AV店の経営手法 第7回「アルバイトの評価」(エーブイデータ出版 AVデータ)
アルバイトの評価
従業員のやる気を引き出すには良い仕事をしたら誉めてやる、仕事の内容が不適正であったらトレーニングが必要なのか、やる気がないのか、従業員同士の人間関係の問題なのかを適正に判断し、それを従業員に正しく伝えるという評価が経営者の最も重要な仕事だ。
金儲けは旨いが人の使い方が下手だという経営者が多く、1店舗の管理は出来るが、複数店舗の管理が出来ないと言う悩みを抱えている経営者が多い。その最大の理由は評価が出来ないと言うことのようだ。AV店の経営者は元々小さな商売をやっていたり、脱サラをしたが、会社勤務時には会社の人事部に全ての評価をやってもらっていてとかで、人の評価方法を知らないと言う例が多い。そのため、評価というとテストなどでやる物であり、実際の仕事の成果とは異なるという例が多くなる。
人事評価を具体的にやると、評価の際に今後どんな教育をしなければいけないかが、具体的に明らかになり、問題点の解決につながっていく。人事評価は人材教育と表裏一体であり、別々に切り放すことはできない。評価を具体的にすることは、人材教育の方法を明確にすることになる。
[評価システム]
評価方法には二つの手法がある。
職務基準が決まっている場合。
店舗の社員やアルバイトのように仕事の内容が明確に決まっており、他店の勤務でも同じタイトルであれば仕事内容が同じという場合は,この職務基準に則って定型的な評価を行える。職務基準というと難しく考えがちだが、簡単に言うと仕事の内容だ。仕事の内容は7つに分けられる。まず、Q、S、Cが会社の定める基準通りに達成されているかどうか。この3ポイントはお客の立場から見たその店の評価ということになる。次に会社から見るポイントとして挙げられるのが、人、物、金、の3点の管理だ。
人とは、人材の教育を正しく行っているか、部下の評価が正しくできているかということである。物については、建物や食材の管理、保全がきちんとできているかなどが評価の対象となる。そして、売上を上げているか、利益を出しているか、経費のコントロールができているかなどが、金についての評価となる。最後のひとつは、本人が正しく自己管理し、自己育成にどれだけ努力しているかという点だ。
現場の評価は、この7点でできるはずであり、これは社員もアルバイトも全て同じであり、複雑に考える必要はない。ただし、それぞれのポイントで求めるものは違っていなければならない。店長に求めるときのQは総合的な品質である。それに対してたとえばアルバイトだったら、任されたセクションにおける品質ということになる。
アルバイトにはQSCを任せられるが、人物金の管理を任せることはできないと思われるかも知れないが、業務をブレークダウンすることによりそれは可能になる。
金の管理を例に考えてみよう。守りの管理で考えるとレジを扱った際の現金差は重要である。お金の授受の際、必ず復唱をしているか、金銭を必ず2回数え直しをしているか、多額の釣り銭の場合は社員に確認をしているか、など具体的に評価できる。積極的な管理では、レジの精算の際に新商品のおすすめを出来れば、それは立派な売り上げ促進の管理になる。
閉店時には看板や不要な電気をすぐに消しているか、商品の在庫管理をきちんと行い売れ筋をきちんと発注しているかなどは利益に直結する金の管理で、それをアルバイトが管理してくれなくては、本当のコスト削減にならない。コストダウンは社員だけの仕事ではない。
しかしながら、従業員の行動を普段から、よく観察しないと評価はできない。具体的な評価ができるということは、従業員の仕事ぶりをよく把握していることでもある。社員がアルバイトの評価を具体的にできるかどうかというのは、彼らがよく店舗の従業員の仕事を把握し、管理、教育しているかの判断の材料にもなるのだ。
評価表のサンプルの表1を参考にしていただきたい。
定型的な業務以外の仕事が多い場合
事務所の従業員のように経理や、総務など担当により仕事が異なったり、担当者の能力の差により仕事の内容が異なる場合に評価が難しいと感じる場合が多い。
この場合に使う評価の手法が目標管理制度だ。各人にそれぞれの仕事の分野で達成しなければいけない目標を立てさせて、その達成度を評価するという物だ。目標を立てる段階で従業員が何をしなければいけないかが明確になるので自主的な改善につながる良い手法だ。
ただし、目標を立てる際に経営者と従業員でその内容を話し合い、評価基準を明確にしておかないと、目標の基準が甘かったり、難しい達成不可能な目標を立てると,同じ仕事の達成度なのに評価が大幅に変わるという問題を抱える。そのために本人の能力、熟練度、教育度合い、過去の実績を見ながら具体的な目標を経営者と従業員でディスカッションし、納得して作成する必要があるだろう。目標を作る際には目標評価期間内の会社や、店舗、事務所などの予定を見ながら達成可能な量やレベルなのかをしっかり考えて行わなければいけない。そうしないといくら本人の能力があっても会社のスケジュール上それを行うことが出来ない場合には目標を達成することが不可能になるからだ。
日本では目標達成制度というとあまりに高すぎて達成不可能な場合が多い。しかし、達成しないと自信を失い,同時にやる気もなくしてしまう。本人の能力の数%高い目標を定め、少しずつ仕事の能力が上がるようにすると,やる気が増し段々と能力が増えるはずだ。
勿論,目標管理制度といっても会社の目標とあまりにかけ離れてはいけないので、少なくともQSC、人物金、個人目標という大枠は決めておくという必要はあるだろう。
[評価の伝え方と成果の出し方]
評価基準を作ったら次に、それを部下に正しく伝え、やる気をだすことが重要である。評価をどうやって部下に伝えたら良いのだろうか。
評価はアルバイトに対しては社員が、社員に対しては経営者、というように直属の上司が伝えることになるのだが、往々にして一方通行の伝え方になりやすい。
社員がアルバイトに伝える評価日を決めて、それに経営者が参加しその進め方を時々見るとよい。その目的は社員がどの位アルバイトの仕事を把握し、フォローアップをしているのかを見ることである。
さらに、社員のその店舗に対する評価と方向付けが明確であるか、経営者の方針と一致しているかも見る必要がある。
[評価の際の注意点]
評価を定期的に行いそれを本人に伝えているか?
評価の基準は明確になっており、事前に本人に評価基準の説明をしているか?
評価は文書になっており、全員同じ評価基準に基づいて評価されているか?
評価をする際には、本人に伝えるだけでなく、本人の意見も聞いているか?
目標管理を達成できるようにスケジュールをしているか?
今月の評価が悪ければ次回までに改善できるような教育を実施しているか?
評価はくつろいだ雰囲気で個人的に実施されているか?
評価を改善させてやるという気持ちが上司から部下に伝わっているか?
上司の中間管理職と経営者が定期的に評価に参加し、部下の評価が公平に行われているか見ているか?
[経営者の店舗訪問と評価への関与]
経営者は具体的に部下を評価しなければいけないが、店舗を一人で訪問して評価してはならない。勿論、抜き打ちに視察するのはかまわないが、その視察の状況で勝手に評価をしてはならない。必ず現場の責任者である社員と共に現場を視察し、彼らがどの様に店舗を運営しているかを見るのだ。もし経営者が中間管理職を通り越して評価するようになると、アルバイトは社員のいうことを聞かずに、経営者の方ばかり見るようになる。経営者が見なくてはならないのは、店舗そのものでなく、システムがどの様に動いているか、自分の部下である社員がどの様に仕事をしているか?なのである。
では以下に具体的な評価の手法を見てみよう。
[正しい評価の手法]
正しい評価に当たっての計画と準備
評価は定期的に行う
オリエンテーション時に評価をどんな方法でどの時期に行うかを伝えておく。評価表のフォームは何時も同じものを使用し、評価基準を明確にしておく。
自己評価
評価を行う前に従業員に同じ評価表で自己評価をしてもらう。評価は一方的に伝えるものでないからだ。
評価の前に資料を集める
本人の直属の上司などから仕事ぶりを聞いておく。
従業員の過去の評価の流れに目を通す
遅刻、無断欠勤、賞罰等の過去の記録に目を通しておく。ただし評価対象期間内のみとする。
前回の目標と職務基準に基づいて、事前に評価表に記入
職務基準書に基づき具体的に評価していく。また、自分の能力を向上するために目標を持って仕事をさせるわけだが、前回にたてた目標の進行状況も評価の対象とする。
次回の目標と基準をたてる
次回の評価を向上させるために、評価の結果からどう具体的に改善していくか、目標を定めておく。
今回の評価の結果に昇進させるのか、昇給はいくらか、ボーナスはいくらかなどを具体的に決めておく。
評価は必ず、昇進や、昇給などの具体的にわかる形で与えることにより、次回より頑張るようになる。
評価の席上での注意点
[評価の席上で陥りやすい失敗を避けるために]
性格を評価するのではなく、仕事を評価する。
仕事を具体的に見ていないと、評価を旨く伝えることが出来ないので、相手の個人的な性格を評価し、傷つけるから注意しなければならない。
好き嫌いで評価してはいけない。
個人的な好き嫌いを判断基準に入れてはいけない。
甘すぎてはいけない。
評価が甘すぎてはいけない。客観的で、公平に行うこと。
職位を評価してはいけない。
仕事の内容を評価するのであって、職位そのものを評価してはいけない。
個人的な感覚で評価してはならない
具体的に仕事を見て評価する。
評価中は専念できるように、電話、他人の面会はしない。
ハロー効果に注意
最近見た従業員の一カ所の良し悪しで全体を評価してはいけない。評価項目の全体で、期間内どうだったかを評価する。
[効果的な評価のステップの行い方は]
評価を開始するに当たって授業員の緊張を解き評価をスムーズに行えるようにする。
評価のやり方の説明
どんな方法で行うかを説明することにより、不安を感じることがなくなる。
自己評価
まず、自己評価をさせる。大抵の従業員は自分の仕事ぶりを冷静に客観的に評価している。本人が改善が必要であると自覚している項目を再度しつこく評価する必要はない。本人の評価と、こちらの評価が大きく異なる箇所に時間を割いて説明をすればよい。評価の目的は、会社がどのような視点で従業員を見ているかを理解させ、次回から自主的に改善、勉強させることにある。決して従業員の欠点を追求するのではないことを理解しておく。
仕事上の評価を伝える。
相手の評価を聞いた後、納得できる点はその旨伝え、同意できない点を具体的に、事例をあげて説明する。
次回の評価までの目標をたてる
本人と具体的にどうやって仕事の内容を向上させるかを考え、具体的な目標を立てる。
内容の再確認
今まで話した内容を確認する。
評価会議をポジティブに終わらせる
期間中の仕事の頑張りに感謝し、次回もっと良い成果を出せるように持っていく。
評価会議後のフォローアップ
評価会議終了前に評価表に従業員のサインをもらう。
評価を伝えたことを記録に残しておくため本人の確認サインをもらう。もし本人の評価が連続して満足できないときには退職をしてもらうことがある。その際に、過去に定期的な評価やトレーニングを行っていたことを証明する必要があるからだ。
評価会議の進行具合を自己評価する。
相手に正確に伝わったか?やる気を出させることに成功したか?自分は話しすぎなかったか等を自己評価し、次回の評価に生かす。
評価会議後のフォローアップ
評価の後放置していては毎回同じ事を指摘しなければならない。評価でわかった必要な教育訓練や本人の次回までの目標に沿って、オンザジョブトレーニングや集合トレーニングを実施する。
インフォーマルなフォローアップ
トレーニングだけでなく、時々お茶を飲んだり雑談をしながらフォローアップをすることにより、トレーニングを効果的にすることが可能になる。個人的な悩みがあれば解決してあげることも可能だ。
[表1]
評価表 アルバイト用
項目 基準 評価
Q
(品質) 商品の説明が出来るか 5 4 3 2 1
お客の好みの商品を理解できるか 5 4 3 2 1
売れ筋と、死に筋を把握しているか 5 4 3 2 1
S
(サービス) 決められた時間内でサービスしているか。 5 4 3 2 1
お客様の前で笑顔が十分にでるか。 5 4 3 2 1
お客様の苦情をすぐにマネージャーに伝えているか。 5 4 3 2 1
C
(クレンリネス) ゴミが落ちていないように何時も気を配っている 5 4 3 2 1
汚れたらすぐに清掃しているか。 5 4 3 2 1
洗剤、清掃用具を正しく使用できるか。 5 4 3 2 1
人材管理 新人のアルバイトを教えられるか。 5 4 3 2 1
仕事の基準を明確に知っており相手に伝えられるか。 5 4 3 2 1
新人の見本となれるか。 5 4 3 2 1
物の管理 店舗の設備、建物、機械を丁寧に扱っているか。 5 4 3 2 1
エアコンの温度の調整やFAXの使い方を知っているか 5 4 3 2 1
商品の正しい陳列を実施できるか。 5 4 3 2 1
金の管理 レジで現金を扱ったときの現金差は基準以内か。 5 4 3 2 1
注文を受けたときにお勧め売りを必ず実施しているか。 5 4 3 2 1
友人に只で商品を提供するなどの不正行為をしないか。 5 4 3 2 1
自己管理 時間は正確で遅刻、欠勤の際には必ず連絡しているか。 5 4 3 2 1
身だしなみはきちんとしており、清潔か。 5 4 3 2 1
他人に迷惑をかけていないか。 5 4 3 2 1
目標管理 毎月目標を持っているか。 5 4 3 2 1
仕事を向上させるように積極的に働いているか。 5 4 3 2 1
学業と仕事を両立させるよう努力をしているか。 5 4 3 2 1