今、ユーザーが求めるファーストフードの厨房設計 シリーズ第22回 「社員マネージャーのキャリアプラン」(日本厨房工業会 月刊厨房)
会社での昇進の段階とトレーニングコース
店長までの教育システム
先月号で述べたように飲食チェーンの店長の仕事は大変な量がある。これだけの業務を行えるようになるには、しっかりとした系統だったトレーニングコースと組織作りが必要になる。日本で一番直営店舗の多い飲食チェーンの一つであるマクドナルド社を例にとってその内容を見てみよう。(月刊食堂1991年5月号、日本マクドナルド研究より)
日本マクドナルドの社員の91年当時の組織図構造は図1の様になっているのでそれを見てみよう。入社後、まずマネージャートレー(マネージャー見習い)として店舗に配属される。入社後店舗に配属されると同時に、MDP#1(マネージメント.デベロップメント.プログラム)に基づいて、トレーニングが開始される。MDPそのものはマニュアルでなく、研修期間のカリキュラムを日別に書いてあり、毎日実習する項目と、勉強するマニュアル、VTR教材などを明確にしてある。店長やトレーナーはそれに基づいて毎日指導していく。この終了予定期間は個人差があるが、3ー6カ月で終了するようになっている。内容は開店業務、営業中の店舗運営、閉店業務、アルバイトの業務、QSCの管理を一人で具体的に出来るようになるまでである。
米国の外食チェーンのマネージメントシステムの基本は、米国軍隊のMTP(マネージメント・トレーニング・プログラム)を基本にしており、各職種に合わせてトレーニング項目を明確にしておき、各職種に合わせたMTPプログラムでトレーニングを進める。一定の能力が付いたら、その職種に合わせた集合トレーニングを実施する。トレーニング内容はあくまでも現実的な内容で、日本の会社が行うような社会人としての常識とか、社内の報告方法などの幼稚園的な内容は教えない。
米国と日本で最も異なるのが学生の常識であろう。日本の場合大学を卒業した新入社員であっても、電話の受け方、挨拶のしかた、手紙や報告書の書き方、欠勤や遅刻の場合の連絡などの社会人としての最低限のマナーを教育しないと使い物にならない。米国の大卒の社員は社会人としての基本的なマナーを教える必要がない。大学生だけでなくても中学生の頃から基本的な時間管理を厳しく指導される。中学での授業の合間の休憩時間は5分間くらいと短く教室に走って行かなくてはならない。授業に遅刻すれば成績に影響し、2回も遅刻すれば(朝でなく授業の合間であっても)親が呼び出され厳しく叱責される。時間管理などの基本的なマナーを学校、家庭の両方で厳格に教育されているのだ。
MDP#1を終了すると、B・O・C(ベーシック・オペレーション・コース、基本トレーニングコース)という地区本部の主催するトレーニングコースを受講する。このコースを終了後、更にMDP#1の項目を全て満足すると、セカンド・アシスタント・マネージャー(第二店長代理)に昇進し一人前のマネージャーとして一人で店舗の運営をまかされるようになる。当然の事ながら昇進により、給料、ボーナスの額が上がる。各タイトルが上がるごとに給料、ボーナスの額が上がることにより仕事に対する意欲を具体的に高めるようになっている。昇進はあくまでも実力主義であり資格試験などというペーパーテストではなく店舗運営での実績に基ずく。昇進は日本の一般的な会社のような年功序列ではなく、場合によっては年齢が上の社員を指導することは当たり前である。
セカンド・アシスタント・マネージャーに昇進後さらにMDP#2を渡され、3ー6カ月で終了する。内容は店舗の高いQSCを実現するために、人物金の具体的な管理方法を学ぶ。これを終了後、I・O・C(インターミーディエイト・オペレーション・コース、中堅マネージャートレーニングコース)というコースを受講し、MDP#2の項目を満足すると、ファースト・アシスタント・マネージャー(第一店長代理)の試験への挑戦資格をもらえる。試験と言っても書類の試験ではなく、実際に店舗を運営しているところをスーパーバイザー(SV、店長の上司で複数の店舗を担当している、QSCと店舗の売上、利益の管理と、人事評価を行う、店舗のQSCの監査も担当する)がチェックし、店長と同等の能力があるとみなされたら合格する。あくまでも実務面の能力をチェックする。
ファースト・アシスタント・マネージャーに昇格するとMDP#3ー1を受け取り、店長になるための、具体的なQSCの実現方法、人物金の管理手法についての具体的な勉強をする。このコースを終了後、A・E・C(アドバンス・エクイップメント・コース、上級機器メインテナンスコース)を受講する。米国式の考え方は全ての店舗の機器、建物は自分たちでメインテナンスするという物だ。建物や機器が壊れてから直すのではなく、定期的な清掃、調整、部品交換をして壊れるのを未然に防ぐ、プリベンティブメインテナンスの考え方である。しかしながら多くのマネージャーは文化系の学部を出ており、機械の知識はほとんどない。その為機械を恐がり、さわろうとしないという問題がある。そこで授業を通じて、機械の作動原理、冷却原理、等の基本を教え、さらに店舗の各機械の構造を理解させる。そして、簡単な修理を実習させ、店舗で実際に行えるようにする実用的な授業である。
筆者の調理機械の知識は全てこの授業を通したものであり、完全にマスターすれば調理機器メーカーの設計担当者とディスカッションを出来るくらいレベルの高い、具体的なトレーニングコースである。
これを終了すると、MDP#3ー2を渡され次の勉強をする。内容は更に店長の業務を出来るようにする物だ。この過程で、シニアー・ファースト・アシスタント・マネージャー(上級第一店長代理)の資格を満たせば昇進する。この後、A・O・C(アドバンス・オペレーション・コース、上級マネージャートレーニングコース)を受講する。この授業から本社のハンバーガー大学が担当し、全国のマネージャーは本社のハンバーガー大学で受講する。このコースでは店長になるための全ての知識と手法を学ぶ。更に、広告宣伝、人事管理、目標管理、人事管理、機器メインテナンス、利益管理、等を具体的に学ぶ。
米国のハンバーガー大学のAOCを受講すると大学の単位にもなる位の、レベルの高い内容である。
これを終了後新店舗の開店に伴い、ストアーマネージャー(店長)に昇進する。店長昇進で勉強は終了ではない。これから更にMDP#4をもらい、新人店長の勉強を開始する。内容は具体的な業務と同時に、店舗のマネージメントをどうやって行うかという物になる。
MDP#4の途中でS・M・C#1(ストアー・マネージメント・コース、新人店長トレーニングコース)を受講する。ここでは店舗のQSCの維持と売上と利益の管理と更に店舗におけるリーダーシップの取り方を学び、多くの人の前で話すプレゼンテーションスキル等を修得する。
米国的ではマネージメントの長となると必ず人前で話したり、説得する必要が生じる。日本では各人が自分でプレゼンテーションスキルを学ぶのだが、米国では必要な職位になると必ずプレゼンテーションスキルの受講をさせる。米国マクドナルド社では色々なコースがあるが、各国のハンバーガー大学や地区本部のトレーニング担当者へのプレゼンテーションスキルのクラスがある。ここでは参加者の理解する言語は異なるにもかかわらず、全て英語で行う。面白いことに、お互いに相手の言語を理解しなくてもコース終了時には相手の言い分の80%位は理解できるようになる。プレゼンテーションの80%はボディーランゲエージ(身ぶり手振り)と表情だからなのだ。例えば、聴衆の目を見るトレーニングでは、生徒に目を書いた紙を渡し頭の上に掲げさせる。プレゼンテーション実習を行っている生徒が、自分の目を十分見たと判断したらその紙をおろすのだ。これにより、プレゼンテーションをしている生徒は全員をまんべんなく見る習慣を身に付ける。このように大変具体的なのが米国式のトレーニング方法だ。米国式トレーニングは具体的で、参加者に自信を持たせるポジティブな研修方法である。
日本の幹部社員トレーニングというと地獄の研修などといって、参加者を肉体的、精神的に苦しめるタイプが多い。日本ではチームワークを重んじ、幹部研修会では殆ど反省会と協調性を養うことに重点を置く。大抵の研修会では最初に参加者の自信を打ち砕き、それから講師の言うことを素直に聞かせる姿勢を作る。この段階で反抗しようものなら、会社に報告するなどとまるで脅迫だ。脅迫と自信をなくさせることにより、反省させ素直にさせる。研修会を終了した人に聞くと大変参考になったという。しかし、実際の成果には殆ど反映しない。それは研修会では具体的な業務の進め方、改善方法などのマネージメント手法を何も教えないからだ。さらに従来の自分のマネージメント方法にも自信を失いこれから何をして良いのか茫然自失とさせるからだ。
米国式の教育の優れているのは、参加者そのものをまず肯定することから始める。そして、参加者が会社で成功するにはどうすればよいのか、現状の問題点は何なのかを見つけだせるようにする。本人のマネージメントスタイルに問題があれば、何が問題なのか論理的に説明する。対人関係でも単に素直に相手の言うことを聞くと言うのではなく、精神分析の手法に従い、こちらの態度がどのように相手に反応するかを分析説明する。現場に戻ってから、色々なタイプの人間にも対応できるように、分析手法、対応方法を具体的に分かり易く体系立てて学習させる。つまりどんな事柄でも具体的に分かり易く教えるのである。米国マクドナルド社のトレーニングシステムが優れているのはこの人間関係の手法をしっかりとトレーニングするシステムを作り上げたからではないかと思われる。
米国ではトレーニングシステムを開発する専門の教育機関があり、そこでそれぞれの会社の業務にあわせたシステムを開発している。各企業は数年毎に最新の理論に基ずくトレーニングシステムを再構築し常にベストになるようにしている。最近日本でも行われ出したリエンジニアリングなどもいち早くトレーニングコースに取り入れるなど、社員の教育特にマネージメントの教育に力を入れているのが米国企業の特徴だろう。最近の日本の産業の衰退は円高だけでなく、この社員教育システムの欠如があるからではないかと思われる。
SMC#1を終了すると更にMDP#4を継続して学びそれを終了すると、シニアストアーマネージャー(上級店長)に昇進する。数年の上級店長経験を経た後にSMC#2を受講し、次に職位であるスーパーバイザーを目指すのである。
飲食チェーンの管理手法
スーパーバイザー
店舗が数多くなるとその管理が必要になる。店舗では店長が最高責任者であるが、その店長5ー8名を管理するスーパーバイザー(以下SV)が必要になる。スーパーバイザーとは監督であるが、監督と教育が飲食店のスーパーバイザーの業務である。
スーパーバイザーの業務で最も重要なのは、店舗がQSCを最大限に維持しているかをチェックするポリスマンの役割である。定期的に店舗のQSCをチェックリストに基づきチェックする。もし、店舗のQSCが基準に達しなければ作業の改善を命令し、それでも改善できなければ、店長を降格させたり、閉店を命ずることもある。大変な権限を持っている。QSCだけでなく、店舗の売り上げ、利益額の管理もしなければならない。売り上げが低ければ具体的な販売促進策を店長とともに作成する。
店舗のチェックだけではなく、店長のラインの上司としても機能する。もしスーパーバイザーの担当店舗全体のQSCが低下したり、売り上げ利益の目標達成が出来なければ、SVから店長への格下げもありうるほど厳しい職務だ。
SVは単なる監督ではない。もし店舗に問題があればそれを解決しなければならない。店長の知識が不足しているのであれば、店長への教育が必要だ。先にも述べたが、MDPを進行していく最終責任者はSVなのだ。
SVの業務はQSC、人物金の管理と、教育、売り上げ利益QSC増進に関する企画の立案、等の他にさらに重要な任務がある。それは店舗のオペレーションシステムの改善である。SVの業務は会社の方針を店舗に伝えるだけでなく、店舗のシステム的な問題点や改善方法を本社へ提案しなければならない。店舗の現状をもっとも把握しているのはSVなのであるから、その改善方法のフィードバックすることにより会社全体のシステムの改善が可能になる。幾ら本社に優秀な人材が座っていても、店舗の現状を知らなくては何もできない。かりに何かをしようとしても店舗の現状を把握しないまま行っても全く効果がないばかりか、逆効果で店舗の意欲を失う基なのだ。
SVの役割というのはチェーン運営を考える上で最も重要であり、そのためにはSV用の優れた教育コースが必要なのである。多くの飲食チェーンでは店長までの教育コースはあるが、SV用の教育コースを備えているのは僅かである。SV教育では具体的なQSCの向上手法と同時に、会社運営への参加意識の植え付けが必要になるる。SVは企業経営の要であるという認識を持たせ、いかに会社にとって重要なのか、大切に思っているかを認識させることが重要だ。このSVにたいする教育はチェーン経営の将来を左右するほど大切である。
統括スーパーバイザー
米国のMTPの基本は管理可能な部下は7人までであるという事だ。だから、SVが7人以上になればそれを管理する統括スーパーバイザーが必要になる。統括スーパーバイザーは6ー7人のSVと30ー40店舗の売り上げと利益の管理をする。この統括SVのエリアをプロフィットセンターとよび、この単位で売り上げと利益を管理させる。全社で利益や売り上げが低いと言って騒いでも具体的なコントロールは不可能だ。この統括のエリアで目標売り上げと利益を確保するようにすれば、全社的な利益の確保が可能になるのだ。米国ではこの単位の管理を大変重視し、もし2カ月でも目標利益が達成できなければ、降格されてしまう。場合によっては週単位に利益管理をしているチェーンもあるくらい利益については厳しいのだ。
良く言われることだが、米国の経営者は四半期毎の利益を重視し、長期目標を実現しないと言われる。この最大の理由は経営者の報酬制度による。米国大手企業の経営トップの給料は日本と比較にならないくらい高く、10億円以上の報酬を取るのはざらである。しかし、その内容を良く見ると、現金の報酬は少ない。報酬の多くはストックオプションという物である。これは自社株の購入権利である。現時点の株価が50ドルだとすると、例えば報酬として50ドルで10万株の購入権利をあげる。その実行はすぐには出来なく、大抵は3年後から、数年に分けて購入出来るようになっている。3年後に50ドルの株を経営努力により60ドルに上げれば差額の10ドル、つまり100万ドルを報酬として受け取ることが可能になるのだ。会社は一銭の金を出すことなく、多額の報酬を生み出せるのだ。また、数年にわたらないと株を売却できないので、優秀な経営者が他社にスカウトされるのを防ぐことにもなる。この制度が米国経営者の利益に取り組む姿を厳しくさせる大きな原動力であり、利益をだすためにはドラスチックなリストラやリエンジニアに取り組ませるのだ。現在の日本の法律では自社株の購入が出来ないので、すぐに導入できないのだが、株価の低迷を見ると米国式のストックオプション制度を検討する時期にきているのではないだろうか。
フランチャイズチェーンの管理
飲食チェーンの多くは、直営店舗とフランチャイズ店舗を展開している。直営店舗とフランチャイズ店舗では管理手法が異なる。直営の場合のSVは監督と同時に直接の上司であり、きめの細かい管理と教育を行う。直営の場合には店舗数の増加とともに常に新入社員が増加するので、きめの細かい管理が必要になる。しかし、フランチャイズ店舗の場合にはフランチャイズオーナーが直接の運営に当たり、長い経験を持つようになる。その為、直営店舗のようにきめの細かい教育が必要がない。しかしながら、フランチャイズ店舗は独立法人であり、売上や利益の管理が悪いと倒産したりする。その為、直営店舗とは異なる財務上のコンサルティングが必要になる。直営のSVは損益計算書までの知識でよいが、フランチャイズの管理には財務諸表、特にBSや資金繰りのチェックが必要であり、経営者としての高度な知識が必要になる。フランチャイズオーナーは独立した経営者であり、直営の社員のように命令することはできない。理詰めの説得が必要であり、洗練されたコミュニケーション技術が要求される。そこで直営の管理とは別に、フランチャイズ店舗の管理の責任者を設ける必要が出てくる。その職種をフィールドコンサルタントとかフィールドカウンセラー(FC)などと呼ぶ。SVの担当店舗は7店舗までだが、FCの場合社員の教育の必要がないために20店舗以上の店舗を担当する。
運営部長、フランチャイズ担当部長、運営本部長
統括SVやFCの数が多くなると、当然それを管理する運営部長やフランチャイズ担当部長が必要になる。さらに店舗数の総数が増加し、広い地域にまたがるようになると、直接本社から管理することは効率が悪くなる。店舗数200ー300店舗ごとに地区本部を設け、地域に密着した管理をするようになる。地区本部長とはその地区の社長のように全ての管理をおこなうのだ。
米国のSV制度の現状
以上が米国式のきめの細かい店舗管理システムだが、最近新しい管理手法を行うようになってきた。それはタコベルが開始したリエンジニアリングだ。これは中間管理者であるSVを廃止しようと言う物だ。米国の飲食チェーンの歴史はもう既に30年以上になり、現場の店長の年齢も35以上、平均の経験も10年以上となっている。従来のSVは経験の少ない若い店長を、厳しく教育管理するシステムであった。しかし、これだけ経験の積んだ店長には従来の管理とは異なった手法でよいのではないかという発想が出てきた。同時に、年齢の高い経験の長い店長の年収も高額になっており、収益の向上の為にもなにか異なった管理手法が必要にもなってきた。
そこで店長は従来のような固定給ではなく、店舗の利益により収入が変わる、経営参加型の報酬制度に切り替え、店舗の運営に真剣に取り組めるようにした。そして、統括SV等はSVを通さずに直接店長を管理するようにした。つまり、フランチャイズ店舗の管理手法を取り入れだしたのである。
この中間管理職の削減によるスリム化に成功したタコベルは更に低価格路線と、小型店舗数の増加により急成長を遂げたのだ。これに大きな影響をうけたバーガーキング社、マクドナルド社等のチェーンは、同様のSVの削減と本社のスリム化に取り組みだした。バーガーキング社は徹底しており、地区本部のオフィスを閉鎖し、各幹部は自宅から直接店舗を管理する、自宅勤務制を採用するなどの改革を行った。
マクドナルド社でも同様の改革を取り入れ、SVをオペレーションコンサルタント(OC)、FCをビジネスコンサルタント(BC)と改称した。同時に各人の担当店舗を増加し、生産性の向上を図りだしたのである。
この米国のSV制度の改革は日本にも押し寄せ、外食各社でSV制度の改革が見られるようになった。しかし、SVの機能は単にQSCのチェックマンでなく、教育担当者であるということを忘れると、チェーン運営が大きく乱れる恐れがあり、今後その動向を注意深く見る必要があるようだ。
その他の米国におけるオフィスのリエンジニアリング
日本企業と米国企業を比較すると生産現場の生産性は米国よりも高いが、オフィスの生産性は米国の半分以下ではないかと思われる。日本ではFAXをだすときに下書きを書きそれを部下の女子社員にワープロを打たせ、それをチェックしFAXさせる。1枚のFAXでも大変な手数がかかる。米国では各人がパソコンをもちFAXの文書を自分で打ち、印刷しないでそのままパソコンメールで送付したり、社内ネットワークで送付、パソコンFAXで送付する。作成した文書はハードディスクに保管するから後で探すのも簡単だ。このようにオフィスワークが大きく変わってきている。
日本でもう一つ改善が必要なのは秘書の業務内容だろう。日本の会社の経営陣の秘書を見ると可愛いのが取り柄としかいえないのが多い、米国の秘書はハンズフリーの電話機をつけ、パソコンを操作しながら電話の応対をする。一人の秘書の担当人数は5ー6人だ。それだけの人数のスケジュールは全部頭に入っているか、パソコンの画面から引き出す。伝言メッセージがあればそのまま各人のボイスメールに録音し、本人に連絡する。米国の友人に連絡を取りたいときに外出していると、そのまま携帯電話を呼び出し即座につないでくれたりする。秘書の能力は素晴らく高く、場合によっては会議に代わりに出席し判断業務まで出来る。米国の秘書業は専門職であり、専門学校でのトレーニングが必要だ。また、各社には秘書のSVを置き常に仕事の監督トレーニングを実施している。日本でもホワイトカラーの生産性向上のためには専門職としての秘書教育が必要になるだろう。