店舗におけるフォーマルなコミュニケーション
チェーン本部サポート 第10回(商業界 飲食店経営2002年)
評価面談
◆ 評価の目的
勤務評価は重要なコミュニケーションであり、正しく扱えば1体1のミーティングで個々の技術者の勤務状態を改善していくための最高の機会が得られます。この目的はこれまでの勤務状態を評価し、改善できるように指導することによって、今後の仕事ぶりをよくしていこうとするものです。評価は、技術者が自分のレベルを知るのに役立ち、また時給アップの基準ともなります。
◆ 評価はいつ実施するか?
評価は、定期的にまた問題が起こった時や、ある技術者に個人的に注意を払い、誉めたりする必要性が生じた時に実施します。さらに技術者の仕事ぶりのよい傾向を強化するために実施することもできます。昇給ボーナス評価の前には、必ず評価を行うようにしてください。評価は年に3回以上実施することになっています。
注:ワークレビューとは仕事ぶりに関しての非公式な話し合いのことです。評価より細かな頻度で必要に応じて実施し、仕事ぶりに関してアドバイスを与えるためのものです。
◆ 基準の設定
技術者の評価を行う場合は、前もって公平な勤務状態の基準を設定しておかなくてはなりません。それには、評価するカテゴリー(勤務状態、信頼性、態度、アピアランス、仕事内容、技術レベル.)を取り出し、評価の各レベルにおいて、どのようなことが期待されているかを定義しておきます。
<勤務状態>
勤務状態を評価する時には、次のことを考慮してください。
- 技術者の仕事が、マニュアルや基準通りに行われているか。
<信頼性>
信頼性を評価する時には以下の点について考慮してください。
- 欠勤
- スケジュールへの貢献度
- 仕事の完成度
- 時間を守ること(遅刻、その他)
- 店長がフォローアップしなくてはならない量
<態度>
態度を評価する時には以下の点について考慮してください。
- 与えられた仕事をどれだけ積極的に実施するか。
- 他の技術者と一緒に仕事をする能力(協調性)
- お客様に対する丁寧さ
- 他の技術者や店長に対する丁寧さ
<アピアランス>
アピアランスを評価する時には以下の点について考慮してください。
- 技術者ユニフォームの着用
- 技術者ユニフォームはきちんとしているか
- 身だしなみ
- 衛生面
- くせ
- 仲間に及ぼす影響
- お客様に及ぼす影響
<技術>
技術を評価する時には以下のことを考慮してください。
- できることが証明されている技術の数と、経験の長さ
◆ 総合評価
これは技術者の勤務状態の全体的な評価で、これに基づいて昇給額が決められます。大部分の店舗はそれぞれの評価の項目の平均を出して総合評価を決定しています。店長によっては、特定の項目に重きを置いているかもしれませんが、その場合は評価する全ての技術者に対してそのような処置をとるようにしてください。
<標準的な総合評価システムのランク>
- 5=優れている
- 4=良い
- 3=普通良い
- 2=改善が必要
- 1=不満足
◆ 技術者評価の流れ
- 勤務状態の長所と短所を知る
評価の実施にあたっては、まずこれまでに見た状況で、その技術者の仕事ぶりの程度を示していると思われることを考えてみます。マニュアルは、この作業を行うのに役立つものです。改善すべき点についての具体的なプランに関して話し合いができるようにしておいてください。 - 問題点の原因を判断する
勤務状態を改善する計画が効果を上げるようにするには、短所になっていることの原因を取り除くことに焦点を合わせなくてはなりません。原因を判断する時には、必ず技術者も交えるようにしてください。問題点の原因を考える際には、以下の点について考えてみたり、技術者に聞いてみたりするとよいでしょう。
- その技術者は基準を知っているか? 知らない場合は説明する。
- 技術者は自分の仕事ぶりのレベルを理解しているか? 理解していない場合は教える。
- その状況に障害はないか? ある場合は障害をなくす。
- 技術者には知識と技術があるか? ない場合はトレーニングする。
- 技術者はその仕事に積極的に取り組んでいるか? そうでない場合はモーティベーションを与える。
技術者には反応する機会を与えてください。よいコミュニケーションは必ずツーウェイです。店長が一方的に話していると、技術者は話を聞かなくなってしまいます。評価の最終的な目的は、双方が力を入れて勤務状態を改善することなので、聞き上手になることがきわめて大切です。この章のカウンセリングの6ステップの3つ目「相手の話を聞く」のところを参照してください。
- 何が最もモーティベーションとなるか判断する
人によってモーティベーションとなるものは異なります。金銭、誉め言葉、仕事をより多く与える、仕事にバラエティを持たせる、自主性をこれまで以上に持たせることなど、いろいろ考えられます。その人のモーティベーションとなるのは何かを捜す時には、常に心を開いているという事が大切です。技術者があなた自身と同じものでモーティベートされるとは思わないでください。ひとりひとりを見て、その人の好き嫌いを考えてください。その人は、どのような時によい仕事をし、どのような時にはそうでないでしょうか。その技術者にとってモーティベーションとなるものがわかったら、その人の仕事を調整して、それを与えるようにしてください。例えば、ある技術者は自主性を与えられると大いにやる気を出すというのであれば、成果が得られ基準が満たされる限り、ほとんど介入せずにひとつのエリア、仕事を任せてください。 - アクションに関して合意を得る
仕事ぶりの短所を改善することについて話し合う時には、技術者にどうしたらよいと思うかも必ず聞いてください。技術者の意見はよく聞き、最終的なプランに一部でもそれを反映するようにしてください。技術者の意見が反映されていれば、それだけそのアクションプランの成功する可能性は大きくなります。
◆ 過大評価/過小評価を避ける
技術者全体の評価を行う度に全体としてどのような評価をしているか見てみると、自分が過大評価や過小評価をしていないかがわかります。店舗全体の評価が”良い”の場合は、”良い”の割合が最も大きくなくてはなりません。同様に店舗の評価が”優れている”の場合は、”優れている”が最も多くなくてはなりません。これに関しては絶対的なガイドラインがあるわけではないので、バランスを決めるには常識を働かせてください。店の評価は”優れている”なのに”優れている”の評価を受けている者はなく、”よい”の評価も数人にしか与えられていない場合は、技術者を過小評価しているといえるでしょう。逆に店の評価は低いのに、技術者の評価は”優れている”や”良い”ばかりだとすると、過大評価しているのかもしれません。
◆ 時給の決定
<公正な時給プログラムの確率>
時給の決定には、評価プログラムで判断された総合評価に基づいて昇給額を決めるという公正な方法を確立しなくてはなりません。定期的に行う時給評価は、正しく実施すると効果的なモーティベーションツールとなります。時給評価は技術者に仕事に誇りを持たせるのに役立つばかりでなく、より高いレベルの仕事を行うようにするためのものでもあります。
<時給評価実施前に行うべき事>
昇給額を決定する前に行っておかなくてはならないことが4つあります。
- 昇給額は評価に基づいて決定する。
- タイトルごとに最高時給を決めておく。
- 時給評価のスケジュールを立てる。
- 時給評価の実施日と最高時給を事前に公表する。
各総合評価の昇給基準は過去の評価と時給評価結果を調べて、上司と相談して決定してください。評価の平均よりは勤務評価の傾向の方が重要かもしれません。
<総合評価とタイトルごとの最高時給の決定>
最低時給と最高時給は、個々の状況により異なります。以下の点について十分考慮してください。
- 都道府県の最低賃金:最低賃金は絶対支払わなくてはならない。
- 店舗の予算
- 技術者リ技術者トの難易度
- 競合店との兼ね合い
次のページの表は時給の範囲を示した参考例です。このような範囲があると、それぞれのレベルに見合う時給を払うことができます。”Outstanding”の評価を受けていない技術者は勤務態度を改善しようとするようになります。またこのような方法をとっていると技術者の時給は勤務年数でなく、勤務状態によって決まることになります。
また、最高時給が決めてあると、平均時給をコントロールしやすくなります。
技術者がそのタイトル、評価における最高時給に達した場合、評価はそれまで通り年に3回実施しますが、時給評価は年1回になります。
また、タイトルアップしたり、総合評価が変わったりしたために技術者の時給がそのタイトル、評価における最高時給を超える場合も、同様に時給評価は年1回になります。この場合、以下の点に注意しなくてはなりません。
- 昇給は規定金額どおりに行う。
- 技術者のその時の時給や総合評価にかかわらず、上限に合わせるために時給を減らしてはいけない。
- 時給が上限を超えたからといって、技術者を解雇することはできない。
尚、最高時給を超える場合については、スーパーバイザー、またはオーナーオペレーターの承認を得なくてはなりません。
時給評価が年1回になってから行われたその後の評価で、タイトルアップしたり評価がよくなったりしたために、それまでの時給が最高時給よりも低くなると、再び時給評価は通常どおり年3回実施されることになります。
◆ タイトルごとの給与の範囲(例)
タイトル | 最低賃金 | 最高賃金 | 評価 |
このシリーズで書いてある内容はあくまでも筆者の個人的な経験から書いたものであり、実際の各チェーン店の内容や、マニュアル、システムを正確に述べた物ではありません。また、筆者の個人的な記憶を元に書いておりますので事実とは異なる場合があることをご了承下さい。