米国レストランピリ辛情報 「71# スタバ包囲網 その2」(綜合ユニコム 月刊レジャー産業資料2007年7月号 NO.489)

スターバックス包囲網の動き その2
スターバックスの躍進のために犠牲になったチェーンは数多くいる。その典型的な犠牲者はオー・ボン・パンと言うサンドイッチチェーンだ。1981年3月にボストンに創業、80年から90年代にかけて高級なサンドイッチ�チェーンとして東海岸のニューヨーク、ボストン、シカゴなどに店舗展開した。サンドイッチだけでなく、欧風の濃いブレンドのコーヒーを特別開発のコーヒーマシンで提供するグルメコーヒーも人気を呼んだ。しかし、90年代後半からのスターバックスの攻勢により、大ダメージを受け1999年5月にオー・ボン・パン部門を売却し、会社の名前をパネラ�ブレッドに変更し再出発した。
オー・ボン・パンがスターバックスに敗れた原因は品質と店舗の雰囲気であった。品質ではコストダウンのために巨大な冷凍パン生地の工場を作りそれを店舗に運び焼き上げる仕組みを構築したが、その工場への巨大な投資が財務を悪化させ、更に冷凍生地では高品質なパンを作ることが出来なかった。そこでパネラブレッドの再出発に際して、天然酵母で生地を発酵させ小さな工場を店舗郡のある場所に設け、そこで練り上げた生地を生の状態で毎日店舗に配送することにし、品質面で大きな差別化を成し遂げた。そして、より高所得者層にアッピールするように、焼きたてパンとサンドイッチに加えて、スープ、サラダなどの健康的な商品を加えた。
次にスターバックスのうたい文句であるサードプレイスと言う店舗の雰囲気の改善を行った。スターバックスのように店舗ごとにデザインを変え、ソファーを設置するなどプラスチックの椅子やテーブルを使用するファスト�フードへ差別化をした。顧客がゆっくりくつろげるように平均的な店舗のサイズを150席ほどと言う大型にした。この2つの改善によりパネラ�ブレッドは急成長し、ファスト�カジュアルの中でもトップクラスの評価を得るようになった。
ファスト・フード各社も店舗内外装のイメージ一新に乗り出した。西海岸のハンバーガーチェーンのジャック・イン・ザ・ボックス社は今年度中に200店舗を改装する。改装に際しては大胆でカラフルなグラフィックスを採用し、高級感の溢れる家具を使う予定だ。
ファスト・フード店はどのお店も同じデザインで、原色を使った古臭い内装と安っぽいプラスチックの家具を使用している。照明も単に明るいだけで、店内には販促のポスターが一面に貼られており味気ない。
そこで、新店舗ではより落ち着いた自然な色彩、ソフトな照明、居心地の良い家具、暖かい印象の床や壁、活きた植物、等を取り入れる。
具体的には、ブース席、テーブルの変更に始まり、赤白の企業テーマカラーから自然な色への変更、大胆なグラフィックスの採用、吊り下げ照明の採用、タイルフロアー、地域性に合わせたバックグラウンド音楽、お洒落なメニューボード、黒のTシャツと言うお洒落なユニフォームの採用などだ。また、店内のテレビにはスポーツ番組、ニュース,天気予報などを流す。
内装だけでなく、店舗外装も新鮮なイメージを感じさせるように改装する。
店舗外観の変更点は、豊富な花や植物の庭、整然としたドライブスルーラインで、それらは新しいロゴマークと一体のイメージとなる。現在の2088店舗のうち今年は200店の内外装を改装し、今後5年以内に全店舗の改装を行う予定だ。
5200店舗を展開するダンキンドーナツはフィラデルフィアで、新しいロゴマーク、入り口のネオンサイン、コーヒーとベーカリー商品の訴求、を取り入れた店舗の内装デザインをテスト中だ。
サブウエイ本社は、従来の都市型のお洒落な内装に代えて、ヨーロッパ風な内装に変更することにした。イタリアのトスカーナ地方の内装にする理由は創業者のフレッド・デルーカ氏の出身地だからだ。
KFC社は新しい内外装のパッケージを開発し、それらを2008年までにフランチャイジーが採用することを義務付けている。改装費用は25万ドル~50万ドルだ。
マクドナルド社は2005年の創業50周年に際して、シカゴ郊外オークブルックの旧本社前の店舗を2階建ての近代的な外観にした。店内にはプラズマディスプレーがところ狭しと並べ、一階の通常のカウンターの他に、マックカフェも備えている。店内の床は従来のタイルからカーペットに変更され、椅子も柔らかいソファーに変更。また、インターネットの接続やミーティングスペースも用意している。さらに、ユニフォームも著名なデザイナーを採用して、アルバイトが遊びに行く時にもプライドを持って着用できるような素晴らしい物にすると意気込んでいる。
ファスト�フード各社は味だけでなく、店舗の内外装、雰囲気を向上して、スターバックスへの逆襲を開始した。今後、どうなるか注目しなくてはいけないだろう。

参考資料 2007年3月12日NRN誌

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