本誌限定!ここだけの業界ネタ「食中毒が異常発生」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞2000年5月1日)

食中毒が異常発生
対策遅れる日本の行政
危機管理は経営者自らの手で
まだ寒い時期だというのに、今年は食中毒の発生件数が異様に増えている。これは異常事態だ。

まず目立ったものは、生ガキが原因と思われる小型球形ウィルス。日本で生ガキが食べられる時代が終わるかもしれない。近海の汚染がどんどん進んできている。

また引き続きO157が猛威を奮っている。両方とも比較的新しい80年代の菌だ。食中毒のトレンドを見ていると、事故発生件数が増えるだけではなく、菌の種類も増えている。これまでと同じような対策では防止できなくなっている。

ところが日本の行政の食中毒に対する対策は、非常に遅れていると言わざるを得ない。 米国は近年大きな事故が多発したので、クリントン大統領自らが衛生対策に乗り出した。政府が情報を一元管理し、事故が起きるとすぐニュースになって、何が原因かすぐ分かるという仕組みをつくった。

日本は縦割り行政の弊害が出ている。施設別に管轄省庁が異なっていて、病院、保健所は厚生省、食材、外食は農水省、ホテルは運輸省、旅館は厚生省、学校給食は文部省の管轄だ。

省庁間で情報が一元化されておらず、共通の対策なども打たれていない。

先日、横浜の某ハンバーグレストランがO157による食中毒を起こした。マスコミは朝日新聞一紙しか取り上げず、事故後、対策について語られることもなかった。

食中毒菌というのは本来一定の量に菌が繁殖して発病するものだが、O157に関しては、たった5~6菌でも症状を起こす。そのことをこのレストランは全く認識していなかった。

米国でもハンバーグステーキをレアやミディアムで注文し事故が起きた。今はよく焼くのが当たり前。69℃以上で加熱すれば大丈夫という啓蒙活動が徹底している。

この店は調理の仕方が間違っていた。正しい知識がないために大事故を起こした。

日本ではO157が牛肉に起因するということを、行政ははっきりと言っていない。生産者団体に遠慮しているのではないか。こうした情報が正確に開示されれば事故は防げるはずだ。 農水のホームページを見ると、O157の情報は97年以降は更新されていないお粗末さだ。最新情報は厚生省の速報だけ。

昨日までは大丈夫でも、今日事故が起きないとは限らない。常識が通用しなくなっている。相手は進化しているからだ。食事を出す側も進化してやり方を変えていく必要がある。

飲食店の場合、結局被害を被るのは経営者ということになる。本来行政が啓蒙しなければいけないが、マスコミも含めて対応が遅れている現状では、自分の身は自分で守るしかない。飲食店経営者は常に最新の情報を仕入れ、勉強することが肝要だ

王利彰(おう・としあき)

昭和22年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、(株)レストラン西武(現・西洋フードシステム)を経て、日本マクドナルド入社。SV、米国駐在、機器開発、海外運営、事業開発の各統括責任者を経て独立。外食チェーン企業の指導のかたわら立教大学、女子栄養大学の非常勤講師も務めた。 有限会社 清晃(せいこう) 代表取締役

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