米国レストランピリ辛情報 「ファスト・カジュアル元祖のFuddruckers」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2004年10月号 NO.457)
ファスト・カジュアル元祖のFuddruckersファドラッカースは元気一杯だ
業態開発の天才、Phil Romano フィル・ロマーノ氏が作ったFuddruckersファドラッカースがファスト・カジュアル業態の元祖だ。もう20年以上前に開発したコンセプトだが、まだ色褪せず元気に店舗展開をしている。創業時に訪問してその鮮度感に感激した思い出があり、元祖はどうなったか久しぶりに訪問することにした。観光客が多く1日行列が絶えないディズニーランドの近所のファドラッカースに入ることにした。
1982にフィル・ロマーノ氏の作り上げたファドラッカースのコンセプトは調理工程を全部見せると言うことだ。マクドナルドやバーガーキング、KFCなどのファストフードの厨房は客から見えないようにしている。そのため、客は冷凍食品を電子レンジで温めているだけだろうと思っている。しかも、食品添加物や油脂、塩分、カロリーが多いと言う不信感も抱いている。その不信感を払拭するのがオープンキッチンの目的なのだ。オープンキッチンというと通常はカウンターからキッチンが見えるだけなのだが、ロマーノ氏のコンセプトは360度の角度から見えるようにしようと言うものだ。
黄色い看板がかかっている入り口を入ると、左側にブッチャーがある。肉を塊から挽肉にする工程を見せ、出来上がった巨大なハンバーガーパティをトレイに並べている。ブッチャーの横には畑から取れたてのように新鮮なレタスやトマトが並べられている。入り口右側にはハンバーガー用のバンズをスクラッチで粉から焼いて、焼き立ての香りの良いバンズを並べている。入り口正面にはハンバーガーを焼くキッチンが広がっている。キッチン左手のレジで自分の好きなハンバーガーを注文する。ファドラッカースは肉のサイズは1/3ポンド(148g)から1ポンド(453g)までの大きさを選べる。1ポンドのハンバーガーは約7ドルもする。マクドナルドのように作り置きをしないので注文後、5~10分ほどかかる。ハンバーガーの渡し口からはキッチンでハンバーガーを焼いているのが丸見えなので、どんな風に焼き上げているのかを見ていると飽きが来ない。
出来上がると名前を呼んでくれる。出来上がったハンバーガーにはケチャップや野菜は付いていない。ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、野菜などのコンディメントは、コンディメントバーで好きなだけ選べるのだ。つまり自分好みのハンバーガーを作り上げることができるのだ。
20年前との違いはビーフパティのハンバーガー以外にチキンやポークなどの料理が増えているだけだ。店舗の内装やキッチンの設備はやや老朽化しているものの斬新なコンセプトは健在だ。
食生活の傾向として牛肉消費が減少の一途であったが、昨年以来のアトキンスダイエットという低炭水化物ダイエットの影響で、牛肉消費量が増加に転じている。特にステーキやハンバーガーは人気を回復している。ファドラッカースはファスト・カジュアルの老舗だからそろそろ衰退するのかと思ったら、アトキンスダイエットという追い風が吹いて、惣菜チェーンのクックルーkookooroo と言うwww.kookooroo.com チェーンを買収し、ハンバーガーとローティサリーチキンの複合出店をしようと意欲的だ。今後が注目されるファドラッカースだ。
http://www.fuddruckers.com/
ロマーノ氏の繁盛業態は他に、アメリカ人に大人気のイタリアンの、マカロニグリルと、お惣菜のイーチーズと言うコンセプトだ。10数年前にダラスに開店してHMRという言葉を世界に流行らせたイーチーズのコンセプトはホテルのような大型厨房の中に客を招き入れると言うことだ。入り口は一カ所で、左右にホテルで使う大型のスチームケトルと、粉からスクラッチで作る本格的なベーカリーの大型のオーブンを置いて、まるでホテルの大型キッチンに入り込んだような錯覚をお客に感じさせる。中央には調理済みの惣菜やパーティセット、生ハムチーズ類のショーケースを対面販売するが、顧客の細かい要望に応えられるようにオープンキッチンを置いている。通常は主婦が作るお惣菜をプロの調理人が目の前のオープンキッチンで作り上げるのだ。ピザ、ステーキ、ローティサリチキン、ベイビーバックリブなどを熱々の状態で提供するのが評判を呼んだのだ。http://www.eatzis.com/
もう一つの繁盛業態のカジュアルイタリアン、ロマーノ・マカロニ・グリルは入り口のウエイティングバーのカウンターに座ると目の前でピザ職人がスクラッチでピザ生地をのばし、トッピングをかけているのを見ることができる。正面からピザを作っているのを見せるお店はたくさんあるが、マカロニ・グリルのピザメイクの厨房の正面は奥の客席を向いており、バーカウンターはピザメイク厨房の後ろ側にあるのだ。つまり、ピザメイクの厨房は360度の角度から見ることができるようにしているのだ。ウエイティングバーで赤々と燃えさかる薪釜で焼き上がった美味しそうなピザを出し入れするのを見ていると思わず注文をしてしまう仕組みだ。
http://www.macaronigrill.com/
米国でファスト・カジュアル業態を勉強するにはロマーノ氏の作り上げたこの3業態をじっくり見ることが必要だろう。