米国レストランピリ辛情報 「ファーストフードの対抗策」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2003年12月号 NO.446)
アメリカ外食の新潮流Fast-Casualの動向 その5
ファースト・カジュアルに大きな影響を受けたファーストフードの対抗策
9月11日のテロ以降不振の米国外食業界にやっと回復の兆しが見えてきた。ウォール�ストリート�ジャーナル紙によると、過去一年間毎週低下を続けてきた売上は、6月29日の週から5週連続で増加しており、8月には大幅な回復ぶりを示している。その要因は大手チェーン�レストランのマーケティングの強化によるものだ。
大手チェーンのマクドナルド、バーガーキング、KFCなどの大手ファーストフードチェーンは、マーケティング活動を強化する際に、ファースト・カジュアルの台頭を重視した。大手ファーストフード各社はファースト・カジュアル企業に出資したり、子会社にして、そのノウハウをメニュー開発に取り入れだした。(本誌9月号参考)
その結果、米国マクドナルド社10月22日の投資者向けの発表によると、健康志向に対応した新メニューのミール�サイズ�サラダが好調で、アメリカ国内のセールスの低下に歯止めがかかり、第3四半期の売上が12%向上した。
新商品のサラダ成功でホット一息ついたマクドナルド社だが、本当の回復にはほど遠いのが実状だ。コスト削減やサービス提供時間の短縮を目指して、メイド・フォー・ユーと言う食材別の保温保管システムを開発したが、それが品質を低下させ、同時に、ピーク時の提供時間を長くすると言う大問題を抱えてしまったからだ。
マクドナルド社は提供時間が速い、特にドライブスルーの提供時間が速いと言うのが売り物であった。しかし、メイド・フォー・ユーシステムの失敗とQSCに対する管理の甘さが、オペレーションを低下させ、米国ファーストフード業界で最も重要なドライブスルーでの評判を落としてしまった。
QSR Magazine誌は毎年、ファーストフードチェーンのドライブスルーサービスを採点している。調査は4月から6月の売上の安定した時期を選び、ランチタイムの11時から2時半、ディナータイムの4時から7時に計測する。対象企業は25のチェーンだ。調査内容はサービングタイム、正確さ(品忘れ、間違い)、メニューボードの見やすさ、スピーカーの聞きやすさ、等で総合評価する。
総合評価のトップ10位の順位は
1 Chick-fil-A
2 Taco Bell
3 Wendy’s
4 Burger King
5 El Pollo Loco
5 Jack in the Box
7 Taco John’s
8 Arby’s
9 KFC
10 Checkers
11 Whataburger
12 McDonald’s
となっている。
マクドナルドは総合で昨年4位だったのが今年は何と12位まで下落している。その大きな原因は、正確さ(商品の取りそろえ間違い)の評価が19位と大幅に低下してしまったことだ。これは従業員教育に重大な欠陥があったと言うことで、今後大幅なオペレーションの見直しが必要となるだろう。
さて、ドライブスルーサービス総合順位で昨年まではウエンディーズが首位だったが、ウエンディーズ社もやや低下し、総合3位となっているが、平均サービングタイムは117秒で1年前に比べ10秒短縮し、他チェーンよりも30秒速くダントツの首位だ。その成果はドライブスルーの売上が全体の65%を占めるまでになっていることで伺えるだろう。
ウエンディーズ社もファースト・カジュアルで急成長しているバハ・フレッシュを買収しているが、その成績を見てみよう。
ウエンディーズ社の第3四半期は売上が大幅に伸びている。同時期に、直営及びフランチャイズ店舗が138店舗新規開店したからだ。内訳は68店舗のウエンディーズ、56 店舗のティム・ホートン(ドーナツ業態)、14店のバハ・フレッシュ(メキシカンのファースト・カジュアル業態)。ウエンディーズ直営店の第3四半期の既存店売上は0.5% アップ、ウエンディーズフランチャイズ店は0.9%アップだ。新商品のホームスタイル・チキン・ストリップスが好調で売上に貢献した模様だ。
ティム・ホートンはカナダで5.5%アップ、国内で6.8% アップと本体より好調だ。新鮮なコーヒーとメイプル・ピーカン・デニッシュの販売促進を9月に行い、それが大変好調だったからだ。
しかし、肝心のファースト・カジュアル業態のバハ・フレッシュは4.1%の売上減少となっている。そのため、1食当たり10gの脂肪分しかないローカロリーの「ライトン・アップ」メニューを開発するなど懸命だ。
ファーストフードがメニューに健康的なサラダや脂身の少ない鳥などを取り入れることにより、ファースト・カジュアルの優位性がなくなり売上を圧迫しつつあるのだ。
今後、ファーストフードがどのようにファースト・カジュアルのメニューを取り入れ、それが、ファーストフードとファースト・カジュアル業態にどのように影響を与えるか注目しなくてはいけないだろう。