新しい衛生管理HACCP 第6回「つけない その4 仕入れ」(日本食糧新聞社 外食レストラン新聞1999年6月7日)

安全な仕入れが基本
景気の低迷している昨今では顧客の嗜好は低価格に傾き勝ちで、飲食店としてはなるべく安い原材料を仕入れて、低価格メニューを実現しようとしています。しかし、注意しなくては行けないのは、幾ら安い食材を購入することができても、品質が悪くておいしくなかったり、最悪の場合食中毒を起こすのでは、安かろう、悪かろうの典型的なやり方になってしまいます。幾ら店舗で衛生管理に気を使っていても、使用する原材料が汚染されていてはどうしようもありません。昨年ですが、超繁盛開店寿司店がo-157に汚染されている北海道のイクラを使用して大規模な食中毒を出したことは記憶に新しいでしょう。このお店は産地から食材を大量に安く購入しているので低価格を実現しているのだといっていましたが、こんな大事故を起こすような食材を購入したためにお店の信用は台無しになってしまいました。勿論売上も激減で、矢継ぎ早の店舗展開の予定が大幅に狂ってしまいました。後の報道でわかったことはこのイクラの製造メーカーの品質管理に対する責任感が欠如していたことで、そのため経営者は刑法上の責任を追求されています。
原材料はしっかりした業者から良い安全な食品原材料を購入するのが基本となるわけです。それには実績や同業者の評判を聞いて判断したり、工場や加工場を視察したりして管理状況を確認するべきでしょう。食中毒を起こした場合、原材料業者が悪いという言い訳は通用しないからです。特に鶏卵や鶏肉、牛、豚、魚介類などは食中毒菌の汚染の危険が高く注意が必要なのです。食材の包装形態なども汚染の少ないポーションパック物を使用するなど、なるべく汚染を少なくする工夫が必要です。

大学病院の給食施設では鶏卵の汚染を最もおそ、スクランブルエッグなどの卵料理を作るのに生卵ではなく、衛生管理の行き届いた工場で加工された無菌の液卵を冷凍の状態で納入し使用しているくらいです。また、豆腐なども大きな形では調理場で加工をする必要があり、汚染の恐れがあります。そこで、コストアップを招くのですがポーションパックを使用するなどの安全向上の努力をしているのです。肉、魚、鶏卵類は注意を払うのですが、案外熱を通さない豆腐などの扱いをぞんざいにし勝ちです。豆腐の製造業によっては非衛生的な作り方だったり、肉や魚などを扱った包丁やまな板で豆腐を切ることにより、肉や魚に付着していた有害な食中毒菌が豆腐につき、加熱処理をしないで常温などに放置しておくことにより食中毒を発生することがあるからです。

仕入れをする際には最低限、その製造加工工場の状態を見学するべきでしょう。製造工場の知識がなくても見学するだけでその安全に取り組む姿勢がすぐわかるものです。例えば製造に携わる人間の衛生管理の知識と実践状況、ユニフォームは綺麗か、工場にはいるときに靴を履き替え、外のごみを持ち込まないようにしているか。手洗いをしないと工場に入れないようになっているか、手洗いの方法はどうやっているかなどの基本的なことは外食の厨房と同じであり、簡単にそのレベルを判断できます。

また、外部から昆虫やネズミなどが進入しないように、扉が密閉し、空調がしっかり効いているか、加工用の食材の流れは交差せず汚染がないようになっているか、商品の細菌検査、異物混入などの検査方法が確立し、記録が残っているかなど、ステップを追ってみていくわけです。数多くの食品加工工場を見学することにより良い工場の見分け方ができるようになるります。このシリーズでお話しすることを製造加工工場でやっているかを見れば良いのです。そんなに専門的な知識は要らないのです。

工場や製造しているところを見学させてほしいというと嫌がる場合があります。それは、衛生に自信が無いと言うことです。そう言う製造工程を公開しないメーカーとの取引は厳禁です。良いわけで製造工程が極秘だからといいますが、全ての工程が見せられないわけはありません。まず、自らの目で確認しましょう。

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