米国レストランピリ辛情報 「子会社資産売却」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2006年7月号 NO.478)

子会社資産売却
大手外食企業の子会社及び資産売却の圧力
米国では投資ファンドなどの株主の圧力が外食企業の経営戦略に大きな影響を与えだしている。(2006年3月13日NRN誌)
米国外食企業の大きなトレンドはファスト�カジュアルであり、その勢いを見たファスト�フード大手企業がそのノウハウを吸収するべく、まだ弱体のファスト�カジュアルチェーンを買収することにした。ハンバーガーチェーン業界第3位のウエンディーズは10年ほど前にカナダのティム・ホートンを買収後、2002年6月にファスト・カジュアルのバハ�フレッシュを272ミリオンで買収し現在の295店にまで成長させた。その他、パスタ・ポモドーロ、カフェ�エキスプレス等を続々と買収している。最大手のマクドナルドもそれに遅れないように、ローティサリチキンを売り物にする中食チェーンのボストンマーケットや、メキシコ料理のチポトリなどを買収した。
ところが、株価の低迷するマクドナルド社に対して、投資ファンドは資産の有効活用を要求しだした。子会社の店頭公開と株式の売却、子会社の売却、そして、直営店をフランチャイジーに売却すると言う内容だ。直営店をフランチャイズ店に売却することは同社の財務とオペレーションの観点から容認できない。そこでやむなく、好調であったファスト�カジュアル業態のチポトリを店頭公開することにした。現在500店舗の同社2005年の年商は627ミリオンドルで、利益は前年対比518%の伸びの37.7ミリオンドルと大変好調だ。
2005年1月に店頭公開し株価は22ドルをつけ、マクドナルドは50ミリオンの売却益を得た。Chipotleの発行株式数の69%をまだ所有しているが、2006年末までにすべて売却し、5~6ビリオンドルの売却益を得る。そのお金でマクドナルド社の自社株の購入を行い、株主利益を高める予定だ。直近のニュースではチポトリの株価は63.28ドルと高値をつけており、それに自信を得たマクドナルド社は売り出し価格を61.50ドルに上げている。
2005年には競合のマクドナルド社が好調であるにもかかわらず、ハンバーガー業界第3位のウエンディーズ社はチリビーンズに切断された女性の指が混入するという事件で売上げを大きく低迷させただけでなく、商品開発の遅れなどからさらに売上げを低迷させていた。それに対し同社の株式を取得した複数の個人投資は同社の経営改善を公然と要求し、同社は協議の結果2006年3月に株式を公開し、2006年末までに全株式を売却すると発表した。米国証券取引委員会に提出した目論見書によると店頭公開でウエンディーズ社が取得する株式価値は3.6ビリオンドルとなる。
同社は1964年にカナダのホッケー選手のティム�ホートン氏によって創業されたコーヒーとドーナツのチェーンだ。2005年の売上げは1.5ビリオンドルで利益は191ミリオンドルと好調だ。97%の店舗がフランチャイジー所有で、カナダのファスト�フード・マーケットの23%のシェアーを獲得して、マクドナルドの18%を抜いてトップ企業だ。独走する秘密は、店舗運営がフレキシブルなことだろう。70%の店舗がドライブススルーを併設する通常店舗だが、店舗のうち25%はオフィスビルや空港、病院、大学などの特殊な立地で小型店舗となっている。現在2,885店舗(2006年3月末)を展開しているが、将来はカナダ国内で3,500~4,000店舗を展開する見込みだ。しかし、米国への進出が遅れており、2008年までに500店舗を展開する予定に過ぎず、その可能性は大変高いといえる。
2006年5月31日には個人投資家のネルソン・ペルツ氏がウエンディーズ社の株式の所有株式を発行数の5.7%から6.9%に買い増し、800万株を所有したと発表した。 ぺルツ氏と投資会社はウエンディーズ社がティム・ホートン社を上場させ別会社にすることを強く主張していた。また、子会社のバハ�フレッシュとカフェ・エキスプレス。パスタ・ポモドーロを売却することも要求している。
ファスト・カジュアル業界でファスト�カジュアル業態の定義を作り上げた評判のメキシコ料理のバハ・フレッシュは店舗展開の地域を保守的な中西部や東海岸に広げた結果、売上げの低迷する店舗を抱えるようになり、2002年の買収以来一度も利益を出していないという惨状だ。現在ではウエンディーズ社の重荷となっており、投資家はその部門の売却を迫っているわけだ。
この、ペルツ氏などの投資家の圧力に株式市場は好感を持ち、ウエンディーズ社の株価は2%上昇し59.95ドルになった。過去52週の株価は43.58ドル~ 66.35の間であったから最高価に近づいたといえる。業界筋はウエンディーズ社は子会社の売却と清算の実施後、他企業からのM&Aのターゲットにされると予想している。
以上のように米国の大手ファストフードチェーンが伸び盛りのファスト�カジュアル企業を買収するというトレンドは終わり、各企業は子会社や資産を売却し、本業回帰を行うようになるだろう。

以上

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