2001年の展望と有望業種(商業界 飲食店経営2001年)
1)2001年の課題
低価格とカジュアル化
大手小売業と言えども倒産する厳しい時代となり,外食企業でも倒産やM&Aの荒波にさらされている。昨年も大手小売業カスミストアーの外食部門であったココスがゼンショーと伊藤忠商事に買収されるという事件が起きたし、ダイエー傘下の外食部門のハブも沼津居酒屋チェーンの串特急に買収された。大手の傘下であるとか、歴史があるというチェーンでも倒産したり、買収されるというシビアーな時代になってきた。
未だに景気低迷の影響を大きく受けている外食産業は2局化していると言える。マクドナルドを筆頭とするFFや,ガストが代表するFRは、より一層の低価格路線の必要が出てくる。FFに関してはもはや低価格を逃れる手段はなく,より積極的に海外から低価格原材料の入手をしなくてはいけない。低迷する売上げを上げるために小型店舗を開発し、従来出店できなかった、ショッピングモールや駅などの交通量の多い場所での展開が必要不可欠だ。FRに関しては低価格メニューによる客単価の低下を補う客数増加をしなくてはいけない。従来の生産性の低い調理方法とイートインが中心の経営手法では増大する客数を捌くことができない。高速の自動調理機器やテイクアウトの仕組みを作り上げ、客数の増加を可能にしなくてはいけない。テイクアウトをするには昨年問題になった食中毒への対策を完璧にすることも忘れないようにする。
客単価が2000円以上の課題は、接待から個人需要へのシフトにより、カジュアルで楽しい店造りが必要になる。従来のように何でもあるという個性のない店造りではお客は満足できない。ホテルの名門ホテルオークラでも歴史のあるスターライトラウンジでは、明確な目的を持って来店する客に対応できないと言う理由で、チャイニーズテーブルというカジュアルな中華業態にに変換した。さらに中華料理は1~2人客の少人数では色々な料理を楽しめないと言う欠点を補うために、ランチやコースの組み合わせは10億通りという、徹底した選択制を設け、ホテルの硬いサービスをカバーするために黒服をやめ、オープンキッチンを組み合わせた。
懐石料理も価格の問題と代わり映えのしないコース料理にお客は満足をしなくなっている。今の客は好きな物を好きな分量食べたいのだ、決して従来の伝統的な懐石料理に組み合わせを望んでいるわけではない。懐石料理の世界はアラカルトへの取り組みが必要になってきている。この様に高級業態でもカジュアルで楽しいサービスを求めるようになっている。
2)2001年、期待される(有望)業種業態
FRやFFの業態において中華料理のジャンルは競合が少ない有望なマーケットだ。特にバーミヤンを筆頭とする低価格業態はまだ競争が殆どない現状だ。その理由は中華料理はセントラルキッチンでの集中加工や調理の自動化が難しいためだ。
FRがFFのように低価格戦争に参入するには売上げや客数の増大を可能にする技術面の大災策が必要だ。チャンポンチェーン最大手のリンガーハットはトヨタ自動車の工場管理技術を元に、工場の生産性を向上させ、原材料の一貫生産という低コスト技術を身につけた。その結果チャンポンを380円という低価格で発売することに成功し、大成功を治めた。リンガーハットの次の課題は店舗における調理作業の生産性の向上であり、FFへの脱皮が可能な数少ないチェーンであると言える。
FFで注目されるのは和風の丼チェーンだ。この不景気の中500円玉でお腹がいっぱいになれる、丼物チェーン、カレーライス、定食屋等、まだまだ競合状態が少なく、今後色々な形態が可能だ。これらの和風ワーストフードはまだ、リンガーハットのような技術的な裏付けなしで店舗展開をしているが、今後競合が厳しくなると低価格を実現する技術革新を取り入れる必要が出てくるだろう。
個人店では、チェーンのできない品質を提供できる、回転寿司、焼き肉、ラーメン店がまだまだ有望だ。但し、単に安かろう悪かろうではなく店舗の雰囲気も良いそれらの業態が望まれるようになり、投資競争と言う厳しい側面も出てくる。この業態の寿命は短く3年ほどでアップグレードしないと競合に負けてしまうので顧客の評価に耳を傾けるべきだ。
競争の激化というFFやFRを後目に、カジュアルダイニングというジャンルではより規模の大きいチェーンが出てくるだろう。カジュアルダイニングとは日本の場合居酒屋も含まれる。簡単に言うと食事のバリューだけでなく人と会食をする楽しさを演出できる店舗と言うことだろう。このカテゴリーでは食事の品質だけでなく、サービス、お店のデザイン、雰囲気、清潔さ、と言う店舗のセンス面が強く求められる。現在の客は海外旅行の経験を何回も積み海外の本物のカジュアルレストランを見ている。日本に進出したTGIフライデーやアウトバックステーキハウスが大人気を博しているのもそれを裏書きしているだろう。
但し、このジャンルは顧客の目が肥えているだけ、常に最新の店舗のサービス雰囲気を求められる。昨年は土風炉、えん、ワンダーテーブル、グローバルダイニング、ちゃんとフードサービス、際コーポレーションなどが大人気だが、このジャンルは競合が厳しく、大阪ではバルニバービが元気いっぱいで、今年は東京進出も予定しており、目を離せない業種であると言える。