本誌限定!ここだけの業界ネタ「接客・雰囲気に見所」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年9月18日)

接客・雰囲気に見所
物ではない価値を売る テーマ性を前面に
TGIフライデーズ 米国流楽しさ演出
TGIフライデーズのオープン後、100冊のメニューがなくなったという話があるが、フードの部分だけを見て評価してしまっては、本質を見誤る。

米国のTGIも料理はおいしくない。しかし居酒屋の本来の目的は、友達とのコミュニケーションの場として利用されるもので、一番のつまみは会話だ。

かつてはイエスタデーがこの方式を導入し失敗したのは、レストランとしてとらえて料理を売ろうとしたからだ。

TGIのすごさは、カクテルなどのアルコール類の充実と従業員のサービスの良さにある。実践面で見れば、今はまだサービスが良いとはいえないかもしれないが、オープン数週間足らずで結論を出すのは早計だ。

ワタミの実力なら、米国のメニューを売れるメニューに替えることは簡単だと思う。だが、まずTGIのブランドとイメージをそのまま輸入することが導入部分では肝要だ。 もう既存のあか抜けない居酒屋は、若者たちに受けない。そこに米国の本物の雰囲気を持ってきたら、若者たちも飛びつく。

TGIのサービスの特徴として、従業員がお客を盛り上げて活気づけようという雰囲気づくりがある。居酒屋の要素として楽しさも必要だ。その演出をどうするかが注目どころだろう。

従業員の求人では、募集100人に対し800人が応募してきた。これだけ人が集まるのは、業界としては異例のことだ。これからの教育次第だろう。 いま外食に限らず日本の産業全体が硬直化しているのは、物を売ろうとしているからだ。良い物はもう当たり前。それ以外の付加価値、お客のニーズに合わせたサービスなどで選別される時代になっている。

コンビニが典型的な例だが、コンビニで買い物する客は物ではなく、スピード、品ぞろえ、楽しさなどの物以外の付加価値で利用する。外食もまったく同じで、おいしさという判断基準からそちらに移ってきている。

TGIに行って、「サービスやカクテルがすごい。このやり方は面白い」と思ったら、それはビジネスチャンスをつかむ人だろう。

また朝11時から深夜まで営業していて、昼間からお酒が飲める。ゼストやラボエムもそうだが、新しいタイプの居酒屋といえるだろう。三食を決まった時間にみなが食事とる時代は終わったが、それに対応できる店がなかった。

これまで居酒屋は、郊外型や食事中心型で昼間が成功していない。昼間のサンドイッチやハンバーガーは、ファーストフードよりは高いが、商品としてみるなら夜のメニューより昼間がどの程度若者の支持を得られるかだ。成功すれば業態として面白いと思う。

すかいらーくは米国にレットロビンという似た業態を持っているので、TGIが成功すれば、これを日本で展開しようと虎視眈々(こしたんたん)狙っているだろう。

次に米国のアウトバックステーキの上陸も控えており、テーマ性のある楽しい外資系レストランが活性化の機会になるだろう。TGIが成功するか否か、業界に与える影響はかなり大きいとみている。

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