出来上がりピザを保温しておくための,保温棚を 用意している場合もある。

ルーティングスタンドは,配達員が,大きな地図で,ルートを確認し更に拡大地図で, 顧客の家を確認するための,テーブルである。下に,売上金の入金BOXを用意し,カ ッティングテーブル側から,入金している様子を確認できるよう前後開放とする。
バックヤードのワークテーブル(ドゥーの仕込み,カット丸め,トッピング材料の仕込 み等)
ワークテーブルは,トッピングの仕込み,ドゥーの仕込みなど多目的に活用する。ドゥ ーの空気抜き,カット丸めなどに使用するため,かなりの重量が,テーブルにはかかる ことになる。毎日の使用で一番消耗の激しい場所になる。

2槽シンク
ピザドゥーを発酵,ストックするため,通常バンジュウが用いられる,1槽はバンジュ ウが入る大きさ。であり,またミキサーのミシングボールが入る深さが必要である 。

湯沸かし器
プルーファー
ピザドゥーを35℃前後で発酵させる機器。

リターダー
発酵したピザドゥーの発酵を押さえピザを保管する機器。

ガスレンジ
トッピングの仕込み,ピザソースの仕込み用

フードプロセッサー
野菜のカット、チーズの細分化用。

電話
小型店舗では,電話3回線が必要である。その他に,2回線事務用,FAX用合計5回 線になる。

事務机と書庫
ロッカー
アルバイトの着替え用

テーブルと椅子
アルバイトの休憩用

トレーニング用VTR
パソコン
洗濯機
<ピザの製造プロシージャー>
10インチのデラックスピザの材料の使用量。14インチピザは約倍の量。
ドウ(生地) 200g~300g
ソース 40cc~60cc
チーズ 100g~130g
オニオン 20g~40g
ピーマン 15g~30g
マッシュルーム 25g~30g
ブラックオリーブ 20g~40g
ペパロニ 12枚~18枚
伊ソーセージ 50g~60g
シュリンプ 40g~50g

ピザドウ
小麦粉 8kg
水 4000cc~4800cc
イースト 120g
塩 80g
砂糖 80g

上記の原材料で、捏ね上がり12kg~13kgになる。ミキシングが終わると,ボールから取り出し発酵させる。一次発酵は,35℃前後のところで、約一時間、最初の大きさから、約2倍になったところで、作業台に取り出し分割、計量丸めを行う。次に10インチ、14インチのドゥーボールに分割丸めを行い、冷蔵庫内部で冷蔵発酵させる。
ドウのミキシングは、小麦粉の温度、ミキシング時間を基に、水温を調整し、出来上がりのドウの温度が発酵に最も適した温度になるようにする。

<広告宣伝>
TVCMを使用し急速にチェーン展開をし、成功しているのは、ピザーラだ。ピザーラの店舗と売り上げの伸びは目を見張るものがある。
90年に店舗数が30店くらいの時にラジオCMを開始したが、効果が低いので、TVCMに切り替え、店舗数が60店舗を越えたときから、CMの効果が出てきた。

その結果94年の4月の日経レストラン誌の「外食チェーンの評価・イメージ店調査」で、宅配ピザ部門の店名認知度の項目で他チェーンを引き離してトップである。

これはひとえにTVCMのおかげだ。その知名度をバックに93年から始まった年間100店舗の開店が可能になった。現在では広告宣伝費に年間20億円使用しているとのことだ。

<販売促進(プロモーション)>
販売促進とは短期的な売り上げ増進や、店舗未利用者の利用を促す活動であり、無料券、試食券、割引券、セットメニュー、プレミアム(景品)等を使用する。
ピザ業界で重要なのはチラシ、メニューのポスティングを計画的に実施することだ。テレビでいくら宣伝しても具体的に地域住民に店舗があることと告知する必要がある。ポスティングは、月1回、出来れば2回行なうべきだ。

<チラシの製作上の注意点>
現在のチラシの単価の平均は1枚10円位である。これはチェーン店舗数が増加し、枚数が多いと6円程度まで下がってくる。デザインを大幅に変更すると版を変更することになりコストが上昇するので、年間の販売促進計画を慎重に立ててデザインする。チラシには季節メニュー、特別メニュー、プレミアムとサイドメニューやフィンガーメニューを告知する。特別メニューなどでバリューを訴え価格をあまり高く見せず、サイドメニューや、フィンガーメニューなどで単価を維持する必要がある。メニューの打ち出し方は、トッピングのバランスを考え無駄がないようにする。
<ポスティングの方法>
大量にチラシをまく場合、新聞の折り込みを使用する。折り込み量は量と媒体により異なるが、10円前後かかる。折り込みの場合一回で大量にまくことが可能だが、効果測定がしにくいという欠点がある。折り込みも2km商圏に一度に実施するのでなく、地域を選んで配布できるのでそれにより、地域ごとの回収を分析する。プレミアムをつけることは、オーダーをするインセンティブとなるが、同時にチラシの効果測定になる。回収した地域、顧客をパソコンのデーターベースにいれ、分析すると次回のポスティングに有効だ。折り込みの欠点はどれだけの精度があるか、はっきりしていないことだ。新聞販売店が折り込みを行うために、実際の販売数より多めの折り込み数を言うことが多く、場合によっては、複数のチラシを一軒に折り込む場合もある。折り込みを実施した後はその精度を確認し次回に生かす必要がある。
また、折り込みだけに頼らず、こまめに自分たちでポスティングし、その回収率を競うのも良い手段だ。1枚あたりのコストは折り込みよりかかるが、折り込みで配布できない地域に浸透することが可能だ。折り込みは基本的に住宅地域に有効だが、都心部の法人の多い地区では効果が落ちる。都心部では自分たちでのポスティングが有効だ。配達をしながら、時間のある時には近所に配布する地道な活動が効果がある。法人の場合、配達とは別に訪問しチラシを手渡すと効果がある。都心部の場合、住民や働く人の移動が多いので、定期的なポスティングは必要不可欠だ。

ポスティングの地域は商圏だけでなく、同一地域の競合店の配布地区を確認しながら設定する慎重さが必要だ。

<プレミアムとサイドメニュー>
プレミアムは缶コーラが多いが、国産の有名ブランドは1本80円とコストが高いので、輸入のPBコーラを使用するチェーンが増加している。また、オレンジジュース、等も輸入のPBを使用するようになった。ただし、輸入のPBの場合、発注量を多くする必要があり、予定通り捌けないと品質の劣化があるので注意が必要だ。プレミアムはポスティングには必要不可欠だが、コストがかかるので競合と比較しながら慎重に設定する必要がある。
<店舗展開と店舗オペレーション>
ピザーラの成功は単にTVCMを投入しただけではなく、それに見合った店舗を集中出店して成功している。店舗展開を直営店舗のみで行うことは投資を考えれば資金確保上難しいはずである。特に年間100店舗を同時に展開することは無理だ。この年間100店舗開店を可能にしたのは、フランチャイズシステムなのだ。フランチャイズ店舗はフランチャイジーの負担で出店する訳であり、本部の金銭的な負担が無いばかりか、フランチャイズ加盟金と保証金を受け取ることが出来るのだ。
ピザーラの店舗展開を見ると、北海道が1、関東が220、中部が20、近畿が5、九州が10と店舗展開を関東に集中していることがわかる。ピザーラがTVCMを集中して流している、東京テレビエリアのカバーしている範囲は、東京、神奈川、埼玉、群馬、栃木、茨城、千葉、静岡の一部、山梨の一部の広範囲のエリアなのだ。ピザーラは全国で261店舗あるがそのうち84%の店舗が東京テレビエリアに集中しており、効率の良いやり方だ。米国のドミノピザは地域フランチャイズの展開と大量のTVCMのサポートで一気に地域一番店になる戦略で、短期間に大チェーンに成った。しかし、日本ではその展開が遅く、ピザーラに先行されているようだ。

<今後の宅配ピザマーケットの方向>
<1>店舗展開の地域
あるチェーン店では、郊外立地よりも競争激化の都心の密集地帯を狙いたいと話している。競合各社が、5~6店舗あっても、まだダントツの売上のナシュナルブランドは形成されていない、今なら競争力は同じであるという判断だ。決め細かいサービスと、広告戦略で十分採算ベースの出店が可能だと判断されているようである。つまり、所帯数が多いほうが広告販売促進効果が高く、採算ベースへ乗せるのが早いと判断しているのだ。
他方、地方でも競合が無いほうが売り上げが高いというメリットがあるので、地方中心に展開するチェーンがある。いずれにせよ、今後のチェーン展開は競争が厳しくなり、チェーンによる体力とノウハウの差が付いてくるのではないかと思われる。

<2>冷凍ドウ等のシステム化
店舗でドウを粉から作るのは品質が良いというメリットはあるのだが、品質が安定しない、生産性が低い等の問題がある。冷凍ドウを使用することにより、店舗の作業は簡素化され、設備投資が低くなると言うメリットがあり、これから他店舗展開をするチェーンにとって必要なシステムである。
しかし、現在はまだ冷凍ドウのメーカーが限られているという問題もありあまり一般的でない。店舗展開は工場の配置により制限されるし、原価が高いという問題もある。冷凍ドウを使用しているのは、ドミノピザ等数社である。ピザハットは店舗でのドウの仕込みから行うという品質にこだわっており、同じ大チェーンでもポリシーが異なっている。

今後冷凍ドウの供給メーカーで増加し全国で購入できるようになると、チェーン展開のスピードが速くなるのではないかと思われる。

<3>複合店舗とメニューの多角化
ピザは平日の昼の売り上げがまだ少ないという問題点から、KFCはピザハットと弁当宅配の菱膳の複合店舗をつくり、売り上げを上げながらも総投資額、人件費、広告宣伝費の削減をはかり利益率向上をねらっている。2つのシステムでも、建物は同じで、店長も一人でよいのだ。宅配弁当の場合昼の宅配が中心になり、夜中心のピザとの相性がよいというメリットがあるわけだ。
また、ワタミ・フード・サービスもお好み焼きの宅配と居酒屋のワタミの商品の複合店舗による効率アップを実施しており、宅配ビジネスの多角化路線として注目されている。

<4>レストランチェーンとの競合激化
ピザの新形態としては、米国で伸びているグルメピザのカリフォルニアピザキッチンのタイプだ。(最近ピザハットに買収されたが)店内では、薪の釜を使用し、野菜のたっぷりはいった健康的なクリスピータイプのピザを、フレンドリーなサービスの元に提供している。値段は高いが宅配のピザとはひと味違う雰囲気を楽しめるので人気を呼んでいる。最近流行のカリフォルニア風イタリアンのチェーン、アジオやスカイラークガーデンズはこれをモデルにしており、急速な展開を考えている。宅配ピザにとって、宅配ピザないでの競合だけではなく、レストランとの競合も考えなければ成らず。新商品開発も盛んになるだろう。
<5>米国の状況
米国の宅配ピザマーケットは大型のピザのディスカウント戦争になっている。その為大型オーブン導入が見られる。その反面サービスをスピードアップするニーズの方も大きいので、熱風とマイクロウエーブを組み合わせたり、熱源としてハロゲンクオーツランプを使用して、2分以内に焼けるオーブンの開発が進められている。ピザハットの創始者フランク・カーニーがその高速ピザオーブンの開発に加わり、新しい宅配ピザチェーンの展開を考えている。
その他、焼成後常温保管し、提供する前にスチームコンベクションオーブン等で、短時間で再加熱する方法、厚手のパンピザを焼成するのには時間がかかりすぎるので、生地を事前に焼いて置く、パーベイクドウ等の手法の導入が検討されている。

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